キラの妹が居たらっていうだけのお話 作:イングリット可哀想可愛い
イージスのコックピットで、アスランは操縦桿を握りしめながら、どうすれば良いのかを考え続けていた。
キラを地球軍から連れ出すには、いや、セラもあの船に乗っているだろう。ならーー
(せめて、キラだけでも……)
そう思いながら、アスランはストライクをロックオンした。
真っ直ぐ向かってくるイージス。それを見て、キラはより強く操縦桿を握りしめた。
アスランと戦いたくなんて無い。
それは今も変わらない。
でも、それでもーー!
接近、そのまますれ違う。瞬時に通信を接続するアスラン。
『もうやめろキラ!何で俺たちが戦わなきゃいけない⁉︎何でお前が、ナチュラル船なんかに乗っている⁉︎』
宇宙空間で、言葉と共に光線を交わしながら、二人はぶつかり合う。二人は、友達だった。こんな風に、命を奪い合うような二人じゃなかった。
あんなに、一緒だったのに………。
『君のほうこそ!何でそんなのに乗ってるんだ!何であんな事したんだ!戦争なんて嫌だって、君だって言ってたじゃないか!』
『状況の分かっていないナチュラルが、こんなものを作るから……!』
『そんなの!民間人を巻き込んで良い理由にはならない‼︎』
『ッ!先に巻き込んだのは!地球軍だ‼︎』
ぶつかり合う両者。アスランを近づけまいと連射するキラ。それを躱し、鋭い反撃で牽制するアスラン。
これがただの喧嘩なら、どれほど良かったことだろう。しかし、これはそんな生易しいものではなく、故に、二人は相手を傷つけようとして、自分を傷つけていた。
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一方、アークエンジェル、ブリッジにて。
背後にいるローレシア級から出撃した三機のMS。
熱紋照合の結果、その機体はーー
「デュエル、バスター、ブリッツ!接近してきます!」
「なっ!」
「もう全機投入してきたというの⁉︎」
現在ストライクと交戦中のイージスも含めれば、強奪された四機全てが投入されたことになる。
ということは、すでにデータの吸い上げは終わったということなのだろうが、それにしても思い切りが良すぎる。
「総員!第一迎撃体制!迎撃開始!」
武装を展開。迎撃を開始するアークエンジェル。
110cm単装リニアカノン『バリアントMk.8』を展開、艦後方を照準。
艦尾大型ミサイル発射管に、対空防御ミサイル『コリントスM114』を装填。
75mm対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』を起動。
全弾斉射。
回避、迎撃行動をとるG3機。『コリントスM114』を撃ち落とし、『バリアントMk.8』から放たれる弾丸を躱し、『イーゲルシュテルン』を防ぐ。
バスターのパイロット、ディアッカは、アークエンジェルの脅威的な砲塔数に冷や汗をかいていた。
「うっひゃー、何だあれ。ハリネズミみたいだなオイ」
「最初に放った破城砲も有りますし、たった一隻の戦艦に乗せるには火力が高すぎます」
「こいつといい、あの船といい、どんだけヤバいもん作ってんのよ連合は」
「それだけ本気ということだろう。全員で掛かる、と言いたいところだが、アスランが手間取っているな。……俺が行く。お前たちは艦を!」
「分かりました!」
「えぇーーー、俺この艦の相手するの嫌なんだけど」
「ダメですよディアッカ。その機体は対艦戦闘に向いてるんですから。適材適所です」
「俺の機体は艦を落とすには火力不足だ。お前たちの方が向いてるだろう。大物だぞ、喜べよディアッカ」
「……はいはい。分かりましたよ」
バスターは両肩の220mm径6連装ミサイルポッドを展開。右腕に350mm『ガンランチャー』を、左腕に94mm高エネルギー収束火線ライフルを構え、砲撃開始。
その名の通りの砲撃の嵐。まともに受ければひとたまりも無い。
「アンチビーム爆雷散布!ヘルダート!てぇー‼︎」
アークエンジェルの防御。
アンチビーム爆雷で94mm高エネルギー収束火線ライフルを防ぎ、ガンランチャーは艦橋後方ミサイル発射管から放たれる、対空防御ミサイル『ヘルダート』で防御。ミサイルポッドはイーゲルシュテルンで撃墜する。
「今だぜ!ニコル!下からだ!」
「了解です!」
防御のために一旦攻撃の火力が落ちた瞬間に、ブリッツは高速で移動。アークエンジェル下部から攻撃を加えようとする。
それに気付いたナタルはすぐさま指示を出す。
「艦下部イーゲルシュテルン起動!迎撃開始!」
アークエンジェルの持つ唯一の下方向への迎撃手段。艦下部を狙うイーゲルシュテルンを起動し、ブリッツを牽制する。
数発直撃、しかし効果は見られない。
「チッ!やはり実弾では効果が薄いか……!」
「ですがナタルさん!これじゃゴットフリートの射線が取れません!」
バリアントを操作、照準し、バスターを牽制しながら、セラはそう告げる。この艦の持つビーム兵器、ゴットフリートならば、フェイズシフトであっても致命傷となり得るだろうが、それも射線が通らなければ何の意味もない。
そこで、マリューはすぐさまノイマンに指示を下す。
「艦を横に倒して!そのまま下を狙う!」
「っ!了解!」
ノイマンはすぐ様艦を九十度左に倒す。
左側に備え付けられているゴットフリートを展開。ブリッツに照準。
「ゴットフリート、てぇー!」
咄嗟に回避するブリッツ。しかし砲撃は右肩を掠める。肩アーマーが吹き飛ぶ。しかし作戦行動に支障はない。すぐに艦の下部に再び潜り込む。
「今度は当てます!」
「分かったわ!もう一度!」
再び九十度回転しようとしてーーバスターの砲撃が来る。
「ッ!迎撃!」
回転運動を中止。バリアント、ヘルダート、イーゲルシュテルンで防御。
「うっわぁ、何だあの船。無重力空間ではあるけど、あんな速度で回転できるのかよ」
「凄まじい機動性ですね。ちょっと迂闊すぎました」
「しゃーないでしょありゃあ。ただ、艦下部の防御が薄いのは間違いない。回転は俺が抑える。ニコルはーー」
「継続して、下部への奇襲ですね」
「じゃ、そういうことで」
再び全砲門開放。アークエンジェルに砲撃の暴風雨が襲いかかる。アンチビーム爆雷という傘を開き、ビームという雨を防ぐ。バリアントとイーゲルシュテルン、ヘルダートという雨粒をぶつけることで、バスターの暴風を真っ向から打ち消す。
その隙をつき、再び下部に移動するブリッツ。
この状況ならば、回転はないーー!
「イーゲルシュテルンの照準を私に!」
「了解した!外すなよ!」
50mm高エネルギービームライフルによる射撃を数発当てるが、ラミネート装甲には効果が薄い。そこに、再びイーゲルシュテルンが襲いかかる。これはフェイズシフトに任せて良い。
ニコルはそう判断しつつも、万が一に備えて回避した。
「……っ!これは……!」
その判断は正しかった。
イーゲルシュテルンが狙っていたは、ブリッツの装甲が外れた右肩と右腕に装備している攻盾システム『トリケロス』、それに装填されている三連装超高速運動体貫徹弾『ランサーダート』。
フェイズシフトに任せて回避していなければ、ランサーダートが誘爆。最低でも右腕全損は免れなかっただろう。
「なんて精度!艦体射撃で、こんなところを狙ってみせるなんて……」
「おいおいニコル!今のは回避しなくても行けたんじゃねぇの?」
「いえ、気を付けてくださいディアッカ。恐らく相当腕の良い砲撃手がいます」
「……そうかぁ?割と雑に見えるけど?」
「基本は自動照準でしょう。ですが、恐らく主砲と艦下部の迎撃砲は手動です。先ほどもブリッツのランサーダートを狙って撃ってました」
「おいおい。そりゃぁいくら何でも考えすぎじゃねぇの?こんな遠距離の、それも暗い宇宙空間で、狙ってそんな小さいものを撃ち抜けるかよ」
「気のせいだったというならそれで良いですが、そうじゃなかった場合、最悪撃墜されるかもしれません。警戒しすぎということはないでしょう」
「……まぁ、こんなところで死にたくはねぇからな。分かった。こっちも警戒しとくさ」
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ブリッツに躱されたセラは歯噛みしていた。
「くっそ!躱された!何であそこで躱すのよ!大人しくフェイズシフトに任せなさいよ‼︎」
セラが何を狙っていたのか理解していたナタルは、ブリッツのパイロットの警戒レベルを一段階引き上げた。
「それだけ慎重なパイロットということだろう。次からは君の射撃の警戒レベルを一段と上げてくるはずだ」
「それならそれで好都合よ。警戒している間は、無理に攻め込むようなことはないでしょう。フラガ大尉の作戦成功までの時間稼ぎにはなるわ」
無警戒の相手を撃ち抜くのは容易いが、警戒している相手はそう簡単には撃ち抜けない。が、警戒している相手というのはどうしても攻め手に欠ける。そういう相手とやり合うと、時間ばかりかかって良いことは少ないが、今回に限ってはそれは好都合だ。
「えぇ、そうですね、艦長。セラ・ヤマトはこのままブリッツを牽制。他のクルーはバスターの砲撃を最警戒。墜とさなくて良い。フラガ大尉の作戦成功まで時間を稼げ!」
「「「了解‼︎」」」
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イージスとストライクの戦闘に力任せに割り込んで見せるデュエル。
175mmグレネードランチャー装備57mm高エネルギービームライフルによる射撃で、ストライクを牽制する。
恐らくは敵パイロットは戦闘経験が少ないのだろう。動きがあまりに素直すぎる。
「何をやっているアスラン!この程度の敵、とっとと墜とさんか!」
「ッ!イザーク‼︎」
ストライクは艦から引き離すように移動。それを追うデュエルとイージス。
移動しながらキラはデュエルに照準。回避先を予測し、射撃。
だが、予測した回避先を予測されたのか、簡単に躱されてしまう。
「ッ!そんな⁉︎」
「ハッ!予測が甘いんだよ!」
何よりも、ストライクの銃口は、イザークの視界に入っている。銃口の向きから、どこを狙っているのかが丸分かりだ。
やはりこのパイロットはまだまだ未熟。反応速度は目を見張るものがあるが、それだけだ。
この程度の相手に手間取るとは、アスランらしくもない。
射撃を躱しながら距離を詰め、ビームサーベルを抜刀し、切り掛かるイザーク。
それに完璧に反応し、すぐ様全速で距離を取る。やはり反応速度は桁違いだ。だが、この程度ならばいずれは墜とせる。何よりーー
「そんなに激しく動いて、バッテリーは持つのか?ストライク!」
バッテリーさえ切れれば、フェイズシフトは使えない。そうしたらグレネードで吹き飛ばす。
確かな勝ち筋を見つけて、イザークは着実にストライクを追い詰めていた。
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ヴェサリウスのブリッジで、クルーゼは戦場を俯瞰していた。
足付きは簡単には落とせそうに無いが、ストライクはそうでも無い。あの男がそうだったとしても、コーディネイターである以上、未経験のことはそう簡単に出来るようにはならないということだろう。
問題はーーー
「メビウスは戦場に出ていないのか?」
「そのようです。熱紋確認できません」
「ふむ……………」
ガンバレルの修理が終わっていないのか、或いはーーー何かの、作戦か。
作戦だとして、どのような作戦なのだろうか。
現状、足付きの取れる戦術は限られている。僚機の数には倍の差があり、質の面でもMAのメビウスが僚機の一機である足付きが大幅に不利。艦隊戦になったとしてもニ対一。足付きの武装がどれだけ優れていても、不利なのは間違いない。となれば、まずは数を減らそうとするだろう。ならばーーー狙いは奇襲。ターゲットは、MSではなく、艦そのもの。艦を撃退できれば、補給出来なくなるだろうMSは退却するしか無い。
艦を狙うとすればーーー
「チッ!そういうことか!」
「クルーゼ隊長?」
だとすれば、時間をかけ過ぎたか。否、まだ間に合う、か?
「艦首下げ!下方を狙え!」
「は、はぁ?」
この状況でアークエンジェルから目を逸らすなど、どう考えても悪手。破城砲をその隙に撃たれて仕舞えばーー否、砲を展開する隙は無いはず。ならば、何も問題はない。
「り、了かーーー艦下方より熱源接近‼︎メビウスです‼︎」
「なっ!?バカな、いつの間に!?」
「急げ‼︎」
「ハッ!」
ナスカ級は全速で艦首を下げ、主砲を含めた全訪問でメビウスを撃墜しようとする、が。
「気付いたかクルーゼ!だが一手遅い‼︎」
ガンバレルを展開。リニアガンを含めた五門で、ナスカ級に一人十字砲火。
左側エンジンブロックに直撃。爆ぜるエンジン。紫の煙が上る。
「左エンジンブロック被弾!消火班急げ!」
「チィ!やってくれたな、ムウ‼︎」
クルーゼは全速で離れていくメビウスを忌々しそうに睨みつけた。
「よっしゃぁぁぁ‼︎『不可能を可能にする男』舐めんなよ‼︎」
メビウスがナスカ級に大打撃を与えた。
それは戦場を駆け巡り、ザフトは動揺して動きが鈍り、アークエンジェルはこの機を逃すまいと一転攻勢に打って出る。
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「ヴェサリウスが!」
「畜生ォォォ‼︎」
煙を上げるヴェサリウスに視線が吸われ、ストライクへの警戒が疎かになる。
その隙を、キラは流さない。
「ッ!今なら……っ!」
転身。アークエンジェルまで退却する。
それに気付いたイージスとデュエル。白い光を残して逃げようとするストライクを追い、赤と青の残光が白い光を追撃する。
「待て!待つんだキラ‼︎」
「逃さんぞ、ストライクゥ!」
デュエルはストライクを、アスランはキラを墜とす/捕まえるために。
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バスターとブリッツは、動きを止めてしまっていた。
「まさかヴェサリウスが……!」
「やってくれるじゃないの……!」
砲撃の嵐が一時止み、その瞬間を逃さない。
ノイマンは艦を90度回転。ゴットフリートの射線を通す。狙いは、ブリッツ!
ロックオンアラートが鳴り響くコックピット。そこでようやく気付いたニコルは、大慌てで回避運動を取った。
「っ!しまった!」
「はっ!ニコル!」
ニコルを援護しようとバスターは武装を展開して、気付く。艦下部の迎撃砲が、自分を狙っていることに。瞬間、ニコルの言葉が脳裏をよぎる。
腕の良い砲撃手。恐らくは、下部の迎撃砲と、主砲!
咄嗟に回避行動を取り、アークエンジェルから離れるバスターとブリッツ。
彼女の狙い通りに。
「今よ!『ローエングリン』展開!」
艦首に搭載されている破城砲。陽電子破城砲『ローエングリン』。それが展開し、エネルギーをチャージする。
「っ!やられた!」
主砲も迎撃砲も自動照準。恐らく砲撃手は、あれでヴェサリウスを!
照準をヴェサリウスに定めながら、セラは思考する。
(最初の一発で、ローエングリンは見せた。あの威力を目の当たりにしたナスカ級は、絶対に回避運動を取る!フラガ大尉が左側エンジンブロックをぶっ壊した!なら、左のスラスターじゃあ回避運動が間に合わないって判断して、右のスラスターを全開で吹かすはず!つまり、狙うは、ブリッジのやや左‼︎」
「ローエングリン、てぇー‼︎」
放たれる赤い光。
それは吸い込まれるように、ナスカ級のブリッジを撃ち抜くーーはずだった。
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「熱源接近!着弾まで三秒!」
「回ーー!」
「回避運動は取るな!」
「クルーゼ⁉︎何を言ってーー」
瞬間、ナスカ級の左を掠めて行く赤い光。左翼が損傷。だが、つまり、今のはーー
「読んでいたというのか……!回避先を!」
「このために最初の一発を撃ったのだろう。我々に、あれは回避しなければ不味いという認識を植え付けたのだ。左のスラスターが使えん以上、右を吹かすしか無いが、それをするだろうと想定して、敢えて狙いを左側にずらしていたのだ」
「なんてやつだ……」
「これ以上の戦闘は危険だ。撤退するぞ」
MSを駆っているのがあの男であるならば、恐らく砲撃手はあの男の妹だろう。
やはり危険な兄妹だ。末恐ろしい物を感じる。
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一方その頃、アークエンジェルのブリッジでは。
「はぁぁぁぁ⁉︎なんで躱さないのよ!素直に躱しなさいよ‼︎」
セラは苛立ちの余りコンソールを殴りつけてしまった。
「……セラ・ヤマト」
「……あっ」
やっベェ。怒られる。
命の危機すら感じる。ナタルさんのいつもよりちょっと低い声怖すぎる。
「……説教は後だ。今はブリッツとバスターを迎撃しろ。だが、追撃はするなよ」
「……は、はい」
大人しくゴットフリートでブリッツを狙い、砲撃する。
そんなナタルとセラを見て、マリューはクスッと笑った。
「ナタル。セラさんすごい頑張っていたから、程々にね」
「……善処します」
「マリューさん……!」
キラキラ輝いている瞳でマリューを見つめるセラ。やはりこの人はいい人だ。できればこのまま説教を止めて欲しいなぁ。
「セラ・ヤマト」
「はい!任務を全力で遂行します!」
気を引き締めて砲撃を再開する。
ただ、もうほとんど勝敗は決したような物。後は消化試合同然だ。
そう、油断していたからだろうか。
「っ!そんな!ストライク、イージスに捕まりました!」
「……………うっそ……」
そんな、最悪の報告が飛び込んできた。
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全力で退避中のストライク。しかしーーー
「くそっ!バッテリーが!」
イージス、それからデュエルとの戦闘でバッテリーの消費が想定よりも激しい。このままだと、間に合わない‼︎
速度がやや落ちるストライク。それに気付いたアスランは、イージスをすぐ様より速度の出るMA形態に変形させる。
全速力で突撃。爪のようになった両手足で、ストライクを完全に捕まえてみせた。
「っ!しまった‼︎」
振り払おうともがくが、そこで遂に、バッテリーが切れる。フェイズシフト装甲がダウン。色が抜け、灰色に。
「何をしているアスラン!とっとと墜とさんか!」
「捕獲できるなら捕獲しろと隊長は仰っていた!今なら捕獲できる‼︎」
そんな悠長なことを言っている場合か……!
『勝手なことをするなよアスラン!』
通信機越しに聞こえてくるイザークとアスランの会話を聞いて、ディアッカとニコルはそちらに視線を向けた。
「アスラン⁉︎」
「何をやってるのよアイツは‼︎」
全速力で二人の後を追うブリッツとバスター。
「何をしているんですかアスラン‼︎そんなことをしている場合じゃあ!」
「そうだぜアスラン!MSを一機抱えたまま撤退なんて無茶だ!」
4機は言い争いながら、主砲を乱射するアークエンジェルから離れていく。
「待て!待ちなさい!」
コンソールを噛みつくように覗き込み、もの凄い形相でイージスを狙う。
だが、あまりに離れすぎているのと、冷静さを欠いている為に、砲撃は掠りすらしていない。
「セラ・ヤマト!落ち着け!」
「でも!でも、キラが……!」
「分かっている!艦長!」
「えぇ、フラガ大尉を向かわせるわ。救出できるかどうかは、分からないけれど」
「そ、んな……」
崩れ落ちそうになるセラ。目を潤ませて、泣きそうになって。必死に振り払って、もう一度イージスを狙う。
それでも、当たらない。
(なんで?なんで?やめてよ、アスラン。盗らないで、盗らないでーーーお兄ちゃんを、盗らないで)
「……これは……!」
「どうした⁉︎」
「フラガ大尉より、メッセージです!」
すぐ様スクリーンに映し出されるムウからのメッセージ。それに書かれている作戦とは………?
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『止めろアスラン!離してくれ!艦には、まだセラが!』
『っ、分かっている!それでも、せめて、お前だけでも……!』
『ふざけるな!良いから離せ!アスラン!』
『すまない……!それでも、俺は、お前を撃ちたく無い………!』
『……くっ!アスラン……!』
悲痛な、幼馴染の声。
それを聞いてしまい、キラの怒りは急速に萎んでいった。
『……『血のバレンタイン』で母が死んだ』
不意にこぼしたアスランの告白。だが、それは、キラがあらかじめセラに教えられていたことでもあった。
『……やっぱり、そう、だったんだ』
『……セラは、そう推理したのか?』
『……うん。レノアさんは絶対、アスランが軍人になることに反対するだろうって。なのにそうなっているってことは、レノアさんに何かが起こったってことで、レノアさんはユニウスセブンにいたってことは……』
『……やっぱり凄いな、セラは。
……何とかする。何とかして、あの艦からセラを助ける。だから、このまま大人しく……』
その時、キラはムウからのメッセージを受信する。そこに書かれている作戦を読んで。一度目を閉じて、深呼吸して、覚悟を決める。
「……ごめん。アスラン。僕は、そっちには行けない」
『キーー!ッッッ!なんだっ!』
イージスの上から強襲するメビウス。
リニアガンより放たれる弾丸が、スラスターに銃撃を浴びせる。
一瞬、イージスの拘束が緩んで。
その瞬間を逃さず、ストライクは脱出した。
『待て!キラァ!』
『そのままアークエンジェルに迎え!坊主!』
『はい!』
メビウスはガンバレルを展開。全方位射撃でイージスを翻弄する。
「邪魔をするなぁ‼︎」
邪魔者に怒り、撃墜せんとビームライフルを乱射して、全て躱される。
「くぅっ!」
「どうした?随分と荒れているじゃ無いか‼︎」
しかし、フェイズシフト装甲相手では、メビウスでは有効打は無い。いずれは墜とされるはずで、圧倒的に有利なはずなのに、なぜかアスランは、このメビウスを落とせる気がしなかった。
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『逃さんぞ!ストライク‼︎』
足つきの迎撃を掻い潜り、ストライクの背後につく。ストライクは、足付きの前方を飛んでいる。デッドウェイトとなったバックパックは外したようだ。
『墜ちろ‼︎』
無防備な背中に、グレネードを撃ち込んだ。
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その少し前、アークエンジェルブリッジにて。
「ストライク、射線軸上に入るまであと三秒!」
「『ランチャー』パック発射準備!」
「マリューさん!私にやらせて下さい!」
「できるのね⁉︎」
「もちろんです‼︎」
セラはコンソールを睨み付け、ストライクが射線軸に入る瞬間を狙う。
(-------入った!)
「発射します!」
リニアカタパルトより撃ち出されたランチャーパックは、デュエルの放ったグレネードが直撃する寸前に装着される。フェイズシフト起動。グレネードをやり過ごして、反撃。
『なにぃぃ!』
躱しきれなかったデュエルの右腕は消し飛んだ。
ランチャーストライクは、320mm超高インパルス砲『アグニ』を乱射。
デュエルを追い払い、そのままの勢いでバスター、ブリッツを蹴散らした。
『くそっ!くそっ!くそぉぉぉ!』
『不味い!撤退するぞイザーク!』
『殿は僕が!』
『頼んだ!』
撤退するデュエル、バスター。その二機を守るように、ブリッツ。
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メビウスは、直ぐ様アークエンジェルまで撤退する。
逃すまいと追いかけようとして、既に仲間たちが撤退しようとしているのを見つけた。
『撤退だ!アスラン!作戦は失敗だ!』
ディアッカの通信を聞いて、アスランは悔しそうに、悲しそうにしながら、その場を離れる。
『……了解。アスラン・ザラ。撤退する』
イージス、デュエル、バスター、ブリッツが撤退する。
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それを確認して、チャンドラは報告する。
「敵部隊の撤退を確認。及び、ストライクとメビウスの帰還を確認。戦闘終了です」
瞬間、爆発するブリッジ。
傍の人と抱き合い、ハイタッチして、喜びを分かち合う。
艦長席のマリューは安堵のため息を吐き、ナタルと目を合わせ、微笑みあった。
それはそれとして。
ナタルは微笑みを消し、真顔でセラに向き直ったところで、セラがもういないことに気付いた。
ブチ切れたナタルにビビって、ミリアリアとサイは全力で距離を取った。
マリューは、ナタルの背後に鬼を見た。
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壁にぶつかりながら、全速力で格納庫まで行く。格納庫に辿り着いたときには、髪はもうぐちゃぐちゃで、体のあちこちが痛かった。
微動だにしない直立したストライクのコックピットの近くで、ムウとマードックが何やら話しているのに気付いた。
「ムウさん!マードックさん!」
「ーーん?なんだ嬢ちゃんか」
「ちょうどよかった。坊主が中々コックピットから出てこないんだ。何とかしてくれ」
マードックのそんな言葉を聞いているのかいないのか、すぐ様コックピットの外部開閉ボタンを押し、コックピットの中のキラに抱き付いた。
「………セ、ラ」
モゾモゾと、セラの懐から出てきたチュチュと、キラの部屋から飛んできたトリィが、二人の頭の上に止まった。二匹は再会を祝福するように、戯れ合っていた。
「……よかった。生きてて、よかった」
「……うん。心配かけて、ごめんね」
「……謝らないでよ。バカ」
お互いの鼓動の音が聞こえる。お互いに生きていることを確かめ合う。
少し落ち着いたのか、セラはキラから少しだけ離れて、お互いに見つめ合って、泣きながら笑い合った。
「守ってくれて、ありがとう」
声を震わせながら、セラはそういった。