ホワイトルームを否定?めんどくさいのでやりません。 作:ルフホワハ
突然だが『禍福は糾える縄の如し』という言葉を聞いた事はあるだろうか。
この言葉は、『縒られた縄のように災いと幸福は互い違いにやってくる。』という意味を持っているのだが……
俺は今、まさにそれをひしひしと実感させられている。
「俺に何の用だ、龍園。」
デートへ行くため寮を出たところ、龍園とその取り巻きに待ち伏せされていた。
「ははっ、別に大したことじゃねえよ。ちょっとした質問をしに来ただけだ。」
「この後予定があるんだ。手短に済ませてくれ。」
「随分と肝の座ったやつだ。なら単刀直入に聞く、この前俺の部下が何者かに尾行までされていたんだが……
何か知らないか?」
そんなギラついた目でこっちを見ないでくれ。
野郎に見つめられても何も嬉しくない。
「……何も知らないな。そもそも、俺がそんなこと出来るように見えるか?」
「見えねえが、これは俺が怪しいと思ったやつに聞いてる事だ。ある程度絞りきれた上でお前が候補に挙がってる事も忘れんなよ?」
「要件はそれだけか?なら、先を急がせてもらうぞ。」
「ああ、時間を取らせて悪かったな。」
龍園はそう言いながら不敵な笑みを浮かべている。
俺は入学してから今まで、表面上では実力を出すような事を一切していない。なのに俺が候補に挙がっていた。
龍園翔はいつか必ず俺……
「……先手必勝、か。」
よからぬ考えが俺の脳裏をよぎる。
いや、余計な事はしない。
学生生活を楽しむって決めたじゃないか。
「すまん、待たせた。」
「全然待ってないから大丈夫だよ。にしてもきよぽんにしては珍しいね、遅刻なんて。」
「ちょっとめんどくさいやつに絡まれてな……。」
「あらま〜。きよぽんも大変だねー。」
さて、ここからどこに行くかだが……
デートをするにあたって俺はどうするべきか、それを平田から事前に習っておいた。
・その1。デートプランは男が考えるとよし。お互いが確実に楽しめる場所を選べ。
・その2。後は全力で相手を楽しませる。以上。
この教えに従って俺はデートプランをある程度組んできた。
「最初はレンタルショップに行かないか。そろそろ部室に置いてある映画は見終わる頃だろ。」
「いいね〜。私も見たことあるやつばっかで新鮮さが無かったからちょうどいいかも!」
こうしてレンタルショップに行くことになったわけだが、ただ選んで借りるだけではどうも味気ない。
そこで1つ俺からゲームを考案した。
ルールは至って簡単。
・好きな映画を1人2本ずつ選ぶ。
(但しその映画のタイトルは3文字以上)
・借りてきた映画を文字数順に並べ、3番目を当てた方の勝利。
(仮にその4つの映画の文字数が3.4.5.6だった時、5を選んだ方の勝利)
・できる限り見たい映画、面白そうな映画を選ぶこと。
・制限時間は30分
「さて、どうするか……。」
ゆっくりと店内を見回る。
ひとまず連続する数字を選ぶのは確定だ。
後は長谷部が何文字程度を攻めてくるかを当てる運ゲーだがな…。
ハリー○ッターと謎のプリンス
あらすじだけ見たが、中々面白そうな作品だ。
14文字だし、1つ目はこれでいいか。
30分後、お互い作品を借り終えてきた俺たちは1度カフェに行き互いに借りた作品を見せ合うことにした。
「「せーの」」
俺の1作品目は、14文字。
長谷部の1作品目は、17文字。
「次が勝負だな。」
「そうだね。なんか謎に緊張してきた〜。」
「「せーの」」
俺の2作品目は、13文字。
長谷部の2作品目は……15文字。
「……負けた。」
「よしっ!きよぽんがカフェの代金奢ってね!!」
「もちろんだ。にしても、ハリー○ッター作品が被るとはな。」
「私映画の知識ないからさ〜、何となく聞いたことある作品探してたらこれに行き着いたって感じ。それに魔法学校とか面白そうじゃん?」
「驚いた。俺と全く同じ理由だぞ長谷部。考えてる事が似てるのかもな。」
「そ、そうみたいだね。」
何故か少し長谷部の顔が紅潮している。
「まだ時間はあるが、どこか行きたいところはあるか?」
「ならちょっと買い物に付き合ってもらっちゃおうかな〜。」
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その後もショッピングにご飯と巡り、気づけば夜を迎えていた。
「楽しかったね〜。」
「お前がそう思ってくれたのなら良かった。俺も楽しかったぞ。」
もう俺たちは帰路についているわけだが、
知り合いに会うこともなく終えれたのは幸運と言えるだろう。
ましてや同じクラスのやつと会ったらどれだけめんどくさい事になっていたか……想像したくもない。
「ちなみに今日のデートに点数をつけるとしたら何点だ?今後の参考にしたい。」
「こ、今後ってどういう……。」
「あー……すまん。そんな深い意味は無いと思ってくれ。」
また長谷部の顔が紅潮している。
今日だけで3回ぐらいみた気がするけど気のせいだろう。
「きゅ、95点かな!」
「あと5点、何が足りなかったか教えてくれないか。」
「遅刻とかは全然いいんだけど…。その〜…服を褒めてくれたらなーっていうか……。」
なるほど。またひとつ賢くなった。
よし、ここは1つカマしてやろう。
「今更言うのもなんだが、凄く似合ってるぞ。」
「……ありがと。」
ものすごく変な雰囲気になってしまった。長谷部が謎にそっぽを向いているせいで妙に話しずらい。
なんか気まずいしこのまま帰るとす「綾小路くんじゃない。こんな時間に何して……」
堀北だ。なんでこうもタイミング悪く来る。
「お邪魔だったようね。失礼するわ。」
「待て堀北。少し話を聞いてくれ。」
「嫌よ。クラスの問題から目を背けて遊んでいる人と話す事は何も無いわ。」
明らかに言い過ぎだ。この女、終わってる。
横の長谷部もドン引きしている。当たり前だな。
「お前、そんなんだから兄貴に見限られるんじゃないのか。」
「…っ!なんでそれを!」
「あの日飲み物を買いに行っててな。たまたま見かけたんだ。『あなたに必ず追いつきます』だったか。人を見下し、弱者を全て切り捨てるその姿勢で本当にAクラスになれると思ってるのか?」
「……それは…。」
「お前が1番分かってるだろ。あとお前、友達がいないからって俺に当たってくるのはやめた方がいい。他人からしたらものすごく惨めだぞ。なあ長谷部。」
「うん。ちょっと堀北さん言い過ぎかなーって。そんなにクラスに貢献して欲しいなら堀北さんも自分を変える努力をするべきだと思う。」
長谷部も思うところがあるのか、唐突に話を振ったにも関わらず淡々と話し続けている。
「私は少なくともあなたより能力は高いはずよ。とやかく言われる筋合いはないわ。」
「……長谷部、ちょっとこの荷物持っててくれないか。」
「ちょっと何する気!?」
こいつのプライドを折ってやる。
「堀北、俺に1発打ち込んでみろ。俺は一切反撃しない。」
「ちょっときよぽん!やめてよ!!」
長谷部の声も今は耳を通り抜けていくだけだ。
「あなた正気?女だからって舐めてるのか知らないけれど、痛い目見るわよ。」
「お前は能力が高いんだろ?それなら回避行動しかしない俺に当てることなんて造作もないはずだ。」
「挑発のつもり?」
「来いよ、堀北。」
「……なら、お望み通り当ててやるわよ!」
挑発に乗ってきた堀北が素早く拳を突き出してくる。
だが俺はそれを危なげなく避け、再び直立の姿勢へ。
堀北の拳がまた空を切る。
「なんで!当たらないの!!」
もう既に何発も打ち込もうとしている堀北だが、未だにかすりもしていない。
「これがお前の実力だ。」
「……うるさい。私は…っ!」
そう告げると堀北は拳を降ろし、不甲斐なさそうな顔で走り去って行った。
「……。」
長谷部が黙ってしまっている。やりすぎたか…?
「きよぽんってほんと強いんだね!スッキリしたよ!」
長谷部はそう言って笑う。
思っていたのと違う反応だ。
「結構鬱憤溜まってたんだな。」
「そりゃそうだよー。あんだけきよぽんと私の事を馬鹿にしてきたんだから。」
時計を確認してみれば、堀北と色々あったせいで時刻はとうに19時を回ってる。
さっさと帰るか。
「俺のせいで時間取らせてしまってすまん。もう寮はすぐそこだし、さっさと帰ろう。」
「その前に1つお願いがあるんだけど、いいかな?」
「なんだ?」
「私が強くなるためのコーチになってくれないかな。もうこれ以上きよぽんだったり、クラスに迷惑かけたくないからさ。」
随分と意外なお願いだ。
「強くなるといっても色々あるぞ。精神的なものなのか、肉体的なものなのか。他にも学力だったり。」
「欲張りだけど全部かな〜。堀北さんに言われてちょっと火が着いちゃった……なんちゃって。」
「残念なことに、俺に指導力はないんだぞ長谷部。」
「いーや!前にちょっと勉強教えてもらった時に分かったけど、教えるの上手だよね!」
顎に手を当てながらウンウン頷いている。
いや、本当に教えたことほとんどないんだよ。
心の中でそう呟く
「目標とかは…って聞こうと思ったが、さっき決意したことなんだよな。それならまだ決まってないか。」
「そうだね…。なんかごめん、こっちから提案しといて無策すぎたかも。」
「気にするな。」
他者に教えることで俺自身の成長に繋がるかもしれない。
やる価値はありそうだな。
「……分かった。できる限りの事はしてみる。だけどあんまり期待しないでくれ。」
「全然いいよ。むしろこんなお願い聞き入れてくれてありがとう。」
俺と長谷部の間で結ばれた約束。
この約束が後にDクラスを大きく変えていくことを、俺たちは知る由もない。
オリジナル展開しかないから中々苦戦しました……。