まいごびより!   作:ムツヒロ

73 / 99
今回でCRYCHIC編完結です。
あの回はほんと良かったですね。


Post nubila PhoebusⅣ

「ありがとうございました~」

 

 

俺はコンビニで買い物を済ませ外に出た。

睦の家に行ってから数日が経ちあれから祥子とは会っていない。

 

 

「(大丈夫かなあいつ?)」

 

 

トークアプリでサブで使ってるアカウントをユキ仮面用にして登録させたはいいけど最後のやり取りで『睦と向き合います。ご心配なく』と返事が来てから連絡がないのだ。

少し心配だな‥‥…‥‥

 

 

<ピロン!>

 

 

「んっ?」

 

 

メッセージが届いていた。送り主は睦、モーティスからだ。

 

 

「なになに?『幸人君助けて!祥子ちゃんが毎日家の前に来ているの!追い払って!!』マジか‥‥‥‥」

 

 

俺は急いで睦の家に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いた」

 

 

睦の家の近くまで来て物陰から様子を見るとモーティスの言っていたとおり祥子は家の前でしゃがんで座っていた。

 

 

「あいつ、あれから毎日来てるのか‥‥‥‥」

 

 

中に入らず外でああやって会ってくれるまで待っているのか‥‥…‥‥

 

 

「……‥‥‥よし」

 

 

俺はカバンからユキ仮面用の衣装やマスクを取り出し身につけて祥子の元へ近寄る。

 

 

「お嬢さん、お隣いいかな?」

 

 

「?あっ…‥‥ユキ仮面」

 

 

俺は祥子の隣にしゃがんで座った。

 

 

「何しにきたんですの?」

 

 

「なに、差し入れを持ってきたのだよ」

 

 

コンビニの袋から唐揚げの入った袋を出して祥子に差し出す。

 

 

「食べるか?」

 

 

「い、いえ、いりませ<グゥ~>…‥‥‥」

 

 

「遠慮するな。それに買いすぎて困っているんだ。助けると思って食べてくれ」

 

 

「‥‥‥‥では、いただきますわ…‥‥‥」

 

 

祥子はからあげの入った袋を受け取り封を開けて一口食べる。

 

 

「……‥‥‥意外と美味しいですのね」

 

 

「だろ?」

 

 

ノーソンのからあげさんは美味いからな~

 

 

「ほら、飲み物もあるぞ?」

 

 

「ど、どうも……‥‥」

 

 

お茶の入ったペットボトルも渡す。揚げ物食ったら喉も乾くからな。

 

 

「………‥‥」

 

 

「……‥‥‥」

 

 

沈黙が続く。今日はやけに大人しいな祥子のやつ。

 

 

「……‥‥ねぇ、ユキ仮面」

 

 

「なんだ?」

 

 

「あなたは今……‥‥お会いしたい方とかはいませんの?」

 

 

「会いたい人?」

 

 

突然そんなことを尋ねられた。

 

 

「うむ‥‥‥‥いるな」

 

 

「どんな方なんですの?」

 

 

「そいつは一人でなんでも背負ってプライドが高くて誰にも助けを求めようとしなくて苦しんでいてな。俺はそんなあいつを見捨てることができなくて今すぐにでも会って力になりたいと思っている」

 

 

「そうですの‥‥…‥‥」

 

 

「君にはいるのか?」

 

 

「ええ‥‥‥‥まぁ…‥‥」

 

 

「それは藤田幸人君のことかな?」

 

 

「……‥‥‥そうですわ」

 

 

祥子が今会いたい人物は俺のことだった。

 

 

「少し前に彼の自宅であるマンションまで来ましたわ。けど、会う勇気がなく帰ろうとした時に彼が来てくれたのですが私は逃げてしまいましたわ…‥‥‥」

 

 

「……‥‥…‥‥」

 

 

「けど、今の私はもう逃げたりしませんわ。睦の件が解決したらちゃんと幸人さんともお会いして謝ると決めましたので」

 

 

祥子の決意を聞く。

今の祥子は以前の祥子とは違うようだ。

 

 

「そうか、お互い会えるといいな」

 

 

「そうですわね……‥‥」

 

 

「‥‥…‥‥豊川祥子」

 

 

「なんですの?」

 

 

「お互い今までに失った物、得られなかった物がたくさんある。けど、俺たちはまだ取り返せる。命あればいつだって…‥‥‥」

 

 

俺そう言って袋からアンパンを出して二つに割って片方を祥子にあげた。

 

 

「そう思わないか?」

 

 

「……‥‥‥そうですわね。生きてれば取り返すことだってできますわね」

 

 

祥子は微笑みながらアンパンを手に取り一口食べる。

 

 

「あなたから幸人さんを取り返すのもそうですし」

 

 

「はは、そうだな」

 

 

俺をユキ仮面から救う目的は変わらないんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで変態仮面まで来てるの!?」

 

 

窓から家の前を見ると祥子ちゃんとユキ仮面がいるのが見えた。

 

 

「幸人君、早く来てよ!あの二人を追い払って!!」

 

 

幸人君が来るの今か今かと待つ私。私の味方はもう彼しかいない。

 

 

『‥‥‥…モーティス』

 

 

「睦ちゃん?」

 

 

『お願い、祥に会わせて……‥‥』

 

 

「……睦ちゃんのわからず屋、何回言えば解ってくれるの? 意地悪してるわけじゃないんだよ?」

 

 

睦ちゃんが起きて祥子ちゃんに会いたいとまたお願いしてくる。

肉体の主導権を握っているのは私だけど、少し前から睦ちゃんの人格が段々と出てくるようになってきた。

そうなったら私は消滅、死んじゃうかもしれない!

 

 

『祥に会わせて』

 

 

「会ったら睦ちゃんが悲しむの!傷つくの!だから守ってあげてるんだよ!?」

 

 

『……祥、ずっと立ってる』

 

 

「好きで立ってるんでしょ?」

 

 

「モーティス、お願い……」

 

 

「もう、しゃべらないでよ……嫌なことしか言わないんだから、黙ってて!!」

 

 

「でも……」

 

 

「やめてよ」

 

 

私はは必死で抵抗した。

これ以上出てこないでよ…‥‥‥

 

 

『それに、ユキ仮面は幸人だし……‥‥幸人にも会いたい』

 

 

「はぁ!?あの変態仮面が幸人君!?そんなはずないでしょ!!」

 

 

睦ちゃんがユキ仮面が幸人君だと言い張る。

そんなはずない!幸人君があんな自販機と自販機の間に挟まってコーヒー飲んでそうな変態仮面なはずない!!冗談言うのもいい加減にしてよ!

 

 

『祥に……幸人に、会いたい…‥‥‥』

 

 

「やめてやめてやめて、やめてーーーーーーーーッ!」

 

 

私は錯乱し、化粧台の鏡に分厚い本を投げつけ割ってしまった。

しかしその隙をつかれて肉体の主導権を睦ちゃんに奪われてしまった。

しまった‥‥……‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……祥!」

 

 

「睦……!?」

 

 

祥子と談笑していると家からモーティス…‥‥‥いや、あれは睦だ。

睦が家から飛び出してきた。

 

 

「祥…‥‥‥!」

 

 

「睦‥‥‥‥!」

 

 

お互いやっと会えたことに喜びシャッター越しで抱き合う二人。

 

 

「かはっ!?」

 

 

祥子は突然睦から離れお腹を押さえて蹲った。

 

 

「触らないで!」

 

 

再び人格の主導権がモーティスに変わりどうやらシャッター越しから祥子の鳩尾に腹パンを食らわせたようだ。

 

 

「豊川祥子!大丈夫か!?」

 

 

祥子の心配をして駆け寄ろうとするが

 

 

「来ないでください!」

 

 

俺を止めながらフラフラと立ち上がる祥子。

 

 

「私は大丈夫ですので…‥‥‥」

 

 

腹パンされても睦と向き合おうとする祥子。

 

 

「…‥‥‥違う! 私は‥‥‥‥!」

 

 

「睦……!」

 

 

さすがにやり過ぎたと思い戸惑うモーティス。祥子はまた抱きしめる。

 

 

「よかった…‥‥やっと…‥‥‥やっと……!」

 

 

「っ!?」

 

 

祥子に抱きしめられモーティスはその慈愛に触れてさらに戸惑う。

 

 

「元に戻せるなら、なんでもしますわ……私…必ずあなたを‥‥‥‥」

 

 

「!!」

 

 

祥子の言葉で目を見開くモーティス。

おそらく祥子はモーティスという存在を認めてはいない。

必ず睦を元に戻すつもりだ。

 

 

「きれいごと言わないで!!」

 

モーティスは祥子の腕を振り払いまた家の中に戻って行ってしまった。

 

 

「睦……‥‥‥」

 

 

ほんの少しの間しか会えなかったがこれでも大きな一歩は踏めた気がした。

あとはモーティスの気が変わって睦とちゃんと話をさせてくれればいいのだが……‥‥

 

 

 

「今日はもう帰ろう」

 

 

「……‥‥そうですわね」

 

 

 

俺と祥子は帰ることにした。

祥子は明日もここに来て睦が出てくるのを待ってそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、幸人君?」

 

 

「なんだ?」

 

 

さらに数日後。この日はMyGO!!!!!のライブの日なのだが俺は今そよと共に睦の家に向かっていた。

 

 

「もう少し距離空けて歩いてくれない?」

 

 

「なんでだ?」

 

 

「その恰好で一緒に歩くと私まで変に見られるから」

 

 

ユキ仮面の姿の俺と一緒に歩くことに嫌がるそよ。

何を今更、この前は平気だっただろ?

 

 

「それよりその袋なんだ?」

 

 

「話を逸らしたわね……‥‥これは差し入れ。睦ちゃんの」

 

 

そう言って高級チョコレート店の紙袋を開いて見せてくれた。

しかし中には不揃いで不格好なきゅうりが五本が入っていた。

 

 

 

「きゅうり?」

 

 

「これ、睦ちゃんが学校で大切に育てていたきゅうり。最後に残ってたの持ってきたの」

 

 

「いいのか?勝手に?」

 

 

「枯れそうだったしそれに全然お世話してなかったしいいのよ」

 

 

「お前……‥‥」

 

 

だから腹黒って言われるんだよ。

 

 

「んっ?」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「祥子と立希がいる」

 

 

「えっ?」

 

 

睦の家の前まで来るとそこに祥子と立希が会話しているのが見えた。

祥子がいるのは予想がつくが立希がいるのは予想外だった。

そよといい立希といい今日ライブあること忘れてない?リハやんなくていいの?

 

 

「立希ちゃんだって、結局心配なんじゃない」

 

 

「なんで来てるわけ? リハの前も練習あるって解ってる?てか、お前まで‥‥‥‥」

 

 

俺とそよに気づく立希。それはお前もだろうが‥‥…‥‥

 

 

「別に、ちょっと差し入れ」

 

 

「え?」

 

 

立希に差し入れを見せた。

きゅうりを見て少し驚く立希。俺と同じリアクションするね。

 

 

「睦ちゃんと会えた?」

 

 

「……束の間ですけれど」

 

 

「そう」

 

 

数日前に束の間とはいえ睦と会うことが出来たことをそよに伝える祥子。

それを聞いて安堵するそよ。

 

 

「あの~やっぱり中でお待ちになりませんか?」

 

 

「いえ、こちらで‥‥‥‥」

 

 

「おじゃまします!」

 

 

祥子が断ろうとするが立希が前のめりにおじゃますると言った。

 

 

「ちょ、立希…‥‥‥」

 

 

「ちゃんと話せてないんでしょ?」

 

 

「あっ……‥‥」

 

 

そよに手を引かれ家の中に入る俺たち。

さすがに部屋までは入れてくれなかったので階段や部屋の前で待っていることにした。

 

 

「愛音から連絡来てる、返事しといて」

 

 

「自分でしたら?」

 

 

「ほんっと、そういうとこ」

 

 

練習時になっても一切音沙汰もない立希とそよに確認の連絡を送ってきた愛音。

そりゃあ、ライブ当日に練習もリハにも来ないから連絡してくるだろうな。

 

 

「二人って、会うのあの時以来?」

 

 

「うん……‥‥」

 

 

「ええ……‥‥」

 

 

「学校もバラバラだし、会う機会ないか……祥ちゃんと燈ちゃんは同じ学校だっけ? 立希ちゃんもそのまま羽丘に行ってたら一緒だったのに」

 

 

「別にいいでしょ…‥‥‥」

 

 

「なんで花女行ったの?」

 

 

「……真希さんの妹って言われるから‥‥‥‥」

 

 

「え?」

 

 

「お姉さん、有名だもんね」

 

 

「はぁ……」

 

 

立希のお姉さんは羽丘のOGで吹奏楽部でトランペットを担当しそのカリスマ力で部を引っ張り、吹奏楽コンクールで優秀な成績を収めた有名人らしい。

卒業後は地域のオーケストラで活動しており、学校の違うオーケストラ部に所属しているそよですら知っている人物だ。

そんな有名人の妹という目は立希には苛立ちとコンプレックス以外の何者も生み出さなかった。

 

 

「あ……また愛音から」

 

 

「練習の時間、過ぎちゃったから」

 

 

「ここまで来たらほっとけないでしょ……解散したけど、メンバーだったし」

 

 

「えっ?」

 

 

「睦がどう思ってるかはわからないけど……バンド、楽しくなかったみたいだし…‥‥‥」

 

 

「……口にした言葉が、全て真実とは限りませんわ」

 

 

「ん?」

 

 

「特に睦は、己の失言をずっと責めていましたもの」

 

 

「じゃあ、なんであんなこと?」

 

 

「楽しくなかったのは、睦自身が演奏に納得できていなかったからですわ」

 

 

「……嘘」

 

 

「睦は、CRYCHICを大切に想っていました」

 

 

祥子の言葉に驚くそよと立希。すると同時に睦の部屋のドアが開きモーティスは溜息を吐きながら出てきた。

 

 

「……睦?」

 

 

「モーティスちゃん」

 

 

「…‥‥‥睦ちゃんに、会わせてあげる」

 

 

 

モーティスはついに観念して睦と祥子を引き合わせることを決めた。

部屋に招かれてベッドの上に座ったモーティスは目を閉じてまた目を空けるとそこには俺たちが知る若葉睦が居た。

 

 

「……睦」

 

 

「祥……ごめんなさい、祥、傷ついてない?」

 

 

久しぶりに会いそして話すことが出来た睦に対して祥子は安堵の表情をする。

 

 

「睦は何も‥‥…全て……全て私が‥‥‥‥貴女に頼り切りだったから‥‥‥‥私こそ、ごめんなさい……」

 

 

「……ううん……‥‥そよ、立希……ごめんなさい、バンド、壊して……ギター下手で‥‥‥‥ずっと謝りたかった」

 

 

「いいよ、もう! っていうか私も、ごめん!」

 

 

言いたいこと、本当に言いたかったことを、話し合うことが出来てそよも安心した。

もう終わってしまったバンドだけれど一年も遠回りをして言いたいことを言えたのでよかったな。

 

 

「燈にも‥‥‥謝りたい」

 

 

「睦ちゃんが謝ることないんじゃない?」

 

 

「え?」

 

 

決して睦のせいではないという意味を込めた言葉を投げかけるそよ。

それと同時に立希のスマホのバイブ音が鳴る。恐らく愛音からの電話だろう。

 

 

<ギュイイイインンンン!!>

 

 

「うわっ!」

 

 

「どわ!?」

 

 

電話に出た直後に鳴り響く楽奈が掻き鳴らすギターの音の被害に遭う俺たち。

 

 

『もうすぐリハ始まるんだけど~! ライブちゃんとやるんじゃなかったの~!? 』

 

 

愛音がリハが始まると連絡してきた。

もうそんな時間か。

 

 

「そろそろ行くか」

 

 

「そうね。睦ちゃん、祥子ちゃん、行こう」

 

 

「えっ?」

 

 

「私たちも?」

 

 

「燈ちゃんに会いたいんでしょ?」

 

 

「そ、そうですけれど…‥‥‥」

 

 

「行ってやれ」

 

 

「ユキ仮面?」

 

 

「こうして久しぶりに会えたんだしメンバー全員揃って会った方がいいだろ?」

 

 

「そいつの言う通りだ。行こう祥子」

 

 

「あっ、ちょ!?」

 

 

「先に行くわね」

 

 

立希に手を引かれRiNGへ向かう祥子とそれに続いていくそよ。

 

 

「‥‥‥‥さて、俺たちも向かおうか」

 

 

「うん……‥‥」

 

 

残った俺と睦も向かうことにした。

 

 

「……‥‥ねぇ」

 

 

「なんだ?」

 

 

「……‥‥‥色々とありがとう…‥‥幸人」

 

 

「!?」

 

 

睦のやつ、俺が幸人だと気づいていたのか……‥‥‥

 

 

「行こう?」

 

 

「あ、ああ…‥‥‥」

 

 

俺たちも部屋を出てRiNGへ向かった。

睦は気づいてなんで祥子は気づかないんだろう?わからんな……‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「燈…‥‥‥」

 

 

「睦ちゃん‥‥‥‥」

 

 

RiNGのスタジオに着いて久しぶりに会う燈と睦。

 

 

「えっ、なになに?」

 

 

愛音は状況がわからずキョロキョロしている。

ちょっと落ち着こうな?

 

 

「これ‥‥‥‥」

 

 

燈は歌詞ノートを睦に渡して見せる。

 

 

「このノート‥‥‥‥」

 

 

見覚えがあるノート見て目を開く祥子。

 

 

「にんげんになりたい歌?あっ…‥‥歌詞変わってる!」

 

 

燈が書いたにんげんになりたい歌、確かに前に見せたのと歌詞変わっているな。

 

 

「最近書いてたのってこれ?なんで?」

 

 

「祥ちゃん言ってたから‥‥‥‥人間になりたいって…‥‥‥」

 

 

「あっ…‥‥‥」

 

 

人間になりたいと言っていた祥子のことを思い歌詞を書き換えてたのか……‥‥

 

 

「ていうかこの歌詞…‥‥‥」

 

 

「…‥‥‥ぷっ、あははははは!」

 

 

「えっ?」

 

 

突然笑い出すそよ。

なんか面白い事でも書いてあったのか?

 

 

「だってこの歌詞!あははははは!!燈ちゃんすごいね!」

 

 

「さっきから燈に失礼なんだけど?」

 

 

「えー?ほめたんだけど?」

 

 

そよはおかしくて笑ったのではなく褒めて笑ったのか。

紛らわしいよ全く……‥‥‥

 

 

「‥‥‥‥もう~その曲やんなよ?」

 

 

「えっ?」

 

 

愛音は自分のギターを睦に渡す。

 

 

「楽奈ちゃんどっか行っちゃってリハできないしステージ使えば?」

 

 

どうやら燈たちCRYCHICのためにステージを貸して演奏させてくれるみたいだ。

愛音のやつ気が利くじゃねぇか。

 

 

「なら、凛々子さんたちには俺から話そう」

 

 

「うん、お願い」

 

 

「でもその恰好で行くのはやめてよね?」

 

 

「わかっている」

 

 

このまま行くと不審者扱いされるから更衣室で一旦着替えてから行くか。

 

 

「では失敬する」

 

 

スタジオを出て更衣室へ向かう。

 

 

「んっ?」

 

 

「おや?あなたは確か‥‥‥…」

 

 

受付のところで偶然にも海鈴と出会った。

 

 

「ユキ仮面さんでしたね?」

 

 

「ああ、そういう君はティモリス‥‥‥いや、八幡海鈴と呼んだ方がいいか?」

 

 

「そちらで呼んでもらえると助かります。もうムジカはないので……‥‥」

 

 

「そうだな」

 

 

「ユキ仮面さんは何しにここへ?」

 

 

「うんぬんかんぬん色々あって豊川祥子と若葉睦をここに連れてきただけだよ」

 

 

「!?そ、そうですか…‥‥‥」

 

 

一瞬驚いた表情を見せるがすぐにいつもの感じに戻る海鈴。

 

 

「そろそろリハーサルが始まる。君も見ていくか?」

 

 

「いいんですか?」

 

 

「俺はここに顔が利くからな。見学くらいさせてやろう」

 

 

「では、お願いします」

 

 

「うむ、任された」

 

 

海鈴と別れ更衣室に再び向かう。

別れ際に「ユキ仮面さん、もしかして…‥‥」と何か言いそうにしてたけどまぁ、いいでしょう(マスロゴ風)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、始まってるな」

 

着替えを終えてステージに来た俺。

ステージの上には燈、そよ、立希と、睦と祥子いた。

MyGO!!!!!としてではなくCRYCHICとして。

 

 

「それでも体を開いて~手を伸ばした~何度も違う手を~あれが心の叫びだから~!」

 

 

燈はいつもの感じで歌ってない。

まるでCRYCHICの頃の燈になっているかのように歌っている

 

 

「息を吸って涙する~人間になりたい~!」

 

 

演奏が終わり燈がステージから背を向けメンバーを見る。

 

 

「この詩は……この詩は、祥ちゃんのことを考えて‥‥‥考えて書いた詩…‥‥‥でも、考えても‥‥‥‥ぐちゃぐちゃで……何も見えなくて……なのに、何も解らない……けど‥‥‥‥!CRYCHIC‥‥‥‥CRYCHICやれて、良かった……!」

 

 

「燈……!」

 

 

燈の言葉がステージに響いた。

祥子のために人間になりたいと絞り出した彼女の叫びだ。

 

 

「……‥‥もう一曲、いいですか!? やるでしょ!?」

 

「……うん!」

 

 

「祥ちゃん…‥‥‥」

 

 

「‥‥…‥‥っ!!」

 

 

祥子はキーボードの演奏をし始めた。

あの曲をやるんだな……‥‥

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

「(私たち、見たいものしか見えてなかったのかな?他にはない特別なバンドだと思っていた…‥‥本当に運命だって信じちゃうくらい。みんなと集まる毎日が楽しくて輝いて見えた。失ったからこそ、余計きれいに見えていたのかもね…‥‥‥欲しくて、戻りたくて、たまらなかったよ。)」

 

 

「(燈の歌に救われた……‥‥あの日みたいにな最高のライブがこれからもずっと続いてくんだってそれができる無敵のバンドだって勝手に期待してた。でも本当は普通の私たちが普通にバンドしてた…‥‥‥普通のバンドだったんだ……‥‥!そんな普通のCRYCHICがあの時の私には必要だった、私のままここにいていいんだって!初めて思えた場所だったから!)」

 

 

「(私のよすがでしたわ。目を逸らそうと踠くほど深みにはまってしまうくらい‥‥‥‥けれど、これで最後。CRYCHICはもうないのですのね。)」

 

 

「(楽しい…‥‥‥祥と…‥‥そよと‥‥‥‥立希と…‥‥‥燈と……‥‥CRYCHICのみんなでまた演奏できて……‥‥!)」

                                                                                            

 

 

「(ありがとう、大好きだよ。)」

 

 

「(今はもう私たちの居場所じゃなくても!)」

 

 

「(今日の演奏、きっと一生忘れませんわ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ‥‥‥ううっ…‥‥‥」

 

 

俺は涙で視界が見えずらくなっていて腕で目を擦った。

 

 

「ゆ、幸人君?大丈夫?」

 

 

となりにいた凛々子さんが俺の心配をする。

 

 

「は、はい…‥‥‥大丈夫です。ちょっと顔洗ってきます」

 

 

 

「う、うん。いってらっしゃい‥‥‥…」

 

 

トイレに向かい顔を洗いに行く。あんないい演奏見せられたら涙でちゃうでしょうが!

みんな泣いてたし睦も嬉しそうにギター弾いてたし良かったじゃねぇかよ!!

 

 

「ふぅ~」

 

 

顔を洗い涙も治まったのでトイレから出る。

 

 

「ユキ仮面」

 

 

「!!」

 

 

背後から声をかけられた。

この声は祥子!?い、いかん!ウィッグは付けたままだがマスクは更衣室だ!ここは振り向かずに背中で会話しよう!!

 

 

「なんだ?豊川祥子」

 

 

「今回は色々と助けていただきありがとうございましたわ」

 

 

「なに、礼には及ばんよ。それに素晴らしい演奏を見させてもらってこちらこそありがとう」

 

 

「見ていたのですね」

 

 

うん、お前にバレないように音響を調整するところでね。

 

 

「では、さらばだ」

 

 

早く立ち去らないと面倒だからな。

 

 

「あっ、お待ちになって。もう一つ」

 

 

「なんだね?」

 

 

「失った物も命ある限り取り戻せる、あなたに言われてはっとしましたわ。いつまでも拗ねていられませんわね」

 

 

「ふむ」

 

 

「睦を取り戻すことができました。次はあなたから幸人さんを取り戻しますわ。何故なら彼は私にとって……‥‥

 

 

「なんだね?」

 

 

「い、いえ、なんでもありませんわ。それではごきげんよう」

 

 

祥子はそう言ってどこかへ行ってしまった。最後の方何を言いたかったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥……‥‥」

 

 

ユキ仮面にお礼を言い睦と合流することにした私。

今回は彼に助けられ感謝していますわ。でもそれとこれは別。彼から幸人さんを助けることは変わりませんわ。

 

 

「彼は私にとって希望なんですから……‥‥」

 

 

そうあの時だって彼が助けてくれたから今の私がいるのですから……‥‥‥

 

 

「‥‥……‥‥」

 

 

それにしても睦の家の前でアンパンを分けてもらった時一瞬だけ彼が幸人さんに見えましたわね……‥‥‥もしや…‥‥‥

 

 

「い、いえ、そんなはずありませんわ」

 

 

彼は倒すべき敵、私にとって絶望みたいなものなんですから……‥‥




睦ちゃんが戻ってきましたし燈ちゃん達と和解できたのでめでたしめでたし…‥‥‥じゃないね、まだまだ問題だらけですので祥ちゃん頑張って。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。