『いらない』
えっ?
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『そよちゃんなんていらない』
やめてよ‥‥‥‥なんでそんなこと言うの……‥‥?
『いい子じゃないそよなんていらない』
いや……‥‥‥
『馴染めない子なんていらない』
『優しくない子なんていらない』
『我がままの子なんていらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『いらない』
『嫌っ!!』
怖い…怖いの…‥‥お願い…‥‥私を‥‥‥‥認めて‥‥‥‥!
「っは!!‥‥………‥‥ゆ、夢か…‥‥‥」
「どうしたそよ?」
「ゆ、幸人君……‥‥」
そよは起きて汗を掻き呼吸も少し乱れていた。
「怖い夢でも見たのか?」
「う、うん…‥‥‥まぁ…‥‥‥」
「マッチョになった愛音に追いかけられる夢か?」
「そんなんじゃないわよ」
「じゃあ、どんなのだ?」
「…‥‥‥言えない」
「そうか」
言いたくないくらい嫌な夢なら聞かないでおこう。
「それより、今いいか?」
「なに?」
「宿題教えてくれ」
「なんでよ?」
「暇そうにしてたから」
「暇じゃないわよ」
「お茶飲んでるだけじゃん」
「これからみんなと練習なの。だから暇じゃない」
「いいじゃん~みんな来るまででいいからさぁ~」
必死にお願いする。こうすると半々の確率で了承してくれる。
「……‥‥どこを見ればいいの?」
よっしゃあ、宿題見てくれるぞ~
「えっとな……‥‥」
<バラララララララララララ!!>
「えっ!?」
「何、この音!?」
突如ヘリのプロペラが動く音が聞こえてきた。
「ま、まさか!?」
「幸人君!?」
俺は外に出て行く。もしかしてあの人かもしれん!!
「やっぱり……‥‥!」
「へ、ヘリ!?」
外に出て空を見上げるとそこには一機のヘリが飛んでいた。
<ジャラララララララ!!>
「うおっ!?」
ヘリから梯子が降ろされる。そして
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「うわっ」
「やっぱり」
梯子を使って高笑いをしながら降りてくる超高そうな服を着たイケメン、俺の兄である輝だった。
「はっ!」
飛び降りても大丈夫な高さまでくると飛び降りて空中一回転して着地する兄貴。無駄にかっこいい。
「久しぶりだなそよ!!」
「え、ええ……‥‥」
兄貴の顔を見てスゲー嫌そうな顔をするそよ。
「兄貴、何しにきたんだよ?」
「日本で仕事があってな!帰国するまでまだ時間があるからそよとついでにお前に顔を見せようと思って母上にどこにいるか聞いたらここでバイトしていると聞いてヘリをチャーターしてここまできたんだよ!」
「家からここまでヘリで来たのかよ‥‥‥‥」
あいかわらずすることが豪快だな…‥‥てか、俺に会うのはついでかよ。
「そよ、これは土産だ!みんなで食うといい!」
兄貴はそよにお土産のお菓子を渡した。
「これって…‥‥ちんすこう?」
「なんで?」
普通、パリのやつじゃなくて?
「沖縄で仕事していて買ってきたのだ!そよの雪のように白くきれいな肌を思い出してそれにしたんだよ!」
「ど、どうも……‥‥」
うわっ、さらに表情が嫌な顔している。
うん、わかるよ。今のはさすがにきもいよね。
「そよ!今から輝様とデートに行くぞ!!」
「結構です」
「夜は高級フランスレストランでディナーだ!!」
「話聞いてました?」
まったく話を聞かない兄貴。
フランスから来たのに日本でもフランス料理食うのか?
「おい待てよ兄貴。そよは今から俺と一緒に宿題やるんだよ」
「なに?」
「だからデートは無理だ」
「ほう、輝様に口を出すようになったか幸人」
「もう高校生だっつーの。いつまでも小学生扱いすんなし」
「それ以前に私バンド練習あるんですけど?」
そよがなんか言ってるけど今は兄貴とお話中なのでスルー。
「ならば、どちらがそよと過ごすかときめき勝負で決めようじゃないか!!!」
「いいだろう!受けて立つぜその勝負!!」
「ちょ、ちょっと、勝手に私を賭けて勝負しないでよ。というかときめき勝負ってなに?」
「では会場へ向かうぞ!ついてこい!!」
「おうよ!」
「えっ、あっ、ちょっと!!」
そよの手を引いてときめき勝負の会場へ向かった。
売られた勝負は買うぜ!!兄貴には負けんぞ!!
「さぁ!始まりました!!藤田兄弟によるときめき対決!!」
場所は変わりときめき対決の会場。ステージには俺と兄貴が向き合うように立ちその間にそよと司会の人がいる構図だ。
てか、こんなセットいつの間に用意したんだよ?
「はたしてどちらが長崎そよさんを手に入れるのか!?今、戦いの火ぶたが切って落とされた!!」
「勝手に物にしないでくれます?」
「審査員はこの三人!!上原ひまりさん、牛込りみさん、パレオさん!!」
「やっほ~!」
「頑張って審査するね!」
「楽しみです~!」
なぜか審査員になっているひまり先輩とりみ先輩とパレオ。
いつからいたんだよ?
「ルールは各勝負ごとに出されるテーマに沿ってそよさんにときめきそうの仕草をして審査員が入れた票が多かったほうが勝ち!先に3勝した方が勝者です!!」
そよにときめきな仕草をして審査員たちから評価が多い方が勝ちで先に3勝したほうがそよと過ごす権利を与えられるのか。おもしれぇ、この勝負に勝って宿題見てもらうぜ!!
「兄貴、負けないぜ」
「ふん、輝様に勝つなど2万年早いぞ?」
自信満々だなおい。そんな余裕こいているのも今のうちだけだぜ。
「では一回戦!テーマは『朝の登校中』!!先方は幸人さん!!」
「よし」
現役DK(男子高校生)の力を見せてやる!!
「はぁ~なんで私がこんなことを……」
いつの間にか制服に着替え愚痴を零すそよ。
「では、そよさん!走って角を曲がってください!」
「はいはい、さっさと終わらせよう……いけなーいー遅刻遅刻ー(棒)」
セリフが棒読みだな……そよは司会者に言われた通り走り出し角を曲がろうとする。
そして俺とぶつかり転倒し倒れたそよに手を差し伸べときめきそうなことを言えばOKだ。
「今だ!」
俺はタイミングよく走り出す。
「きゃっ!」
そよとぶつかり転倒する。
え~と、なんて言おうかな…………
「いたた……」
「わりぃ、大丈夫か?」
「え、ええー、私こそごめんなさいー(棒)」
「ほら、立てるか?」
「あ、ありがとー(棒)」
手を差し伸べそよを立たせる。
「あっ、ちょっと動くな」
「えっ?」
俺はそよの髪を少し触りすぐに戻した。
「な、なに?」
「髪に芋けんぴ付いてたぜ?」
そんなことを言ってウィンクをする。
どうだ!俺の渾身のときめき芋けんぴコンボは!
「いいですね!続いては輝さん!」
次は兄貴か。はたしてどんな手を使ってくるんだ?
「見せてやろう、輝様のときめきを」
「は、はぁ……」
呆れ顔で元の位置に戻るそよ。
「では、スタート!!」
「いけなーいー遅刻遅刻ー(棒)」
また角を曲がろうとするそよ。
兄貴よ、どう動くんだ?
「きゃっ!」
さっきと同じくぶつかり転倒するそよ。
「いたた……」
「すまない、大丈夫か?」
「は、はい……私の……!!」
「うえっ!?」
俺とそよは驚いて声を上げた。
兄貴はフランスパン一本丸々口に咥えて手を差し伸べていた。インパクトありすぎでしょ!!
「すまない。フランスパンのせいで前が見えてなかった」
「は、はぁ……」
「今日は君のようなヴィーナスに会えて輝様は嬉しい。この出会いにmerci(感謝)」
そう言いそよの手の甲にキスをする兄貴。
そよはうげぇな顔をしていて心底嫌がってる。
「さぁ~審査の方に入りましょう!審査員の方々、評価の方をどうぞ!!」
第一試合、どっちが勝つか………
「輝さんに一票!」
「私も輝さん!」
「私もです!」
「なっ!?」
全員兄貴の方にだと!?
フランスパン咥えてたんだぞ!?
「輝さん素敵~!」
「かっこいい~!」
「フランスパンが似合います~!」
「第一試合は輝さんの勝利!!」
「フン。当然の結果だ」
「く、くっそ~」
やはり一筋縄でいかんか。次はもっとときめきそうなやつでいこう!
「さぁ~続いて第二試合!テーマは『看病』!」
看病か~いつぞやそよに看病してもらったしお返しとして今度は俺が看病してやるか。
「では先行は幸人さん!どうぞ!!」
「よし!」
次こそ俺が勝つ!
「ごほごほっ………」
場面は部屋に変わりベットで寝て咳き込むそよ。
ちなみに演技なんで本当に風邪は引いてないからね。
「大丈夫か?」
「う、うんー、大丈夫ー(棒)」
「今日は一日俺が看病してやるよ」
「あ、ありがとー(棒)」
「弱ったお前の姿、新鮮でドキドキしちゃうな」
そう言って頭を優しく撫でる
「いやあ~っ!」
「ときめきます~!」
審査員方の評価がいいぞ!この勝負いけるかも!!
「続いては輝さん!!」
「今日はたっぷり輝様に甘えろ、なっ?」
「きゃあ~!」
「素敵~!」
うおっ、兄貴もやるな。
「さぁ!審査の方をどうぞ!」
「輝さん!」
「幸人君!」
「幸人さんです!」
「よっしゃあ!」
1:2でこの試合は俺の勝ちだ!まずは一勝!!
「やるな、幸人」
「そう簡単には勝たせねぇぞ?」
「言ってろ」
勝負はここから!行くぜ!!
「はぁ~……あっ!」
湯呑みを落としそうになるそよ。
「おっと」
湯飲みをキャッチする兄貴。
「疲れているのか? お前が頑張ってること、俺が一番わかっている」
肩をポンと叩く兄貴。そよはもうお疲れモードである。
「続いては『壁ドン』です!」
「俺だけを見ろよ」
壁ドンからのあごクイ。
「きゃあ~!!」
「蝉ドン」
「きゃあ~!!」
なんだよ蝉ドンって………
「はぁ~」
私を賭けたときめき勝負。
両者共同点で激しい戦い(?)をしている。
「なかなかやるな、幸人」
「そっちこそ」
服がボロボロで傷だらけの二人。
どうやったらそんな状態になるのよ?
「久しぶりだな、兄弟で勝負をするのは」
「ああ、そうだな。最後に勝負したのはお前が小学六年生の時の…‥‥‥」
急に思い出話し始めたんだけど?
というか、これ今のうちに抜け出せれるんじゃない?
「こんな勝負に付き合ってられないわ」
私はこっそりと会場を抜けてRiNGへ戻ることにした。
「上手く抜け出せれたわね」
早く戻って練習に参加しなきゃ。
「はーい、そこのお嬢さん」
「?」
急いでいる私の前にいかにもチャラそうな男性二人組が絡んできた。
「え、えっと~何か?」
「君可愛いね~」
「今から俺たちと遊びに行かない~?」
あ~これは典型的ナンパね。ここは断ってさっさと行こうっと。
「すみません~私、用事があるので~」
そう言ってナンパ男たちの間を抜けて去ろうとする。
「ちょ待ってよ~」
「きゃっ!」
腕を掴まれて思いっきり引っ張られる。
「いいじゃん~用事より俺たちと遊んだほうが楽しいって~」
「悪いようにはしないからさぁ~?」
気持ち悪い笑顔を近づけてくるナンパ男たち。
「は、離してください!」
「俺たちと遊んでくれるなら離してあげるよ?」
嘘だ。そんなこと言っても離さないつもりだ。
「お、大声出しますよ!?」
「いいよ?出しても」
「どうせみんなびびって助けに来ないって」
二人の外見のせいで周囲の人は助けに行こうにも近寄れずに素通りしていく。
「ほら~行こうぜ?」
「俺たちと楽しい事しようぜ?」
男たちに無理やり引っ張られ連れて行かれそうになる。
「(い、いや!誰か、助けて…‥‥‥!)」
そう心の中で呟いたその時だった。
「ならば、この輝様も一緒に連れて行ってもらおうか?」
「!?」
ここにいるはずのないあの人の声が聞こえてきた。
「なんだてめぇ!?」
「宝〇の劇団員か!?」
ナンパ男たちの前に現れたのはいつの間にかいた輝だった。
「輝様は輝様だ!」
「いや、意味わかんないですよ」
「そして彼女は俺のガールフレンドだ!」
「ガールフレンドでもないです」
いちいちツッコミをいれていくそよ。さっきの不安も恐怖もどこかに消え失せた模様。
「この野郎!ふざんじゃねえ!!」
ナンパ男の一人が輝に殴りかかろうとする。
「ふん!」
「なっ!?」
輝は男の拳を掴む。
「それ!」
「うわっ!?」
掴んだままぐるんと回し男はその場でコマのようにスピンし始める。
「どわあああああああ!」
「よく回っているな」
「て、てめぇー!」
もう一人も輝を殴りかかろうとするが
「Shall We Dance?」
「うわああああああ!!」
同じく回され二つの竜巻が起こっているみたいになった。
「うわぁ…‥‥」
「今のうちに逃げるぞ?」
輝が手を差し出してくる。
ここはこの人の言う通りにした方がいいと思った。
「‥‥‥‥わかりました」
「では、行くぞ」
輝に手を引かれこの場から逃げるそよたち。
「誰かあああああああああ!!」
「止めてくれえええええええ!!」
ナンパ男たちはまだ回り続けていたのであった。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥ここまで来ればもう大丈夫ですね」
「そうだな」
そよと輝はRiNGに来て一息ついた。
「勝手にいなくなって輝様や幸人やみんなで探し回ってたんだぞ?」
「す、すいません……‥‥」
「まぁ、輝様が真っ先にお前の存在に気づいて見つけたがな!」
「へ、へぇ~すごいですね…‥‥‥」
気配だけで自分を見つける輝に引くそよだった。
「‥‥……‥‥それよりそよ」
「なんですか?」
「いつも練習頑張っているな。幸人からいつも動画送られて見ているぞ」
「ど、どうも‥‥…‥‥(幸人君いつの間に動画なんて‥‥‥‥あとでシメとこう‥‥‥‥)」
「……‥‥‥そよ、お前は表は優等生でいい子を演じているみたいだが裏では嘘をついて周りを利用したりして腹黒いかもしれない」
「うっ‥‥‥‥」
前に愛音に言われたことを同じく言われギクッとなる。
「だが、根は良い奴で頑張り屋で誰かのために優しく時には厳しくできるところは輝様は気づいているぞ!」
「!!」
そこも見透かされ驚くそよ。
この人に隠し事や演技はもう通用しないと感じた。
「輝様はお前のことを認めているぞ!輝様ならばお前を置いて消えたりはしない!ぜぇったいに!!」
「輝さん……‥‥‥」
超ナルシストの輝の言葉になぜか安心感を得るそよ。
いい子じゃなくても馴染めなくても優しくなくても我がままでもこの人は変わらず自分を見てくれて接してくれると思った。
「‥‥…‥‥なんですかそれ?でも、ありがとうございます。少し安心しました」
「うむ!気にするな!フハハハハハハハハ!!」
「(やっぱこの人苦手だわ…‥‥‥)」
「あー!いたぞ!!」
二人を見つけ駆け寄る幸人。
「めっちゃ探したんだぞ?」
「ご、ごめん…‥‥‥」
「すまんな」
「ったく…‥‥で、ときめき勝負はどうすんだ?」
「ああ、それなら輝様はこの勝負を辞退する。急な仕事を思い出してすぐにパリに帰らないと行けなくなったからな」
「はぁ?じゃあ、俺は不戦勝かよ?」
不戦勝で勝ったことに不満を言う幸人。
「ちゃんと勝負して勝ちたかったな~」
「そしたら輝様が勝ってしまうだろ?」
「自信満々だな……‥‥‥」
「では、さらば!!」
立ち去ろうとする輝。しかし
「輝さん、待ってください」
「んっ?」
そよに呼び止められ足を止める輝。
「なんだ、そよ?」
「……‥‥良かったら連絡先交換しませんか?」
「なに?」
「人生の先輩として相談してほしいこととかフランスのこととか聞きたいだけでそれ以外他にないので勘違いしないでください」
「うむ!いいだろう!!」
輝はそよと連絡先を交換しテンション爆上げでフランスへ帰っていった。
「お前、兄貴となんか関係よくなったか?」
「全然。でもほんの少しだけいい人って思えてきたわ」
「兄貴って昔からモテモテだったんだよね~」
「そうなんだ」
「俺もモテたいな~ハーレム作品の主人公みたいに」
「幸人君じゃ無理ね」
「ちょ、ひどくない?」
「くしゅ!」
「燈!大丈夫!?風邪!?」
「だ、大丈夫……‥‥」
「くちゅっ‥‥‥‥!」
「睦!大丈夫です…‥‥‥くしゅっ!」
「祥、大丈夫?」
「え、ええ‥‥‥‥誰か噂しているかもしれませんわね…‥‥」