ホワイトルームを否定?めんどくさいのでやりません。 作:ルフホワハ
無人島試験も終わり、船内は再び活気を取り戻していた。
かく言う俺もプールにいるわけだが……。
「一体どういうメンツだ。」
その場にいるのは俺、長谷部、平田、軽井沢だ。
「ほらー、綾小路くん結構運動出来ることが無人島試験で分かったじゃん?ビーチバレーの相手探してたからちょうどいいなーって。」
軽井沢・平田カップルの暇潰しに付き合うためだけに呼び出されたってことか。
「なら私は何で呼ばれたの?」
長谷部から当然の疑問が投げかけられる。
「よく一緒にいるの見かけるし、綾小路くんの相方として最適かなーって。」
……長谷部は心底動きたくなさそうな顔をしてるし、平田は申し訳なさそうな顔でこちらを見ている。
もしかして軽井沢のわがままで3人動員されてるのかここに。
「ま、まあ来たからには頑張るよ!ね?きよぽん?」
「ああ。やるからには全力でやるぞ。」
まあ実際全力は出さないんだが……。
「2人とも準備万端みたいだしさ、さっそく始めちゃおーよ!」
「そうだね。じゃあ始めようか!」
こうして始まったビーチバレー。
1セット目は……呆気なく落としてしまった。
「ハァハァ…。私、運動苦手なの忘れてた。ごめん……。」
「まあ落ち着け長谷部。軽井沢も体力あるほうじゃないだろうし、次のセットは取れる。」
長谷部に落ち着けと言ったのはいいものの俺も落ち着きは無い。
そう、長谷部の水着のせいだ。
男が理想とするスタイルNo1と言っても過言では無い体を持つ長谷部だ、水着の破壊力は凄まじい。
そのせいで俺の煩悩が邪魔をしてくる。
落ち着くんだ俺、慌てなければ勝機はまだある。
「長谷部は自分の所に来たボールを上にあげることだけ考えてくれ。後は俺がなんとかする。」
「えぇ!?そんな任せちゃって大丈夫!?」
「信じてくれ。」
「うん……わかった。」
その後の2・3セット目は……圧勝だった。
「綾小路くん凄いね!1セット目になんで僕らが勝てたのか不思議なぐらいだ!」
平田がこれでもかというぐらい眩しい笑顔をこちらに向けてくる。
本当に非の打ち所のないやつだ。
「ぼろ負けした……。」
対する軽井沢は若干ショックを受けてるみたいだ。
悪く思わないでくれ。
「きよぽん1人でも圧勝できそうな勢いだったね〜。」
圧勝したからか長谷部は随分上機嫌な様子。
「そんなことないさ。お前がボールを上手くあげてくれなければそもそも俺はボールを打ててないからな。」
「そ、そう?なら良かった……。」
「にしても周りのギャラリーが増えてるな。平田目的のやつはこんなにいるのか。」
「あーうん。きよぽんってほんと無自覚だよね。」
「……?」
俺が困惑した表情をすると長谷部はやれやれと言った表情で肩を落とした。
その後も無人島試験での疲れを吹き飛ばすかの如く船内を堪能し、その過程で三宅明人と仲良くなる事が出来た。
経緯としてはたまたま見た舞台で隣の席になり、話している内に意気投合したという感じ。
明日の昼飯を共に食べる約束もしたし、友人が増えて俺も内心安堵している……のだが、
「なあ綾小路〜、女の子紹介してくれよー!」
「俺が女子を紹介出来るような立場にいると思うか?」
「無人島試験終わってからDクラスの女子の話題はお前と平田ばっかだぜ?」
「ほんとだよ!いいご身分ですねぇ〜!」
俺は今、たまたま会った三馬鹿からイチャモンを付けられている。こいつらだけは友達になりたくないと思うぐらいめんどくさい。
どうしたものかと考えていた時、メッセージが届いた。
長谷部からのようだ。
『話したい事があるんだけど、時間ありそうなら船上デッキまで来てくれると嬉しい!』
「おい!綾小路ぃ!聞こえてるかぁ!?」
「……用ができたからこの話は後にさせてくれ。」
「だめだあ!どうせ女の子とイチャイチャするんだろ!」
池と山内は邪魔しかしてこないな本当に。
「なあ須藤、今度女子の連絡先教えるからこの2人抑えといてくれないか。」
「なっ!いいのかよ綾小路!」
「ああ。絶対に教えると約束する。だから頼む。」
「おっしゃ任せろ!!てめえらこっちこいや!!」
「「ぐぎゃぁぁぁ!!」」
バカ2人は須藤に首根っこを掴まれて部屋へと引き戻されている。
ざまぁみろ。
「あそこか。」
時刻は17時。太陽が水平線へと沈み始める時間になっており、西日に照らされる誰もいない船上デッキの船頭に長谷部はいた。
「すまん、待たせた。」
「ううん。逆にこっちこそごめんね。わざわざ呼び出しちゃって。」
「気にしないでくれ、俺はいつも暇だからな。
……それで話っていうのはなんなんだ?」
少しの静寂の後、長谷部はゆっくりと話し始める。
「……きよぽん、この数ヶ月間本当にありがとう。」
感謝されることは嬉しいが、どうも話が読めない。
「色々助けて貰ったし、私のコーチとしても今色々やってくれてる。本当に、本当に感謝しかないよ。」
「この関係もあくまで友達関係としての延長線上、ずっとそう思ってた。」
「だけど最近気づいたんだ。」
長谷部が俺の方へと体を向ける
「私、きよぽんが好き。」
そう言いながらはにかむ長谷部は……綺麗?美しい?俺のもつ語彙では表せないような、不思議な魅力を放っていた。
「だけど『付き合って欲しい』とかはまだ言えない。というか、そんな事言う自信がまだ私にないんだよね〜ははは…。」
「だから私が自分に自信を持てたら、改めて告白しようと思う。
要するに今日のは宣戦布告…みたいな感じかな。」
「お前はもっと自分に自信を持っていいと思うけどな。……だがまあ、お前がそうしたいと言うのなら俺にそれを咎める権利はない。いつまでも待つぞ。」
「……ほんとずるいなあ。そんなの好きになるに決まってるよ。」
「お前、顔真っ赤だぞ。」
「……いじわる。」
長谷部が頬を膨らませながら照れている。
一体どういう感情なんだこれは。
「そうだ、最近映画研究会も活動出来てないことだし、長谷部が時間あるなら映画観に行かないか?」
「お、いいね!行こ行こ!」
異性からの告白。
入学当初の俺からは想像もできないような出来事だ。
だが、俺は恋愛を知らなすぎる。長谷部の勇気を無下にしないためにも色々と学んでおくべきだろう。
そのためには恋愛映画から享受するのが手っ取り早い。
鑑賞後、ラブシーンの時に気まずくなった教訓を活かしてこれからは1人で観ようと決めた俺であった。
━━━━━━━━━━━━━━━
『生徒の皆さんにご連絡です。間もなく特別試験を開始しますので、各自メールで指定された部屋、指定された時間にお集まりください。』
そのアナウンスと共にメールが届く。
同じ場に居た三宅もスマホを確認している、メールは全員に届いていそうな感じか。
「せっかく昼ごはんを食べ終わってお前と遊ぼう…と思ったらこれかよ。全く、嫌な学校だな。」
三宅は浮かない顔だ。
まあこの前の無人島試験から連続の特別試験、嫌気がさすのも当然と言える。
「そうだ三宅、届いたメール見せてくれないか。」
「ああ、これだ。」
三宅が俺に見せてきた画面に書いてあったのはほとんど俺と同じ文章。違うのは集合場所と時間ぐらいだ。
「要するに綾小路とは違うグループ…ってことか。」
「みたいだな。とはいえ同じクラスなんだ、困った事があったら俺でもいいし平田でもいい、誰かに相談しろよ。」
「……ああ、お互い頑張ろうぜ。」
迎えた集合時間、部屋に向かうとそこに居たのはAクラス担任の真嶋、同じクラスの幸村と外村、そして軽井沢だった。
「残り1人はモテノ小路殿でござったか……。」
「綾小路か、よろしく。」
「綾小路くんじゃーん。よろしくね〜。」
「揃ったな。では、試験についての説明を始める。」
そこから受けた説明は以下の通りだ。
・1年生全員を干支を模した12のグループに分ける
・各グループA〜D全クラスの生徒がそれぞれ3〜5人ずつ集まっている
・試験開始当日午前8時に全生徒に一斉メール。『優待者』に選ばれた生徒にはその事実が同時に伝えられる
・試験期間は4日後の9時まで
(間に完全休暇日1日を挟む)
・1日2回、指定された部屋・時間にグループ内での話し合いを行う
・試験の解答は試験終了後の午後9時30分から午後10時までの間にメールで受け付ける。解答権は1人1回。
試験の結果については4通り存在するらしい。
結果1
グループ内で優待者及び優待者の所属するクラス以外の全員の解答が正解していた場合、グループの全員に50万プライベートポイント、優待者本人に100万プライベートポイントを支給。
結果2
優待者及び優待者の所属するクラス以外の全員の解答で、誰か1人でも未解答及び不正解があった場合、優待者に50万プライベートポイントを支給。
結果3
優待者以外の生徒が試験終了前に解答し正解した場合、正解した生徒に50万プライベートポイント、解答者の所属クラスに50クラスポイントを支給。この時優待者の所属クラスは50クラスポイントを失い、その時点で試験は終了。優待者の所属クラスの生徒が解答した場合は無効となる。
結果4
優待者以外の生徒が試験終了前に解答し不正解だった場合、解答者の所属クラスは50クラスポイントを失い、優待者は50万プライベートポイント、優待者の所属クラスは50クラスポイントを支給し、その時点では試験終了。優待者の所属クラスの生徒が解答した場合は無効となる。
「……以上で説明は終わりだ。」
「なんか分かりそうで分からないよー…。」
「拙者も少々理解に苦しむでござる…。」
幸村は問題なさそうだが他の2人はなかなか苦戦してるようだ。
「このまま無策で試験に臨むのはリスクが大きい。何か策を考えた方がいいんじゃないか。」
「拙者も幸村殿に同意でござる。ルールの把握も曖昧な以上、不安が大きいというか……。」
まあ普通なら幸村の言う通り何か策を建てて試験に臨むべきだろう。このグループに、軽井沢恵がいなければの話だが。
「私は先に戻ろうかな。参加しても力になれそうにないしー。」
そう言って軽井沢は部屋から出ていこうとする
「待て軽井沢。仮にお前が優待者になったらどうする気だ。」
「知らなーい。幸村くん達で考えといてよ。」
「おい!ちょっと待てって!」
幸村の説得虚しく軽井沢は居なくなった。
平田から注意を受けてもあれならもう救いようがない。
「ああいう馬鹿なやつのせいで、せっかく得たクラスポイントを失うなんて冗談じゃない……!」
「落ち着け幸村。」
「そうは言ったって、このままじゃ……!」
「ああ、だから俺が説得してくる。絶対に明日の会議には参加させるさ。」
「綾小路殿…そんなこと出来るでござるか?」
「俺も同感だ。やってくれるのは嬉しいが、あいつを連れ戻せるとは到底思えない。」
「……出来る確証はないが、連れ戻して会議に参加してもらわないとどうしようも無いだろ。」
禁止事項に目を通していた時に、参加しない生徒がいた場合のペナルティが記されていた事は幸村達も分かっているはず。
「「まあ確かに……。」」
2人揃ってこの状況に納得してくれたようだ。
にしても今回の試験、ちょっとは楽に終われると思ったのにな。
この学校はそう甘くないらしい。
・軽井沢の説得
・各グループに割り当てられている人物の把握
・理想の試験結果を迎えるためのプラン
既に考えることは山積み。どれから処理していこうか。
色々な思考が頭をよぎっていく中、ある疑問が俺の中に生まれた。
俺はいつからこんな協力的な性格になった?
俺の目的は『学生生活を楽しみ、満足のいく結果で卒業する』こと。
ならこのクラスのために行動する事は必ずしもやらなければならない事なのだろうか。
分からない。
【補足】
・軽井沢が原作より当たり強い理由
→バレーボールで負けた腹いせが追加されてあんなことになってます。
・「平田から注意を受けても」の部分
→軽井沢の行動を危惧した綾小路が平田を通して試験にはしっかり臨むよう伝えてもらっている。
(原作より平田と綾小路の親交度が深まってるために起こったことです)