最強になって10日で力を失った   作:✛パグだフル✛

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元魔王も子供の相手は苦戦します。

☆☆☆

外から帰って来たであろうショタコンは汚れた皮の鎧と、剣を腰に下げ盾を背負っていた。

そして、「ただいまぁ」と疲労感を感じさせる間延びした声で帰宅を告げる。

 

まさか、この家にあのショタコンがいたとは、道理で子供が多い訳だ。

 

件のショタコンは俺と目が合うと笑顔を浮かべ、手を振ってくる。

その姿は一見爽やかな好青年、いや、好少年といった様相だ。

そう、ショタコンは意外にもまだ少年と言って差し支えない年齢だった。

栗色の髪と瞳、顔にはそばかすがあり、それもまたショタコンのあどけなさを強調している。

 

そばかすが無ければ、もしかして中年くらいに見えるのではと思い、手でそばかすの部分を隠すも、やはり少年にしか見えない。

間違っても、中年には見えない。

とはいえ、この中で年長なのは事実。見た目での判断になるが、恐らく15歳くらいだろう。

 

ショタコンも家主ではない、ということか?

普通に考えれば人間の15歳で5人の子供の成活費を稼ぐのは難しいだろう。

となると、必然的に彼も孤児の一人となる筈だが………………強い、英雄候補程の実力はないにしても、貴族抱えの騎士団連中の数段強い。

 

これだったら、狩人として上手く活動できるだろう。

要警戒だな。そんな、俺の内心に気づいてないのか、男は手を振ったまま、俺に近づいて来る。

 

「よっ、体調はどうだ?痛い所や気持ち悪かったりしないか?」

「だ、大丈夫です。」

 

俺はフォージの手を握りながら、怖がっていますというポーズをとる。

本当に子供に懐かれるような人間なら、これでこちらの心境を察してくれる筈だ。というか察せ。

実際、ショタコンは俺の反応を受けると困ったように笑い一度距離を取る。

そして、今頃になって食事を食べ始めているのに気付いたのか、それともこちらの警戒心を解くためか、あからさまに気落ちしている声を出しながら、食事の話題をレニスに振る。

 

「ちょ、ちょっと先に食べてのかよ?ビーフシチューって聞いて出来るだけ早く帰って来たのに」

「な~にが、速く帰って来たよ!もう日が暮れて、どれだけたったと思ってるの⁉」

「いや~、まぁ、それも、そうだよなぁ」

「ふふふ、ファミルおにぃちゃん、れにすおねぇちゃんに怒られてる‼」

 

夫婦のようなショタコ……ファミルとレニスのやり取りにユーリは笑顔を浮かべる。割と何時ものやり取りなのだろうか?

それとも、やはり、俺の緊張を解す為か……いや、今は脇に置いておいても良いか。

 

ユーリの様子を見るにショタコンが好かれている理由は誰でも意見が言いやすく、少し抜けている部分がある緩い雰囲気によるものだろう。

 

とはいえ、アルスはユーリの態度をあまりいいものではないと考えているのか、軽く注意する。

 

「ユーリ、ファミル兄さんは俺達の生活費を稼ぐために仕事をしていたんだ。そんな風に笑ってはいけないよ?」

「お仕事?ユーリもお仕事したよ!今日ね、レニスおねぇちゃんとお皿洗ったんだよ‼」

「そうか、ユーリは偉いなぁ」

 

注意はしたが、ユーリの言葉を聞いて、頭を撫でだすアルス。子供は褒めて伸ばすというが、あれは………どうなんだろう?

恐らくアルスの注意はユーリには届いていないと思うのだが。

何ならアルスの脳内からも消えてるだろ。

 

ユーリとアルス、微笑み合う二人、しかしユーリが突如落雷に撃たれたかのように大きく目と口を開ける。

そして、意識的にとても真面目な表情をする。

 

「アルスおにぃちゃん。ユーリじゃなくて、ユーリおねぇちゃんでしょ?」

「はい!ユーリお姉ちゃん」

 

大丈夫だろうか、この二人は。

おにぃちゃん、お姉ちゃんと呼び合う関係って一体なんだ。結局どっちが年上か分からないだろ。

 

いや、どう見てもアルスの方が年上だが、ならお姉ちゃんと呼べと言われて、お姉ちゃんと呼んでいるアルスは一体何なんだ。駄目だ、考えるのはよそう。部外者は関わっちゃいけないとさっき自分で言ったばかりだ。

 

仮にこれでアルスが変な方向に性癖を歪ませることがあってもそれを止める権利は俺にはない。

 

ただ、これも先ほど言ったことだが、同年代の子供の方が残酷だったりする。

 

「きっ」

 

リッカはただ一言それだけ告げる。

一体何が「きっ」なのかは甚だ疑問だが、恐らく「きっかけは些細なことだったのに」とかそんな所だろう。

決して、「きっつ」や「きっも」に繋がることはない、筈だ。

 

流石に同年代の異性にそれを言われるのは堪えるだろう。

 

目の前で起こる何気、何気ある出来事に目を奪われていると俺の来ている服の袖を誰かが引っ張る。いや、俺が誰の隣に座っているか考えれば誰が袖を引っ張っているか分かるか。

 

「どうしたの?フォージ」

「賑やかでしょ?皆ねファミル兄に助けられたんだ。すっごい強い狩人なんだよ?」

 

少し自慢げに胸を張ってフォージがファミルのことを話す。

どうやら、ファミルはこの家の人間に相当好かれているようだ。

フォージが木剣を持っていたのもファミルの影響か。

俺は少しだけファミルの魂に眼を向ける。

 

俺の中でまだショタコンの嫌疑が晴れていないが、子供達の様子を見ていると、本当にただのお人好しなのではないかと思えてしまう。

 

…偶には無償で人助けをするお人好しがいても良いのだろう。

実際、アトレータの武帝は国民を愛しすぎて国民同士の結婚相手まで見繕う変態だしな。

 

ファミルはきっと武帝のような変わり者なのだろうと結論づける。

 

ただ、俺はそう結論付けながらも目を凝らし、魂の細部を見ていた。

元来の疑り深い性格が自然と魂に眼を向けさせていた。

 

結果としては剣に関しては英雄候補までならいけるだろう。後は精霊魔法への適正もある。こちらは鍛錬をしていないようだが…。

 

 

 

 

…それと………………こいつ人を殺してるな。

しかも、一人じゃない、最低でも三人以上。

流石に十人は超えていないだろうが。

 

………この男は探りを入れないと不味いな。

 

俺は前言を撤回する。

この男は危険だ。武帝とは違う。

一体何が目的で子供を集めているか、知る必要があるな。

 

☆☆☆

 

ビーフシチューは大変美味だった。

俺は用意して貰った自室に戻る。因みに自室に帰ったのは俺とファミルだけだ。

ファミルは明日の狩りの準備をしてくるらしい。

俺はそのファミルについて調べる為に一度部屋に帰って来ていた。

というのも、調べるために使い魔を作る必要があったのだ。

今回作る使い魔は見た目がヤモリ、【劣土(インフェリア・フムス)】と【短魂(ブレビス・アニマ)】で生み出すタイプだ。

劣土(インフェリア・フムス)】と【短魂(ブレビス・アニマ)】という使用魔力が少なく、その結果、魔力感知に引っ掛かり辛い魔法とヤモリという体温調節機能が無い生物を選ぶことで捕まった際に体温を感じなくても不思議に思われないという潜入向きの使い魔だ。

 

実際魔王軍時代に似たような使い魔を作り、斥候を任せていた時期があった。

この【土家守】には出来るだけ、子供達に見つからないように移動してもらう。

 

さて、鬼が出るか蛇が出るか。

 

俺は【土家守】が戻ってくるまでの間に脱出経路の確認をする。

残念ながら、俺の自室には窓が無いため、ここから出ることは出来ないだろう。

 

リビングは人目に付きすぎるから窓がある部屋を探す必要があるな。

 

先ずはフォージに声をかけてみるか。

 

俺は自室を出てリビングへと向かう。

リビングではレニスとユーリが皿洗いをしていた。

二人は足音で俺の存在に気づき、こちらに振り向く。

 

「?ポデスタ君どうしたの?」

「ユーリはねぇ、夜遅くまで起きてお仕事してるんだよ‼」

 

レニスは早々に部屋に帰った俺がリビングに戻ってきたため、何か用事があったのかと聞いて来る。

実際その通りだしな。

さて、何と答えたものか。流石に急にフォージの部屋に入れて欲しいと言ったら不審がられるだろう。俺は慎重に言葉を選ぶ。

 

「え、えっとフォージ君と一緒に遊びたいなって、思って…」

 

フォージにちらりと視線を向けながら、気恥ずかしそうに告げる。

ちょっと俯き、両手の指と指を合わせるのがミソだ。

 

俺の言葉にレニスはにこやかに笑うと、フォージに声をかける。

「だって、フォージ‼」

 

フォージは、木剣を腰に下げて、こちらに近づいて来る。

魔力操作の鍛錬中のようだったが、嫌な顔一つせずにこちらに来てくれた。

 

「え、えっと。何して遊ぶ?」

「ずるーい‼ユーリも遊ぶ‼」

 

俺が遊びに誘ったために、ユーリもまた、頬を膨らませてこちらに駆け寄ってくる。

皿洗いは………まぁ子供だし、遊びが優先だよな。

 

にしても、遊びか、何をすればいいんだろう?

取り敢えず、一番乗り気なユーリに聞いて見るか。

 

「ユーリは何がしたい?」

「う~んとね。おままごと‼」

 

おままごと、母親や子供へのロールプレイングだったな。

演技は勇者や執事を出し抜いたこの数の魔王(シングルアーミー)の得意分野だ。

どんとこい。

とはいえ、ここからどうやって部屋に向かうか……。

まぁ、ロールプレイングをするなら何かしらタイミングがあるだろう。

 

「分かった。それで行こう。」

「え、ちょ、ちょっと恥ずかしいよ。」

 

俺はおままごとで一向に構わなかったのだが、フォージはレニスやアルス、リッカに視線を向けながら、否定的なことを言う。

差し詰め、他の人に見られるのが恥ずかしいのか。

これは好都合だ。

 

「だったら、お部屋でやればいいんじゃないかな?」

「お部屋?」

「うん、実はね、フォージのお部屋気になってたんだ」

 

ここで部屋を指定しなければ、提案者の俺の部屋でおままごとが行われる可能性があるため、フォージの部屋に行ってみたいと付け加える。

 

「え、別に良いけど…」

「ユーリのお部屋も案内してあげるね‼」

 

フォージもここでやるよりはマシだと感じたのだろう。

部屋に案内してくれるようだ。また、ユーリも自室へ入れてくれると言っている。

これで、二つの部屋を調査することが出来る。

 

フォージに連れられて俺はフォージの部屋へと向かう。場所は俺の部屋がある場所とは反対側の廊下の先でファミルの部屋の向かい側のようだ。

 

フォージの部屋へ入れてもらった俺は部屋の中を見回す。

中の作りは大体同じだ。物も多くなく簡素な印象を抱く。

それと、この部屋には俺の部屋と違い窓がつけられていた。

 

だが、残念ながら、窓には木の板が貼り付けられており、開けることはおろか日光を浴びることも出来ないだろう。

 

この部屋からの脱出は絶望的だな。

 

一応、ユーリの部屋も見せてもらえるそうだが、この様子だと他の案を考えた方が良さそうだ。

俺はそこで一度思考を切り替える。

何故なら、今からおままごとをしなくてはいけないからだ。

さて、何をやらされるのか、俺はユーリに視線を合わせる。

 

「それじゃあ、俺は何をすればいいのかな」

「えっとね~。ポデスタはこどもやくね。フォージはおとうさん。ユーリはおかあさん」

「僕がお父さん⁉」

 

フォージは驚いているが、役を決めた時点でユーリの中ではおままごとは始まっていたようだ。

眉を寄せて心配そうにフォージを見る。

 

「そうよ?私達結婚したじゃない?赤ちゃんもいるわ」

 

唐突に話題がこちらに向かってきたが、これでも元魔王。幾度もの困難を乗り越えてきた。

対応力もそれなりに高い。

 

「ま~ま、ご飯まだ?」

「ポデスタ………まだしゃべっちゃだめでしょ!」

 

え……まだ喋っちゃ駄目ってどういうこと?

 

あ………赤ちゃん役から始めろってことか。

成程………え、マジで?赤ちゃんからやらないと駄目なの?

 

「ほら、ポデスタ、おいで?」

「お、おぎゃあ、おぎゃあ」

「よしよし」

 

嘘だろ、これはちょっと…恥ずかしいんですど‼

 




魔法紹介

【劣土】
七天魔法の一つ。月属魔法【ルナ・マギア】。【操土】以下の量の土を操ることが出来る。ただし、操れる土の量は本人の技量によるため、使い手次第で【劣土】で【操土】を操作することも可能。また、魔力消費が増えるが土の無い場所でも使用可能。
※【操土】も同様。

【短魂】
七天魔法外典魂魄魔法の一つ。火属魔法【マルス・マギア】。時間経過で消えてしまう魂の生成が可能。因みに【仮魂】時間経過のデメリットが解消されている。

ファミルの家
ファミルの家は中心に玄関兼リビングがあり、左右に廊下が続いています。そして、この廊下に部屋やトイレなどが設置されているという作りになっています。

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