ホワイトルームを否定?めんどくさいのでやりません。   作:ルフホワハ

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今回途中で1回長谷部視点になります〜。


#3 やる気の根底

Dクラスは今、歓喜に湧いている。

それもそのはず、中間テストを退学者なしで乗り切ることができた。

 

「あなた、本当に中間テストの1件には関わっていないのよね。」

「そうだが。」

 

まあ半分嘘で半分本当の事だ。

 

 

長谷部からのメールがあった夜、映画研究会存続のため俺は2つの案を講じた。

 

1. 先輩から過去問を入手し、試験前日に平田に事情を話してクラスメイトに渡してもらう。少々手痛い出費だったがテストに何かしらの法則性があるのは確信していたし、全く同じじゃないとしても傾向は似ているに違いない。

また池、山内、須藤の3人には俺なりに過去問の要点をまとめたノートを事前に渡した。

ノートを見ない可能性もあったが『点数を取らなければ女子とも遊べず退学になるぞ。』と脅しをいれたら何とかなった。

 

 

2.長谷部に勉強を教えた。……とは言っても過去問の傾向から出るであろう問題をいくつか解かせ、分からない問題はその解き方・考え方を指南しただけだが…。

 

本来なら2の策を実行するだけでいいかもしれないが、仮に退学者でも出ればまたペナルティを喰らいかねないからな。

俺の映画鑑賞に当てる費用がこれ以上減っては困る。

 

 

俺にしてはだいぶやる気を出した方だ。

ポイントも自腹だし、要点をまとめたノートまで作った。

もうしばらくはクラスに深く肩入れする必要は無いだろう。

 

 

「きよぽんありがと〜。おかげでいい点取れたよ。」

長谷部は思いのほかいい点が取れて喜んでいるようで、こちらに駆け寄ってきた。

素直に感謝されると教えた甲斐が有るな。

 

「どちらかと言えば平田が持ってきた過去問とお前自身の頑張りのおかげだ。俺は少し手助けをしたまでに過ぎない。」

「またまたー、謙遜しちゃって〜。」

肘でお腹をつつかれた。こそばゆいなこれ。

 

「長谷部さんには協力するのに、私には協力してくれないのね。」

「それとこれとは訳が違うさ。お前に協力してもメリットはほとんどなかった。それにリーダーになりたいなら一人ぼっちの俺なんかに頼らず、櫛田や平田と友好関係を持つ方が先なんじゃないか。」

「……。」

堀北は黙ってしまった。少し言い過ぎたか。

 

「2人とも何の話してるの?」

「大丈夫、こっちの話だ。」

 

この場にいるのも気まずいな、離れよう。

 

「長谷部ちょっといいか?」

「おっけー。」

 

 

 

長谷部を廊下に連れ出すことに成功した。

 

「長谷部から見て、このクラスの女子のリーダーは誰に見える。」

「急だね〜。んー軽井沢さんか櫛田さんかな?女子の話題の中心にはあの2人のどっちかがいつもいるイメージあるし…。」

 

女子目線で見てもやはりあの2人か。

 

「なんでこんなこと聞いてきたの?」

「女子の話には疎いからな……。それにこういうことを聞けるのは長谷部しかいないんだ。」

 

少し言い方に語弊があったがまあいい。

 

「へー…そうなんだ。まあ私でよければいつでも協力するよ。」

 

長谷部は一見さっぱりしているように見えるが、意外と協調性のあるタイプなんだな。

それなのに孤高を貫くタイプだというから不思議だ。

 

「もう1つ質問するぞ。長谷部は今、堀北に対してどういう印象を持ってるのか聞かせてくれ。」

「んー、頑張りが空回りしてるなーとは思う。

多分リーダーになりたいんだろうけど、平田くんや櫛田さん以上の存在になるのは無理そうかなって。」

 

中々厳しい言葉だがこれは事実だ。

今回の中間テストの一件も堀北ではなく平田が解決している。

傍から見たら『リーダーになりたいのに能力が伴ってない可哀想な子』のように映っているに違いない。

 

「色々質問して済まない。もう次の授業が始まるし戻るか。」

「そうだね、戻ろっか。」

 

色々一段落ついたところだ。

ポイントも無事支給されることだし、しばらくは映画研究会の方に集中できそうだな。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

金曜日の放課後、私はいつものように部室へと足を運んでいた。

 

部室にある映画は見たことあるやつばっかりだし、レンタルショップにでも行って新しいの借りてこようかなー。

あーでも清隆くんが何見たいのかも分からないし、1回相談した方がいいのかも。

 

「……っざけんなよゴラァ!バカにしてんのか!!」

「ぎゃーぎゃーうるせえんだよ須藤!てめえは落ちこぼれなんだから俺らに逆らうんじゃねえ!」

 

……すごい物騒な声が聞こえる。

うわあ、上に上がる階段のとこで揉めてるじゃん。どうしよ。

 

「ほら、早く土下座しろ土下座!」

「もう許せねえ!ぶん殴ってやるよ!」

 

こうして陰から見ている間にも喧嘩はヒートアップしている。

清隆くん呼んだ方がいいかな……。

よし、呼ぼう。

 

スマホは確かポケットに……、

「あっ…!」

 

カタン

 

スマホを落としてしまった

 

「……おい、誰かそこにいんのか。」

「んな事は今どうでもいいだろ!殴らせろや!」

「おいお前ら、そいつ抑えとけ。」

「うっす!」

 

まずいまずいまずい。どうしよう。

 

恐怖で足が動かない。

 

「そんなとこにいやがったのか…。いつから聞いてた?」

「何のこと?」

「しらばっくれんじゃねえよ。その割には膝が笑ってるように見えるぜ。」

 

言い訳も通用しない。

 

「1発殴られれば黙るよなあ!」

相手の拳が振りかぶられる。

 

 

誰か……助けて。

 

 

 

 

 

「ガハッ…!」

目の前の相手が突然倒れた。

 

「……え?」

 

恐る恐る顔を上げれば、映画研究会でよく見るあの顔があった。

 

「……清隆くん…。」

「大丈夫か長谷部。怪我は…なさそうだな。」

「す、すまん長谷部。俺が挑発に乗ったせいでお前まで巻き込んじまった。」

「あ、ああ……。」

安堵の余り膝の力が抜けてしまい、床に座り込んでしまった。

 

「須藤は先に帰っててくれ。こっちのことは何とかする。」

「……本当にごめん。綾小路、長谷部。」

「話は後日きっちり聞かせてもらうからな。」

「……分かった。」

須藤くんは去っていく。

 

「立てそうか?」

清隆くんが手を差し伸べてくれる。

初めて握った彼の手は、とても温かかった。

 

「……なんでここに来れたの?」

「先に部室にいたんだが、怒鳴り声が聞こえてな。それで降りてみたらお前が危ない目に合ってたというわけだ。」

「……そうなんだ。きよぽん、強いんだね。」

 

私を殴ろうとした人だけでなく、須藤くんを押さえつけていた2人も床に倒れ込んでいる。

 

「人には急所というものがある。そこを狙ったに過ぎない。それに、手っ取り早く止めないとお前に危害が加わりかねなかったからな。」

 

 

その言葉と共に、涙が出そうになる。

だけど私はそれをグッと堪えた。ダサい所、見せたくないもん。

 

「……。」

察してくれたのかは分からないけど、彼は手を軽く頭の上にのっけてくれた。

 

この時間がずっと続けばいいのに。

 

心の底からそう思った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「……。」

「……。」

 

あの後長谷部の精神面の事を考え、長谷部を寮まで送り届けることにした。

あんなことがあった後だ。お互い会話が弾まないのも仕方ない。

 

「ここでいいか?」

あっという間に寮の前まで着いた。自然と歩くペースも速くなってたみたいだな。

 

「うん、大丈夫。それと…ありがとう。守って貰った上にここまで送らせちゃってごめんね。」

「なぜお前が謝る。お前は何も悪いことはしてないだろ。」

 

長谷部は元から男が少し苦手だ。

殴る直前まで詰められてたのなら相当な恐怖だったに違いない。

それなのに俺に謝るというこの態度、優しすぎるな。

 

「……どこまでも気を遣ってくれるんだね。」

「月曜日は来れそうか?」

「多分大丈夫。もう夜になるし、またね。」

「……ああ。またな。」

そこで長谷部とは別れた。

 

恐らくあいつはまだ相当無理をしている。

ついさっき会話を余りせず帰ったのも、俺に弱い所を見せたくないからだろう。

 

 

……今回の件、実際にあいつらが暴行を行ってないことからどんなに証拠を集めようとも大した制裁は受けないだろう。

だが、それでは納得いかない自分がいる。

なぜ心優しい奴が傷つき、暴行を加えようとしたやつが普通に生活を送れるのか。

 

 

 

 

 

 

 

「あいつらはまだ、学校近辺にいるはずだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




軽く補足
・須藤が素直に謝り、また綾小路の実力に言及しなかった理由。
→綾小路が雑魚2人を倒した後、こっちを物凄い眼力で見てきて『余計な事を言うな』という意志を感じたから。

と須藤くんは後に語っています。

・長谷部は表ではきよぽんと呼んでますが、心の中では清隆呼びです。

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