『ただいま両毛線は車両トラブルによる影響で上下腺ともに遅延・運休が発生しております』
「なんてことですの…‥‥」
事情聴取と店長さんにお給料をもらいお礼をして急いで岩船山へ向かおうとしたらまさかの電車の遅延・運休ですの!?
「これでは岩船山に行けませんわ…‥‥」
タクシー拾うにしても時間がかかってしまいますわ…‥‥家に迎えの車を呼ぶのも同じですし‥‥…‥‥
「どうすれば……‥‥」
「お嬢さん、なにかお困りで?」
「えっ?」
後ろから声をかけられ振り向くとそこにはスーツを着た男性が立っていた。
「遅い…‥‥‥いつ来るんだ‥‥‥‥?」
電車が遅延・運休したと連絡が来てから一時間近く経過した。
このままだと日が暮れちまうぞ?
「仕方ない、待つか」
暇だし地面に絵でも描いてようっと‥‥…‥‥
「ユキ仮面!!」
「?あっ」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえ振り返るとそこには息をぜぇぜぇ吐きながら汗を流し髪も少しボサボサになっている祥子がいた。
「お、遅くなって申し訳ありません」
「い、いや、大丈夫だ。それよりどうやってここまで?電車来なかったんだろ?」
「親切な方が車で東京からここの山の麓まで送ってくれましたの」
「そうか、良かったな」
「では、道具を出すので少々お待ちになって」
祥子は岩陰から竹刀を二本取り出した。
「これを」
祥子から竹刀を受け取る。
「んっ?ちょっと待て。防具は?」
剣道に必要な防具などが無いことに気づく。あれがないと怪我するのだが…‥‥‥
「そんなもの無いですわよ。お互い今日で会うのは最後、決闘で受けた傷を一生残しておくため防具など付けないことにしましたの」
「は、はぁ…‥‥‥」
いや、危なくない?とりあえず頭と手は狙わず加減して叩くか。
「どちらが勝っても、相手に思いを残さぬようにしましょう…‥‥‥食べ終わった果物の種を捨てるように‥‥‥‥」
「ああ‥‥‥‥いやだが待て。種を捨てれば、やがて芽が出て再び果物になるぞ?」
「では、履き潰した靴を捨てるように…‥‥」
「ああ、分かった」
「(前のたとえの方が良かったですわ…‥‥)」
「?」
祥子のやつなに悔しそうな顔してるんだ?
「それでルールは?」
「三本勝負で先に三本取った方が勝ちですわ。顔、胴、手、突きで当てれば有効打突として認められ当てた方の勝ちになりますわ」
「うむ」
なんか本来のルールとちょっと違うような気がするがまぁいいや。
「では、一試合目始めますわよ」
「ああ」
お互い竹刀を構え見つめ合う。
「‥‥…‥‥」
「…‥‥‥…」
「…‥‥‥はぁ!!」
「とぉああああ!!」
声を上げ駆け出す俺と祥子。
「でやあああっ!!」
「てえええいい!!」
<バチン!バチン!>
竹刀が激しくぶつかり音が鳴り響く。
「でぇええいい!!」
「はあああああぁぁぁっ!!」
鍔迫り合いになる。修行しただけあって中々やるな!
「やるな!豊川祥子!」
「そちらこそ!」
「そういえば一つ聞きたいことがあった!」
「なんですの!こんな時に!?」
「なぜ君は幸人君にそこまで拘るんだ?彼は君にとってなんなんだ?」
「それは……‥‥幸人さんだからですわ!!」
「なに!?」
「似ているんですのよ‥‥‥‥私と彼は!海と空のように!海と空は互いに向き合いながら、決して交わることはない!ですが、どちらも青いですわ!」
そう言い張る祥子。なんかよくわかんないけどわかった気がした。ようは俺と祥子は似た者同士ってことか。
「そうか…‥‥‥わかった」
「納得したようですわね。では、続けますわよ!!」
「ああ!!」
一度引いて体制を立て直す。
「うおおおおおおおお!!」
俺は再び走り出し祥子の胴の部分を狙う。だが
「はっ!」
「なに!?」
俺の攻撃は防がれしまった。
「あなたが顔や手を狙わず胴を‥‥‥‥しかも力を加減して叩くのはわかってましてよ?」
「!!」
こっちの考えはお見通してことか。
「私を女性だからとそのようなことをされては困りますわ。今のは私は一人の剣士でしてよ!」
祥子の真剣な眼差しが俺の視界に入った。
これは本気でやんないと失礼だな……‥‥‥
「‥‥‥‥いいだろう。なら、加減抜きの本気で行かせてもらう」
お前を女子ではなく一人の剣士として倒してやるよ。
「むおおおおおおおお!!!」
「!?」
俺の強烈な一振りが祥子の竹刀と激しくぶつかる。
「くっ!!」
「でえええええいいい!!」
俺は攻撃の手を止めることなく続けて竹刀を振るう。
「どうした!君も本気で来い!でなければ勝てないぞ!!」
「調子に…‥‥‥乗るなですわ!!」
祥子は押し返し俺を少し後退させた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今度は祥子が攻撃してくる番のようだ。さぁ、来るがいい!!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は竹刀を頭上に上げたままユキ仮面へ向かい駆けだした。
「(この一撃で当てますわ!)」
顔狙うと見せかけて防ごうとした手を叩く!これで一本もらいましたわ!!
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
竹刀を降り下ろし顔を狙うふりをする。
「ぬっ!」
ユキ仮面は予想通りに防ごうとしましたわ。もらいましたわ!!
「隙ありですわ!」
狙いを手に変えすぐに竹刀を振る方向を変えた。ですが‥‥‥‥
「はっ!」
「がはっ!」
ユキ仮面は竹刀を目にも追いつけない素早さで持ち替え私の胴に強烈な一撃を叩きこんだ。
「くはっ……‥‥‥」
腹部を抑えその場に膝を着いた。やはり防具無しだと滅茶苦茶痛いですわ…‥‥‥
「まずは一本もらったぞ」
「くっ‥‥‥‥まだまだこれからですわ!」
一本先に取ったぐらいでいい気にならないでくださる!?今のはまぐれですわ!!
「二戦目行くぞ」
「ええ」
指定位置に戻り竹刀を構える。
「‥‥…‥‥うおおおおおおお!!」
「はああああああああああ!!」
私の竹刀とユキ仮面の竹刀がぶつかる。
「てえいい!てえいい!」
激しい連撃を与え続ける。次こそ勝ってみせますわ!!
「……‥‥‥」
ユキ仮面は無言で私の攻撃を防いでいる。なんですのその余裕は?
「この!この!この!」
「………‥‥‥やはりこの程度か」
「?」
今の言葉、どういう意味ですの!?
「はっ!」
「うっ!」
ユキ仮面に押し返される。
「さて、ここいらで俺の技を見せてやろう」
ユキ仮面は竹刀を円を描くように回し始めるユキ仮面。
「(挑発しているつもりですの!?)」
動きがゆっくりで今なら当てれるチャンスですわ!
「隙ありですわ!」
私はユキ仮面目掛けて走り出し竹刀をグッと握った。
「やあああああ……‥‥!?」
ふとユキ仮面の背後を見ると太陽が見えた。これ一体なんなんですの!?
「飛羽返し!!」
「!!」
背景の太陽に見とれているところを竹刀の連続が私を斬り裂いた。
「ああっ……‥‥‥」
顔、手、胴に当たり私はその場に倒れ伏せた‥‥…‥‥
「勝負あったか……‥‥」
俺は倒れ込んだ祥子を見つめながらそう呟いた。
「この状態じゃもう戦うのはもう無理だな」
一応もう一本当ててこの勝負を終わらせよう。
「これで決着だ……‥‥」
俺は竹刀を高く上げ倒れる祥子に向けて降り下ろした。
『お邪魔しますわ』
あれは中等部の頃燈に会いに家に向かったのですが学校の用事で遅くなると連絡が来てその間どうしようか考えていると幸人さんがやってきて『燈が来るまで俺の家で待ってろよ』といいお邪魔することにしましたわ。
『今、お茶淹れるからな』
『あっ、そんなお構いなく』
幸人さんは台所行きお茶の準備をし始めましたわ。
『今日はバンド練習じゃないのか?』
『ええ、今日は燈の家で星座の本を読ませてもらう約束をしたんですの』
『へぇ~そうか』
幸人さんはそう言ってなにやらガサゴソと何かを取り出していますわ。
『(幸人さんのお家、初めて来ましたわね‥‥…‥‥)』
燈の家と似たような内装でこれが一般家庭の家なんですのね。
『(幸人さんのお部屋はどんな感じなんでしょうか……‥‥?)』
男の子の部屋に入ったことはないので気になりますわ。
『はーいお待たせ』
『あっ』
幸人さんは紅茶が入ったカップときれいな丸い形をして四角形のバターとハチミツがかかったホットケーキの乗ったお皿をトレイをを持って来てましたわ。
『ほーら祥子、お母さん特製のホットケーキよ!召し上がれ!なんちゃって』
「!!」
(『ほーら祥子ちゃん。今日のおやつはお母さん特製のホットケーキよ。召し上がれ!)』
今の幸人さんの言葉を聞いて記憶の中のお母様が蘇る……
『お母様……?』
『えっ?』
『い、いえ!なんでもありませんわ!いただきますわ!』
幸人さんをお母様と呼んでしまい恥ずかしいですわ。とりあえずこのホットケーキをいただきましょう!
『はむっ……‥‥!これは‥‥…‥‥!』
このホットケーキ、お母様が作ってくれたものと同じ味ですわ。
『どうだ?美味いか?』
『‥‥‥…‥‥』
『祥子?』
『‥‥‥‥‥‥う、ううっ……‥‥』
『えっ!?』
私は思い出の味を口にして涙が出てきましたわ。
『泣くほどマズかったのか!?』
『い、いえ……‥‥違うんですの。このホットケーキ、亡くなった母が作ってくれたの同じ味がして…‥‥‥それを思い出したらつい涙が……‥‥‥』
『そうか、そうだったのか……‥‥‥ほら、ティッシュ使え』
『ありがとうございますわ‥‥‥』
ティッシュを受け取り涙を拭いた。
『祥子、このホットケーキ食いたい時はいつでも言ってくれ。作ってやるからさ』
『幸人さん‥‥…‥‥』
『お母さんとの思い出の味なんだろう?完全再現はできないかもしれないけどお前の笑顔のために頑張るぜ」
幸人さんは笑顔でそう言った。その笑顔はまるで太陽のように輝いていますわ。
『さぁ、おかわり焼いてやるから遠慮せず食え!』
『は、はい!』
幸人さんと交流するこのひと時大切にしたいですわ。
「これで決着だ……‥‥」
俺は竹刀を高く上げ倒れる祥子に向けて降り下ろした。その時
<バチン!>
「!!」
祥子は竹刀で俺の一振りを防いだ。
「なに!?」
「‥‥…‥‥私は……‥‥‥」
祥子は竹刀を防いだままゆっくりと立ち上がる。
「私は全てを失いましたわ……‥‥家も優しい両親も幼馴染も運命を共にしようとしたバンド、全てを賭けて作り上げたバンドも……‥‥‥」
祥子はそう言い俺の竹刀を押し返そうとする。こいつまだこんな力が!
「けど‥‥…‥‥最後に残った大切な人だけは‥‥…‥‥失いたくありませんわ!!」
「ぬおっ!?」
急に力が強くなり押し返され俺は体制を崩した。
「豊川祥子…‥‥‥やっと覚醒したか」
お前に足りなかったのは熱い闘志だ。それがなければいくら鍛錬を積んだところで勝負に勝つことなどできない!
「ユキ仮面……‥‥‥‥今からの私は少し違いましてよ?」
「ほう、見せてもらおうか」
竹刀を構え攻撃する瞬間を待つ。
「‥‥……‥‥!!」
「なっ!?」
祥子が動き出す。な、なんだこの速さは!?さっきまでとは違う!
「くっ!」
祥子の連撃を防ぐ俺。さっきまでとは立場が逆転している。
「はっ!」
「しまった!」
一瞬油断して手に竹刀が当たってしまった。
「一本取られたか……‥‥‥」
「これで一勝ですわ。さぁ、続けますわよ」
「もちろんだ」
この勝負、本気で勝ちに行かせてもらうぞ!!
「行くぞ!」
俺は駆け出し竹刀の先端を祥子に向け突きの体制に入る。
「ガトチュゼロスタイル!!」
渾身の一撃が入った‥‥…‥‥かに見えた。
「!?」
「当てたつもりでして?」
祥子はこの突きも防いでいた。こいつなんて成長スピードだ!?
「そこですわ!!」
「ぐほっ!?」
竹刀を叩き落され突き攻撃が俺に直撃した。
「がはっ……‥‥‥」
「これでお互い二本勝ちですわね」
「はぁ…‥‥はぁ…‥‥‥ああ、そうだな」
両者同点。ここまでやるとは想像以上だぜ……‥‥
「この勝負で全て決まりますわね」
「そうだな」
五回目の勝負、これが最後ということになる。
「この勝負、俺の全てを出し尽くす!」
「それは私もですわ!」
俺も祥子も闘志を燃え上げる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‥‥…‥‥!!」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……‥‥‥!!」
お互い体から炎が燃え上がっているように見える。俺も祥子も全てをぶつけるつもりだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ああああああああああああああああ!!」
駆け出しお互いの竹刀をぶつけ合う。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!」
「うわああああああああああああああああああああああっっっっ!!!」
闘気と闘気のぶつかり合い、凄まじいエネルギーを感じる。
「「でやあああああああああああああああああああああああああ!!!」」
激しいぶつかり合い続きなぜか砂塵が巻き起こり視界が遮られた。
「……‥‥‥…‥‥」
「…………‥‥‥‥」
砂塵が収まり視界が見えてきた。勝負の行方は‥‥‥…‥‥
「‥‥……‥‥……‥‥!!」
「‥‥……‥‥‥‥‥‥ふっ」
祥子の竹刀が俺の顔に直撃していた。つまり俺の負けで祥子の勝ちだ。
<ミシミシ……‥‥‥パリン>
「えっ‥‥…‥‥?」
竹刀の一撃で俺の付けていた仮面がひび割れていき砕けて俺の素顔が露わになった。
「ゆ、幸人さん‥‥…‥‥?」
「俺の負けだぜ、祥子」
ついに祥子に正体がバレちまったぜ。
「…………‥‥‥‥…‥‥」
「……‥‥……‥‥‥…‥」
おれから数十分が経過しお互い無言で沈みゆく夕日を眺めていた。
「(き、気まずい……‥‥‥)」
正体がバレて何を話せばいいのやら…‥‥‥‥
「…‥‥‥‥…‥‥あ、あの「あの………‥‥‥」あっ」
話を切り出そうとするが言葉が重なった。
「ゆ、幸人さんからどうぞ!」
「お、おう…‥‥‥‥‥‥ごめん!」
「えっ!?」
頭を下げて祥子に謝る俺。
「なんかお前を騙すような真似しちまって……‥‥‥」
「そ、そんな!私の方こそちゃんと幸人さんの話を聞かなくて申し訳ありませんわ!」
祥子も頭を下げて謝り始める。
「いやいや俺の方が悪いって!」
「いえいえ私の方が!!」
「俺が!」
「私が!」
お互い謝り合いこれじゃあいつまで経っても終わらん!
「俺……‥‥‥」
「私‥‥…‥‥」
「「……‥‥…‥‥ぷっ!あははははははははははは!!」」
なんかおかしくなり笑ってしまった俺たち。
「ふはははっ、とりあえず謝るのはもうやめようか」
「うふふふっ、そうですわね」
笑うのをやめて一旦落ち着く俺たち。
「‥‥…‥‥きれいな夕日ですわね」
「ああ…‥‥‥そうだな」
沈みゆく夕日を見つめる。夕日をゆっくり見るのはいつぶりだろうか……‥‥
「……‥‥‥祥子」
「はい?」
「ありがとうな」
「えっ?」
「勘違いだけどさぁ、俺のためにここまでしてくれてありがとうな」
「い、いえ!!好きな人のためですし……‥‥」
「えっ?なんだって?」
「な、なんでもないですわ!」
「?」
なに急に顔赤くなってんだ祥子のやつ?
「祥子、改めて俺と友達‥‥…‥‥いや、親友になってくれ!」
「!!」
ここまで俺のために動いてくれるなんてもう友達超えて親友だろ。
「も、もちろんですわ!」
祥子と固い握手を交わし俺たちの関係はまた元に戻った。これにて一件落着だな。
「なーーーっはっはっはっはっ!!」
「!?」
「なんですの!?」
この笑い声どこかで聞いたことあるぞ!
「全て見ていたよ!!君たちの熱い決闘!そして友情の契りを!!」
「常夏代表!?」
なんで常夏代表がここに!?
「あの人、私をここまで送ってくれた人ですわ!」
「なに!?」
祥子をここまで連れてきてくれたのって常夏代表だったのか!
「一度は離れてしまった二人、だがしかし!魂をぶつけ合いお互いの気持ちを理解し再び友情を取り戻した!これぞまさに!ラッキーグレイトフルサンシャイン!!」
「うおっ!?」
常夏代表が俺の肩を掴み口癖のラッキーサンシャインを叫ぶ。
「君たちを見て私も次の選挙戦頑張れそうだ!!この気持ち!ドッカン大噴火!!」
「は、はぁ‥‥…‥‥」
「さぁ!帰りも送ってあげよう!!麓まで走るぞー!!」
そう叫びながら下山する常夏代表。その靴で下山するの?
「なんだか熱い人ですわね……‥‥‥」
「そうだな‥‥…‥‥よし、俺たちも帰ろうか」
「ええ、そうですわね」
俺と祥子も続いて下山することにした。祥子とまたこうして交流できるのが俺はすごく嬉しいぜ。
「幸人さん、常夏代表はどこの党の代表なんですの?」
「ん?えっと…‥‥‥日本モモタロウ党だったかな?」
「そうですの…‥‥‥決めましたわ!豊川家は全面的に日本モモタロウ党を支持しますわ!」
「お、おう…‥‥」
立希に続き祥子まで日本モモタロウ党推しになったのであった。