最強になって10日で力を失った   作:✛パグだフル✛

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知らない間に軟禁されていた(汗)

☆☆☆

 

一時間ほどフォージとユーリのおままごとに付き合った所で、ユーリは疲れて眠ってしまった。

因みにおままごとの間、俺はずっと二人の子供として過ごすことになった。

 

因みに、開始から45分辺りでようやく喋ることが許された。

あと少し、赤ちゃんのロールプレイングの時間が長かったなら、開けてはいけない扉を開けてしまう所だった。……非常に危ない所だった。

俺は顎から滴り落ちる冷や汗を右手の甲で拭う。

 

一連の行動を見ていたフォージは俺がユーリに付き合わされて疲れ果てたのだと勘違いし、謝ってくる。

 

「ごめんね。ユーリ、年上に憧れているみたいで。」

「ははは、別に気にしていないよ。俺が言いだしたことだから」

 

決して、決して五歳の子供に新しい性癖を植え付けられそうになったとは言えない。

俺は気にしていないという風を装い出来るだけ余裕のある笑みを浮かべる。

しかし、俺のありきたりな返答にフォージが固まる。

 

何か不味いことを言っただろうか?

失礼に当たることは言っていないと思うが……。

 

「どうかした?」

「え、い、いや、ポデスタって僕って言ってなかった?」

 

そこで俺は一人称を変えるのを忘れていたことに気づく。

赤ん坊の演技から解放されたことで気が緩んでしまっていた。

不味いな。

ここで不審に思われるのは避けなければ………。

 

「あはは、さっきは緊張してて………。」

 

この良い訳は苦しいか?

ただ、流石にこの一瞬で完璧に相手を欺ける言い訳を捻りだすことは出来なかった。

言霊術(リンガ)】さえ使えればフォージ相手ならこの良い訳で十分やり過ごせるが、ファミルが近くにいる場所での魔法発動は出来るだけ避けたい。

 

何とか、純粋な話術だけでこの場を切り抜けねば。

 

「そ、そうなの?」

「うん、実は俺、大人が怖いんだ。………理由はあまり言いたくないんだけど………」

 

フォージは聡明な子だ。

これだけで、()()()()()()()()()()()()()、勝手に察してくれるだろう。

 

実際、俺の話を聞いたフォージは一瞬目を大きく見開いた後に、申し訳なさそうに頭を垂れる。

よし、良い子だ。これなら、強引に話題を変えて今回のことは有耶無耶に出来るだろう。

俺はそう考えていたのだが、フォージは勢いよく顔を上げると俺の両肩に手を置く。

 

「大丈夫、大丈夫だよ。ここにはポデスタを傷つける人はいないから」

「う、うん」

 

これは少し予想外だな。

初対面の印象からフォージは気弱で余りこちらの事情に深く突っ込んでこないと思っていたんだが、随分と親身になって俺を気遣ってくる。

まぁ、ここには孤児が集まっている。

両親や周りの大人に危害を加えられてここに来た子供もいるのだろう。

それか、フォージがそう言う子供なのか。

まぁ、あまり重要なことでは無いか。

興味本位で探る内容でもないし、ここで話を切り上げて部屋に帰るとしよう。丁度【土家守】も帰って来ていることだしな。

 

「それじゃあ、ユーリを部屋に帰したら、俺も寝ることにするよ」

 

俺はユーリを背負うとフォージの部屋を出ていく。

俺を傷つける人間はいないか。

ファミル以外の人間はそうかも知れないが、ファミルは果たして俺の敵にならないのか……俺も人のことは言えないが、一度でも人を殺した人間は頭のネジが外れるものだ。

倫理観が狂うとでも言えばいいのか、目的の為に手段を選べなくなる。

いや、選択肢の中に常に殺人が入っている状態になる。

 

まぁ、俺は魔族だし、元々人類の敵な訳だから別に良いんだが。

ファミル、お前は一体何のために人を殺したんだ?

何のためなら人を殺せる。

 

俺はそれを知らなければお前を信用することは出来ない。

 

「ポデスタはいい子だね~。」

 

背負っていたユーリが寝言でそんなことを言ってくる。俺はその言葉に苦笑してしまう。少なくともお前たち人類からすれば俺という存在は良い子でも何でもない。

それこそ、両手で数えきれない程の人間を殺してきて、その癖自分の目的の為にお前たち人類を利用しようとしているんだからな。

 

☆☆☆

 

ユーリを部屋に帰して来た俺は与えられた部屋に戻り、第六感を研ぎ澄ませる。

部屋の中にも外にも【土家守】以外の使い魔はいない。

ファミルもアルスもレニスもリッカも近くにいない。

 

問題ないな。

 

「出てこい【土家守】」

 

俺が声をかけるとベットの下から、八センチ程度の茶色い家守が姿を現す。

家守は俺の足元まで来ると、形を失い砂へと帰る。しかし、ただ、砂に帰った訳ではない。

俺の足元には砂で出来た文字が記されていく。

 

内容は『部屋内部に不審な物品はなし。また、ファミル自身にも怪しげな行動なし』

というものだった。

 

元々、狩人である以上、血痕の着いたものなどがあったとしても不思議じゃないため、部屋に置かれている道具に決定的証拠となりえるものはないと思っていたが、本人にも不審な行動は無いか………。

 

それとも、俺はファミルが何らかの犯罪に関与しているとみていたが、実は野盗を相手にした正当防衛なのか?

 

ただ、狩人が狩るのは基本的にモンスターであり、野盗などを相手にすることは無い筈だ。

勿論、野盗側から襲ってきたのであればその限りではないが、ファミルの実力からして野盗相手に命を取るまでしなくても良い筈。

 

それなのに、命を奪った。

私怨か?ただ、感情に任せて命を奪うような苛烈な性格の人間に子供達が懐くか?

それなら、巧妙に自分の本性を隠し通せる人間と見た方が妥当だ。

 

やはり、ファミルが何らかの犯罪に関与していると見るのが自然か。

調査は継続だな。

 

俺は、そう思いながらもベッドの中に入る。今日はもう遅いし、行動は明日からだな。

子供の体ということもあり疲労も相応に溜まりやすい。

俺は目を瞑り、眠りにつく。

 

☆☆☆

 

草原の中のような青臭い匂い。

いや、それを何倍にも濃縮したような、有体に言えば草を磨り潰した時にする体に染みつくような濃縮された草の匂いに俺は思わず目を開ける。

 

目を開けた先には眼鏡をかけたおかっぱ頭の少年、アルスが俺の肩を揺すっていた。

彼は俺が目を覚ますと、眼鏡のブリッジを持ち上げ溜息をつく。

 

「ようやく起きたね。これからはここで生活することになるんだから、もう少し早く起きてくれ。ユーリすらもう起きて朝食の準備を手伝っているよ」

 

どうやら、起きてくるのが遅い俺を起こしに来たようだ。

言い方に少し棘があるな。気難しいタイプなのか?

 

「そっか、ありがとう」

 

俺は笑顔を浮かべ、アルスに感謝の言葉を述べる。一応、俺はこの家に保護された子供であり、何よりも寝床とご飯を提供してもらっている。ならば、ここのルールに従うべきだ。

そして、彼はそのルールを俺に教えてくれようとしている。

 

少なくとも俺と一緒に生活することに反対していないのなら、俺も彼と上手くやっていく努力をするべきだ。

 

「分かればいいよ。君もここに来たばかりで分からないことも多いだろうしね。困ったことがあれば僕を頼ってくれ。」

「ああ、ありがとう」

 

うん、やはり悪い人間では無いのだろう。

ユーリのことは溺愛しているようだし、根っこの部分はお人好しなんだろう。

 

俺は起き上がると靴を履き、一足先に部屋の外に出て行ったアルスを追う。

アルスを追った先は当然ながらリビングだ。

リビングにはアルスが言っていたようにユーリが食器を並べるのを手伝っていた。

 

次に俺の視界に入ったのは昨日かなりの毒舌を振るっていたリッカの姿だった。

彼女は昨日同様回復魔法の練習をしている。

 

しかもどうやら今練習している魔法は七天魔法【生命の花粉(アニマ・ポ-レン)】のようだ。

魔剣鍛冶師の才や魔法料理の才など稀有な才能の持ち主がいたため、そこまで印象に残らなかったが、人間がこの歳で水属魔法(メルクリウス・マギア)を練習しているのは凄い事なのではなかったか?

なんせ、水属魔法(メルクリウス・マギア)を習得しているということは当然、火属魔法(マルス・マギア)までは習得しているということだ。

 

彼女は人類の中では一人前の治癒魔法使いということになる。

 

やはり、ファミルは奴隷商に売り捌くためにこの家の人間に高度な教育を施しているんじゃないだろうか。

 

俺がジッとリッカを見ていたからだろう。彼女は困惑したように俺の方に向かってくる。

 

「あ、あのどうかされましたか?」

「いや、回復魔法を使えるなんて凄いなって思って」

「え?……ええ、ありがとうございます。皆さんのお役に立ちたくて」

「そっか、頑張ってね」

 

何だ?今のやり取りに何故か違和感を抱いてしまう。

その原因を探ろうとした所で、俺達はレニスに呼ばれてしまう。

 

どうやら、もう朝食のようだ。

 

俺達は席に着く。

今日の朝食はパンとベーコンエッグ、そしてじゃがいものスープだった。

ベーコンエッグのベーコンは非常に肉厚で食べ答えがあった。

ジャガイモのスープもデンプンのとろみと丁度いい塩味がマッチしていてとても美味しかった。

 

それにここの家、なんとパンも柔らかい。

 

 

夢中に食べ物を口に入れ、いつの間にか皿は空になる。昨日と同じだ。

魔王時代の方が良いものを食べていた筈なのに、おかしなこともあったものだ。

あの頃は何を食べても味がしなくて、どれだけ凝った料理でもただ胃の中に収めるだけの日々だった。食事を楽しいと思える日がまた来るなんて……これは間違いなくレニス達に会えたからだな。

 

彼女たちに何かあった際は力になろう。

一宿一飯の恩だ。

いや、今日で二食になったけども。

 

取り敢えず、目下のところはファミルについてだな。

 

俺はファミルの一挙手一投足を見逃さないように注意深く観察する。ファミルはその様子に気づいていないようで、普通に食器を片している。

いや、ファミルだけではない。他の皆も片し始めている。

片づけていないのは俺だけだ。そのため、急いで食器を片づける。

 

次は何をすればいいんだ?そう思い後ろを振り返るとレニス達はまた、席についていたので見様見真似で席に着く。

 

朝の朝礼でもあるのだろうか?

俺がそう思ってジッとしていると、レニスは大きく息を吸う。

 

そして、溜めた息を言葉に変換する。

 

「今日はお使いに行こうと思います。行きたい人はいますか‼」

 

その問いにフォージとユーリは大きく手を上げる。

やはり、この歳の子供は外へのお出かけに無条件に喜ぶものなのだろうか?

それに反して、アルス、リッカは手を挙げずに事の成り行きを見ている。

 

「……うん、いつも通りフォージとユーリだけね。一応聞いておくけどリッカとアルスは良いの?」

 

レニスの言葉にユーリは気まずげに顔を逸らす。

反対にアルスは堂々と首を左右に振る。その仕草はもうお使いで喜ぶ歳じゃないと言外に伝えているように見えた。

 

しかし、普通、錬金術師なら小まめに市場のチェックはしておきたいんじゃないだろうか?

市場には貴重な錬成素材が並んでいることも珍しくない。それこそ、買えなくても、新たな魔法具のインスピレーションを得るためにも出向くべきだろう。

その点がどうにも気になってしまう。

 

「あの、アルス、市場行かなくても良いの?珍しい物売ってるかもしれないし、色々見てみるのも楽しいんじゃないかな?」

「いや、僕はこの後リッカと回復薬の作成をするつもりなんだ。」

 

成程、元々この日は回復薬を作る予定だったのか。

それでも、折角市場を見れる機会があるなら、見た方が良いと思うが………まぁ、自分の立てた予定を大事にしたいという人もいるか。

 

俺はアルスの言い分に取り敢えず納得し、この話題を切り上げる。

 

ただ、レニスはそうではなかったのか、アルスの言い分に食い下がる。

 

「う~ん、回復薬の錬成は私も大切だと思うよ?でも、まだ在庫には余裕があるんでしょ?

なら二人とも一緒に買い物に行かない。

ほらリッカもアルスも全然外に出ていないでしょ?」

 

確かに健康上、太陽の光を浴びるのは大切だ。

特にこの家は外の光が全くと言っていい程入ってこない。こういう機会は大切にすべきだろう。

 

しかし、アルスは勿論リッカも首を振るう。

 

「いえ、私、人混みがあまり得意ではないので………それに、結界の中でならお外にも出ていますし…」

 

結界、態々家の周りに結界を張っているのか?何のためにそんな真似をしているんだ?

不思議に思い俺は小さく「結界?」と口に出してしまう。それを目敏く聞いていたファミルがこの家に張られた結界について教えてくれる。

 

「ああ、この家が建っている場所は結構危ない地区でな。皆の安全を守るためにファミルに結界を張ってもらっているんだ。

悪意ある第三者が侵入したり火を放ったり出来ないように外から中に入ることや、物を投げ込むことも出来ないようにしてある。魔法も勿論弾く。

後は、外が危険だから、俺以外は勝手に外に出れないようにして貰っているんだ。

外に出る際はアルスに結界の一部に穴を開けてもらう必要がある。」

 

出入りできない結界か。

治安が悪い地区であれば、そう言う措置も必要だろうが、そもそも何のためにそんな危ない場所に家を建てたんだ?

危ない地区ということは犯罪などが横行しているということだろう。

子供を保護する場所としては不適切だ。

 

そこを突っ込んで聞くことも出来るが、これはファミルの尻尾を掴む良い機会かも知れない。

俺は敢えて納得したいように両こぶしを胸の前に持って来て何度も首を縦に振るう。

 

「ここは凄い安全な場所なんですね」

 

更に思ってもいないがこの家の仕組みを持ち上げる。

不信感を抱いていると悟られないように出来るだけの演技はしておくべきだ。

 

この俺のヨイショに反応したのはアルスだった。

 

「結界も絶対じゃないさ。あまり過信しないでくれ。ま、僕たちにはファミル兄さんがついているから、何も恐れる必要が無いっていうのは事実だけどね」

 

アルスもまたファミルを信頼しているのか、ファミルについて話すときはどこか誇らしげだった。

この家の人間はファミルに全幅の信頼を寄せているのが嫌という程伝わってくる。

きっと、彼らにファミルについて尋ねても良い回答しか返ってこないのだろう。

 

胸の中の焦燥感が増す。

ファミルを敵に回すということは家の人間全員を敵に回すことに等しいだろう。

しかも、外には結界が張られていて出られないときた。

 

買い物の際に隙を見て逃げ出すのが最善手かも知れないな。

そんな俺の考えに気づいているわけでは無いのだろうが、ファミルが話を買い物へと戻す。

 

「っと、大分脱線したな。取り敢えず、今日の買い物はフォージとユーリの二人が参加でいいか?」

「あっ、ちょっと待ってください。僕も行きたいです。」

 

絶好の脱出機会を逃すわけにはいかない。

ピンと綺麗に腕を伸ばし、存在を主張する。

 

そんな俺の必死な様子が伝わったのか、レニスが俺の頭を撫でてくる。

 

「そっか、ポデスタ君も行きたいんだね。それじゃあ、ポデスタ君も一緒に行こうか」

 

視線の位置を俺に合わせるために膝を折り、優しげに微笑を浮かべるレニスに俺は刹那の間だけ視線を逸らしてしまう。

俺が外に出たい理由はこの家から脱出するためだ。それはきっと保護してくれて俺を受け入れてくれた彼女達への裏切りだろう。

しかも、ファミルが俺の予想通りの人間であった場合、俺は彼女たちを見殺しにすることになる。

 

 

よし、これで外に出れる、と言える程、薄情じゃない。

 

そんな俺の様子を不審に思ったのか、レニスは首を傾げる。

 

「どうかしたの?ポデスタ君」

「…ううん、大丈夫。それでいつお買い物行くの?」

 

……本当はいつ行くかよりも、話を逸らす意味の方が強い問いだ。

 

「うん?あっ、そうだ。そろそろ行かないとだよね?ファミル。」

「ああ、そうだな。午後のクエストに間に合わなくなる。」

「じゃあ、皆、準備したらすぐ行くよ」

 

 




用語紹介

【結界】
結界を発動するための起動装置とどの範囲を結界で覆うかを定める端末型、インク型の魔法具を用いることで張ることが出来る。
また、起動装置にはパスコードや魔力認識機能が組み込まれている上、起動装置周囲も結界で覆われていることが多く、解除には作り手や持ち主の力が必要になるケースが多い。もしくは力業で破るという手もある。
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