キラの妹が居たらっていうだけのお話 作:イングリット可哀想可愛い
難産でした。大分無理矢理感強いかも。
それはそれとしてハッピーバレンタイン!
特別なチョコ(核ミサイル)をプレゼント!!
やっぱりやばいなあの世界。
ジンの自爆に巻き込まれながらも、上手く爆風から身を守ってみせたストライク。
そのコックピットの中で、キラ達はーー
「だ、大丈夫?セラ?」
「え、ええ。キラの方こそ」
「僕も、大丈夫、かな」
しばらく無言で顔を見合わせ、ゆっくりと女性技術士官に顔を向ける二人。分かりやすくやってしまった、と顔に書いてある。
一方、女性技術士官はモニターに釘付けになっていた。
「……初操縦でジンを撃破するなんて……」
前提として、MSの操縦難度は、MAとは比べ物にならない。その道のプロである軍人、その中でも特に優秀なエリートと呼ばれる人でさえ、動かすこともままならない。それがMSである。しかもこの少年は、ただ動かしたのでは無い。初操縦で、尚且つ機体のOSを戦闘の最中のごく短時間で書き換えたのだ。
「……あなた、何者?」
女性技術士官の疑問はもっともだった。少なくとも、ただの巻き込まれた一般人で済ませていい人物では無い。
「えぇっと、その、一回降りません?いつまでもこの中ってわけにはいかないでしょう?」
「え、えぇ、そうね。ちょっと応急処置もしておきたいから、広くて、安全なところまで、お願いできる?」
「は、はい。分かりました」
一先ず、ストライクを歩かせて広場まで移動するキラ達。広場でサイ達と合流するのだった。
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浮遊する死体に押され、天井に叩きつけられ、無重力空間で、ナタルは意識を取り戻した。
「うぅ……」
意識を取り戻したナタルは、自分にぶつかったのが遺体だと気付く。
辺りを見回すも、浮かんでいるのは死体、死体、残骸、死体、それらばかりである。
「……艦は、アークエンジェルはっ!?」
悪いとは思いつつも、死体を弾き飛ばし、ナタルは壁を蹴って格納庫まで向かった。
「……これはっ……!」
瓦礫が漂うアークエンジェル級強襲機動特装艦アークエンジェルの格納庫。生存者は絶望的だろう。漂ってきた軍帽を拾い、それが艦長となるはずだった軍人の物だと気付く。
涙を流しながらも、懸命に呼び掛けるナタル。誰か一人でも良い。生き残っている人は、居ないのかと。
「誰か!誰か居ないのか!?生き残ったものは!?誰か!!」
その時、扉が蹴破られた。
出てきたのは、アーノルド・ノイマン曹長。この艦の、操舵手となる軍人である。
「バジルール少尉!ご無事で!」
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コロニー宙域で、連合のメビウス・ゼロとザフトのジンが激突する。本来、MAーーメビウスとMSーージンの戦力比は1:5。ジン一機落とすのに、メビウス五機が必要な戦力比である。即ち、メビウスとジンが一対一で戦った時、メビウスがジンに勝つことは、不可能。
ただし、今メビウスを駆っているのは、ムウ・ラ・フラガ。また名を、『エンデュオンの鷹』或いは、『不可能を可能にする男』。
有線式遠隔誘導兵器『ガンバレル』によるオールレンジ攻撃。それにより逃げ道を的確に塞ぎ、ジンの右腕にリニアガンが直撃。大破。
「オロール機大破!現在帰投中!消化班Bブロックに急げ!」
「オロールがこんな戦闘でやられるとはっ……!」
「どうやら少々五月蝿い蝿が飛び回っているようだ」
ラウ・ル・クルーゼ。“白”を纏うことを許された、ザフト屈指のエリートにして英雄。アスラン達の隊長でもある仮面の男は、これほど凄まじい実力を持つムウを蝿呼ばわりできるだけの確かな実力を持つ。
「ミゲル機シグナルロスト!パイロットは無事のようですが……」
「あの『黄昏の魔弾』が!?」
「ミゲルが機体を失うほどの相手、このままにはしておけんな。……私も出よう」
シグー。ザフト軍の指揮官用MSであり、ラウの機体である。白き一つ目の巨人が、『エンデュオンの鷹』と、『ストライク』に牙を剥く。
何かを感じるムウ。共鳴するようにラウも何かを感じ取った。
「これはっ……!この感じは!」
「私がお前を感じるように、お前も私を感じるか!不幸な宿縁だな、ムウ!」
コロニーの入り口付近で激突する両者。そのままコロニー内部になだれ込む。
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「改めまして、私は地球軍の将校、マリュー・ラミアス大尉。この度はご協力いただき感謝します」
そう言って頭を下げるマリュー。
慌てて頭を上げさせるキラとセラ、それから合流したサイ達。
「い、いいいえいえいえいえ、気にしないでください!」
「そうですよ。僕たちも、色々ご迷惑をおかけしました」
「あの機体がなかったら、今頃どうなっていたか」
「遅かれ早かれ、ジンに踏み潰されてただろうな」
「ちょっとトール!」
子供達の仲が良さそうな様子を見て、柔らかく笑うマリュー。
「それで、貴方たちの名前を教えてくれないかしら?」
左側から順に名乗るキラ達。
「サイ・アーガイルです」
「カズイ・バスカーク」
「トール・ケーニヒです」
「ミリアリア・ハウ、です」
「キラ・ヤマトです」
「セラ・ヤマトです。隣のキラの妹です」
どこか納得したように頷くマリュー。
「やっぱり、貴方たちは兄妹だったのね。目元とか特にそっくり」
「ふふっ、よく言われます」
「そうかなぁ?」
「そうよ」
和やかな空気から、キリッとした顔に切り替えるマリュー。
「さて、貴方たちに大事なお話があります」
空気が変わったことを察知して、姿勢を正す六人。
「貴方たちは、地球軍の最高機密を見てしまいました。ですので、然るべきところと連絡が取れ、処置が決定するまで、私と一緒にいてもらいます。申し訳ないけど、分かってちょうだい」
よく分からないという顔の六人。代表してセラが問う。
「それってつまり、暫くは家に帰れないってことですか?」
「えぇ。そういうことよ」
困惑する六人。なんで?どうして?と言った疑問が行き交う。
「それは……流石に理不尽じゃ無いですか?」
「そ、そうですよ!そりゃ、あの機体が無かったら、今頃どうなっていたか……そ、それに関しては感謝してますけど、でも……!」
「そ、そもそも、なんで地球軍の機密兵器が、こんな所にあるんですか!?ここは中立国のコロニーですよ!なのに、なんで……!」
サイ、ミリアリア、カズイが反応する。確かに、三人の反応は当然だ。突然巻き込まれて、なのにその上で暫くは家に帰れないということは、つまりは実質的な拘束である。いくらなんでも理不尽だと憤るのは当然だし、そもそも、何故中立国のコロニーであんな秘密兵器を作っていたのか、と怒るのも当然である。が、
「まぁまぁ、落ち着きなさい。三人とも。こんな事になったのは、警告もなしに突然攻めてきたザフトの所為だし、この人、というか地球軍に当たるのは、ちょっと違うんじゃ無いかしら?」
「まぁ、そうだよなぁ。今の段階で地球軍とザフトのどっちが悪いかって言ったら、まぁそりゃあザフトだし、機密に触れちまった、ていうなら、規律を守らなきゃいけない立場である以上、ある程度は仕方ないんじゃ無いかな?」
「うーん。まぁ、うん。確かにそう、だよね」
セラ、トール、キラは、そう言って三人を落ち着かせようとする。
「それは、そうかもしれないけど……いくらなんでも乱暴すぎないか……?」
「……そうよ。実際、助けられた立場ではあるけれど、それだって操縦してたキラのおかげだし、何より、ザフトが攻めてきたのは、地球軍がここで秘密兵器なんて作ってたからでしょ。私たちは、巻き込まれただけなのに……こんなのって……」
「そ、そうだよ。勝手にオーブを巻き込んだのはそっちだろ?なんで俺たちまで、巻き添え喰らわなきゃならないんだよ」
まだ納得できない、と食い下がるサイ達。
マリューは、銃で威嚇射撃でもして強引にでも従わせるべきかと思考する。今は一時でも惜しい、早くしなければーーその為にも。
そんなマリューを、セラは目で静止する。
現状、彼女の庇護下にあった方が都合がいい。何せ、自分とキラはコーディネイター。ナチュラルが殆どのこの環境では、周りは潜在的な敵に近い。そんな中で、ある程度は信頼できそうな軍人が現れた。人格的には優しいし、この人の元なら、悪いようにはならなさそうだ。何せ、戦場の真っ只中で民間人を救助しようとする人だ。よっぽどのことがなければ、危険に晒すような事はしないだろう。
だからこそ、彼女とサイ達に大きな溝は作りたく無い。後々解消できたとしても、それまではいろいろな問題が起こりそうだし、それは間違いなく、自分たちにとっての不利益にしかならない。
「まぁ、うん。サイ達の言うこともわかるし、そりゃぁなんでオーブは中立のはずなのに、とか、そう考えても不思議じゃ無いけど。でもまぁ、ザフトは地球規模でNJなんてものを撒き散らすような連中よ?あれで何億人が犠牲になったと思っているのかしら?現状、ザフトは潜在的な敵国よ。今回だって、こんなテロリストみたいなことをしてきたのよ?もう中立だなんだ、なんて言ってられる場合じゃないわ。私たちは、もう戦争とは無関係ではいられない。自分の身を守る為にも、今は地球軍の庇護下に入るべき、だと私は思うわ」
詭弁だ。
テロリストみたい?潜在的な敵国?少なくとも、セラ達コーディネイターにとって、ブルーコスモスなんて危険思想の団体が根を張っている地球連合の方が、よっぽど危ない。
そもそも、最初にいきなりプラントに喧嘩を売ったのは連合だ。
民間人の住む農業コロニーに無警告で核ミサイルなんて、いくらなんでも危なすぎる。
無警告で先制攻撃の時点で論外だし、その先制攻撃に用いた武器が最悪すぎる。
それでも、今セラ達を危険な目に合わせているのはザフトで、それから身を守る為には、地球軍が現状最適だ。
今からシェルターに逃げ込もうとしたって間に合うことはないだろう。警報がまだ止まないと言うことは、ザフトの攻撃は終わっていない。そんな状況で、追加の避難民を受け入れられるシャトルなんてあるわけがない。だったら、ある程度の武装が合って、最低限の食糧もあるだろう地球軍の庇護下に入った方が、少なくとも今は安全だ。
まぁ、今は、だが。
「それは、確かに、そうだけど」
「……まぁ、うん。見方を変えれば、処分が降るまで地球軍が守ってくれるってことだし、地球軍も、よっぽど酷い扱いにはしない筈、よね?一応、私たちは民間人だし」
「えぇ……?でも、まぁ、皆んなが、そう言うなら……」
よし!心の中でガッツポーズするセラ。
地球軍に実質的に拘束されることを、地球軍の庇護下に入ることと言い換えたのが勝因だろう。これなら心象もそこまで悪くならないし、賛成しやすくなる。
「……話はまとまったかしら?最初に言っておくけど、所々で不便な思いをさせるとは思うけど、悪い処分が降るような事にはならないって約束するわ。可能な限り貴方たちの身も守る。だから、暫くは、私の指示に従ってちょうだい」
マリューは威嚇射撃なんてことをやらなくても良かった事に安心して、穏やかな顔でそう告げた。
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その頃、アークエンジェルブリッジにて。
ナタルは、生き残ったノイマン達と共に、ブリッジでアークエンジェルの状態を確認していた。
「さすがはアークエンジェルだな。この程度では沈まないか」
「だけど、どうしますか?艦長以下正規クルーの殆どは戦死しました。こんな状況で……」
ノイマンの言葉を聞きつつ、アークエンジェルを通信機器を操作して、本部及びモルゲンレーテと連絡を取ろうとするナタル、そこで、気付く。
「……そうだな。……いや、待て。通信できない?ザフトのジャミングがまだ続いている?なら、つまり、これは……こちらは、陽動?狙いはモルゲンレーテ、標的はGか!」
おそらくザフトの作戦は、こちらの拠点を爆破する事でヘリオポリスに滞在中の軍を陽動しつつできる限り殲滅し、その間にGを奪取或いは破壊すること。そして現在、作戦は続行中。だからこそ、ジャミングはまだ切れていない。
だが、作戦が続行中、と言うことはーー
(Gが全て奪われたわけではない?或いは、奪える機体はあらかた奪って、奪えなかった機体を破壊している?どちらにせよこのままでは、残ったGもーー)
その時、アークエンジェルに通信が入る。ノイズまみれで何も分からないが、発信源だけはわかる。発信源は、Xー105ストライク。
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広場にて、キラはストライクによる通信を試みていた。
『こちらXー105ストライク!地球軍、応答してください!地球軍!』
コックピットを開いたままのストライクに、半ば乗り込む形のセラは話しかけた。
「どう、キラ?行けそう?やっぱり無理?」
「……うん。無理だね、これ。バッテリーもそうだし、ジャミングも酷い。やっぱり、マリューさんの言った通り、ストライカーパックを装備しないと駄目っぽい」
「となると、『エール』かな」
「……うん。『ソード』は扱いが難しそうだし、コロニーで『ランチャー』は、聞いた限りだと、『アグニ』が危なすぎる。色々できる『エール』がいいと思う。戦闘になるって想定するなら、の話だけど」
「なるでしょ。そりゃ。こんなテロリストみたいな真似してまで奪い取りたかったMSよ。奪えなかったら破壊しにくるわ。絶対に」
「……はぁ、また、戦いか」
「……まぁ、押し付けるような形になって悪いとは思うけど……」
「分かってるよ。やらなきゃ、みんな死ぬ。やりたくないけど、やるしかない」
「……………ごめんね」
そう言ってコックピットから飛び降りて、サイ達と合流して指示を出そうとするセラ。
「サイ?えーと、すいません、マリューさん。『エール』ってナンバー幾つですか?」
「『エール』は7よ。それを選択するってことは、やっぱりあなたも?」
「えぇ、はい。キラも、多分、そうなるだろうって」
「………そう。後で、謝らないとね」
「……はい。そうですね。…………サイ!ナンバー7のトレーラーを運んできてちょうだい!」
『オッケー了解。トール、カズイ、ナンバー7のトレーラーだって』
サイは通信機越しに、トールたちに指示を出す。ごく短い短距離ならば、通信は可能だ。
トールたちは、工場付近にある、『ストライク』専用装備、『ストライカーパック』を搭載したトレーラーが停められている駐車場にいた。
「えぇーー、それ、一番遠くて一番でかいやつじゃん。一番近いナンバー5で良くない?」
『仕方ないだろ。それがいいってマリューさんもセラもキラも言ってるんだから』
「そりゃ、仕方ないか。カズイ、行くぞー」
「はぁ、分かったよ」
ぼやくカズイの背を押すトール。二人がトラックをとりに行ったのを通信機越しに聞いて、ミリアリアは不安の声を漏らす。
「やっぱり、戦闘になるの、かな」
「……その可能性は、かなり高いわ。ザフトとしても、『ストライク』は邪魔な筈。どこかで破壊しようとしてくるわ、必ずね」
「だから、一番面倒な『エール』ってことですか。面倒だけど、その分コロニーに被害を出さずに戦闘するなら最適解な『ストライカーパック』ですもんね」
少し冷たい、突き放したような声音のサイ。
本当に申し訳なさそうな顔で、マリューは、
「えぇ、そうよ。可能な限り身を守る、なんて言ったのに、戦闘に巻き込むかもしれない事を手伝ってもらって、本当にーー」
「やめましょう。マリューさん。今回ばかりは仕方ないですよ。怪我してますし、一人でできることなんて限られてます。それにあのMS、キラがめちゃくちゃにおーえす書き換えちゃったせいで、キラしか動かせないんですよね?」
謝ろうとするのを、セラが止めた。
そして、セラの言葉を聞いたミリアリアとサイは、工業系カレッジ所属の学生からしたら、空恐ろしい言葉が聞こえてマリューに同情してしまった。
「OSめちゃくちゃに書き換えたって、……何てことしてんのよキラ」
「えぇ……?それ、調整とかどうするんですか?」
「……………フフッ、どうしようかしら」
「………………そんなに、ヤバいことしたんですか?」
「ちょっと確認させてもらったけど、中々のスパゲッティだったわ……」
「うわぁ、あいつ、プログラミング殆ど独学だったからな」
「独学であれって、本当にすごいわね、キラくんって」
三人の会話を聞いても、意味が殆ど分からない。
スパゲッティとは一体なんぞや。
ただ、なんか、サイとミリアリアが、随分とマリューに同情的になったのは、まぁ、うん。良いことだと思う。このまま距離を詰めて欲しい。
肩に乗ったチュチュの頭を撫でつつ、セラはそう思った。
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一方、コロニーシャフト内で、ムウとラウは戦闘を開始した。
「ちぃ!こんなところで戦いたくはなかったが!」
リニアガンとライフルを撃ち合う両者、当然、シャフト内部に被害は出る。
「この辺で消えてもらおうかな。ムウ」
建物の陰に隠れ、ムウの視界から外れるシグー。舌打ちしながらも、警戒するムウだが、死角から撃ち放たれた弾丸は回避できず、ガンバレルに直撃する。
すぐさま被弾したガンバレルをパージ。誘爆の危険から逃れるが、このままではじわじわと追い詰められるだけだ。
無重力空間ではあるがそこまで広い空間はない。この狭さでは、ガンバレルによるオールレンジ攻撃も難しい。ここまで見越して誘い込んだのだろう。
やはり厄介だ。そして危険だ。
じわじわと追い詰められるムウは、そんなことを考えていた。
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「この人員で艦を動かすなど、できるはずがありません!」
艦長席に座るナタルにそう告げるノイマン。ナタルは、通信を受けた時、すぐさまアークエンジェル起動と出航を指示したのだ。
「無理でもやるしか無い。モルゲンレーテは今、攻撃を受けているのかもしれんのだぞ!」
ブリッジの扉が開き、三人の軍人が入ってくる。
艦を動かせるのはたったのこれだけ、ノイマンの言葉も尤もだ。だが、そんなことは百も承知。それでも、やるしか無い。
「……出たところで、まともな戦闘なんてできませんよ」
「分かっている……!早く持ち場につけ!曹長!」
ため息をつきつつ、ノイマンは操舵席に座って、操縦桿を握る。
「アークエンジェル、発進シークエンス、スタート。非常事態のため、プロセスCー30からL-21まで省略。主導力、オンライン」
「出力上昇、異常なし。定格まで、450秒!」
「長すぎる。ヘリオポリスとのコンジットの状況」
「はっ……生きてます」
「そこからパワーを貰え。コンジットオンライン。パワーをアキムレイターに接続」
「接続を確認、フロー正常。定格まで20秒」
「生命維持装置、異常なし」
「CICオンライン」
「武器システム、オンライン」
「FCSコンタクト。磁場チェンバー及びペレットディスペンサー、アイドリング正常」
「外装衝撃ダンパー最大出力で、ホールド」
「主導力コンタクト、エンジン異常なし。アークエンジェル全システム、オンライン。発進準備、完了」
「気密隔壁閉鎖、総員、衝撃及び突発的な艦体の破壊に備えよ。
前進微速。アークエンジェル、発進」
大天使の名を冠する戦艦の初陣。同時に特装砲展開。瓦礫の山を潜り抜け、アークエンジェルが動き出す。
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コロニーシャフト内にて、ガンバレルな最後の一機が、シグーの蹴りにより破壊される。
本体のみのメビウスでは、どう足掻いても勝てるはずがない。生き残ることすらも、不可能に近い。
完全に、ムウは追い詰められていた。
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トレーラーよりレールが展開。隣まで『ストライク』は移動、片膝を付き、その背に『エールストライカーパック』を背負う。
「追加武装は、ビームライフル、ビームサーベル、後は、シールドか。うん。悪くない、かな」
『キラ、そっちはどうだ?通信できそうか?』
トレーラーのコンソールを操作しながら、サイはコックピットのキラに通信する。
キラはコックピットのキーボードを操作。『エールストライカー』に対応したOSを作成しつつ答える。
『うん。バッテリーの充電も完了したし、通信機能も強化されてる。これなら、行ける』
「分かった。ーーーマリューさん!これなら通信行けそうです!」
「ーーありがとう!そのまま軍本部と通信して!救助部隊の要請をーー」
その瞬間、爆ぜるシャフト。
爆音が響き、その場にいた全員がそちらに顔を向ける。
シャフトから飛び出してきたのは、MAとMS。つまり、地球軍と交戦中のザフト。
「っ!不味い!」
白い一つ目、シグーのコックピット内で、ラウは未だに色のついていない、黒と赤の背負いものをした灰色の巨人を見つける。
「ほう、あれか」
ミゲルを、『黄昏の魔弾』とまで呼ばれたパイロットを打ち倒した機体。
「最後の一機か!」
ムウもまた、それが最後のGだと気付く。
襲い掛かろうとするシグーに突撃、リニアガンで牽制する。
サイたちの上空を通り越した2機が巻き起こした風が、サイたちを襲う。
(っ!攻めてくるとは思ってたけどっ!いくら何でも速すぎでしょ!)
「キラっ!急いで!」
『分かってる!みんなはストライクの影に隠れて!』
巧みなマニューバにより、メビウスの背後を取るシグー。
咄嗟に機首を持ち上げ、リニアガンの銃口をシグーに向けようとしてーーそれより早く、シグーは重斬刀で銃身を切り落とす。
「何っ!」
「フッ」
ムウを無力化し、そのままストライクに突撃。放置するわけにはいかない。
「今のうちに沈んでもらう!」
戦うのは怖い。傷つけ合うことも、殺し合う、ことも……それでも、キラの背後には今、護らなければならない友人たちが、何よりも、大切な家族が、妹が、いる。
ならーー
「……っ!やってやる、やってやるさ!!」
フェイスシフトを起動。
シールドを地面に突き立て、セラたちをその陰に隠す。
スラスター全開。ビームサーベル抜刀。ビームライフルの照準を合わせつつ、突撃準備。
シグーのライフルは実弾。ならば、フェイズシフトの装甲は破れない。無視して良い。
銃弾を弾きつつ突撃しようとする『ストライク』。
その時、背後の山が爆散する。
特装砲により、埋まって開かなかった扉を破壊、アークエンジェルが、戦場にその姿を表す。
シールドの影に隠れていたマリューは、その艦の名を叫ぶ。
「っ!アークエンジェル!」
シグーのコックピットで歯噛みするラウ。
「新型、仕留め損ねたか」
メビウスの中で驚愕するムウ。
「コロニーの中に戦艦を……!?」
ブリッジの中で、ノイマンたちは周囲の状況を把握する。
「モルゲンレーテは壊滅!ストライクが起動中、いや戦闘中!」
「何だと?」
シグーはすぐ様アークエンジェルに突撃、銃撃によりブリッジを破壊しようとする。
ナタルはすぐ様それに反応、ノイマンに指示を出す。
「艦を傾けろ!面舵!」
「ぐぅっ!」
アークエンジェルは銃撃を躱すが、体制は崩れた。今ならーー
「フェイズシフト。普通の銃弾は効かないか、なら!」
弾丸の種類を変更、再びストライクに銃撃。
放たれた銃撃は、ストライクを直撃するも、効果は見られない。
だが、シールドの影に隠れたセラたちは咄嗟に伏せてやり過ごす。
「強化APSV弾でも……!」
「っ!このぉ!」
シグーに突撃するストライク。
ビームライフルより何度も放たれる一条の光を躱すも、『エール』の推力が予想以上だったのか、接近を許してしまう。
振り下ろされるビームサーベルを躱すシグー。銃撃で牽制しつつ距離を取ろうとする。
「ミサイル発射管、7番から10番発射用意!レーダー照準!良いか、間違ってもストライクとシャフトと地表には当てるなよ!」
「……っ!」
放たれる四発のミサイル。
シグーは躱しつつも、一発を撃墜、地表ギリギリまで残りの三発を引きつけつつ急上昇して躱す。
三発は地表に命中して爆ぜる。
着弾地点を見て舌打ちするラウ。これでは足りない。ならばーー
再び突撃してくるストライク。ライフルから放たれるビームを躱しつつ、接近。
(近づいてきた!?何で!)
接近してきたシグーにサーベルを振り下ろすキラ。シグーの右腕前腕部をライフルごと切り落とす。
すぐさま転身。ストライクに背を向けて逃げ出すシグー。
「逃すか!」
その背中に照準を合わせ、ビームライフルを放つーー
シグーの行動を見て、セラは思考する。
(あいつ何で、接近戦なんて……フェイズシフトがある以上、物理攻撃の効果は薄い、なのに……あいつの動きはさっきのジンとは比べ物にならない。相当実力のあるパイロットの筈。なら、無駄な行動はしない。その全てに意味があると仮定するべき。そもそも何で、ミサイルをあんなめんどくさい方法でやり過ごした?シャフトの方が位置的にも近い。あれの陰に上手いこと隠れれば、もっと簡単に避け切れた、筈。わざわざ地表ギリギリまで行く必要なんて……それが狙い?地表にミサイルを意図的に直撃させた?何のために?あいつ視点からは現状は相当不利。戦艦とストライクを単騎で同時に相手するなんて……なら、つまり撤退狙い?わざわざ地表に着弾させたのはそのため?壁に穴を開けることで退路を確保しようとした?だけど、それだけじゃ足りなかったってことはーー)
「っ!撃っちゃ駄目!キラ!」
敵の狙いに気付き、だがもう遅い。
放たれてしまったビームは、シグーが急降下することによりハズレ、ミサイルが着弾した地表に命中。既に壊れかけていた壁は、この一撃が決定打となり、完全に穴が空いた。
「……あっ」
自分の犯してしまったことに、呆然とするキラ。
動きの止まるストライク。
その隙に、シグーはその穴から撤退する。
「やれやれ、想像以上だな、連合のMSは」
あの推力もさることながら、ザフトではいまだに完成していない、MSでも携帯できるビーム兵器。何よりも、物理攻撃の殆どを無効にするフェイズシフト。中々に凄まじい。
「これは、速やかに破壊するべきだな」
あれが量産されれば終わる。
それだけの兵器だ。
撤退しながらもラウ・ル・クルーゼは、どのようにあの機体を破壊するのかを考えていた。
FREEDMMの特典フィルム貰えました?
私は序盤のライジングに乗り込むキラでした。