ホワイトルームを否定?めんどくさいのでやりません。 作:ルフホワハ
「まだ痛むわ…。俺らを殴ったの、誰なんだろうな。」
「ちっ、一撃で意識を刈られるとは情けねえ。龍園さんになんて言えばいいか…。」
「須藤が挑発に乗らなかった…とかでいいんじゃないか?」
「そんなんじゃあダメだ。龍園さんなら簡単に見抜いてくる。」
「それじゃあどうするって言うんだよー。殴られるのは勘弁だぜ。」
夜道を歩く先程の3人組。
何やら今後の話をしているようだが、全て筒抜けだ。
申し訳ないが、痛い目見てもらうぞ。
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「おい聞いたかお前…。Cクラスのやつがリーダーの龍園ってやつにボコボコにされたらしいぜ。」
「聞いた聞いた。本当に恐ろしいクラスだよなあそこ……。」
今は昼休みなのだが、クラスの話題はCクラスの話で持ち切りだ。
「綾小路も怖いと思うだろー?」
池にそう聞かれた。
龍園が暴力を振るうように促したのは俺だ。
方法は至って単純。
あの日尾行して録音した音声データを匿名で龍園に送り付ける。
恐らくあいつの目的は須藤に暴力を振るわれたと虚偽の申告をすること。それを達成出来なかったあいつらは確実に制裁を受ける。
それに、言い訳をして逃れようとした事実も録音されているわけだ。
完全に火に油を注ぐに違いない。
己の手を汚さずに間接的に制裁を与えられた。
これは大きな成果と言えるだろう。
「そうだな。俺もできる限りあのクラスとは関わりたくない。お前らも下手に挑発に乗らないよう気をつけとけよ。」
この場にいる池と山内はいつやらかすか分からない。
喝を入れとかないとな。
「「うい〜っす。」」
揃いも揃ってやる気のない返事だこと。
「きよぽん、ちょっといい?」
急に声をかけられて誰かと思ったが、長谷部か。
「どうした?」
「あのー、そのー…。一緒に学食行かない?」
「構わないぞ。」
「てんめぇ……綾小路!裏切ったな!!」
何やら後ろが騒がしい。
「あの2人は放っといていいの?」
「気にするな。一緒にいるとバカが移るぞ。」
「中々言うね〜きよぽんも」
否定はしないあたり、こいつも内心あいつらをバカにしているんだろうか。
「……すまんな。誘ってもらった上に定食までおごってもらって。」
「ううん気にしないで!この前のお礼と思ってくれたらいいから。」
ありがたくいただくが、何やら長谷部は神妙な面持ちだ。
「俺の勘違いならいいんだが、何か悩み事でもあるのか?」
「 いやあ……。悩み事というかなんというか…。」
「言いたくない事なら無理して言わなくて大丈夫だぞ。」
「そのさ…、連絡先交換しない?」
「俺もその話をそろそろしようかと思っていたんだ。タイミングがいいな。」
「結構勇気出したのに…意外とあっさりだね。」
「そんなことないぞ。あまり表情に出ないが、内心俺はかなり喜んでる。」
「……!」
なんだか照れているように見える。
映画で学んだ男女の会話のいろはが役に立ってるかもしれない。
ところで……、
「本当の用件はここだと言いづらいことなんだろ。後で連絡をくれ。」
「気づいてたんだ……。わかった、あとで送るね。」
好意を抱いている相手でもあるまいし、連絡先の交換ごときで女子がこんなに緊張するわけがないことは分かってる。
……にしても、映画研究会に入ってからというもの、厄介事によく巻き込まれている。
俺の選択は間違っていたのだろうか。
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あの後長谷部から来たメールの内容はこうだ。
長谷部が最近仲良くなった佐倉という女子。
そいつから最近、家電量販店店員から変な視線を感じるという旨の相談をされたらしい。
それに帰り道を誰かにつけられてるという事も同時に相談されたそうだ。
もちろん、長谷部も警察か先生に相談した方がいいんじゃないかと助言したらしいが、本人曰く証拠もないし無理だろうから意味が無いだろうということで断られた。
そこで俺に話が回ってきたということらしい。
既に策はある。
だが長谷部が納得するかはなんとも言えん、メールじゃなくて電話で確認するか。
果たしてでるか……
『きよぽんから電話かかってくるなんてびっくりしたよ〜。こんな時間にどうしたの?』
3コールで出た。早い。
女子のマナーというものなんだろうか?
『夜遅くにすまん。佐倉の件で俺がやろうとしてる事を話しておこうと思ってな。』
『え!もう考えついたの!?』
『……少し強引な方法だがな。』
『聞かせて貰える?』
そこからは以下のことを話した。
・佐倉が学校への相談を渋っている以上、俺たちで警察or先生を動かさなくてはならないということ。流石に生徒だけで解決できる話じゃないからな。
ではどうするか、
・まずは長谷部が佐倉を路地裏…とりわけ通行人の少ない所に呼び出す。
そしたら恐らく例のストーカーは好機だと思い佐倉を襲いにかかろうとするはず、それを呼んできた警備員に取り押さえてもらう。
一通り説明は終えたが……、
『きよぽん、流石にその案は納得できないよ。要するに愛里ちゃんを囮にするってことでしょ?』
『万が一があれば俺も近くにいる。手が出される前に鎮圧するさ。』
『きよぽんも危ない目に合うかもしれないんだったら、尚更納得出来ないかも。』
やはり一筋縄ではいかないか。
『納得出来ないのであれば無理強いするつもりは無い。尤も、これ以外に案は浮かばないから後はそっちでやってもらう事になるがな。』
『……それは…。』
『元々俺には関係ない話だ。長谷部から持ちかけられた話だから色々考えたが、佐倉を助ける理由は本来ない。』
長谷部もこの何日かで俺という人物をある程度は知ったはずだ。
この言葉が俺の本心であるということぐらい理解しているだろう。
『……分かった。きよぽんの考えたその案、実行しよう。』
『理解して貰えたようで何よりだ。取り急ぎ佐倉へ待ち合わせの連絡を入れといてくれ。人気のなさそうな場所ならどこでもいい。』
『おっけー。』
『話は以上だ。長電話しても悪いだろうし、もう切るぞ。』
『あ……。』
『どうかしたか?』
『ううん、なんでもない。またね。』
長谷部は気づいていないようだが、この案には欠点がある。
それは『長谷部が悪者にされかねない』という所だ。
「あなたが人気のない所に呼んだから怖い目にあった。」
と言われればそれまでだ。
……さて、どうしたものか。
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そこは、人気のない公園。
「波留加ちゃん、まだかな……。」
「へへへ…ようやく見つけた〜。」
例のストーカーがようやく姿を現した。
「だ、誰ですか!?こっちこないで…!」
「なんで逃げようとするんだい?僕と君は愛し合っているんだ…。」
「ひっ……!」
「あいつですあいつ!!変質者です!」
長谷部が警備員を連れてきた。ナイスタイミングだ。
「ちっ、なんでこんな所に…!」
「逃がさないぞ。」
「てめぇだれ…いたっ!!」
逃げようとするストーカーの前に現れ、軽く足をかけて転ばせた。これぐらいなら問題ないだろう。
「大人しくしろ!!」
「俺達は愛し合ってたんだ!くそぉ!ちくしょう!」
そのままギャーギャー叫びながら男は警備員に連れてかれ、一先ずその場は落ち着いた。
実際に危害を加えようとしたところを目撃されている以上、この施設から追い出されるのは確定だな。
「愛里ちゃん…!無事でよかった…!」
「2人とも本当にありがとうございます…。ところで、なんで綾小路君がいるんですか…?」
「それは……。」
「さっきの一連の流れは俺の作戦だったんだ。怖い思いをさせてしまって本当に申し訳ない。この事の全責任は俺にある。」
俺は深々と頭を下げる。
これでいい、これでいいんだ。
「ちょっと、きよぽん何言って「長谷部は責めないでやってくれないか。本気で佐倉の事を心配したからこそ、俺に相談を持ちかけてきたんだと思うんだ。」
「……でもそれって、私を守るために2人ともやってくれたんだよね。責めることなんて一切しないよ。そもそも私が学校に相談してれば良かったことなんだし…。むしろ、本当にありがとう。」
佐倉が頭を下げる
「私もごめん!!色々考えてくれたきよぽんの事も責めちゃったし、愛里ちゃんにも何も言わずに色々進めちゃって……。」
長谷部まで頭を下げている
……なるほどな。
俺は罪を誰か一人が被ればいい。
そう思っていたが違ったようだ。
罪を3人で平等に被る、それこそが最善というわけか。
その後、佐倉は事情聴取のため連れて行かれ、俺と長谷部の2人きりになった。
「ほんとにびっくりしたよ〜。『責任は全部俺にある』なんて言っちゃうんだからさ〜。」
「事実を述べたまでだ。」
「かっこつけちゃってー!うりうり〜!」
どうも長谷部は肘で人を突くのが好きみたいだ。
「……ねえきよぽん、今週の土曜日暇?」
「俺が休日にやることなんて映画を観るか読書ぐらいだ。全然暇だぞ。」
「ならさ、、.」
「で、デート行かない?」
やったぞバカ親父。
俺にも春が来たみたいだ。
学生生活を楽しむと言った割に面倒事に巻き込まれてる綾小路が可哀想になってきた。