給食部特製弁当はいかが? 添加物いっぱいで腐らないよ〜! 作:ヘイロー壊れたんじゃないの~?
「フ〜カ! 目玉焼き追加で200個焼き上がりね! ここに並べとくよ」
「わかった! あと1900個! 頑張って!」*1
「うーん、今日も
「はい!」
俺、
日本人だったはずなんだけど、気づいたらこのキヴォトスって国? で女のコに生まれ直してた。
この国、日本語が通じるし、名前も日本人っぽい人が多いのはわかりやすくて助かったよ。
俺の生まれたゲヘナ県? も含めて国全体が治安の終わってる銃社会って知ったときは震え上がった。けど俺含めキヴォトス人にとって実弾が命に関わる事はめったにないとも知って困惑のあまり宇宙が見えた。
撃たれたときにアザが残る心配してるのは何なの? 命の心配しよ? ……って感じに。
まあ16年も過ごせばすっかり慣れたけど。
そんなこんなで俺、カワサキ16歳。現在高校2年生。
名前がカワサキだからって理由で選んだゲヘナ学園給食部*2でこうして毎日大体4000人前の調理にたった3人*3で励んでいる。
仕事キツいよ給料安いよ休み無いよ!
でもまあ、楽しいから全然オッケーなのよね。
うーん、これ、社畜の思考じゃないかなぁ?
「今日もなんとかなったわね、お疲れ様」
「あいよ~!」
「お疲れ様です」
なんとか昼時を乗り切った俺たちはみんなが立ち去ったあとの食堂でひと息つく。いつもの光景だ。
後輩のジュリが用意してくれた不思議な色のドリンク*4をグビグビ飲んで疲れを癒やしてる俺を部長のフウカが死んだ魚みたいな目で凝視してくる。内臓という内臓がビリビリしてきたと思ったら疲労が一瞬で全部消し飛ぶ素晴らしいものなのに、どうしてそんな目を……? まあ、飲んだらリラックスのしすぎで寝ちゃう人も多いんだけどさ。*5
これもいつもの光景。
「えーっと、今日の配達先は……」
ここからは少しだけいつもの光景とは変わってくる。
4000人分用意したと言っても、当然、毎日必ず4000人ピッタリが食べに来る訳じゃないんだよね。
作ったものの、無駄になっちゃうやつがどうしても出てくる。
3人前までなら俺たち給食部で消費しちゃえば良いんだけど、まあいつもそれよりだいぶ余る。
そのまま次の日に出しちゃう? って言ってみたらゴミを見るような目をされた*6ので、話し合いの結果弁当にして配達し遅めの昼食、あるいは夕食としてその日のうちに消費してもらおう、ということになった。
普段の味はそこそこ止まりなんて言われてる*7給食部だけど、弁当として届けられるとなるとそういうこと言われなくなるんだよね。不思議。
このまま弁当部になれば……うん。実質名前しか変わらないね。むしろ給食として食堂に並べればよかった分も全部配達しなきゃいけなくなるね。
給食の評判は諦めて配達に行こう。
「まずは風紀委員会に20コね~。早速行ってくるよ」
「うん、お願い」
風紀委員長のヒナは自分で弁当持ってきてるの見たことあるけど、今日は無いんだね。
行政官の痴女(名前忘れた)とかと一緒に遅くまで残ってるし、買いに行く時間も惜しいってところかな。
聞くところによるとゲヘナ県知事のキキキ大王*8の嫌がらせで仕事が増えてるとかなんとか。
万国共通なんだね、嫌なトップのいる組織って。
「ま、俺はいつも通り料理と配達やってられればそれでオッケーね〜! さてと、こっちだったっけ……」
「おうおうおうおう! ここを通りたければその荷物を置いて行ってもらおうか!」
「うーん、今日もゲヘナ!」
ほんの数分、中庭を出歩いただけで武装したスケバン集団にぶち当たる。それがゲヘナ。
さすがキヴォトス有数の治安の悪さを誇る所だね。なんでそんなもん誇ってるの? こわい。*9
「何をブツブツ訳の分からないこと言ってやがる! その荷物が風紀委員会に届けられる食料だってのは知ってるんだよ! さっさと渡せ!」
「耳が早いとかそんなレベルじゃなくない?」
何をどうしたらさっき受けた注文を外部が把握できるの?
イオリあたりが外で大声で注文した?
「へへ、やっぱりそうか! 引っかかりやがって!」
しまった、カマかけだ! 俺のバカ!
「それさえ奪っちまえば風紀委員長は飯抜き! こうして徐々に弱らせていけばいずれは限界がくるって訳よ!」
「委員の誰かが買い出しに行くだけだと思うけど……」
「奴らにそんな暇があるかよ!」
「無いかな……? 無いかも」
……うん、無いね。かわいそう。
だったら、せめて食事くらいはちゃんと摂っててほしいじゃない?
「そういうことなら、この弁当は渡さないよ〜! カワサキホットスペシャル!*10」
「おいそれ今どっから出した!? しまっとけるスペース無かっただrギャアアアアアアア!」
先頭にいたスケバンは近くの庭木ごと炎に飲まれて気絶した。
後ろにいた数人は何が起きたのか理解が追いついていないような顔で立ち尽くしている。格好の的だねぇ!
「さあどんどん行くよぉ〜! ウヒャヒャヒャヒャヒャ!」
「ウワアアアアアア!?」
「ちょっ、待っ……馬鹿やめろオイ!*11」
「コイツ! イカれてやがる!」
「来て! 風紀委員長!*12」
こうして、環境破壊は気持ちいいZOY! と変なペンギンが脳内で高笑いするのをBGMに、進路上の庭木とスケバンを火の海に沈めながら俺は風紀委員会の事務室へと進んでいった。
「……と、まあそんなことが道中あってね」
「そう」
「あ、その目玉焼きどう? 冷めても美味しい焼き加減をフウカと研究したんだよ〜」
「ええ、美味しいわね」
「それはよかった。フウカにも伝えとくよ〜」
無事に弁当を届けた俺は目の前でそれを咀嚼するヒナとおしゃべりに興じていた。
「ところで、あなたが1区画ごと全焼させた中庭の木だけど」
「……うん」
ただし俺は独房の中で、ヒナは鉄格子の向こうに机を置いてそこで弁当を食べている。
いやぁ、つい楽しくなっちゃって、俺が到着したときの風紀委員会からのお出迎えは銃口とセットだったよ。弁当が無事でよかった。
「植え直しの費用は
「本当? よかったぁ、これ以上部費が減ったらフウカが倒れるところだったよ~」
「……あまり困らせないであげて」
「うん、気をつけるよ」
よく美食研究会に攫われて涙目になってるし、負担を増やすようなことはしたくないんだよね……あ。
「どうしたの?」
「まだ配達残ってるんだった。早速迷惑かけちゃう」
「………………はぁ、仕方ない。一旦出ていいわよ」
頭痛をこらえるようにこめかみを押さえたあと、独房の鍵を開けてくれるヒナを思わず二度見してしまう。
「自分で言うのもなんだけど、いいの?」
「言い訳不能の過剰防衛ではあるけど、元はと言えば中庭で白昼堂々襲撃されるような警備状況が問題だった。風紀委員会にも責任はある」
その考え方は意識高すぎじゃないかな……いや、そういう口実か。フウカへの情を優先してくれたんだ。
どんな育ち方したらゲヘナでそんなに優しくなれるの?
ぜひとも熱中できる趣味か、良い相手でも見つけて幸せになってほしい。*14
「あくまで一旦。配達が終わったらちゃんと戻ってきてね」
「ありがとう、今度なにかご馳走するよ〜」
「そういう訳には……」
「いいからいいから。じゃあ行ってくるね」
「……ええ、いってらっしゃい」
収容所から飛び出す俺を見たイオリと痴女がギョッとした顔で立ち上がるが、まあまあ時間が押しているので足は止めない。
「コクちゃんまさか脱獄!? ……なわけないよな。委員長の目の前で」
「不可能ですね。出していただいたのでしょう」
「正解! 残りの配達終わるまでね~! じゃ、また後で!」
「あ、うん……委員長、最近あいつに甘くない?」
「ヒナ委員長はいつでも慈悲深いお方ですが?」
「ああ。アコちゃんに訊いたのが間違いだった……」
「どういう意味ですか?」
配達は無事に終わった。
風紀委員会の牢に帰る、とフウカに告げたら例の目で二度見された。*15
好評なら続きます。
続いた場合、次の配達先はどこにするかアンケートを置いときますのでよろしければ。
次の配達先は?
-
万魔殿
-
救急医学部
-
温泉開発部
-
美食研究会
-
シャーレ
-
便利屋68