果たして誤解は解けるのだろうか?
<ピンポーン>
「はいはい~」
チャイムが鳴り玄関に向かいドアを開けるとそこには
「幸人」
緑のキャップを被りなぜか鼻メガネをかけた睦が白い四角形の箱を持って立っていた。
「なんだ睦。そのルイージみたいな恰好は?」
「祥が『睦は有名人なんですから外に出る時は変装していきなさい』って言ってたから変装してる」
「そうなんだ」
鼻メガネじゃなくてサングラスや伊達メガネじゃだめなのか?それだと余計に目立つような気がするが……‥‥
「それより何か用か?」
「うん。祥がこれを幸人………‥‥ユキ仮面に渡して欲しいって」
「これを?」
睦から箱を受け取る。
「なにこれ?」
「わからない……‥‥けど早めに食べてって言ってた」
「食べる?」
中は食品が入っているのか。
「じゃあ、私これから用事あるからもう行くね」
「ああ、気をつけて帰れよ」
睦と別れリビングに行き箱の中身を確認することにした。
「中は…‥‥‥おっ、ケーキだ」
中には生クリームがたっぷり塗られイチゴがのったホールのショートケーキが入っていた。
「美味そうだな」
さっそく食べることにした俺は台所からフォークとナイフを持ってきてた。
「いただきまーす」
ナイフを入れてケーキを切ろうとしたその時
「ん?」
なんか切れないぞ?あれれ?おかしいな~?
「あっ、なんか挟まってる……‥‥」
少し中をほじくってみるとそこに一枚折りたたまれた厚紙が入っていた。
「なんだこれ?」
クリームでベタベタになった厚紙を開いてみるとそこには……‥‥‥
「みんなこれを見てくれ」
次の日、俺はMyGO!!!!!のみんなに昨日ケーキの中に入っていた厚紙を見せることにした。
「なになに?『拝啓、ユキ仮面。睦の件で大変お世話になりましたわ。ささやかなお礼としてフランスのパティシエが作った高級ケーキを送ります。さて、話は変わりあなたに決闘を申し込みますわ。あなたとは今まで何度も戦い勝つことはありませんでした‥‥…‥‥しかし次の決闘で決着をつけたいと思いました。日時は一週間後の土曜日の正午、場所は栃木の岩船山ですわ。決闘の内容は日本人らしく剣道にしましょう。今回であなたを倒し幸人さんを解放してみせますわ。首を洗って待っていることですわね。 貴方のライバル、豊川祥子より』って、ええ!?これ果たし状じゃん!」
「ああ、そうだ」
「祥ちゃん……‥‥」
「てか、あいつまだユキ仮面の正体が幸人だって気づいてないのか?」
「幸人君、ちゃんと正体明かしたの?」
「いや、前に正体は俺だって言ったんだけど『彼にそう言えと言われたのですのね!私は騙されませんわよ!幸人さんを使って騙し討ちをするなんて‥‥…‥‥許せませんわ!』って言い返されちゃった」
「いや、なんでそうなるのよ?」
「知らん」
「それにしてもこの果たし状なんかシミみたいなのがついてるけど……‥‥」
「それはケーキの中に入っていたからな。シミは多分クリームの油分だろ」
「うげっ!?」
果たし状を放り投げる愛音。乾いてるから汚れたりしないって。
「ゆーくん、どうするの‥‥‥‥?祥ちゃんと戦うの…‥‥‥?」
「ああ、この決闘受けてたつ。いい加減に誤解や勘違いを解きたいしな」
なんでユキ仮面をそんなに敵視しているのかは知らんがいつまでもこんな戦いを続けるわけにはいかないからな。
「一週間後の土曜日、これが俺と祥子の運命が決まる日か……‥‥」
決着つけようぜ、祥子。
「はぁ‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥」
私は今、奥多摩の山の中にあるお寺に繋がる階段を逆立ちしながら登っていますわ。
「はぁ‥‥‥‥ふぅ‥‥‥‥」
階段を登り切り一息ついた。
「ユキ仮面……‥‥‥」
睦にお礼と決闘の申し出を込めたケーキをユキ仮面に届けるようにお願いしましたわ。
ちゃんと届いているといいですけど…‥‥‥
「次は滝行ですわ」
私は次に滝に向かい打たれることにしましたわ。
「……‥‥‥‥……‥‥‥」
滝に打たれながら精神統一する。
「(幸人さん……‥‥‥今度の決闘に勝ちあなたを救ってみせますわ…‥‥!)」
今回で決着をつけるため私は学校を休みここで修行をすることにしましたわ。
お爺様の書庫にあった五輪の書などを拝借(無断)して読み漁り毎日剣術修行や滝行などしていますわ。
「次は素振り500回ですわ‥‥…‥‥」
このまま修行をし続ければ彼に勝つことができるはず。そう思い私は滝を後にすることにしましたわ。
時が少し経ち一週間後の土曜日。
「わぁ~ここがゆっきーのバイトしてるコンカフェか~」
愛音たちは幸人がバイトしているコンカフェに来ていた。
「ゆっきーからサービス券いっぱいもらったしいっぱい食べて飲むぞ~」
「ゆーくん……大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ。ゆっきーはなんやかんやで強いし」
「また勝つんだろうな」
「もう様式ね」
「愛音、抹茶ある?」
「えっと‥‥…‥‥」
MyGO!!!!!の面々はそこまで気にせず食事を楽しむことにした。
一方、その頃岩船山では祥子が先に着いてユキ仮面を待っていた。
「(さぁ、来なさいなユキ仮面。今日こそ決着をつけて差し上げますわ!)」
竹刀を持ち宿敵のユキ仮面を待つ祥子。だが、一時間、二時間経ってもユキ仮面は来なかった。
「‥‥……‥‥遅い‥‥‥‥遅すぎですわ!!」
「はぁ~美味しいかった~!」
「こういうところのご飯初めて食べたけど意外といける」
「抹茶パフェも美味しい」
ご飯を食べ飲み物を飲むMyGO!!!!!の面々。
決闘のことなどすっかり忘れて楽しんでいた。
「それにしてもお店の雰囲気いいね~」
「思ったよりいいところね」
「だろ?俺も結構気に入ってんだよな~」
「えっ?」
「店員さん?」
突然、仮面をつけたスタッフに話しかけられ少し困惑する一同。
「あっ、ゆーくん」
「えっ!?」
「幸人君!?」
スタッフはなんと決闘に向かったはずの幸人だった。
「お前!祥子との決闘はどうしたんだよ!?」
「実はさぁ、急に他のバイトのやつが病欠になっちまってその穴を埋めるために急遽出勤することになったんだよ」
「そ、そうなんだ‥‥‥」
「‥‥‥‥ねぇ、幸人君。祥ちゃんにそのこと連絡した?」
「あっ」
祥子にバイトに急遽行かなくてはいけないことを伝えるのを忘れていた幸人。
<♪♪♪~!♪♪♪~!>
「あっ、電話」
「もしかして祥子ちゃんからじゃない?」
「怒ってるでしょうね」
「だろうな」
そう言いながら電話に出る幸人。
「もしもし?」
『ちょっとユキ仮面!!あなた今どこにいるんですの!?』
「今は東京の秋葉原にある『ブラックホール』っていうコンカフェにいるのだが‥‥‥‥」
『そこで待ってなさい!今から向かいますわ!!』
祥子は通話を切り幸人がバイトしている店に向かったようだ。
「祥ちゃんなんだって?」
「今からこっち来るって」
「栃木からここまで?」
「時間めっちゃかかるけど」
「待ってろって言われたしそれにまだバイトあるから動けないけどな」
幸人は祥子が来るまで普通に仕事してなんやかんやでMyGO!!!!!の面々も残ることにした。
<チリリ~ン>
「いらっしゃいま「ユキ仮面!貴方、どういうつもりなんですの!?」うおおっ」
入店していきなり俺のところに来て胸ぐらを掴んで怒る祥子。
「連絡しなかったのは悪かった。けど、急に仕事が入ったしお前との決闘は個人的な事。それに今日は予約のグループが何組か来るから人手が足りないんだよ」
「ううっ……‥それなら仕方ないですわね…‥‥‥」
俺にそう言われ仕方なく納得する祥子。
「あと一時間半ぐらいでバイト終わるから待っててくれ」
「‥‥…‥‥いえ、私も手伝いますわ!」
「えっ?」
突如、仕事を手伝うと言い始める祥子。
「人手が足りないのでしょ?なら、私も力を貸しますわ」
「いいのか?」
「ええ、それに早く終わらせて決闘を始めたいのもありますわ」
「そうか‥‥…‥‥よし、店長に話し通しておくから着替えてこい。予備の制服があるはずだし仮面は……‥‥‥」
うちの店は仮面執事とメイドがおもてなしをするというコンセプトが売りの店なので仕事中も気にせず仮面つけれるので祥子に正体はバレてない。
「仮面ならありますわ。こういう時に備えていつも持ち歩いていますわ」
祥子はカバンからオブリビオニスのマスクを取り出す。こういう時ってどういう時なんだ?
「では、着替えてくるので少々お待ちになっててください」
「お、おう」
数分後、メイド服に着替え仮面をつけた祥子が戻ってきた。
「いいぞ、似合ってんじゃん」
「どうも。さぁ、ご主人様お嬢様方をもてなしますわよ!」
なんかノリノリな祥子。
ちなみにこの店では名前は『メイド サーキー』俺は『バトラー ユキ』で名乗っている。
「はぁ!」
魔法の杖の形をしたライターでマシュマロを炙っていく祥子。
「うわあ…!うわあ!」
「溶かしますわよ!」
マシュマロがいい感じに焼けていきそれをお客さんであるお嬢様に提供する。
「おデリシャス~!」
美味しそうに焼きマシュマロを食べるお嬢様。
やるな、祥子。こっちだって負けねぇぞ!!
「君ほどスイートじゃないけどね」
「はっ…!アバンギャルド…!」
花瓶に入っている花を一つ取りその蜜を吸う俺。それを見てトキメクお嬢様。
「ハアッ!」
すごいナイフ捌きでフルーツを切っていく祥子。なんだそのかっこいい動きは?
「できましたわ!」
「おファビュラス…!」
お皿にきれいに盛り付けられるフルーツたち。芸術センスたけぇなおい。
「ほっとけないね」
お嬢様の服の袖に穴が空いたところを見つけて羊の顔の刺繍を縫っていく
「器用じゃない?」
「素敵~!」
「アバンギャルド!」
お嬢様ご主人様他の執事やメイドたちから好評のようだ。
「やりますわね」
「そっちこそ」
いつの間にか売り上げ勝負が始まり店長がボードを作って俺と祥子の欄にマグネットをどんどんと付けていく。
「両者互角か‥‥…‥‥」
次のお会計で勝負が決まる!誰かいないか!?
「失礼いたします、お坊ちゃま。こちらが本日のお給仕代でございます」
「うん!」
祥子のやついつの間に会計を!?これはマズい!!
「(よし! この会計で、彼を抜かせる!って、おお?おお~?なんですって…!?)」
ん?なんか様子が変だな?ちょっと見に行ってみよう。
「ん~?えっ…‥‥?」
祥子が会計を担当をしたご主人様の財布の中を見るとそこにはお札も硬貨も入ってないすっからかんな状態だった。
この流れはまさか‥‥…‥‥
「くっ!!」
ご主人様はダッシュで店を出て行く。はい!食い逃げだー!!
「食い逃げ!捕まえないと、君の売り上げにならないぞ!」
「何っ!?お待ちなさい!!」
店長に追いかけるよう言われ祥子は外に出て行く。俺も行くぜ!
「来るな! 嫌だ、嫌だ…!」
「メイドの名にかけて! 逃がしませんわ!」
逃げるご主人様‥‥……‥‥いや、食い逃げ犯を追い詰める祥子。いつの間にか箒持ってるし。
「オラァーッ!ご主人様ぁぁぁ…!!」
「もえもえ!?」
箒を大きく振り食い逃げ犯の脳天に直撃する。
「うばぁ……‥‥」
食い逃げ犯は倒れ気絶した。箒とはいえ当たったら痛いだろうな。
「さぁ、店まで連れて行きますわよ」
「わかった」
食い逃げ犯を店まで連れて行きあとはポリスメンに引き渡して今日のバイトは終了だな。
「ん?…‥‥‥なぁ、豊川祥子」
「なんですの?」
「その手は?」
俺はふと祥子の手のひらを見た。手のひらは傷だらけで豆ができていて普通に生活してできるものではない。
「これはあなたに勝つため一週間山に籠って修行してできたものですわ。私は今回こそあなたに勝つために血が滲むような修行をしてきましたわ。今までの私と思ったら痛い目を見ますわよ?」
祥子のやつ本気だな。今までとは違い今回はかなり力を入れている………本当に俺に勝つつもりだ。
「そうか、修行して強くなった君と戦えるのが楽しみだよ」
「ええ、楽しみにしていてください」
俺と祥子はそんな短い会話をして気絶した食い逃げ犯を捕らえられた宇宙人のように店に連れていくことにした。
こりゃあ、俺も本気で挑んでやらんとな。
「ここか…………」
バイトを終え俺は決闘の場所である岩船山に来ていた。
祥子は警察に事情聴取をしたりお店の片づけや店長から給料などをもらうため後から来ることになった。
「さぁ、始まるぜ。最後の戦いが……!」
俺は祥子が来るのを待った。しかし……
「…………遅くない?」
二時間以上が経過したが祥子は来なかった。今度はあいつが来ないパターンか?
<ピロン!>
「あっ、祥子からメッセ」
祥子からのメッセージが来た。
「えっと……『電車が遅延してしまいましてそちらに向かうのが遅くなりそうですわ』ええっ………」
いつになったら決闘できるんだよ?
おまけ 小ネタ集
「祥ちゃん……何があったの?ムジカの……オブリビオニスだった頃の祥ちゃんの方が輝いていたよ……!」
「堕ちたのですのよ…闇より深い地獄に…燈…あなたはいいですわよね…仲間に囲まれて、さぞ楽しい日々を送っているんでしょ…?私は違う…今の私には闇すらまぶしすぎる…忘れちまいましたわ…『運命共同体』なんて言葉…」
「祥ちゃんの様子がおかしい……」(数メートル離れている音楽室でピアノを引いている祥子を見る燈)
「さすがムジカのオブリビオニスだね!」(ストリートピアノで演奏している祥子を見たムジカファンの女の子)
「や め て」
「アハハハッ!祥子ちゃん!私からは逃げられないよ!引き潰して、あら引きハンバーグにしてあげるよ!」
『ユキ仮面、あなたをぶちのめさなきゃ気が済みませんわ!地獄の釜が蓋を開けてお待ちかねですわ!』
『お前がいる限り俺たちに満足は訪れない!俺達の絆☆パワーで必ず倒してみせる!』(祥子の夢小説の一文から引用)
「次回 BanG Dream! Ave Mujica 『Satisfaction 』」
「「私達の満足はこれから(ですわ)だよ!」」