キラの妹が居たらっていうだけのお話   作:イングリット可哀想可愛い

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 書きたい話までなかなか辿りつかない。
 がんばろ


PHASE5 兄妹の決意

 

 暗黒の宇宙を漂う、白と青の巨人ーーストライク。その中で、キラは震えていた。モニターに映るのは、崩壊したヘリオポリス。キラが、家族と、友人と過ごしてきた、どこにでもある当たり前の日常が、永遠に失われた。

 否応なしに、この光景が突きつけてくる。これが、戦争だと。

 

『Xー105ストライク!応答せよ!Xー105ストライク!』

 

 通信に答えなくては、速く、帰還しなくては。

 理性では、そう分かっていて、だけど、どうしても現実を受け止められない。

 

「……ヘリオポリス、壊れた、どうしてーー?」

 

 何で、どうして、こんなこと、に。

 

 -----

 

 アークエンジェルのCICで、セラは吐きそうになっていた。原因は、単純なストレスだ。

 

(失敗した、失敗した失敗した。あんな、あんな不用意な砲撃で、シャフトが、ヘリオポリスが、父さんが、母さんが、そんな、そんな、そんな。どうすれば、どうすれば、良かった?

 ミサイルの暴発まで考えるなら墜とすべきだったのは右端のイージス?

 でも、イージスを墜とすってことは、アスランをーー)

 

 ストライクのシグナル自体は間違いなく生きている。キラのバイタルも正常。恐らくは目の前の光景の凄惨さに呑まれ、正気を失っているのだろう。だから、キラが落ち着くまで一旦通信を中断するのもありだろう。

 そんな風に自分の中で言い訳を済ませたナタルは、ただならぬ様相のセラに話しかけた。

 

「大丈夫か、セラ・ヤマト」

「バ、バジルール、少尉」

「大丈夫じゃ無さそうだな」

「い、いえ、そんな」

「フラガ大尉」

「わーってるよ。嬢ちゃん。こっちだ」

 

 そう言って、ムウは一旦セラを連れ出そうとして、セラは必死にその場に留まった。

 確かに、ここに残ってアレを見るのは、辛い。

 それでも、せめてーー

 

「あ、あの!せめて、せめてキラの無事を、確認してからでも、いい、でしょうか」

 

 目を見合わせるムウとナタル。

 ムウは小さく笑い、ナタルは頷いた。二人は艦長席のマリューに視線を向ける。マリューは困ったように笑いながらも許可を出した。

 ナタルは自分が座っていた席にセラを座らせた。

 

「こっちに来い。セラ。今これはキラ・ヤマトと繋がっている。応答は未だないが、シグナルは生きている。お前が呼びかけた方が良いだろう」

「は、はい」

 

 ナタルに変わり、CICに座るセラ。通信をもう一度繋げる。震える指で、ナタルの指示通りに機器を操作。同じように震える声で、キラに呼びかける。

 

「き、聞こえる?キラ?生きてる?生きてる、よね?」

 

 セラの通信を聞いて、正気に戻ったキラ。

 すぐさま通信を繋げて、それに応答する。

 

『う、うん。生きてる……セ、セラ?聞こえる?そっちは、大、丈夫?』

「う、うん。キラは、どう?」

『こっちも、大丈夫』

 

 キラの声を聞いて、安心したのか涙目で背もたれに倒れ込む。

 

「良かったぁ〜〜」

『……うん。本当に、良かったよ』

 

 そこで、セラの肩を叩くナタル。振り向いたセラは、その顔を見て、言いたいことを察したのか、小さく会釈してからコンソールを譲った。

 

「こちらアークエンジェル。そのまま帰還できるか?こちらの位置は分かるか?ヤマト」

『ナタルさん……はい』

「よし、速やかに帰還しろ」

『わ、分かりました』

 

 そこで一旦通信を切った。

 ふぅー、と、安堵のため息をつくナタル。それに目を向けながら、セラはおずおずと話しかけた。

 

「あ、あの、ナタルさん」

「なんだ?」

「ありがとう、ございました」

 

 渋い顔で、その言葉を受け取るナタル。そんな言葉を受けるようなことはしていない。こちらの都合で、彼らを戦場に引っ張り出したのは、自分たちなのだから。

 

「気にするな。やるべきことをやったまでだ」

「それでも、です」

 

 だからこそ、礼を受け取るようなことはしていないと返すナタルだが、それでも、セラにとっては嬉しかったから。だから、せめて、感謝の言葉だけでも、と。

 そんな言葉に困った顔で少し赤くなるナタルに、マリューとムウは暖かい視線を向けていた。

 

 ストライクのコックピットの中で、キラはセラの震えた声を思い返していた。

 

(……セラも、やっぱり苦しんでいる。………でも、戦っている。………なら、僕も……)

 

 キラは、対艦刀を背中に収め、アークエンジェルまで戻ろうとして、推進ユニットが破損した避難シャトルを見つけてしまった。

 

「っそんなっ!」

 

 優しいキラに、それを見過ごすなんてことは、残念ながら出来なかった。

 

 -----

 

 ブリッジで、マリューたちは次にどうするのか話し合っていた。

 

「まさか、ヘリオポリスが崩壊しちまうとはな」

「………えぇ、こんなことに、なるなんて」

「それで、これからどうするよ。降伏でもするか?」

 

 そんなことを言うムウに目を見開くマリュー。いや、確かに、この状況ならば、その選択肢もありかもしれないが。しかし、こんなテロリスト擬きが、降伏したところで無事に帰すだろうか。

 

「それは出来ません。ストライクとアークエンジェルは、何としても持ち帰らなければ。これは、地球軍が勝つための鍵なのです」

「けど、それじゃあまだ、あの子供の手を借りなきゃな。じゃないと辿り着けん」

 

 冷静に、冷酷に、ムウは事実を告げる。

 市民を守るはずの軍人が、市民に守られなければ生きることもできないと言う、度し難い矛盾。

 職務に誇りを持つ軍人であればあるほど、この状況は情けなく、苦しいものだろう。

 

「……………えぇ、そうね」

 

 重苦しい空気になるブリッジ。この状況をなんとかしようとして、セラが話を切り出す。

 

「え、ええっと、その、月本部まで持ち帰るとして、こ、これから、どうするんですか?」

 

 そんな、おどおどしているセラを見て、気を使わせてしまったかしら、と思ったマリューは、申し訳なさとありがたさから、その話になることにした。

 

「まずは、補給が第一ね。このまま月本部に行くなんて、とてもじゃないけど考えたくないわ」

「となると、どっかで基地かデブリに寄らないと、だな」

「一番近くにある連合の基地って、何処にあるんですか?」

 

 セラの疑問に答えるために、ナタルは正面のモニターにこの辺りの宙図を出す。そこには、地球軍基地の配置まで描かれていた。

 

「一番近いのは、ここ。『アルテミス』だな」

「……『アルテミス』。月にある基地なんですか?」

 

 アルテミスと言ったら月の女神だ。その名前の基地なら、月にあるのでは?

 

「いや、月ではない。だが、月に近い基地だ。ここで補給を済ませ、そのまま月の地球連合本部に向かうのが得策かと」

 

 そのナタルの考えには何も問題がないように思える。最速で補給して、そして、最速で地球に。

 安全と効率を考慮するなら、これがベストな選択だ。

 

「いやぁ、どうかなぁ〜〜」

 

 その策に難色を示すムウ。

 彼には、この選択が怪しく見えているらしい。

 

「しかし、現状これ以上の選択肢はーー」

「あぁ、いや。勘違いしないでくれ。バジルール少尉の策に不満はないよ。ただ、この艦って極秘に作られていたんでしょ?識別コード、あるの?」  

 

 そう、問題はそこだ。

 この艦には、身元を示すコードがない。つまり、アルテミスからすれば、こちらは、身元不明の謎の艦ということになる。

 

「それは……確かに、この艦には識別コードはございませんが、しかし、同じ地球軍でしょう?」

「同じ地球軍ではあるけれど、こちらは大西洋連邦。あちら、アルテミスは、ユーラシアよ。識別コードなしに受け入れられる、とは、限らないんじゃないかしら」

 

 つまり、同じ地球軍でこそあるが、所属している国は違う為、味方であるとは限らない、と。

 

「それって、大丈夫なんですか?拘束とか、拿捕とか、そういった危険性は……?ユーラシアと大西洋って、潜在的な敵国なんですよね?」

 

 セラとムウの言葉を聞いて、しかめ面になるナタル。彼らの意見もわかるが、しかし、そんなことはーー

 

「……そうね。危険性は、ないとは言えないけれど、今はそうするしかないわ。ストライクを回収したら、アルテミスに向かいましょう」

 

 艦長であるマリューがそう決めたので、この場はそういうことになった。

 

 -----

 

 そこで、ブリッジにストライクから通信が入ってくる。

 すぐさま繋げるセラ。ストライクのキラと会話する。

 

『こちらストライク。アークエンジェル、どうぞ』

「こちらアークエンジェル。ストライク、どうぞ」

 

 そこまで話して、二人は困った顔をした。

 

『………被ったね』

「………被っちゃったわね」

 

 気まずさを振り払うように、セラから話を切り出す。

 

「……えっと、ストライク収容のためにハッチを開けるわ、ちょっと待ってて」

『……うん。あ、それと、セラ』

「?何?」

『実は、そのーーー推進ブロックが壊れている救助シャトルがあったから、持ってきちゃったんだけど……』

「……え、えええええぇぇ!!」

 

 すわ何事か、と、ブリッジ中の人員がセラに視線を向けるが、セラはそんなこと気にしている余裕はない。

 

「シャ、シャ、シャ、シャトルを持ってきたぁぁ!?な、何考えてるの!?バカなの!?」

『し、仕方ないじゃないか!このままだと、この人たち死んでしまうかもしれないんだよ!?』

「そうだけど!それは確かにそうだけど!で、でも!いまこの艦に避難民を受け入れるだけの余裕はないわよ!?」

 

 はぁ、とため息を吐きながらも通信席まで戻るナタル。

 

「変われ、ヤマト」

「は、はい」

 

 セラに変わり席に座り、通信する。

 

「確認するぞ、キラ・ヤマト。貴様は避難民を乗せたシャトルをこちらまで運んできた、そうだな?」

『は、はい』

「戻してこい。今この艦に避難民を受け入れるだけの余裕はない。すぐに救出艦が来る。それに任せろ」

『で、ですが、推進ブロックが壊れているんです!このまま漂流させるなんて出来ません!』

「ちょっと、キラ!」

 

 尚も頑固に言い返すキラを諌めようとするセラ。余り、好き勝手なことをすると、軍人たちから反感を買うかもしれない。それは避けたい。が。

 

「構わないわ。シャトル受け入れの準備を進めて頂戴」

 

 マリューの鶴の一声で、受け入れが決まった。

 

『ありがとうございます!マリューさん』

 

 キラの感謝の言葉の後に、通信は切れた。

 

「良かったのですか、艦長」

「今ここで、こんなことに時間を使うべきではないわ。いつザフトがまた襲ってくるのか分からないもの」

「……そういうことであれば」

 

 そんな言葉を、艦長と副長が交わしている裏で、セラは大きなため息を吐きつつ顔に手を当てていた。

 

「セラさん」

「は、はいぃぃぃ」

 

 マリューに名を呼ばれ、叱責を恐れて震え上がる。

 

「そんなに怖がらなくてもいいわ。キラくんを迎えに行ってあげなさい」

「……え?」

「家族、なんでしょ?」

 

 優しい声音と、柔らかい微笑み。

 まるでお母さんみたい。

 セラは、自身の母を思い出しつつ、そんなことを思った。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 そして、セラは格納庫まで跳び出した。

 

 

 -----

 

 

 ヴェサリウス。隊長室にて。

 アスランはクルーゼの元に出頭していた。

 

「失礼します!」

「入りたまえ」

「はっ」

 

 机の前で直立不動の姿勢をとるアスランに、クルーゼは切り出した。

 

「さて、説明してもらおうか。君がなぜ、あのようなことをしたのか」

「……はい。最後の一機、ストライクに乗っていたのは、キラ・ヤマト。コーディネイターで、月の幼年学校で共に学んだ、幼馴染です」

 

 アスランの告白に目を見開き驚くクルーゼ。まさか、そんなことがあるとは。

 しかし、ならばーー

 

「キラの妹のセラも、あの艦に乗っています」

 

 やはり、そうか。

 

「なるほど、そういうことなら君は、次の戦闘には参加すべきでないな」

「えっ」

 

 クルーゼとしても、それほど仲の良い親友を殺し合わせるほど、残酷ではない。

 

「彼が君の友であり、あの艦に君の友がら乗っていたとしても、ストライクは敵で、アークエンジェルは墜とすべきターゲットだ。君も、余り戦いたくはないだろう?」

「ですが……!」

「言い方を変えよう、アスラン。ストライクは討たねばならない。でなければ、君か、君の友が、彼に殺されてしまうだろうからね。君に、それが出来るのかい?」

「それはっ……、出来ます。やって見せます!あいつを、討ってみせます!」

 

 そう告げるクルーゼから、目を逸らしながら、声だけは力強くそう宣言するアスラン。

 だが、クルーゼにはわかる。彼は、実際に討つつもりなどないだろうことが。

 

「いいだろう。墜としてみせろ、アスラン」

「はっ!」

 

 そうして、アスランは自室に戻って行った。

 

 その背を見送ったクルーゼは嗤う。これこそが、運命とでもいうべきものなのだろう、と。

 

 -----

 

 アークエンジェルの格納庫にて、ストライクは一隻のシャトルを下ろしていた。そこから出てくる避難民の中に、彼女が、フレイ・アルスターが居た。

 フレイの元まで飛ぶトリィ。

 それでキラに気付いたのか、フレイはキラの元までジャンプした。

 

「フレイ!?フレイ・アルスター!?」

「貴方!貴方、サイの友達よね!一体どうなってるの!?ヘリオポリスは、どうなっちゃったの!?」

 

 勢いのまま、キラに抱き着くフレイ。その視線は、そのままストライクに向けられた。

 

「なんで、MSが、ザフトの物が、こんなところに?」

「ううん、違うよ。これは、地球軍のなんだ」

「地球軍?どういうことなの?」

「それについても、後で話すよ。ここには、サイたちもいるんだ」

「サイも!そうなの、良かった!」

 

 と、そこに走ってきたセラがキラに声をかけた。

 

「キラ!大丈夫……」

「あっ、セラ。うん、大丈夫……どうしたの?急に固まって」

 

 フレイを、サイの婚約者を、抱きしめているキラ。どこからどう見ても事案である。それを見たセラは、深刻そうな顔で話す。

 

「キラ………略奪愛は、良くない」

「………ごごご誤解!」

 

 そうして、キラとセラはフレイをサイたちの待つ食堂まで案内した。

 

 シャトルから受け入れた避難民がやってきて、宿泊区が人で溢れている。キラとセラは、ヘリオポリスでの学生組と一緒にいた。

 と、そこにムウがやってくる。

 

「よぉ、坊主、嬢ちゃん」

「あっ、ムウさん」

「これ、艦内のやつだけど」

 

 どうやらさっきの約束をしっかり守ってくれたらしい。ココアぐらいしかないようだが、ありがたくいただこう。

 

「それで、なんだが、どうやらこの後も戦闘になるらしい、だからーー」

 

 もう一度、ストライクに乗って欲しい、と言ったところだろう。

 

「………分かって、ます」

「………そうか。悪いな。本当に」

「……いえ。僕は、コーディネイターですから」

 

 キラがコーディネイターだということを初めて知ったのか、フレイは心底驚いているようだった。

 

「……それは、少し違うぞ、キラ」

「えっ?」

 

 コーディネイターだから、特別だから、キラは、凄いんじゃない。戦って欲しいんじゃない。

 

「君がコーディネイターだから、戦って欲しいんじゃない。君には、戦えるだけの力があって、そして、きっと君ならその力を正しく使えるって思っているから、戦って欲しいんだ」

「正しく、使える?」

 

 どういう、ことなんだろう?力を正しく使うって、どういう?

 

「あぁ、君は、誰かを恨むことを、憎むことも、余り得意じゃないんだろう?」

「えぇ、まぁ」

「恨むことも、憎むことも簡単なことだ。そこから戦うのも、簡単なことなんだ。だけど、それで戦っている奴らってのは、自分の命を顧みるような奴じゃない。自分も守ろうとしないような奴が、誰かを守るなんて出来っこないさ」

 

 ザフトのように、地球軍への憎しみと怒りで動いている人達では、何かを壊せど、守ることはできまい。

 だが、キラはきっと違う。

 会ったばかりで、そんなに話したこともなくて、マリューからの又聞きでしかないけれど、この少年は、妹の、友達のために戦うことを選べる男だ。本当は、命の奪い合いなんて嫌だろうに、それでも、大切な人達のために命をかけられる善人だ。

 きっと、軍人には向いていない。

 きっと、正義の味方にも向いていない。

 だが、きっと、彼は守護者にはなれる。

 何かを、誰かを、守るために戦うことが、彼には出来る。

 

「君には、ここの人たちを守ることができる。なら、君は君に出来ることをやれよ。俺たちも、俺たちに出来ることをやるからさ」

「………はい」

 

 そうしてキラの肩を叩き、ムウは去ろうとしてーー急いで戻る。

 

「あぁそうそう。言い忘れてた。マードック軍曹からの命令だ。ストライクの整備、自分でやっておけってさ」

「……えぇー」

「いやほんとすまないけど、人手が足りないからさ。俺も、メビウスの整備は自分でやってるし、だから、な」

「……はぁ、分かりました」

 

 今度こそ、ムウはキラの肩を叩き去って行った。

 

「ごめん。そういうことだから、ちょっと行ってくる」

 

 そうトール達に告げて、キラは格納庫まで走って行った。

 

「ね、ねぇ、キラがコーディネイターって……」

「本当よ。因みに、私もコーディネイター」

 

 フレイの疑問をあっさり認め、ついでに自分もそうだと明かすセラ。

 

「まぁ、コーディネイターだけどザフトじゃないわ。だから、安心しなさい」

「あぁ。コーディネイターだけど、キラ達は、大事な友達だ」

 

 それでもどこか不安そうに、サイの腕に抱きつくフレイ。

 

「………えぇ、そうね」

 

 その言葉とは裏腹に、まだ怯えが残っているようだった。

 それを見て、苦笑するセラ。まぁ、これは、仕方ないことなのだろう。

 

「……なぁ、セラ」

「何かしら?」

 

 セラに話しかけるトール。その目は、何かを決めたような目であった。

 何となく、何がしたいのかが、セラは分かった気がした。

 

 -----

 

 アークエンジェルのブリッジで、ナタルとマリューは指示を出していた。と、そこへーー

 

「あの、ナタルさん、すいません。ちょっとお話があるんですけど」

「なんだ?今は忙しい。手短にすませろよ」

「えっと、その、私たち、というかキラの同級生が、艦内の仕事を手伝いたいって」 

「……何?」

 

 一先ずのストライクの整備が終わったキラは、マードックさんこら、ノーマルスーツを受け取るように指示されて、そこまで行こうとしていた。

 そこで、向かい側からサイたちがハンドルに捕まっているのに気付く。サイ、トール、ミリアリア、カズイ、それから、セラ。全員が、連合の軍服を着ていた。

 

「みんな……?その、服」

「似合ってるだろ?ただまぁ、軍服ならザフトの方がカッコよかったけど、勲章とかさ」 

「こら」

「いてっ」

 

 ポコっと、トールに拳骨を喰らわすセラ。

 そんな二人を尻目に、ミリアリアはキラの目を見ながら、はっきりと告げる。

 

「こんな状況だし、私たちも、艦の手伝いをすることにしたの。キラが自分にできることをやるっていうなら、私たちも、私たちにできることをやるわ。もう、無関係じゃいられないもの」

 

 そうして、チャンドラの誘導に従い、ミリアリアたちはブリッジに向かう。

 

「あっ!そうそう。君も、そろそろパイロットスーツ、受け取るんだろ?」

「あっ、はい」

「向こうの更衣室にあったぞー」

「あ、ありがとうございます」

 

 そうして別れようとしてーー

 

「……ごめん。ちょっと先行ってて」

「あっセラ」

 

 セラはそうしてキラの元まで一旦戻った。

 キラの瞳を見ながら、セラは聞かなければならないことを、聞く。

 

「ねぇ、キラ」

「ん、どうしたの?」

「あなたは、アスランと、イージスと、戦える?」

「………分からない。戦えるかもしれない、もしかしたら、どうしてもできないって逃げちゃうかも」

「……そう、よね」

「……でも、大丈夫」

「……キラ」

「僕には、守りたい人がいる。

 だから、戦える。戦ってみせる。

 だから、セラは、死なないで。

 僕に、守らせてくれ」

「……えぇ。分かったわ。

 ちゃーんと、守られてあげる」

「うん、ありがとう」

「だから、私にも、キラを守らせて」

「……うん。セラを、信じるよ」

 

 そうして、兄妹は一時別れた。

 一人は、MSに。

 一人は、アークエンジェルに。

 違う場所、違うやり方で、お互いを守り合う。

 そう、誓った。

 

 -----

 

 ヴェサリウスにて、クルーゼは宙図を見ながら、次に取るであろう行動を予測していく。

 

「君はどう見る、艦長。足つきの打つ次の手を」

 

 クルーゼの問い掛けに、顎に手を添えながら、アデスは答える。

 

「恐らくは、このまま月本部へ向かうか、あるいは途中の地球軍基地に寄り、そこで補給するか……そのどちらか、でしょうな」

 

 宙図を睨みながら、クルーゼは続ける。

 

「補給するとしたら、寄るのは恐らくはここだな」

 

 クルーゼの指差すのは、アルテミス。又の名を、『傘』のアルテミス。

 

「確かに、艦の安全を考慮するのならば、ここでしょうな」

 

 ここならば、あの艦は安全だ。

 外部からの攻撃では、決して傷付くことはない。

 と、そこへ報告が。

 

「熱源反応あり!方角はーー」

 

 その方角は、予想の真逆。

 つまりーー

 

「アテが外れた、というわけではなさそうですな」

「あぁ、この状況でこの動き。やはり進路はアルテミスか」

「ならば、どうしますか?」

「ふむ。網を引くとしよう。ナスカ級は予め待ち伏せする。ローラシア級は、こちら側から接近してくれ」

 

 熱源の発信元と思われる位置から、ナスカ級に向かうように。

 この動きならばーー

 

 -----

 

「ラミアス艦長!前方にナスカ級!側面にローラシア級です!」

「……やっぱり、そううまくは行かないわね」

「如何なさいますか」

「……作戦に変更はないわ。総員、第一種戦闘配備!メビウス発進!その後、特装砲発射!発射後ストライク発進!」

「「「「「了解!!」」」」」

 

 格納庫にて、ムウはキラと会話しながら移動していた。

 

「今回の作戦、君は難しいことは考えなくていい。

 この艦を落とそうと攻めてくる敵から、この艦を守れ。君がすることはこれだけだ」

 

 この艦を落とすということは、恐らくはGも攻めてくるだろう。イージスを投入してきたのだ。他の機体も投入しない理由がない。

 

「簡単に言ってくれますね」

 

 G4機、ローラシア級一隻から、艦を守れとは。

 

「じゃあ、俺と役割変わるか?」

 

 半笑いで、そう問いかけるムウ。

 生憎と今回の作戦。ムウの方が生存率も成功率も低い。

 

「いえ。それは、ムウさんにしか出来ないことでしょう?」

「あぁ、そうだ。だから、坊主、いや、キラ、君はーー」

「分かってます。ムウさんはムウさんにできることを、僕は僕にできることを、ですよね」

「よし!お互いに、絶対に生きてこの艦に戻るぞ!」

「……はい」

 

 ムウの突き出した拳に、拳を合わせ、キラはストライクに向かう。

 それを見送ってから、コックピットに乗り込み、最終確認を終えて、準備完了。

 

『リニアカタパルトオープン。ハッチ解放。システムオールグリーン。

 フラガ機、発進どうぞ!』

 

 操縦桿を握りしめ、見えてきた暗黒の宇宙を睨む。

 ーーこれ以上好き勝手はやらせんぞ、クルーゼーーー

 

「ムウ・ラ・フラガ!メビウス・ゼロ!出る!」

 

 リニアカタパルトが走り、ムウのメビウスが宇宙に出る。

 僅かなガス噴射で姿勢を制御し、後は、慣性に任せて飛ぶ。

 

 ムウの発進ののち、特装砲を展開するアークエンジェル。

 

「目標!敵ナスカ級!特装砲、発射用意!」

 

 照準を合わせるセラ。

 ただし、今回は、当てる必要はない。

 

「てぇーーー!」

 

 放たれる陽電子砲。

 それを察知したナスカ級は、すぐさま射線から離れる。

 直後、ナスカ級がいた場所を撃ち抜く陽電子砲。

 戦慄するザフト。今のが直撃していればひとたまりも無い。まさか、これほどの武装を持っているとはーー

 

 -----

 

 ストライクのコックピットで、キラは機体の最終確認を済ませていた。

 今回のストライカーパックは、エール。

 宇宙空間の戦闘には、最も適性のあるストライカーパックである。

 

『キラ。聞こえる?』

 

 ブリッジからの通信。しかし、この声はーー

 

「ミリアリア?」

 

 モニターに映るのは、ミリアリア・ハウの顔。

 

『以降、MS、MAの管制は、私がやるわ。よろしくね』

『こら!よろしくお願いしますだろう!』

 

 叱られるミリアリア。思わず笑うキラ。

 わざとらしく真面目くさった顔のミリアリアが、厳かにキラに告げる。

 

『キラ・ヤマト!ストライク!発進準備!』

 

 それに合わせるように、真面目くさった顔で厳かに、礼儀正しくキラが答える。

 

「了解!ストライク、発進準備致します!」

 

 そこまで言って、二人は笑い合った。

 

 カタパルトに設置されるストライク。

 キラの脳裏によぎる、幾つもの言葉。

 

『君は、君にできることをやれよ』

『もう、無関係じゃいられないもの』

『だから、私にも、キラを守らせて』

 

 本当は、戦いたくなんて無いけれど。

 けれども、この背には、守らなければならないものがある。

 だからーー

 

『リニアカタパルトオープン!ハッチ解放!システムオールグリーン!ストライク、発進どうぞ!』

 

 友達の声を受けて、キラは操縦桿を握りしめて、覚悟を決める。

 

「キラ・ヤマト!『ガンダム』!行きます!」

 

 決意と共に、白亜の巨人は宇宙へ飛び立った。





 ボスゴロフ級とローレシア級間違えてました。
 ごめんちゃい

 ローラシア級じゃなくてローレシア級になってました。
 まじすいません。
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