キラの妹が居たらっていうだけのお話   作:イングリット可哀想可愛い

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 SEEDだったらキラが好き。あとはニコル。


PHASE2 真実の戦争

 揺れる研究室で、キラは咄嗟にセラを庇った。 

 

「あ、ありがとう、キラ」

「うん。大丈夫?」

「えぇ。でも、これ、隕石じゃ、ない?」

 

「な、何?なんなの?」

 

 ミリアリアの声が響く、答えられるものは誰もいない。

 サイはすぐに動き出し、扉を開け、逃げる人たちに尋ねる。

 

「あの、すいません。何があったんですか?」

「知らないよ」

「ザフトだよ、ザフト。ザフトのMSが攻めて来たんだ!」

 

 驚愕する一同。攻めてきたザフト。それはつまり、戦争の始まり。

 このままだとまずい。ここから早く離れなければ。

 

「一先ずシェルターに急ぎましょう」

「うん。そうだね。急ごう」

「何で、こんな急に、ザフトが」

「今はそれよりも逃げよう、ミリィ」

「荷物は後だ。とにかく逃げるぞ、皆」

 

 サイは先導し、一同をシェルターまで案内しようとして━━教授の客人らしい帽子で顔を隠した人物が離れて行くのを、キラは見つけた。

 

「あっ、ちょっと!そっちは!」

 

 止めようと声をかけるも、答えることも振り向くこともない。

 

「あぁもう!」

「ちょっ!キラ!!」

「セラたちは先に行ってて!僕も後で追いつく!」

「待ちなさい!」

 

 帽子の男?を追って走り出すキラ。

 すぐさまその後を追い、セラもまた走り出す。

 

「キラ!セラ!」

「トールたちはすぐに逃げなさい!私たちも必ず追いつく!」

 

 それだけ言って、セラは2人を追いかけた。

 

「待って、止まるんだ!」

 

 帽子の男?の手を掴み止めるキラ。

 

「離せ!私には、確かめなければならない事があるんだ!」

「そんなことよりも速くシェルターへ!」

「えっ、セラ!?ついて来ちゃったの!?」

「今気付いたの!?」

「とにかく離せ!!」

 

 ちょうどその時、爆風が3人を襲った。後ろの廊下が吹き飛び、とてもじゃないが戻れそうにない。

 その爆風により、男?の帽子が吹き飛び、その顔があらわになる。

 まるで太陽のような、輝くような容貌の黄金の少女。

 

「女、の子?」

 

 そう、少女である。キラは少年だと思っていたらしい。

 

「一体何だと思ってたんだ!」

「あっ、えっと、その」

「あぁもう!速く工場区のとこまで逃げるわよ!ここからならそこが一番近いわ!」

「う、うん!」

「ちょっ!お前ら!!」

 

 少女の手を掴み走り出すキラ。セラはキラを先導し、工場区まで辿り着く。そこで━━

 

「あれは、MS……?」

 

 機械の巨人。とでも言うべきか。

 それが、2機。ニュース映像でよく見るジンとは違う。どことなくヒロイックな、灰色の巨人。まだ、命を吹き込まれる前のような、石のような、そんな巨人。

 そして、戦場と化した工場区。

 赤い宇宙服を着た2人と、緑の複数名が、作業服の大人たちと銃撃戦を繰り広げていた。見たところ、優勢なのは宇宙服の方。動きの質が明らかに違う。おそらくは、コーディネイター。

 

「ザフト……!」

「セラ。すぐに離れよう。ここは不味い」

「えぇ」

 

 静かに、そこから逃げようとするヤマト兄妹。だが、黄金の少女は、手すりに捕まって、目を見開き、2機を凝視していた。

 

「連合の、新型……やっぱり……!」

 

 崩れ落ちる少女。

 その瞳には、涙が。

 

「お父様の裏切り者ぉーー!!」

 

 少女の慟哭。

 戦場の中でも響くその声に反応した女性技術士官は、すぐ様こちらを狙い、銃撃。

 

「危ない!!」

 

 咄嗟に少女を引き寄せたキラ。

 銃撃は少女がいた場所を撃ち抜いて行く。

 

「子ども……!?」

 

 女性技術士官は一瞬固まり、すぐにザフトとの銃撃戦を再開する。

 

「もう!こんなところで大声出すなんて馬鹿じゃないの!!」

「……っぁ、すま、ない」

「セラ、落ち着いて」

「……落ち着いてるわよ。ほら、速く行くわよ」

 

 キラが少女を引っ張り、セラは前を走る。

 すぐに、工場区のシェルターに到着した。

 

「すいません!開けてください!逃げ遅れてしまったんです!」

 

 すぐにセラは通信を開き、シェルター内部の人とコンタクトを図る。

 

『そっちは今何人だ!?』

 

 すぐに返事が返ってくる。

 

「3人です!女2人、男1人!」

『……3人は無理だ!1人しか……!反対側のシェルターなら空いてるかもしれん!』

「っ、嘘……」

 

 セラはキラの目を向ける。

 そのアイコンタクトだけで、妹の意思を把握した兄。頷くキラを見て、セラは引き攣った、されど強気な笑みを浮かべた。

 

「なら、1人だけでもお願いします!女の子です!」

 

 そう通信すると、すぐ様エレベーターが登り、扉が開く。

 

「ほら!入って!」

「お、おい!お前ら、何を━━!」

「良いからっ!入りなさい!」

 

 2人がかりで少女を押し込み、扉が閉まる。

 叫ぶ少女の声は届かず、エレベーターが下降する。扉が閉まり、シェルターは完全に閉ざされた。

 頷き合うキラとセラ。走り出し、反対側のシェルターに向かう。

 眼下では、いまだに銃撃戦が繰り広げられている。銃声。怒号。爆音。悲鳴。あぁ、僕は今戦場にいるんだ、と。現実が容赦なく突きつけてくる。

 そこで、緑のザフト兵に後ろから狙われている女性技術士官に気付いたキラ。

 

「危ない後ろ!!」

 

 女性技術士官はすぐに物陰に隠れて、背後からの銃撃をやり過ごす。ただ、アサルトライフルが壊れたのか、拳銃に持ち変える女性技術士官。

 

「貴方たち!どこに行くの!」

「反対側のシェルターに向かいます!私たちは大丈夫ですっ!!」

「あそこはもう!ドアしかないっ!」

「…っ嘘……!」

「っこっちに来なさい!」

 

 武器も何も持たず、戦場に取り残されるよりはマシだ、と。そう判断して、手摺から飛び降り、女性技術士官の元まで走る。

 

「あぁっ!!」

 

 ザフトの赤服に撃たれて、機体に寄りかかる女性技術士官に、女性を撃った赤服が、ナイフを取り出しながら襲いかかってくる。

 キラ達が女性技術士官の元に辿り着いたちょうどその時、赤服の少年は、ナイフを振り上げた。

 そこで、気付く。

 

「……キラ?セラ?」

「………アス、ラン?」

「……そんな、嘘……」

 

 その赤服が、幼馴染のアスラン・ザラだと言うことに。

 固まる両者。その中で、女性技術士官は動き出し、アスランに向けて数発発砲。アスランが離れた瞬間、キラとセラをMSのコックピットまで投げ込み、自身もすぐ様そこに乗り込む。

 それを見たアスランは、すぐにその場から離れて隣に眠るMSに乗り込んだ。

 起動する機体、燃え盛る炎の中で、立ち上がる巨人。

 その名はーーGAT-X105ストライク。

 

「……2人とも、シートの後ろに……!」

 

 慌てて身を隠す2人。

 女性技術士官は、コックピット内の機器を操作、急いで機体を起動させる。

 

「この機体だけでも……!私にだって、動かすぐらい……!」

 

 コックピットの中から、隣のMSを見るセラ。

 脳裏に過ぎるのは、赤い服を着ていた、そしてあの機体に乗り込んだ、彼らの幼馴染。

 

(アスランが、そんな……。いえ、でも何もおかしくはない、パトリックさんは議員だって話だし、プラントでは確か15歳で成人のはず。なら、アスランが軍属だとしても……それに、パトリックさんはナチュラル嫌いだったし、アスランもその影響を受けていたとしても、おかしくは……でも、それならレノアさんが絶対に止めるはず。アスランが軍属ってことは……レノアさんとパトリックさんが別れた?いや、でも、あの2人はとても仲が良かったし、仮に別れていたとしたら、アスランはレノアさんについて行くだろうし、だったら軍属にはならない……はず。そもそも、あれは本当にアスラン?そんな偶然、あるはずが……いや、でも、確かにアスランだった。だって、アスランじゃなかったら、あそこで固まることはないはず。民間人を巻き込むことを恐れたってことなら、そもそも中立国のコロニーを襲って来たりしない、はず。こんな作戦に参加してる以上、民間人を巻き込むのも承知の上で……でも、アスランが、そんな、テロリスト、みたいな……」

「ちょっと貴女!ブツブツうるさいわ!気が散る!」

「あっ、ご、ごめんなさい」

 

 思考の海に沈み、考えていたことを口に出していたセラを叱りつつ、レバーを操縦、機体を立ち上がらせる。

 

「……ガン、ダム?」

 

 モニターに写った文字列を見て、キラはそんなことを呟いた。

 

 吹き飛ぶ工場、爆炎が登り、視界が塞がる。

 

「飛ぶわよ!しっかり捕まってなさい!!」

「「は、はい!」」

 

 シートに必死に捕まる2人。

 飛翔する2機のガンダム。だが、危なげなく着地してみせたアスラン機ーーイージスとは対照的に、ストライクの着地はとてつもなく危なっかしかった。よたよたと、まるで病人のような足取り。

 

「あっ!サイ!トール!カズィ!」

 

 コックピットのモニターに映る学友たちに気付くキラ。このままだと彼らが危ない。

 

 イージスに乗っているアスランは、ジンに乗っているミゲルに、向こうの機体に乗っているのは、地球軍の士官だと話した。

 ストライクに襲い掛かるミゲルを見て、アスランは渋い顔をしたままだった。

 

(キラ、それに、セラ。いや、そんなはずは、アイツらがあんなところにいるはずがない……!)

 

 必死に2人の顔を振り払って、アスランはキーボードを叩き出した。

 

 ストライクに走り寄るジン。

 振るわれる重斬刀を飛んで躱すストライク、が、着地の衝撃でキラが女性技術士官の膝に倒れ込む。

 

「早く退きなさい!死にたいの!」

「ぐっ、すいませーー!」

 

 追撃しようと接近してくるジンに気付き、顔面蒼白になるキラ。女性技術士官は、咄嗟にコックピットの黄色いボタンを押した。

 その瞬間、機体が色付く。

 灰色から、白と青と赤のトリコロールに。クロスした腕で、振り下ろされた重斬刀を確と受け止めた。火花が散るも、砕ける様子はない。

 

『なにぃぃ!?』

(このMS……!)

 

 従来ではあり得ない、恐らくは最新の装甲。

 

(ジンのサーベルを防ぐなんて……!)

 

『どうなっているこのMS!?装甲は!?』

『こいつらはフェイズシフトの装甲を使っているんだ。起動されたらジンのサーベルなど歯が立たない』

 

 ミゲルの疑問に返答しながら、アスランはイージスのフェイズシフト装甲を起動する。

 ストライクとは違う、赤一色。

 頭部のバルカンを斉射。武装トラックと発射されたミサイルを撃破する。

 

『ちっ、お前は速く離脱しろ。こんなところで油を売っている場合か』

 

 ミゲルのそんな指示を聞きながら、アスランは幼馴染の兄妹の顔を思い浮かべていた。

 一瞬、ストライクに視線を向け、その後すぐに飛び去った。

 ジンはスラスターを噴かし、ストライクに突っ込んでくる。

 頭部のバルカンを発射、ジンに応戦するも、擦りすらしない。

 

(この機体、まだーー!)

 

 キラはそれを一目見て、この機体が未完成であると悟った。

 

『ふん!幾ら装甲がよかろうが!』

 

 ジンの一太刀目、ストライクは上体を傾けなんとか躱す。すぐ様ジンは飛びながら移動。今度はストライクの真っ正面からの幹竹割り。躱すことも受け止めることもできず、右肩に直撃。装甲が抜かれることは無かったが、反動で後ろに倒れ込む。

 瓦礫に巻き込まれ、近くにいるサイたちに危機が迫る。

 

(まずい……!)

 

 なんとか立ち上がったストライクに、今度は突きを繰り出すジン。下がってしまうストライク。このままでは、サイたちが。

 

「下がっちゃダメ!!」

「えっ、?」

 

 サイたちが踏み潰されそうになって、咄嗟に声を上げるセラに一瞬気を取られる女性技術士官。その瞬間、キラは上半身を乗り出し、一瞬機体を操縦。片膝をつきながらもしゃがみ込むことで突きを回避。今度はストライクのターン。右肩を突き出しながらのショルダータックル。ジンは仰向けに吹っ飛ばされた。しゃがみ込むことで攻撃を躱し、同時にタックルのための助走にも繋げていた。回避と攻撃の予備動作を融合させた、隙のない動き。

 呆然とする女性技術士官に、キラは怒鳴りつけるように話す。

 

「君……?」

「ここにはまだ!人がいるんですよ!こんなのに乗ってるなら、なんとかしてください!!」

 

 キラはコックピットを操作、機体制御システムを閲覧した。

 

「無茶苦茶だ……!こんなOSで、こんな複雑な機体を……!」

「っ、まだ、全部終わっていないの!仕方ないでしょ……!」

「っどいてください!」

「えっ、えぇ」

 

 女性技術士官に変わり、コックピットに座るキラ。キーボードを起こし、叩き出す。

 

「キラ!何をして……!?」

「OSを書き換える!それしか無い!」

「えっ、!?」

 

 驚愕の声を上げる女性技術士官。無理だ。無理に決まっている。戦闘しながら書き換えるなんて、そんなこと。

 

「ーー分かったわ。何か私にも出来ることは!?」

「近づいて来たら撃って!当たっても当たらなくても良い!」

「オッケー!!」

 

 キーボードを叩き出すキラ。トリガーを握り、ジンから目を離さないセラ。

 

(この子達--)

 

 再びスラスターを噴かし、突貫してくるジン。

 

「ーーそこ!」

 

 その瞬間に発射。頭部メインカメラに集中的に被弾し、ジンは一瞬止まった。

 

『なにぃ!?』

 

 視界が一瞬奪われたことでふらつきながらも着地したジン。もう一度スラスターを噴かそうとした瞬間、再び頭部メインカメラに被弾。

 

『ちぃっ!』

 

 視界を奪われた状況でスラスターを噴かすのは危険だと判断したミゲルは、スラスターは使わず、疾走しながら接近。

 タイミングを合わせたストライクの拳が、ジンを吹き飛ばす。

 すぐ様バルカンで牽制。

 

「ーーキャリブレーション取りつつゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…チッ!なら疑似皮質の分子イオンパイプに制御モジュール直結!ニューラルリンケージ・ネットワーク再構築、メタ運動野パラメータ更新、フィードフォワード制御再起動、伝達関数!コリオリ偏差修正!運動ルーチン接続!システムオンライン!ブートストラップ起動!」

 

 驚くべきスピードでOSを書き換えたキラが、機体を制御。

 

『なんなんだアイツ!急に動きが』

 

 サーベルをしまい、ライフルでの射撃に切り替えようとするジン。

 ライフルを構えた瞬間ーー

 

「もらったっ!」

 

 そのライフルを頭部バルカンで的確に撃ち抜くセラ。

 バルカンはライフルの装填部に直撃。内蔵されていた火薬に引火。大爆発を起こす。

 

『何ぃ!?』

 

 サーベルをもう一度抜刀し、ストライクに斬りかかるジン。ストライクは飛び上がり回避しつつ、戦場を移動させる。

 

『逃がすかぁ!』

 

 ストライクを追い、今度こそスラスターを噴かすジン。ジンが追いつくまでの僅かな時間でキラは機体データを閲覧。武装を確認する。

 

「他に武器は……!アーマーシュナイダー?これだけか!」

 

 両腰部のスカートアーマーに内蔵されていたナイフを空中で抜刀。空中でストライクに追いつきサーベルでの突きを繰り出すジン。その突きを回避して、ジンの腹部に蹴りを入れるキラ。衝撃でコックピットが揺れ、噴かしていたスラスターが消える。

 

『おのれぇ!ナチュラルがMSなど!』

 

 墜落する寸前にスラスターを噴かし、なんとか体制を立て直し着地する。

 そこにストライクが強襲。セラがバルカンで牽制しつつ、キラはスラスターを噴かし、ジンの頭上から突撃する。

 突撃してくるストライクを串刺しにせんとサーベルを繰り出す、が。

 

(どれだけ装甲が厚くても関節部だけはそうじゃない!鎧と同じ、動きやすいように隙間を作っている!なら!)

 

 落下しながら的確にジンの手首を撃ち抜く。指が2本飛び、サーベルを落としてしまう。

 

『馬鹿なぁ!』

「こんなところで……!もう、やめろぉぉぉぉ!!」

 

 アーマーシュナイダーを逆手に持ち替え、的確に首元を狙って突き込む。駆動系システムを完全に破壊。

 

『ハイドロ応答なし!多元駆動システム停止!ええーい!』

 

 ジンがもう動かないことを悟ったミゲルは、自爆装置を起動。すぐ様コックピットから脱出し、離脱する。

 それを見たセラは、すぐに思考する。

 

(この状況で逃げる?捕虜って選択肢もあるのに?そっちの方が安全なはず。機体のないパイロットなんていくらでも殺せる。なのに何故?私たちが追撃できないと判断した?この状況からでもそれだけのダメージを与えられるとしたら、その方法はーー)

 

「キラ離れて、多分こいつ自爆する!」

 

 武器がなくとも、動けなくとも、機体そのものを爆弾にすれば、それだけのダメージが与えられる。

 咄嗟にジンを蹴り飛ばしつつ、反動を利用して後ろに跳躍、同時にスラスターを噴かし、さらに腕をクロスし爆風に備えコックピットを保護。

 直後、爆発。

 

 揺れるコックピットの中で3人は悲鳴をあげつつも、何とか意識を保つのだった。

 

 

 





 ちなみに、セラはヤマト夫妻とは血は繋がっていない。
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