「ありがとうございました」
カフェにいたお客さんが帰っていき今は俺以外誰もいない。
「そろそろバイト上がる時間か」
もう少しでバイト終わって帰れるぞ~
「幸人」
「うおっ!?」
いつの間に楽奈が目の前のカウンター席に座っていた。
「び、びっくりした~」
「いつ帰るの?」
「えっ?」
「いつ帰るの?」
なんだこいつ?俺の帰る時間聞いてどうすんだ?
「あともう少しでバイト終わるからもう少しで帰れるかな?」
「わかった」
楽奈はそう言ってぼーっと天井を見つめ始めた。なに?俺と一緒に帰りたいの?
「なぁ、楽奈。もしかして俺と一緒に帰りたいのか?」
「うん」
「いいけど…‥‥‥なんで?」
「気分」
気分なんだ……‥‥よくわからんな。
「お待たせー」
俺はバイト終え着替えて外で待っている楽奈と合流した。
「じゃあ、帰るか」
「うん」
楽奈と並んで帰路に着くことになった俺。まだ夕方とはいえ外はもう暗くなっていた。
「あ~寒い寒い」
早く春になんないかな?俺寒いの苦手なんだよね~
「石焼き~芋~」
「おっ」
この声は焼き芋屋さんの声だ。ちょうど腹減ってたし焼き芋食うか。
「楽奈、焼き芋食うか?俺が奢ってやるよ」
「食べる」
「オーケー、じゃあ買ってくるからここで待ってろ」
俺は楽奈を置いて焼き芋屋さんがいる方へ向かい焼き芋屋さんの車を停めて焼き芋を三つ購入する。
「まいどー!」
焼き芋屋さんのでっかい声を聞きながら楽奈の元に戻る。
「おーい、おまたs‥‥……‥‥あれ?」
楽奈のやつがいねぇぞ?
「あいつどこに行ったんだ………‥‥んっ?」
少し離れた先に楽奈が立っている後ろ姿を見つけた。あいつ、あんなところにいたのか。
「おーい、楽奈ー勝手にどっか行くんじゃねぇ…‥‥‥って、ん?」
楽奈の視線の先を見るとそこにはギターを弾きながら歌っている若い女の人がいた。
ストリートミュージシャンの路上ライブ見てたのかこいつ。
「(それにしてもギターの演奏も歌も上手いなこの人‥‥…‥‥)」
聴いてるお客さんは楽奈と俺しかいないのがなんか寂しいけど‥‥…‥‥
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪~>
演奏が終わりギターの音が止んだ。
「ふぅ…‥‥‥」
「上手い」
「えっ?あ、ありがとう!」
楽奈がお姉さんに話しかけ急に声をかけられ驚くお姉さん。
「上手でしたよ。途中からしか聴いてませんでしたけど」
「あっ、君もありがとうね!」
「お姉さんなんていう名前ですか?」
「私?私は赤木陽菜。プロのミュージシャン目指して仙台から上京してきたんだ」
お姉さん改め赤木陽菜さんは自己紹介してくれた。
「へぇ~いい夢じゃないですか」
「いや~そう言ってもまだまだだよ~私の演奏と歌聴き来てくれたお客さん今日は君たち二人しかいないし」
「そうなんですか」
めちゃくちゃよかったのにお客さん全然来ないなんてかわいそうだろうに‥‥‥‥
「あっ、よかったらこれどうぞ」
俺は焼き芋一つ陽菜さんにあげる。
「いいの?」
「はい。少し休憩しましょう」
焼き芋が冷めちゃうしちょうど三つあったからみんなで食べることにした。
「はふ、はふ、うめぇ~」
「美味い」
「焼き芋か~なんか久しぶりに食べたな~」
それぞれ焼き芋食べて感想を述べる。寒い日に外であったかいもの食うのは最高だぜ。
「陽菜さん、路上ライブはあとどれくらいやります?」
「う~ん、あと二、三曲やったら今日は終わりかな?」
「それなら俺たち手伝いましょうか?お客さんの呼んだりとか」
「そんな、悪いよ~そこまでしてくれなくても」
「いやいや、俺夢に向かって頑張っている陽菜さんの力になりたいんですよ。それに……‥‥‥」
「それに?」
「あいつが一緒に演奏したがってるみたいなんで」
楽奈はすでに焼き芋を食べ終えてギターケースからギターを取り出しスコアを見ていた。
「う~ん‥‥‥‥わかった!じゃあ一緒にやろう!」
「わかりました!じゃあ俺ビラ作りますね!」
焼き芋を食べ終え俺はノートのページを一枚破ってマーカーペンでささっと文字や簡易なイラストを描き近くのコンビニにあるコピー機でビラを多めに刷った。
「さぁさぁ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!今から天才ギタリストの赤木陽菜とゲストの要楽奈のスーパーライブが始まるよー!!」
俺は大きな声で宣伝し道行く人たちにビラを配っていく。
「わ、わぁ~すごい……‥‥‥!」
集まってきたたくさんのお客さんを見て驚く陽菜さん。
「二人とも、準備はいいか?」
「うん」
「いいよ」
「じゃあ、ライブスタート!」
俺は横に捌けると陽菜さんがマイクを使って喋り始める。
「初めまして!赤木陽菜です!プロのミュージシャン目指してます!今からこの子と演奏するのでよかったら聴いていってください!」
簡単な自己紹介をして一曲目の演奏が始まった。
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪~>
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪~>
この曲は俺たちがさっき聴いたオリジナルの曲だ。それにしても楽奈のやつ譜面少し見ただけで弾けるなんてやっぱすげーよお前。
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪~♪♪♪~♪♪♪~♪♪~>
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪~♪♪♪~♪♪♪~♪♪~>
おおっ‥‥‥‥フルで聴くといい曲だ。陽菜さんって作詞と作曲もできるのかよ。
「上手いね」
「そうね」
「隣の子もすごい」
お客さんから好評の声が聞こえる。いいぞ~もっと言ってやれ!
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪~>
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪~>
一曲目の演奏が終わりギターの音が止んだ。
<パチパチパチパチ!!>
「あ、ありがとうございます!一曲目は私が作詞、作曲したオリジナルの曲で…‥‥」
お客さんたちから拍手をもらい喜びながらMCをする陽菜さん。
「陽菜、次の曲」
「あっ、そうだね!じゃあ、次はカバー曲を演奏しまーす!」
楽奈が早く次の曲弾きたいと要求してきたので次の曲に移る。次は俺でも知っている有名なアーティストの曲のカバーか。
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪~>
<♪♪♪~♪♪♪~♪♪~>
いいぞ~お客さんもさっきより集まってきているしどんどんもりあげてしまえー!!
「次の曲で今日の演奏は最後です!これも私が作った曲で曲名は……‥‥」
最後の曲になり路上ライブ無事に成功し大盛況だった。
「すごかったな」
「うん」
ライブ終了後にスーツを着た女の人が陽菜さんに「うちの事務所に入ってみない?」誘われた。
名刺には有名な音楽事務所の名前が書いてあった。
「じゃあ、後日事務所の方に来てね」
「は、はい!ありがとうございます!!」
女の人にお礼を言う陽菜さん。よかったじゃん。
「二人ともー!やったよー!」
「良かったですね」
「夢みたいだよ~まさかあの事務所に入れるなんて~」
嬉し涙を浮かべる陽菜さん。プロミュージシャンへの夢を一歩進められたもんね。
「陽菜」
「なに?」
「CDまだある?」
「えっ?あっ、あるよ!」
ライブ後に陽菜さんの曲が入ったCDが欲しいというお客さんがいっぱいいてたくさん購入していってもう売り切れたかと思ったけどまだあったんだ。
「買う」
楽奈はポケットからくしゃくしゃで頭に猫耳とヒゲのラクガキがされた漱石さんを出した。こら、お金にラクガキするな。
「あっ、いいよお金は!楽奈ちゃんたちのおかげで今日のライブ盛り上がったし事務所にスカウトされたからそのお礼にあげるよ!」
陽菜さんはCDを二枚取り出し俺と楽奈に渡した。
「ありがとうございます」
「いっぱい聴く」
「うん!こちらこそ今日は本当ありがとうね!ライブ決まったら二人を招待するね!じゃあね!」
陽菜さんと別れ俺たちも家に帰ることにした。
「楽奈」
「なに?」
「お前って幸運を呼び寄せる招き猫みたいだな」
「うん」
今日はいいもの見れたしこいつと一緒に帰れて俺もいい気分だぜ。
楽奈ちゃんの中の人のイベント行ってみることをおすすめします!盛り上がりますよ!
CDもそん時にしか買えないから!!