ウソだ、僕を騙そうとしている……‥‥!
「ユキ仮面…‥‥‥」
「久しぶりだな、豊川祥子」
仮面と金髪のウィッグ、黒の陣羽織のような衣装を着た俺、ユキ仮面を見る祥子。
忘れている人や知らない人に説明しよう。祥子はこの時の姿の俺を別人だと思いしかも俺がユキ仮面のパシリやら奴隷みたいな扱いを受けていると思い込み敵視している模様で俺を助けるために幾度と勝負を仕掛けて俺が全勝するということになっている。
ユキ仮面になれば祥子と話すことができると思いこの行動に移ったのだ。
「私に何か用でも……‥‥?」
「なに、久しぶりに会いたくてね」
「私は会いたくないですわ…‥‥‥」
「そう言うな。ライバルとしてまた勝負しようではないか」
「今は勝負する気はありませんわ……‥‥」
「そうか……‥‥」
よし、ユキ仮面の姿なら逃げずに会話することができるな。
このまま話続けよう。
「飲むか?」
ポケットから先程買っておいたおしるこ缶を祥子に渡す。
「いりませんわ…‥‥‥」
「そうか」
さすがにおしるこは季節的に早かったか?
「……‥‥‥ユキ仮面」
「なんだ?」
「あなたに頼み事するのは嫌ですが一つお願いしてもよろしくて?」
「いいだろう。どんな事だ?」
「‥‥…‥‥幸人さんに『期待を裏切ってしまい申し訳ありません。私はもう二度とあなたとお会いしません。お元気で』と伝えてください」
「!!」
祥子、お前‥‥…‥‥
「それはどういう事…‥‥‥」
「ではよろしくお願いしますわね。ごきげんよう‥‥…‥‥」
「あっ、おい!待て!」
祥子は立ち上がり片腕を抑えながら行ってしまった。
「祥子……‥‥」
俺は祥子の後を追いかけることをしなかった。
あいつそこまで自分を追い詰めていたのか‥‥…‥‥
「はい、お待ち」
次の日、この日はRiNGでバイト。俺は楽奈の注文した抹茶パフェと睦‥‥‥‥今はモーティスか。モーティスにはチョコソフトをたっぷり乗せた幸人スペシャル(非メニュー商品)を提供した。
「美味そう」
「わぁ~すご~い!まるでウn」
「それ以上言うな。大人しく食べろ」
「は~い♪」
飲食の場でそのワードを言ってはナランチャ。
「……野良猫に懐いてる」
「私、三日三晩一緒だったのに」
少し離れた席で二人の様子を見るMyGO!!!!!の面々。
俺がバイトない日にモーティスをここに連れてきて楽奈が睦とモーティスの二つの人格があることを見抜いて睦の方が眠っていることも気づきそれからモーティスは楽奈に懐いているとのこと。
三日も軟禁されてたのに手のひらを返したように別の人に懐いたことにやや納得がいかないようにそよが愚痴を零した。
「ねぇどうするの? このまま放っておけないよね?」
「ムジカのやつらは見放してるみたいだけど」
「なにそれ、どこ情報?」
「海鈴アイツ」
「え~、あ、ティモリス?」
「そうだよ」
立希と海鈴って同じ学校同じクラスだったもんな。
それにしても祥子以外のメンバーも見放してるのか…‥‥‥これは俺達で支えてやらないと。
「ギター弾く」
パフェを食べ終え楽奈はギターを構えてチューニングする。
「わぁ……ボロボロ」
モーティスはそんな彼女のギターに目を輝かせる。まぁ、ビンテージ物に目を光らせる気持ちはわかる。
「やる」
チューニングを終え自由気ままに楽奈はギターを弾き音楽を奏でる。
「……歌ってる」
モーティスは楽奈の演奏を聞き自身の魂を揺り動かした。
「睦ちゃん……? 睦ちゃんが起きた! 睦ちゃん!」
突然、睦が起きたと声を上げるモーティス。
どうやら楽奈の演奏が睦を眠りから覚まさせたようだ。ナイスだ、楽奈。
「よかった~! 本当に死んじゃったかと思った……睦ちゃん?」
「んっ?」
何か様子が変だな?
「睦ちゃんずっと寝てたんだよ? お医者さんに相談しても起きなくて大変だったんだから……でも、これで睦ちゃんがギター弾いてくれればバンド元に戻るね……え?」
「どうしたんだろう?」
「さぁ?」
「ダメ! 睦ちゃんは何にも解ってない!」
「……どういうこと?」
「今、睦ちゃんって‥‥‥‥」
恐らく精神世界みたいなところで睦とモーティスが言い争っているのだと思われる。
そのままモーティスはカフェスペースを出て行ってしまう。
「お願いだから、祥に会わせて」
「ダメ!」
「二人と話がしたいの」
「ダメだって言ってるでしょ! そんな睦ちゃ──っ!」
「嘘!?」
「睦!」
「睦ちゃん!」
言い争いに気を取られて、階段から足を踏み外してしまう。
だ、大丈夫かおい!?
「あっ、立ったぞ!」
「無事みたい!」
「よかったよかった」
「呑気に言ってる場合!?」
「あっ、外に出て行った!」
「えっ?」
モーティスは立ち上がりそのまま外に出て行く。
「大っ嫌い! 二人に沢山傷つけられたこと、忘れたの!?」
「違う……! 」
「弱ってる睦ちゃんを追い込んで壊したのは祥子ちゃんなんだよ?」
「祥にあんな顔…‥‥‥させたくなかった。祥は私が守らないといけないから‥‥‥‥」
「だから、私が代わりに!」
「どうして壊したの?」
「睦ちゃんが会いたくても、祥子ちゃんは違う! だって一度も会いに来なかったんだよ!?」
「CRYCHICは壊れたから、今度はちゃんとやりたかったのに…………もうムジカしか、祥にはないのに」
「祥子ちゃんは反省もしてないし何も変わってない! 会えばまた傷つけられるに決まってる! お願いだから解って!」
「……会いたい」
RiNGの外で睦とモーティスの言い争いが行われ、通行人が有名人である睦に気付いて何かの撮影かと思いスマホを構えて撮っていく
「っ!!」
「そよ!?」
そよが走り出しモーティスに抱きついて庇うようにした。
「撮らないでください! 撮らないでください!」
睦とモーティスを守るために行動したそよ。しかし野次馬共は撮影をやめない。しっかたない、俺は二人を守るため悪になってやろう‥‥‥…‥‥
「大丈夫だから……大丈夫」
モーティスちゃん…‥‥睦ちゃんを助けるため壁になる私。
けど通行人の人たちの撮影は止まらない。
「(誰か…‥‥‥助けて!)」
そう願ったその時
「なーっはっはっはっはっはーーーー!!」
「えっ?」
聞き覚えのある声がして声のする方を見るとそこにはクワガタ虫の頭の被り物を被り赤いマントを羽織り黒のTシャツで『邪悪の王』と白い文字が書かれた物着て顔は黒く塗って手にはトゲが付いたさすまたを持った幸人君がいた。
「われの名は邪悪の王!ユキ!!恐怖しろ! そして慄け! 一切の情け容赦無く、一木一草尽く!この世界を支配してやる!!」
邪悪な笑みを浮かべそんなセリフを言い野次馬の人達の方へ向かった。
「こんな小娘を撮るよりこの俺様を撮れーーー!!クワクワクワクワーーー!!」
「きゃあああああああ!!」
「変質者よー!!」
「来ないでーーー!!」
幸人君はさすまたを振り回しながら人々を追い払っていく。
「そよ、今のうちにモーティスを中へ連れて行け!」
「う、うん…‥‥行こう、モーティスちゃん」
私はモーティスちゃんを連れてRiNGに戻ることにした。
「いたぞ!あいつだ!」
「そこのお前!何をしている!」
「やべっ!!」
騒ぎを聞きつけた警察の人たちがやってきて幸人君はものすごいスピードで逃げて行った。
さすがにやり過ぎよ……‥‥‥
「一時間目は確か‥‥‥…」
私は授業の準備をしているとクラスの方々がこちらに近寄ってくるのが見えた。
「豊川さん、おはよう」
「あのさ、これ知ってる?」
「えっ?」
クラスメイトの方にスマホの画面を見せてもらうとそこにはRiNGの前で睦とモーティスのやり取りをしている様子が映し出された動画が再生されていた。
「この子、睦ちゃん……だよね?」
「サキ、って豊川さんのこと?」
「この一人芝居って、Ave Mujicaのパフォーマンス?」
「っ!?」
私は何も言えなかった。睦、まさかこんなことになっているなんて…‥‥‥!
「あっ、それでこの後に変質者が出たんだよね?」
「そうそう!これなんだけど……‥‥」
次に再生された動画は頭にクワガタの頭の被り物を被りさすまたを振り回して野次馬を追い払う幸人さんの姿が映し出されたものだった。
「(幸人さん…‥‥!もしかして睦を庇うために‥‥‥‥!?)」
恐らく睦とモーティスのやり取りをなにかの撮影だと思い撮影していた野次馬の方々を追い払うためこんな姿になって睦から注意を逸らすためこんな行動をとったのだと思われますわ。
「っ!!」
「あっ、豊川さん!?」
私は動画を見て耐え切れず教室を飛び出した。
「はぁ…‥‥はぁ‥‥‥‥」
教室から少し離れた階段の前で足を止める。
失って壊れても忘れても、過去という形になって私に襲い掛かってくる。
世間は未だムジカを忘れない、忘れてはくれない。それどころか復活の兆しだと感じ無意識に私に襲ってきますわ。
「睦……私は…‥‥私がいなければ……」
睦を壊してしまったのは間違いなく私…‥‥‥もう、どうやっても元に戻すことはできませんわ‥‥…‥‥
「祥ちゃん」
「あ……」
顔を上げると階段の踊り場に燈と愛音さんがいた。
「睦ちゃんが……睦ちゃんが、会いたいって…‥‥」
「ねぇ、睦ちゃん大丈夫なの? ムジカ復活とか言われてるけど、ヤバいよね?」
「睦ちゃん‥‥‥‥CRYCHICは壊れたから、今度はちゃんとって……祥ちゃんには、ムジカしかないから…‥‥‥」
「私には…‥‥‥何を言ってるのか解りませんわ」
「え……?」
私はは目を逸らしそう呟いた。今の私には過去を見ることも未来を見ることもできなかった。だから全てなかったことにすることにした…‥‥‥
「CRYCHIC? Ave Mujica? そんなもの知りません」
「でも、睦ちゃん」
「睦など‥‥‥‥知りません」
「待って祥ちゃん!ゆーくんも祥ちゃんのこと‥‥‥‥!」
「幸人さん……‥‥そんな方存じませんわ…‥‥‥」
私は逃げるように二人の前から去った。
幼馴染も思いを寄せていた相手も忘却へと葬り去ってしまった‥‥…‥‥
「……野良猫のやつ」
今日はMyGO!!!!!が次のライブのために練習でスタジオに集まっていて俺は準備の手伝いでいる。立希はスマホを見つめ、楽奈が来ないことに腹を立てている。いつものことじゃんか。
「‥‥…‥‥」
するとそよが入ってきた。けどその顔はいつもと違う気がした。
「ちょっと、遅刻なんだけど?」
「ごめん‥‥‥‥ねぇ、練習前にちょっといい? 祥ちゃんのことなんだけど……」
「祥子の?」
「うん。これ見て」
俺たちはそよのスマホの画面を見る。そこには豊川グループ傘下である豊川地所が土地の所有者を装って他者の土地を勝手に売却し代金を騙し取り詐欺被害に遭ったというネットニュースの記事だった。
「168億? 168億!?」
その被害額の数字を見た愛音は目を一層大きく見開いた。168億って‥‥‥‥温玉付き牛丼何杯食えるんだ?
「何度も言うな……豊川グループって祥子の?」
「日付を見て」
「……これってCRYCHICのライブの‥‥‥‥」
日付を見てみるとそれはCRYCHICの初ライブの日と同じ日だった。
「バンド辞めるって言ったのも、私たちに言えない事情があったのかも…‥‥」
「……マジか」
「えっ?どういうこと?」
「祥ちゃん、ライブにお父さんも招待していたんだと思う。けど、お父さんが豊川地所の社長という立場を追われて、豊川家からも追い出されていたことをライブ後に知って私たちに迷惑かけないように私たちとも連絡取らずに月ノ森も出てそしてCRYCHIC脱退して…‥‥‥」
「…‥‥…‥‥」
そんなことがあったのか‥‥…‥‥くそっ、なんで相談してくれなかったんだよ。
「あれって……そういうことかぁ」
「何?」
「祥子ちゃん、CRYCHICもAve Mujicaも知らないって」
「……は?」
「なに?」
「睦ちゃんのことも、睦など知りませんって……ゆっきーのこと存じないって…‥‥‥でも解るんだよね、無かったことにしたい気持ち、祥子ちゃんにもきっと‥‥‥‥」
「──本当に祥ちゃんが言ったの?」
「え?」
「祥ちゃんが本当にそう言ったの!?」
「えっと…‥‥う、うん…‥‥」
「っ……‥‥!」
そよの怒りの内側から溢れ出してくるのがわかる。俺だって祥子に言いたいことがたくさんある。
次会う時はちゃんと腹割って話そうぜ祥子。
次回、そよ・ザ・デンジャラスとユキ仮面、動く!!