給食部特製弁当はいかが? 添加物いっぱいで腐らないよ〜! 作:ヘイロー壊れたんじゃないの~?
「給食部だよ~! スタミナ弁当4人前お待ち!」
ゲヘナ某所。呼び出しのあった廃墟に到着した俺はとりあえず人の気配が無い崩れた壁に声をかけてみる。
すぐに返事は帰ってきて、物陰から鋭い気配を纏った3人組が顔を出した。もう1人はどっか行ってるのかな?*1
まあ気配だけで、話してみたらただのいいコたちなんだけど。
ちなみに戦ったら気配どおりめちゃくちゃ強い。ゲヘナだとヒナでも連れてこないと厳しいと思う。
「アル! 久しぶり~!」
「ええ、悪いわね、こんな辺鄙なところまで」
「アルのためなら矯正局にだって配達するよ~!」
「ちょっと! 縁起でもないこと言わないで!」
「あ、今のギャグよ、ギャグ」
「わかってるわよ!」
こうして俺が適当なこと言ってもアルはちゃんと全部反応してくれる。
大抵のコは俺の発言、半分くらいスルーするようになるんだけどね。
俺、いい友達持ったなぁ!
「相変わらずコクちゃんのギャグ、ブラック~」
「ムツキも久しぶり! あ、コレ頼まれてたデザートのプリンね。皆で食べて。もちろんサービスよ~!」
「ありがと、くふふ~」
「あら、いいわね!」
「社長、それ……*2」
「?」
「「シーッ」」
「……はぁ、なんでもない」
「そう?」
カヨコは一発で正体に気づいたみたい。まあ、俺とムツキだし? ウヒャヒャ!
さて、思ったより早く着いたから夕食の時間はちょっと先だね。配達も今日はここで最後だし、
「立ち上げた会社の方はどう? 儲かってる?」
「え、ええ…… 順調よ」
凄い冷汗。不調なんだな。
「この間も欠席届の偽物売ろうとしてたね」
「……そうね」
「俺、あれ買おうとしたんだけど、やめろ馬鹿! ってイオリにお尻蹴っ飛ばされてさぁ」
「風紀委員の目の前ならそりゃそうよ。何してるの」
「いやぁ、面目ない。ところで、他のコには売れたの?」
「……ゼロよ」
涙目だ……やっぱり不調なんだな。
「まさかこの廃墟が事務所なんてことは……」
「流石に無いわよ! ……普段はD.U.の事務所を拠点に活動してるわ。今日呼んだのは依頼で自治区に入ったし、せっかくだから、ってね」
「そっかぁ 頑張ってるんだね~。今日も依頼ってことは結構忙しい?」
「給食部も大概でしょ。1日で何人前作ってるのよ」
「4000だけど……」
「よんせん」
「うん」
「給食部のメンバーって確か……え? 3人で?」
「うん」
「毎日?」
「うん*3」
「?????」
宇宙猫みたいな顔になっちゃった……
まあ確かに死ぬほどキツいけどさ。
「アル様! 準備終わりました!*4」
「ええ、ご苦労さま」
「ハルカ! 元気そうで何よりね~!」
「コ、コクさん。お久しぶりです……」
暗くなってきた頃、どっか行ってたもうひとりも帰ってきた。
相変わらずアルのこと大好きみたいだ。まあアルと敵対以外で関わったコは大体そんな感じだけど、このコは特にね。
ところで準備って? とアルの方を向くと不敵に笑っている。
「こことは別の、近くの廃墟がブラックマーケットのとある極悪人の違法取引に使われてるの。中継所として。そこへ乗り込んでブツを強奪あるいは破壊。取引をぶち壊しにしてその極悪人の信用を地の底に叩き落すのが今回の依頼よ」
「訊いといてなんだけど、それ俺みたいな部外者に話しちゃっていいの……?」
「…………」
「オレ、ナニモキイテナイ。アル、ナニモシャベッテナイ」
「助かるわ」
ま、俺がたまたま友達のかっこいい所を窓の外から目撃しちゃうのは依頼人も気にしないでしょ。言わなきゃバレないし。
「……さて、そろそろ聞いていた取引予定時刻ね。行ってくるわ」
「あいよ、遠くからバッチリ見てるね~!」
視力は人並みだけど。
お、早速始まった。
カヨコの上に銃撃つアレ*5……遠くから見てる俺までビクってなるの、どういう原理なんだろう……
あ、ムツキが敵を思いっきり煽ってる。何言ってるのか聞こえないのに言われたら絶対怒るな、って分かるのすごいね。
ハルカはもう、なんかすごい。アレどうやったら止まるんだろうね。無難に落とし穴とか?
逃げようとした奴は頭にアルの狙撃受けて昏倒……あっという間に制圧しちゃった。
アルが窓から部屋に飛び込んで、倒れた敵になんか言ってる。多分かっこよく見える角度とか計算してるんだろうなぁ。敵からすれば絶望感すごそう。
「お疲れ~! バッチリみてたよ~!」
いやー、やっぱり強いね、アル達。ゲヘナ飛び出してやっていけてるのかちょっと心配だったけど。
そんな心配、逆に失礼だったね。
「飼い主に伝えなさい、ツケを払うときが来た……って」
「くそッ!」
上手くいって絶好調って感じのアルはブラックマーケットのヘルメットが解放されて逃げていくのを見送った後、まだ縛られてる受け取り側の生徒に目を向ける。
4人組のスケバン。
戦闘中はヘルメットと違ってほとんど反撃もできずやられっぱなしだったし、今も何というか、目が死んでる。
「……」
「んだよ、ヴァルキューレでも風紀でもなんでもさっさと突き出せばいいだろ」
「あれ~? 諦め早くな~い?」
「ちっ……仕事にしくじったんだ。もう行く当てもねえよ」
まあ、こんな仕事に手を出さなきゃいけない状況ってなると……うん。
よく見たら頬もやつれてる。ここ数日、ほとんど何も食べてないのかもしれない。
「……アル」
「そうね。いいわよ」
俺が言いたいけど言いにくかったことを察してくれたアルにお礼を言って最初の廃墟に走った。
置いといた弁当を持って戻る。本当はアル達の夕食だったけど、あのコ達にあげよう。
「一度くらい道に迷ったのが何よ。ゲヘナは自由と混沌の学園。そんなこと誰も気にしないわ」
「……そう、かな」
俺が戻ってくるとアルがスケバン達に声をかけて何とか励まそうとしていた。やっぱいいコだなぁ。
おっと、早く渡さなきゃ。
「そうそう、とりあえずこれでも食べて元気出しなよ~。給食部特製スタミナ弁当。添加物いっぱいで腐らないよ~!」
「おいそれ大丈夫なのか?」
「あ、今のギャグね、ギャグ! 本当は今日中、お早めにね~!」
「ははっ、なんだそりゃ」
ちょっとだけ元気を取り戻したのか、各々弁当をつつき始めるスケバン達。
「……ああ、なんだか懐かしい味だな」
「……こんなことになる前はよく食堂で給食食ってたっけ」
「うめぇ……うめぇよぉ……」
「おい泣くなって……しょっぱくなっちまうぞ」
最初こそ躊躇してたけど、今やスケバン達は一心不乱に弁当を掻っ込んでいる。良い食べっぷりね。用意した甲斐があったよ~。
そしてあっという間に弁当は無くなり、各々が食後のプリンに手を伸ばし……
あっ それ……*6
「ああ、本当にうめぇ……」
「………………ポエエエエ!?*7」
「おいどうした?」
「しっかりしろ!」
しまった! すっかり忘れてた!
「あちゃー」
「ちょ、ちょっとコク!? どういうこと?」
「アルごめん。あのプリン、ドッキリ用に1個だけ超激辛の奴が混じってたの、抜き忘れた」
「な、な……なんですってー!?*8」
「なんて酷いことしやがる……これがお前らのやり方って訳かよ!」
「悪魔! 鬼! ひとでなし! デブ!*9 サディスト!」
「許せねえ……よくもアタシらをここまでコケにしてくれたな」
「やばいよムツキ〜!」
「くふっ」
「大変なことを、あ、あんたたち……!」
「「「殺してやるぞ、陸八魔アル!*10」」」
武器を手に勢いよく立ち上がるスケバンたちを前に、アルは白目を剝いて口をパクパクさせたまま、隣でハルカがショットガンの発射準備をする音が聞こえるまで硬直していた。
ごめん。
「今……アル様を殺すと、言いましたか……!?」
うわっめっちゃこわっ! やる気になったヒナくらい怖い!
「ストップよハルカ! 流石にこれで返り討ちにするのはあまりにも……とりあえず逃げるわよ!*11」
「ア、アル様が仰るなら……」
「はーい、アルちゃんごめんね~☆」
「……仕方ない」
「ほとんど俺のせいだし、
「え、あ、わああああ! コクさん! その辺りにはさっき仕掛けた爆弾が……」
「へっ? ―――――*12」
スケバンとアルたちの間の道を塞ぐように炎を撒き散らした次の瞬間、なんかすごい音がしたと思ったところで一旦意識が途切れ、目を覚ましたら救急医学部室のベッドの上だった。
聞いた話によると匿名の通報で駆けつけた救急医学部が見たものは大量の爆薬によるものと思われる爆発で完全に瓦礫の山と化した廃墟に俺とスケバンたちが倒れている光景だったらしい。
匿名の通報っていうのはアルたちだね。気絶しなかったか、先に目覚めたかで対処してくれたみたい。
イタズラのつもりがかなり悪いことしちゃったし、今度人手が要るときは呼んでねってメッセージを送っておく。*13
取引さえ邪魔できればブツは破壊でも良かったから、依頼自体は達成したみたいね。そこだけは良かった。
ゲヘナ側のスケバンたちはめちゃくちゃ怒ってて、後日お詫びに持っていった弁当が受け取り拒否されてかなりヘコんだ。
諦めずに次の日も持っていったら恐る恐る食べてくれて、その次の日も持っていったら許してくれた。
もう仲良しだね~! 違法取引に関わってたのは死ぬまで誰にも話さないことにした。
仕事に困ってたみたいだから一応すすめてみたけど、給食部には絶対に行かないって言われちゃった。*14
残念。
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