ユメ先輩の妹!   作:ワンコそば

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一話

◆◇◆

 

1ヶ月ほど前に姉の凶報を聞かされた。姉の死因はアビドスの砂漠地帯での事故死であったと聞かされている。

多少は驚いたものの私は姉の死を悲しめなかった。両親が事故で亡くなった時もそうだった。我ながら薄情な妹だとそう思う。

そんな薄情な妹だからなのか姉の交流関係なんか一切知らないため葬儀は私一人で取り行った。

葬儀の際も顔色一つ変えない私を見て神父が私を訝しんでいた。

仲が悪かったわけではなかった。むしろ良好だったのだろう。

 

姉は休みの日は必ずと言っていいほど私を色んなところに連れ回した。ショッピングに遊園地と本当にいろんなところを巡った。

今思えば姉は私の笑った顔が見たかったのだろう。自身の貴重な休日を削ってまで私に尽くしてくれたのに姉の前で一度も私は笑顔を見せることが出来なかったことに、少しだけ申し訳なさを感じる。

こんな、人でなしの妹などほっとけばよかったのに、姉はそれを良しとしなかった。もしかしたら私が姉にとっての最後の家族だったからなのかもしれない。

 

結局のところ私は姉のことを何もわかっていないのだ。10年以上共に過ごしていたのに。

 

「本当に何もわかっていないんだね・・・」

 

私には姉の行動原理が分からなかった。

これはひとえに私が人でなしであるからなのかも知れない。

借金返済の見通しの立たない廃校寸前の学校であるアビドス高等学校の借金の完済を目指し奮闘していたのは知っている。

どう返済するか悪戦苦闘し涙を密かに流していたのも知っている。

 

だけど、私の前ではそんな表情を見せまいと振る舞っていた。

辛いなら辞めて仕舞えばいいのにと何度も思っていたが、私はそれを口にしなかった。おそらく私が口に出したところで、姉は止まらなかっただろう。

 

なぜ、そんな辛い思いまでして守ろうとしたのか分からない。他の学校に転校すれば楽な学生生活を歩むことができただろうに。なぜあそこまで拘ったのか?少なからず、あの学校を守る義理はなかったはずだ。

姉にとってあの学校は足枷にしかならないと自分でも理解していたはずだ。

色々と疑問が尽きない。

だから見てみたくなった。

姉が守りたかったアビドス高校を。

もしかしたら姉を突き動かしていた何かがわかるかも知れない。

故に私はアビドス高校に足を運ぶ。

 

◆◇◆

 

自宅から十数km先にあるアビドス高校付近まできたが、見渡す限り砂漠に覆われ、かつて栄えていた街も都市も砂に覆われて今は見る形もない。

もうアビドス全体が再起不可能ではないかと感じてしまうほどにこのアビドスは死んでしまっている。

例え、アビドス高校の借金が返せたとしてもアビドスの喉ほどが荒廃してしまっていては新入生なんて入学してこないだろう。他の地区の学校に学生は流れるだろう。

そんなことを考えながら進んでいると、ようやく見えてきたのは姉が生前、生徒会長として在籍していたアビドス高等学校だ。

第一印象は人の気配が感じられない、寂れた学校だとしか言えない。

 

一体姉は、何を考えこの学校に自身の青春を棒に振ってまで借金返済に奔走したのだろうか。

学校を外から眺めているだけじゃやはり姉を突き動かしていたものは分からない。

 

不法侵入となってしまいそうだが、校舎の中に入ることを決意した瞬間───

 

「ユ、メせんぱい・・・?」

 

私に待ったをかけるように後ろから姉の名を呼ぶ少女の声が聞こえた。

私が、後ろを振り向こうとした瞬間体に衝撃が走る。

振り返ってみると私に泣きじゃくりながらしがみつく幼い少女がいた。

しかし、よくよく見ると制服を着ていることからこの高校の生徒だということがわかる。

意外だったのは姉がこの世を去ってからはこの高校には生徒なんて誰一人いないと思っていたが、どうやらまだいたらしい。

 

「ゆ、めせんぱい・・・。ずっと、、会いたかった・・・うぅ・・・ごめ・・なさぁい・・」

震えた声で私のことをユメという少女はどうやら姉と勘違いをしているらしい。

見間違えるのも無理はない。姉の容姿と私の容姿はかなり似ている。似てないのは内面的な感情に起因するものだけだと思う。

 

しかしこの様子を見ると少女と姉はかなり親密な関係にあったのだろうと予想できる。

姉とはどういった関係だったのか聞きたいところだが、対人関係が希薄な私は号泣している相手の慰め方など知るよしもなかった。

 

だから、姉が事あるごとに私の頭も撫でたように少女の頭も落ち着くまで撫でる。

数分間の間頭を撫で続けた結果少女も段々と落ち着きを取り戻してきたのを見計らって声をかける。

 

「落ち着きましたか?」

 

少女はようやく私から離れ、ゆっくりと頷く。

 

「先に謝っときます。私はユメではありません」

 

少女もなんとなく理解していたのだろう、驚きはせず淡々と私の話を聞く姿勢をむける。ただ、やはり悲しそうな顔をする。

 

「とりあえず、どこか落ち着いて話し合いができる場に行きましょう」

 

「だったら学校に空き部屋があるから、そこに案内するよ」

 

少女の後ろについて行き学校の中に入ると、物や砂が散乱しており手入れが行き着いていない部分が多い。

 

この大きな施設を少数人で手入れするとなるかなりの時間がかかる。

そんな散らかりきった廊下を数分歩くとある一つの部屋で少女が足を止めた。

 

そして少女が扉を開くと先程見てきた、廊下や教室とは違いちゃんと整理整頓が行き届いた部屋に案内される。

 

「ここは、私とユメ先輩が主に生徒会の業務で使用していた部屋・・・」

 

少女のその言葉にはどこか哀愁が漂っていた。

 

「座っていいよ。空いてる席ならこの通りたくさんあるから」

 

そう促され少女の真正面に座る。

少しの間少女と向き合って無言の時間が続いたが、私が気まずさに耐えきれなくなったのもあって口を開く。

 

「それでは、私の姉ユメについて積もる話もあるでしょうから始めましょうか」

 

目の前の少女は机に向けていた視線を向けて口を開く。

 

「では、私から自己紹介するよ。小鳥遊ホシノ、この高校の元生徒会副会長。よろしく、うつつさん」

 

少女、小鳥遊ホシノが自己紹介をする。

どうやら、私の名前も知っているようだ。姉から聞いたのだろう。

 

「どうやらご存知のようで。では、改めまして私はユメの妹のうつつと言います。よろしくお願いします」

 

そういった後、私は手を出し握手を求める。一瞬手をなぜか震わせたがそれに応えるように小鳥遊ホシノも握手を返してくれた。

 

「あったかい・・・」

 

手の感触を確かめるように手を握るから私は困惑してしまった。

 

「あの・・・」

 

「あっ、ごめん・・・」

 

「いえ、お気になさらず。」

 

どうやら1ヶ月経とうと姉のことが忘れられないらしい。私を通してどうしても見てしまうのだろう。そんなに辛いのなら全て捨ててしまえばいいのにと思うのはやっぱり私が人でなしだからなのだろうか。

 

「それでうつつさんはどうしてここに?」

 

「私のことは、呼び捨てで構いません」

 

私がそういうと「うん、わかった」とすぐ答える。

 

「それでなぜ、アビドス高校に来たかのでしたね」

 

なぜか少し怯えるように小さく頷く小鳥遊さんに私は答える。

 

「別に大した理由なんてありませんよ。なぜ、姉がこの学校を守りたかったのか気になってきただけです」

 

きょとんとした顔を見せる小鳥遊さんを見てなんとなく先程怯えていた理由が分かった。

 

「ここに来たのは小鳥遊さんを責めに来たわけではないので安心してください」

 

ほんの少し安堵したような表情を見せるが、途端にまた、泣き出しそうな表情をする。

 

「・・・けれど、私はユメ先輩を救うことができなかった」

 

どうやら姉はこの少女にとって大きな存在だったらしい。だが、死んだ姉は小鳥遊さんが自分が自分を責めることは望まないだろう。

だったら妹である私が取るべき行動は一つだ。

 

 

「小鳥遊さん、ありがとうございます」

 

これは、私にできる小鳥遊さんへの感謝

 

「えっ?」

 

「私の姉を思ってくれて。私には最期までできなかったことですので・・・」

 

そう、最後の瞬間まで私はできなかったのだ。

 

「そんなこと・・・」

 

「あるんですよ。姉と暮らした十数年の間一度も姉に愛情を抱けなかったんです。事故で早くに亡くなった両親にも悲しみを抱くことができなかった」

 

「だから、私の代わりに姉を愛してくれてありがとうございます」

 

「姉の代わりにお願いです。姉に囚われずどうか幸せに生きてください。今は難しいかもしれませんが、いつか自分自身を許してあげてください」

 

きっと、姉なら自分に縛られず前に進真を願うはずだ。

 

「・・・うっアアアアアアアア」

 

堪えきれなくなったのか今まで我慢して来たものを全て吐き出すように叫ぶように泣く。

 

私はそれを泣き止むまでただただ黙って見つめていた。




第三章のストーリ楽しみにしてます。
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