キラの妹が居たらっていうだけのお話 作:イングリット可哀想可愛い
書きたい話までなかなか辿りつかない。
がんばろ
暗黒の宇宙を漂う、白と青の巨人ーーストライク。その中で、キラは震えていた。モニターに映るのは、崩壊したヘリオポリス。キラが、家族と、友人と過ごしてきた、どこにでもある当たり前の日常が、永遠に失われた。
否応なしに、この光景が突きつけてくる。これが、戦争だと。
『Xー105ストライク!応答せよ!Xー105ストライク!』
通信に答えなくては、速く、帰還しなくては。
理性では、そう分かっていて、だけど、どうしても現実を受け止められない。
「……ヘリオポリス、壊れた、どうしてーー?」
何で、どうして、こんなこと、に。
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アークエンジェルのCICで、セラは吐きそうになっていた。原因は、単純なストレスだ。
(失敗した、失敗した失敗した。あんな、あんな不用意な砲撃で、シャフトが、ヘリオポリスが、父さんが、母さんが、そんな、そんな、そんな。どうすれば、どうすれば、良かった?
ミサイルの暴発まで考えるなら墜とすべきだったのは右端のイージス?
でも、イージスを墜とすってことは、アスランをーー)
ストライクのシグナル自体は間違いなく生きている。キラのバイタルも正常。恐らくは目の前の光景の凄惨さに呑まれ、正気を失っているのだろう。だから、キラが落ち着くまで一旦通信を中断するのもありだろう。
そんな風に自分の中で言い訳を済ませたナタルは、ただならぬ様相のセラに話しかけた。
「大丈夫か、セラ・ヤマト」
「バ、バジルール、少尉」
「大丈夫じゃ無さそうだな」
「い、いえ、そんな」
「フラガ大尉」
「わーってるよ。嬢ちゃん。こっちだ」
そう言って、ムウは一旦セラを連れ出そうとして、セラは必死にその場に留まった。
確かに、ここに残ってアレを見るのは、辛い。
それでも、せめてーー
「あ、あの!せめて、せめてキラの無事を、確認してからでも、いい、でしょうか」
目を見合わせるムウとナタル。
ムウは小さく笑い、ナタルは頷いた。二人は艦長席のマリューに視線を向ける。マリューは困ったように笑いながらも許可を出した。
ナタルは自分が座っていた席にセラを座らせた。
「こっちに来い。セラ。今これはキラ・ヤマトと繋がっている。応答は未だないが、シグナルは生きている。お前が呼びかけた方が良いだろう」
「は、はい」
ナタルに変わり、CICに座るセラ。通信をもう一度繋げる。震える指で、ナタルの指示通りに機器を操作。同じように震える声で、キラに呼びかける。
「き、聞こえる?キラ?生きてる?生きてる、よね?」
セラの通信を聞いて、正気に戻ったキラ。
すぐさま通信を繋げて、それに応答する。
『う、うん。生きてる……セ、セラ?聞こえる?そっちは、大、丈夫?』
「う、うん。キラは、どう?」
『こっちも、大丈夫』
キラの声を聞いて、安心したのか涙目で背もたれに倒れ込む。
「良かったぁ〜〜」
『……うん。本当に、良かったよ』
そこで、セラの肩を叩くナタル。振り向いたセラは、その顔を見て、言いたいことを察したのか、小さく会釈してからコンソールを譲った。
「こちらアークエンジェル。そのまま帰還できるか?こちらの位置は分かるか?ヤマト」
『ナタルさん……はい』
「よし、速やかに帰還しろ」
『わ、分かりました』
そこで一旦通信を切った。
ふぅー、と、安堵のため息をつくナタル。それに目を向けながら、セラはおずおずと話しかけた。
「あ、あの、ナタルさん」
「なんだ?」
「ありがとう、ございました」
渋い顔で、その言葉を受け取るナタル。そんな言葉を受けるようなことはしていない。こちらの都合で、彼らを戦場に引っ張り出したのは、自分たちなのだから。
「気にするな。やるべきことをやったまでだ」
「それでも、です」
だからこそ、礼を受け取るようなことはしていないと返すナタルだが、それでも、セラにとっては嬉しかったから。だから、せめて、感謝の言葉だけでも、と。
そんな言葉に困った顔で少し赤くなるナタルに、マリューとムウは暖かい視線を向けていた。
ストライクのコックピットの中で、キラはセラの震えた声を思い返していた。
(……セラも、やっぱり苦しんでいる。………でも、戦っている。………なら、僕も……)
キラは、対艦刀を背中に収め、アークエンジェルまで戻ろうとして、推進ユニットが破損した避難シャトルを見つけてしまった。
「っそんなっ!」
優しいキラに、それを見過ごすなんてことは、残念ながら出来なかった。
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ブリッジで、マリューたちは次にどうするのか話し合っていた。
「まさか、ヘリオポリスが崩壊しちまうとはな」
「………えぇ、こんなことに、なるなんて」
「それで、これからどうするよ。降伏でもするか?」
そんなことを言うムウに目を見開くマリュー。いや、確かに、この状況ならば、その選択肢もありかもしれないが。しかし、こんなテロリスト擬きが、降伏したところで無事に帰すだろうか。
「それは出来ません。ストライクとアークエンジェルは、何としても持ち帰らなければ。これは、地球軍が勝つための鍵なのです」
「けど、それじゃあまだ、あの子供の手を借りなきゃな。じゃないと辿り着けん」
冷静に、冷酷に、ムウは事実を告げる。
市民を守るはずの軍人が、市民に守られなければ生きることもできないと言う、度し難い矛盾。
職務に誇りを持つ軍人であればあるほど、この状況は情けなく、苦しいものだろう。
「……………えぇ、そうね」
重苦しい空気になるブリッジ。この状況をなんとかしようとして、セラが話を切り出す。
「え、ええっと、その、月本部まで持ち帰るとして、こ、これから、どうするんですか?」
そんな、おどおどしているセラを見て、気を使わせてしまったかしら、と思ったマリューは、申し訳なさとありがたさから、その話になることにした。
「まずは、補給が第一ね。このまま月本部に行くなんて、とてもじゃないけど考えたくないわ」
「となると、どっかで基地かデブリに寄らないと、だな」
「一番近くにある連合の基地って、何処にあるんですか?」
セラの疑問に答えるために、ナタルは正面のモニターにこの辺りの宙図を出す。そこには、地球軍基地の配置まで描かれていた。
「一番近いのは、ここ。『アルテミス』だな」
「……『アルテミス』。月にある基地なんですか?」
アルテミスと言ったら月の女神だ。その名前の基地なら、月にあるのでは?
「いや、月ではない。だが、月に近い基地だ。ここで補給を済ませ、そのまま月の地球連合本部に向かうのが得策かと」
そのナタルの考えには何も問題がないように思える。最速で補給して、そして、最速で地球に。
安全と効率を考慮するなら、これがベストな選択だ。
「いやぁ、どうかなぁ〜〜」
その策に難色を示すムウ。
彼には、この選択が怪しく見えているらしい。
「しかし、現状これ以上の選択肢はーー」
「あぁ、いや。勘違いしないでくれ。バジルール少尉の策に不満はないよ。ただ、この艦って極秘に作られていたんでしょ?識別コード、あるの?」
そう、問題はそこだ。
この艦には、身元を示すコードがない。つまり、アルテミスからすれば、こちらは、身元不明の謎の艦ということになる。
「それは……確かに、この艦には識別コードはございませんが、しかし、同じ地球軍でしょう?」
「同じ地球軍ではあるけれど、こちらは大西洋連邦。あちら、アルテミスは、ユーラシアよ。識別コードなしに受け入れられる、とは、限らないんじゃないかしら」
つまり、同じ地球軍でこそあるが、所属している国は違う為、味方であるとは限らない、と。
「それって、大丈夫なんですか?拘束とか、拿捕とか、そういった危険性は……?ユーラシアと大西洋って、潜在的な敵国なんですよね?」
セラとムウの言葉を聞いて、しかめ面になるナタル。彼らの意見もわかるが、しかし、そんなことはーー
「……そうね。危険性は、ないとは言えないけれど、今はそうするしかないわ。ストライクを回収したら、アルテミスに向かいましょう」
艦長であるマリューがそう決めたので、この場はそういうことになった。
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そこで、ブリッジにストライクから通信が入ってくる。
すぐさま繋げるセラ。ストライクのキラと会話する。
『こちらストライク。アークエンジェル、どうぞ』
「こちらアークエンジェル。ストライク、どうぞ」
そこまで話して、二人は困った顔をした。
『………被ったね』
「………被っちゃったわね」
気まずさを振り払うように、セラから話を切り出す。
「……えっと、ストライク収容のためにハッチを開けるわ、ちょっと待ってて」
『……うん。あ、それと、セラ』
「?何?」
『実は、そのーーー推進ブロックが壊れている救助シャトルがあったから、持ってきちゃったんだけど……』
「……え、えええええぇぇ!!」
すわ何事か、と、ブリッジ中の人員がセラに視線を向けるが、セラはそんなこと気にしている余裕はない。
「シャ、シャ、シャ、シャトルを持ってきたぁぁ!?な、何考えてるの!?バカなの!?」
『し、仕方ないじゃないか!このままだと、この人たち死んでしまうかもしれないんだよ!?』
「そうだけど!それは確かにそうだけど!で、でも!いまこの艦に避難民を受け入れるだけの余裕はないわよ!?」
はぁ、とため息を吐きながらも通信席まで戻るナタル。
「変われ、ヤマト」
「は、はい」
セラに変わり席に座り、通信する。
「確認するぞ、キラ・ヤマト。貴様は避難民を乗せたシャトルをこちらまで運んできた、そうだな?」
『は、はい』
「戻してこい。今この艦に避難民を受け入れるだけの余裕はない。すぐに救出艦が来る。それに任せろ」
『で、ですが、推進ブロックが壊れているんです!このまま漂流させるなんて出来ません!』
「ちょっと、キラ!」
尚も頑固に言い返すキラを諌めようとするセラ。余り、好き勝手なことをすると、軍人たちから反感を買うかもしれない。それは避けたい。が。
「構わないわ。シャトル受け入れの準備を進めて頂戴」
マリューの鶴の一声で、受け入れが決まった。
『ありがとうございます!マリューさん』
キラの感謝の言葉の後に、通信は切れた。
「良かったのですか、艦長」
「今ここで、こんなことに時間を使うべきではないわ。いつザフトがまた襲ってくるのか分からないもの」
「……そういうことであれば」
そんな言葉を、艦長と副長が交わしている裏で、セラは大きなため息を吐きつつ顔に手を当てていた。
「セラさん」
「は、はいぃぃぃ」
マリューに名を呼ばれ、叱責を恐れて震え上がる。
「そんなに怖がらなくてもいいわ。キラくんを迎えに行ってあげなさい」
「……え?」
「家族、なんでしょ?」
優しい声音と、柔らかい微笑み。
まるでお母さんみたい。
セラは、自身の母を思い出しつつ、そんなことを思った。
「あ、ありがとうございます!」
そして、セラは格納庫まで跳び出した。
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ヴェサリウス。隊長室にて。
アスランはクルーゼの元に出頭していた。
「失礼します!」
「入りたまえ」
「はっ」
机の前で直立不動の姿勢をとるアスランに、クルーゼは切り出した。
「さて、説明してもらおうか。君がなぜ、あのようなことをしたのか」
「……はい。最後の一機、ストライクに乗っていたのは、キラ・ヤマト。コーディネイターで、月の幼年学校で共に学んだ、幼馴染です」
アスランの告白に目を見開き驚くクルーゼ。まさか、そんなことがあるとは。
しかし、ならばーー
「キラの妹のセラも、あの艦に乗っています」
やはり、そうか。
「なるほど、そういうことなら君は、次の戦闘には参加すべきでないな」
「えっ」
クルーゼとしても、それほど仲の良い親友を殺し合わせるほど、残酷ではない。
「彼が君の友であり、あの艦に君の友がら乗っていたとしても、ストライクは敵で、アークエンジェルは墜とすべきターゲットだ。君も、余り戦いたくはないだろう?」
「ですが……!」
「言い方を変えよう、アスラン。ストライクは討たねばならない。でなければ、君か、君の友が、彼に殺されてしまうだろうからね。君に、それが出来るのかい?」
「それはっ……、出来ます。やって見せます!あいつを、討ってみせます!」
そう告げるクルーゼから、目を逸らしながら、声だけは力強くそう宣言するアスラン。
だが、クルーゼにはわかる。彼は、実際に討つつもりなどないだろうことが。
「いいだろう。墜としてみせろ、アスラン」
「はっ!」
そうして、アスランは自室に戻って行った。
その背を見送ったクルーゼは嗤う。これこそが、運命とでもいうべきものなのだろう、と。
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アークエンジェルの格納庫にて、ストライクは一隻のシャトルを下ろしていた。そこから出てくる避難民の中に、彼女が、フレイ・アルスターが居た。
フレイの元まで飛ぶトリィ。
それでキラに気付いたのか、フレイはキラの元までジャンプした。
「フレイ!?フレイ・アルスター!?」
「貴方!貴方、サイの友達よね!一体どうなってるの!?ヘリオポリスは、どうなっちゃったの!?」
勢いのまま、キラに抱き着くフレイ。その視線は、そのままストライクに向けられた。
「なんで、MSが、ザフトの物が、こんなところに?」
「ううん、違うよ。これは、地球軍のなんだ」
「地球軍?どういうことなの?」
「それについても、後で話すよ。ここには、サイたちもいるんだ」
「サイも!そうなの、良かった!」
と、そこに走ってきたセラがキラに声をかけた。
「キラ!大丈夫……」
「あっ、セラ。うん、大丈夫……どうしたの?急に固まって」
フレイを、サイの婚約者を、抱きしめているキラ。どこからどう見ても事案である。それを見たセラは、深刻そうな顔で話す。
「キラ………略奪愛は、良くない」
「………ごごご誤解!」
そうして、キラとセラはフレイをサイたちの待つ食堂まで案内した。
シャトルから受け入れた避難民がやってきて、宿泊区が人で溢れている。キラとセラは、ヘリオポリスでの学生組と一緒にいた。
と、そこにムウがやってくる。
「よぉ、坊主、嬢ちゃん」
「あっ、ムウさん」
「これ、艦内のやつだけど」
どうやらさっきの約束をしっかり守ってくれたらしい。ココアぐらいしかないようだが、ありがたくいただこう。
「それで、なんだが、どうやらこの後も戦闘になるらしい、だからーー」
もう一度、ストライクに乗って欲しい、と言ったところだろう。
「………分かって、ます」
「………そうか。悪いな。本当に」
「……いえ。僕は、コーディネイターですから」
キラがコーディネイターだということを初めて知ったのか、フレイは心底驚いているようだった。
「……それは、少し違うぞ、キラ」
「えっ?」
コーディネイターだから、特別だから、キラは、凄いんじゃない。戦って欲しいんじゃない。
「君がコーディネイターだから、戦って欲しいんじゃない。君には、戦えるだけの力があって、そして、きっと君ならその力を正しく使えるって思っているから、戦って欲しいんだ」
「正しく、使える?」
どういう、ことなんだろう?力を正しく使うって、どういう?
「あぁ、君は、誰かを恨むことを、憎むことも、余り得意じゃないんだろう?」
「えぇ、まぁ」
「恨むことも、憎むことも簡単なことだ。そこから戦うのも、簡単なことなんだ。だけど、それで戦っている奴らってのは、自分の命を顧みるような奴じゃない。自分も守ろうとしないような奴が、誰かを守るなんて出来っこないさ」
ザフトのように、地球軍への憎しみと怒りで動いている人達では、何かを壊せど、守ることはできまい。
だが、キラはきっと違う。
会ったばかりで、そんなに話したこともなくて、マリューからの又聞きでしかないけれど、この少年は、妹の、友達のために戦うことを選べる男だ。本当は、命の奪い合いなんて嫌だろうに、それでも、大切な人達のために命をかけられる善人だ。
きっと、軍人には向いていない。
きっと、正義の味方にも向いていない。
だが、きっと、彼は守護者にはなれる。
何かを、誰かを、守るために戦うことが、彼には出来る。
「君には、ここの人たちを守ることができる。なら、君は君に出来ることをやれよ。俺たちも、俺たちに出来ることをやるからさ」
「………はい」
そうしてキラの肩を叩き、ムウは去ろうとしてーー急いで戻る。
「あぁそうそう。言い忘れてた。マードック軍曹からの命令だ。ストライクの整備、自分でやっておけってさ」
「……えぇー」
「いやほんとすまないけど、人手が足りないからさ。俺も、メビウスの整備は自分でやってるし、だから、な」
「……はぁ、分かりました」
今度こそ、ムウはキラの肩を叩き去って行った。
「ごめん。そういうことだから、ちょっと行ってくる」
そうトール達に告げて、キラは格納庫まで走って行った。
「ね、ねぇ、キラがコーディネイターって……」
「本当よ。因みに、私もコーディネイター」
フレイの疑問をあっさり認め、ついでに自分もそうだと明かすセラ。
「まぁ、コーディネイターだけどザフトじゃないわ。だから、安心しなさい」
「あぁ。コーディネイターだけど、キラ達は、大事な友達だ」
それでもどこか不安そうに、サイの腕に抱きつくフレイ。
「………えぇ、そうね」
その言葉とは裏腹に、まだ怯えが残っているようだった。
それを見て、苦笑するセラ。まぁ、これは、仕方ないことなのだろう。
「……なぁ、セラ」
「何かしら?」
セラに話しかけるトール。その目は、何かを決めたような目であった。
何となく、何がしたいのかが、セラは分かった気がした。
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アークエンジェルのブリッジで、ナタルとマリューは指示を出していた。と、そこへーー
「あの、ナタルさん、すいません。ちょっとお話があるんですけど」
「なんだ?今は忙しい。手短にすませろよ」
「えっと、その、私たち、というかキラの同級生が、艦内の仕事を手伝いたいって」
「……何?」
一先ずのストライクの整備が終わったキラは、マードックさんこら、ノーマルスーツを受け取るように指示されて、そこまで行こうとしていた。
そこで、向かい側からサイたちがハンドルに捕まっているのに気付く。サイ、トール、ミリアリア、カズイ、それから、セラ。全員が、連合の軍服を着ていた。
「みんな……?その、服」
「似合ってるだろ?ただまぁ、軍服ならザフトの方がカッコよかったけど、勲章とかさ」
「こら」
「いてっ」
ポコっと、トールに拳骨を喰らわすセラ。
そんな二人を尻目に、ミリアリアはキラの目を見ながら、はっきりと告げる。
「こんな状況だし、私たちも、艦の手伝いをすることにしたの。キラが自分にできることをやるっていうなら、私たちも、私たちにできることをやるわ。もう、無関係じゃいられないもの」
そうして、チャンドラの誘導に従い、ミリアリアたちはブリッジに向かう。
「あっ!そうそう。君も、そろそろパイロットスーツ、受け取るんだろ?」
「あっ、はい」
「向こうの更衣室にあったぞー」
「あ、ありがとうございます」
そうして別れようとしてーー
「……ごめん。ちょっと先行ってて」
「あっセラ」
セラはそうしてキラの元まで一旦戻った。
キラの瞳を見ながら、セラは聞かなければならないことを、聞く。
「ねぇ、キラ」
「ん、どうしたの?」
「あなたは、アスランと、イージスと、戦える?」
「………分からない。戦えるかもしれない、もしかしたら、どうしてもできないって逃げちゃうかも」
「……そう、よね」
「……でも、大丈夫」
「……キラ」
「僕には、守りたい人がいる。
だから、戦える。戦ってみせる。
だから、セラは、死なないで。
僕に、守らせてくれ」
「……えぇ。分かったわ。
ちゃーんと、守られてあげる」
「うん、ありがとう」
「だから、私にも、キラを守らせて」
「……うん。セラを、信じるよ」
そうして、兄妹は一時別れた。
一人は、MSに。
一人は、アークエンジェルに。
違う場所、違うやり方で、お互いを守り合う。
そう、誓った。
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ヴェサリウスにて、クルーゼは宙図を見ながら、次に取るであろう行動を予測していく。
「君はどう見る、艦長。足つきの打つ次の手を」
クルーゼの問い掛けに、顎に手を添えながら、アデスは答える。
「恐らくは、このまま月本部へ向かうか、あるいは途中の地球軍基地に寄り、そこで補給するか……そのどちらか、でしょうな」
宙図を睨みながら、クルーゼは続ける。
「補給するとしたら、寄るのは恐らくはここだな」
クルーゼの指差すのは、アルテミス。又の名を、『傘』のアルテミス。
「確かに、艦の安全を考慮するのならば、ここでしょうな」
ここならば、あの艦は安全だ。
外部からの攻撃では、決して傷付くことはない。
と、そこへ報告が。
「熱源反応あり!方角はーー」
その方角は、予想の真逆。
つまりーー
「アテが外れた、というわけではなさそうですな」
「あぁ、この状況でこの動き。やはり進路はアルテミスか」
「ならば、どうしますか?」
「ふむ。網を引くとしよう。ナスカ級は予め待ち伏せする。ローラシア級は、こちら側から接近してくれ」
熱源の発信元と思われる位置から、ナスカ級に向かうように。
この動きならばーー
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「ラミアス艦長!前方にナスカ級!側面にローラシア級です!」
「……やっぱり、そううまくは行かないわね」
「如何なさいますか」
「……作戦に変更はないわ。総員、第一種戦闘配備!メビウス発進!その後、特装砲発射!発射後ストライク発進!」
「「「「「了解!!」」」」」
格納庫にて、ムウはキラと会話しながら移動していた。
「今回の作戦、君は難しいことは考えなくていい。
この艦を落とそうと攻めてくる敵から、この艦を守れ。君がすることはこれだけだ」
この艦を落とすということは、恐らくはGも攻めてくるだろう。イージスを投入してきたのだ。他の機体も投入しない理由がない。
「簡単に言ってくれますね」
G4機、ローラシア級一隻から、艦を守れとは。
「じゃあ、俺と役割変わるか?」
半笑いで、そう問いかけるムウ。
生憎と今回の作戦。ムウの方が生存率も成功率も低い。
「いえ。それは、ムウさんにしか出来ないことでしょう?」
「あぁ、そうだ。だから、坊主、いや、キラ、君はーー」
「分かってます。ムウさんはムウさんにできることを、僕は僕にできることを、ですよね」
「よし!お互いに、絶対に生きてこの艦に戻るぞ!」
「……はい」
ムウの突き出した拳に、拳を合わせ、キラはストライクに向かう。
それを見送ってから、コックピットに乗り込み、最終確認を終えて、準備完了。
『リニアカタパルトオープン。ハッチ解放。システムオールグリーン。
フラガ機、発進どうぞ!』
操縦桿を握りしめ、見えてきた暗黒の宇宙を睨む。
ーーこれ以上好き勝手はやらせんぞ、クルーゼーーー
「ムウ・ラ・フラガ!メビウス・ゼロ!出る!」
リニアカタパルトが走り、ムウのメビウスが宇宙に出る。
僅かなガス噴射で姿勢を制御し、後は、慣性に任せて飛ぶ。
ムウの発進ののち、特装砲を展開するアークエンジェル。
「目標!敵ナスカ級!特装砲、発射用意!」
照準を合わせるセラ。
ただし、今回は、当てる必要はない。
「てぇーーー!」
放たれる陽電子砲。
それを察知したナスカ級は、すぐさま射線から離れる。
直後、ナスカ級がいた場所を撃ち抜く陽電子砲。
戦慄するザフト。今のが直撃していればひとたまりも無い。まさか、これほどの武装を持っているとはーー
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ストライクのコックピットで、キラは機体の最終確認を済ませていた。
今回のストライカーパックは、エール。
宇宙空間の戦闘には、最も適性のあるストライカーパックである。
『キラ。聞こえる?』
ブリッジからの通信。しかし、この声はーー
「ミリアリア?」
モニターに映るのは、ミリアリア・ハウの顔。
『以降、MS、MAの管制は、私がやるわ。よろしくね』
『こら!よろしくお願いしますだろう!』
叱られるミリアリア。思わず笑うキラ。
わざとらしく真面目くさった顔のミリアリアが、厳かにキラに告げる。
『キラ・ヤマト!ストライク!発進準備!』
それに合わせるように、真面目くさった顔で厳かに、礼儀正しくキラが答える。
「了解!ストライク、発進準備致します!」
そこまで言って、二人は笑い合った。
カタパルトに設置されるストライク。
キラの脳裏によぎる、幾つもの言葉。
『君は、君にできることをやれよ』
『もう、無関係じゃいられないもの』
『だから、私にも、キラを守らせて』
本当は、戦いたくなんて無いけれど。
けれども、この背には、守らなければならないものがある。
だからーー
『リニアカタパルトオープン!ハッチ解放!システムオールグリーン!ストライク、発進どうぞ!』
友達の声を受けて、キラは操縦桿を握りしめて、覚悟を決める。
「キラ・ヤマト!『ガンダム』!行きます!」
決意と共に、白亜の巨人は宇宙へ飛び立った。
ボスゴロフ級とローレシア級間違えてました。
ごめんちゃい
ローラシア級じゃなくてローレシア級になってました。
まじすいません。