キラの妹が居たらっていうだけのお話   作:イングリット可哀想可愛い

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 なんか一瞬日刊ランキング入った。
 すぐに消えたけど。
 嬉しい。
 なのに更新ちょっと遅れるっていう阿呆は誰だ。俺か。


PHASE7 要塞アルテミス

 

 ヴェサリウス。ロッカールーム。

 金属音と打撃音が響く。デュエルのパイロット、イザークは、その顔を怒りで歪めながら、アスランの胸ぐらを掴んでロッカーに叩きつけた。

 

「アスラン!貴様ぁ!」

 

 二人の様子を見ているディアッカは、諫めることも責めることもしなかった。 

 

「四機でかかったんだぞ!おまけに相手は素人だった!それを、お前のせいで……!」

「まぁ、いつものお前らしくなかったのは事実だな」

「何とか言ったらどうなんだ、アスラン!」

 

 そこに、殿を務めた為に、戻るのが一番遅れたニコルが扉を開いた。

 

「何をやっているんですか、イザーク!」

「こいつが勝手な事をしたせいで、俺たちは失敗した!このままじゃ俺たちはザフトの面汚しだ!」

「だからって、アスランに当たるのは違うでしょう!今はそんな事をしている場合じゃない!」

 

 ニコルに止められて、渋々イザークは引き下がった。

 肩を怒らせながら出ていくイザークと、それについていくディアッカを見送ってから、ニコルは再びアスランに向き直った。

 

「今回の作戦、アスランらしく無いですよ。何かあったなら、相談して下さい」

 

 そんなニコルの気遣いを無視して、アスランは更衣室から出ようとした。

 

「っ、アスラン……!」

「………悪い、ニコル。今は、一人にしてくれ」

 

 気まずそうに、ニコルから目を逸らしながら、アスランは更衣室の扉を閉めた。

 

 壁を殴りつけて、その反動で廊下を漂うアスラン。

 思い起こすのはキラの言葉。

 

『……ごめん、アスラン。僕は、そっちには行けない』

 

(………あぁ、そうだろう。

 セラを守ろうとしないお前は、お前じゃない。

 お前は、セラに甘かったからな)

 

 どうすれば良いのかどうしても分からず、アスランの思考はずっとぐるぐる回っていた。

 

 -----

 

 アルテミス。月の女神の名を冠するこの基地は、非常に特殊な装備を持つ。

 その名を、『全周囲光波防御帯』。ミサイルもレーザーも通さない、正真正銘無敵のシールド。だからこそ、この基地はザフトに落とされることはない。

 まぁ、落としても旨みが少ないのも理由の一つではあるのだろうが。

 そんなアルテミスに入港したアークエンジェル。その格納庫に、キラとセラは居た。

 

「にしても変な話だよね。ストライクのOSにロックかけといてって」

 

 ムウに頼まれた事を済ませて、コックピットから出てきたキラは、外で待っていたセラにそう言った。

 キラが言っているように、戦闘が終わり、居住区に戻ろうとしたところで、バレないように呼び止めてきたムウに、ストライクのOSにキラ以外が乗れないようにロックをかけておけと言われたのがついさっきである。

 ムウのその言葉を聞いて、セラはブリッジでの話し合いを思い出していた。

 

(ユーラシア所属のアルテミスと、大西洋所属のアークエンジェル。同じ地球連合ではあるけれど、決して一枚岩じゃない。旧暦の頃から、この二国は仲が悪かった。まぁ、母体になった国の話ではあるけれど。でも、それをいまだに引きずっている。所謂潜在的な敵国ってこと、よね?今はプラントっていう共通の敵がいるから、手を組んでいるけれど。

 そして何より、この艦も、そして、この子、ストライクも、大西洋の極秘計画。その情報がもたらす恩恵は計り知れない。ストライクのデータさえあれば、MSの量産も夢じゃない。

 ──もしも、ユーラシアがMSを作れるようになったのなら、大西洋に対して有利に立てる。

 フラガ大尉は、それを警戒している?いえ、もしこの基地が、潜在的な敵国の基地なら──」

「……セラ?どうしたの、また考え込んで。危ないよ」

 

 ブツブツと小声で考えている事を話しながら考え事をしているセラに、キラは心配して声をかけた。

 こういう時のセラは周りが見えないので、何かにぶつかったりしてしまうことが多い。そう、まさに今のように。

 無重力空間を漂っているセラの身体は、フワフワと空中を漂って、ストライクの外装に、額をぶつけた。

 重い金属音が響き、セラは頭を抱えた。

 

「痛ったぁぁ〜〜〜」

「だから言ったのに……」

 

 コックピットから出てきたキラは、セラの額を覗き込んだ。触ってみた感じ、腫れているけど重症では無さそう。一応湿布か何かもらっておいたほうがいいかなという程度だ。

 涙目で見上げながら、セラはキラに警告した。

 

「……良い、キラ。貴方がこの機体のパイロットってことも、コーディネイターだってことも、この基地の軍人に聞かれたとしても答えないで」

「……何で?この基地は、味方の基地なんでしょ?」

 

 そうだ。潜在的な敵国とはいえ、今は味方であり同盟国だ。

 敵ではない。その筈なのだ。

 だが───

 

「それでも、よ。この基地の軍人はナチュラルよ。私たちにとっての、潜在的な敵。しかもここはユーラシア所属よ。地球の国では、大西洋に次いでブルーコスモスが強い勢力を誇っている国。こんな基地で、キラの身柄を拘束させるような言い訳を用意してやることは、避けるべきだわ」

「……分かった」

 

 そうして、キラたちは居住区まで戻ったのであった。

 

 -----

 

 アークエンジェル。ブリッジにて。

 マリューは、この基地の司令官。『ジェラード・ガルシア』をブリッジに迎え入れていた。

 その時、ブリッジに武装した兵士が侵入してきた。

 

「提督!これは……、一体⁉︎」

「識別コードのないこの船は、どこの所属かも分からん。万が一、海賊にすでに乗っ取られていることも考えられる。故にこれは、必要な措置だ」

 

 詭弁だ。

 少なくとも、マリューたちのIDを捜査すれば、軍人であることははっきりしている。

 こんな事をする必要は、無い。

 

 そうしてアークエンジェルは、味方のはずの基地で、拘束されることとなったのであった。

 

 -----

 

 食堂に集められたアークエンジェルのクルーと避難民たち。彼らは不安の声をこぼしていた。

 

「ここって、地球軍の基地なんだろ?何でこんなことになってんだよ……」

「無事に帰れるかしら?」

「お袋たち、大丈夫かな……」

 

 そんな避難民の声を尻目に、サイはノイマンたちに話しかけた。

 

「識別コードが無いって、そんなにまずいことだったんですか?」

「いや、まずいことって言ったらまずいことではあるけれど、ここまでされるほどでは無い、かな。俺たちのIDは間違いなく正規のものだし」

「ただなぁ。識別コードが無いってのが、あいつらにちょうど良い言い訳を与えてしまったのよ」

 

 サイの疑問に答えるノイマン。そして、ロメロがそう言った。

 

「ちょうど良い言い訳っていうのは、この船とストライクを調べるのにってことですか?」

「まぁ、多分そうだろうな。特にストライクの情報は、喉から手が出るほど欲しいだろう」

 

 セラのそんな疑問に答えるノイマン。

 聞けば聞くほど、この基地に来た判断が間違っているように思えてしまう。

 

「それにしても、いくら何でもメチャクチャだがな。こんなこと、本部に伝われば大問題だ」

 

 最後にそう締めくくるノイマン。

 だが、つまり、それは………。

 

「伝わる前に口封じすれば、問題ないってこと……?」

「ちょ、ちょっと、やめてよセラ」

「ミリィの言うとおりだぜ。怖いこと言うなよ」

「あ、あぁごめん。声に出てた?」

「バッチリ出てたよ。まぁ、流石にそこまではしないだろうけど」

 

 -----

 

 アルテミス。司令官室。

 マリューたちはそこに招かれて来た。

 

「やぁ、ラミアス艦長。

 どうだったかな?我が基地の士官室は」

「些か華美が過ぎるとは思いますが、悪くはありませんでした。

 それよりも、こうしてお話いただけると言うことは、補給の目処がたったということでよろしいでしょうか?」

 

 ガルシアの言葉に皮肉を返しながら厳しい声音のマリュー。

 そんなことよりも補給を早くしろ、と。

 

「まぁまぁ。そう焦ることはないぞ。マリュー艦長。この基地が攻略されることはないからな」

 

 余裕と確信。それが滲み出ている。

 

「そう、でしょうか。

 ザフトは今、この基地の近くにいるのでは?」

 

 そんなムウの言葉を聞いたガルシアは、モニターを操作する。

 そこに映るのは、ザフトのローラシア級。

 

「っ!提督、この船は⁉︎」

「いつもと同じだよ。近くをウロウロしているが、結局諦めて去っていくのさ。警戒する必要さえない」

 

 ガルシアの傲慢さすら滲み出るその言葉。

 だが、それは今までの経験に裏打ちされたものでもある。

 

「……いやぁ、なるほど。確かにこれほどの基地ならば、そう易々と落ちることは無いでしょうな」

「ふっ、君ほどの男にそう言われるとは、とても嬉しいよ。『エンデュオンの鷹』。戦局的には敗北したが、MAであるメビウスでジン五機を撃墜した君の活躍には、とても励まされたものだ」

 

 今までとは打って変わって、素直に賞賛するガルシア。『世界樹攻防戦』に参加していた彼は、あの戦場でそれだけの活躍をしてみせた彼を認めている。

 

「だが、君ほどの男がこの船に同行しているのも、何かの運命かな?」

「いいえ。そのような指令が降っただけです。ですが、これ以上は言えません。特務ですので」

「……ふん。まぁ、私とて軍人だ。君たちの事情は分かったとも。

 補給が済むまでの間、ゆっくりしていると良い」

 

 そうして、武装した軍人たちが司令官室に入ってくる。名目上は、マリューたちの護衛。しかし、おそらくその実態は……

 軍人たちに連れられ、司令官室を出る前に、ムウはもう一度ガルシアに向き直る。

 

「最後に一つ、よろしいでしょうか。提督」

「何だね?」

「提督は本当に、この基地は絶対に落ちないとお思いなのですか?」

「ふっ、何を言うのかと思えば。あぁ、この基地は絶対に安全さ。落ちることはあるまい」

「……そんなに安全ですかね。この基地は」

「あぁ。安全だとも。母の腕の中のようなものさ」

 

 本当にここが母の腕の中ならば、これほど不安になることはなかっただろう。

 

 -----

 

 ローラシア級。ブリッジ。

 

「アルテミス要塞。『全周囲光波防御帯』。これがある限り、我々からあの要塞に手を出すことはできない」

「逆に、向こうからの攻撃も出来ないけど」

「ディアッカの言うとおり。それが救いといえば、救いだな」

「しかし、これでは突破は困難を極めるでしょうね。エネルギー切れまで粘ろうにも、向こうは要塞で、こっちは戦艦。体力の差は如何ともし難いです」

「兵糧攻め、とかどうだ?」

「それはこちら側に補給の目処が立っていればの話だ。何より、それでは時間がかかり過ぎる。ディアッカ。貴様は隊長に、何の成果も挙げられませんでした、とでも報告するつもりか?」

「……悪かったよ」

 

 イザークに言い負かされるディアッカを尻目に、宙図を見ながら思考するニコル。

 

(アルテミスの攻略に必要なのは、火力じゃなく、隠密性。あるいは、持久性。持久性はともかく、ブリッツなら、隠密性は──)

 

「行ける、かもしれません」

 

 そうポツリと呟くニコル。

 その場の全員から訝しげな視線が飛ぶか、それに気押されることはなく、どこか自身に溢れた顔で、その作戦を切り出す。

 

「ブリッツと僕なら、無傷でこの要塞を攻略できます」

 

 -----

 

 アルテミス。客員士官室。

 マリューとナタル、そしてムウは、この部屋に半ば軟禁されていた。

 

「………申し訳ありません。艦長。私がこの基地に向かうべきだと言ってしまったばかりに……」

「貴女のせいじゃないわ、ナタル」

「にしても、どうしようかねぇ。この基地、安全だって言うけど、どこまで信憑性があるのやら」

 

 ムウの言葉を聞いて、首を傾げるマリュー。

 この基地が安全かどうか、と言う話ならば、安全だろう。少なくとも、外部から攻略できるような基地であるとは思えない。

 ナタルも同じ事を思ったのか、ムウに問う。

 

「フラガ大尉は、この要塞が陥落すると?」

 

 ムウは、どこか神妙な顔で答えた。

 

「いや、俺もこの基地の防御は完璧に近いとは思う。ただ、この基地の人員たちには油断と驕り、それから慣れが見える。こう言う時に限って、致命的な失敗ってのは起きるのさ」

 

 そして、今。その致命的な失敗は姿を隠して近づいていた。

 

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 アークエンジェル。食堂にて。

 アルテミス要塞の軍人たちが、銃を構えて乗り込んできた。

 

「この中に、あの機体のパイロットはいるか?」

 

 すぐさま、ノイマンが返答する。

 

「艦長たちからは何も聞いていないのか?」

「……良いから、ストライクのパイロットを教えろ」

 

 この辺りで、キラも何かがおかしいということに気づいた。

 何故、艦長であるマリュー達には聞かず、こちらに直接聞いて来た?何もやましいことがないのならば、艦長に聞けば良いじゃないか。艦長に聞くのを忘れていた、という言い訳は、今さっきノイマンが封じた。

 つまり、これは……

 

(だからムウさんは、僕にロックを……)

 

 おそらく、ストライクの情報を抜き取ろうとして、キラがかけたロックを突破出来なかったのだろう。

 だからこうして、ロックをかけたであろうパイロット本人を探している。

 

「フラガ大尉だよ。ストライクを動かしていたのは」

「嘘をつくのはやめてもらおうか。ガンバレル装備のゼロ式を乗りこなせるのはフラガ大尉のみだ。それぐらい、私は知っている」

 

 マードックの嘘をすぐさま見破るガルシア。

 だがそれでも、ストライクのパイロットが名乗りあげることは無い。

 そうか、ならば、出て来てもらうとしようか。

 

 ガルシアは、最も扉から近い位置に座っていたミリアリアの腕を掴み強引に立ち上がらせた。

 

「きゃぁっ!」

「ミリィ!何してんだお前!」

 

 ガルシアの横暴に声を荒げるトール。椅子を蹴飛ばしながら立ち上がり、ガルシアを睨みつける。

 そんなトールの怒りを気にも留めず、ガルシアは食堂中に視線を巡らす。

 

「いや何、この艦の艦長は女性だったからなぁ。パイロットも女性の場合があるのでは、と思ってね」

「ふざけんな!ミリィを離せ!ミリィはパイロットじゃねぇよ!」

「では誰が、あの機体のパイロットなのかね」

 

 異常な景色。

 それを見ているキラは、立ち上がって名乗りそうになって、セラが肩を掴んでいることに気付いた。

 非難の視線を送るが、セラは首を横に振ってダメだ、と言葉にしないで伝える。

 

 いつまで経っても名乗りあげないパイロットに業をにやしたのか、ミリアリアを放り投げるように腕を離し、今度はノイマンの胸ぐらを掴み上げる。

 倒れ込んだミリアリアの元に駆けつけるトール。

 胸ぐらを掴み上げられたノイマンは、ガルシアに恫喝される。

 

「言え!ストライクのパイロットは誰だ!答えろ!」

「だから、フラガ大尉だって言っているでしょう!」

「そんな誤魔化しが通じるか!」

「本当のことですよ!」

「良い加減にしろ、キサマァ!」

 

 ノイマンの右頬を殴るガルシア。

 ついに堪えられなくなったのか、キラがセラの手を振り払い立ち上がった。

 

「もうやめて下さい!アレに乗ってるのは僕ですよ!」

「ちょっと!キラ‼︎」

 

 ガルシアは、名乗りあげたキラを見て、訝しげに目を細めた。

 パイロットであると言うならば、あまりにも細過ぎる。これでは、ただの学生だ。

 部下に視線を向け、キラの元に向かわせる。

 

「おいおい。カッコつけたいのは分かるけど、状況を考えろよ。遊びじゃあ無いんだよ、ここはなぁ!」

 

 突然殴りかかってくる軍人の拳を躱し、力任せの背負い投げで床に叩きつける。

 予想外のことだったのか、まともに受け身も取れず強い衝撃がその体を襲った。

 思わず動揺するガルシアと軍人たちが、遠巻きにキラを囲う。

 囲まれながらも、キラは堂々と言い張った。

 

「あなたたちに殴られる謂れはありませんよ!何だってこんなことしているんですか!」

 

 それを聞いて、ガルシアたちは怒りを露わに殴り倒そうとして──

 

「何してるんですか!やめて下さい!」

「邪魔だ!」

 

 止めに入ろうとしたサイを殴り飛ばした。

 

「サイッ!!」

「いててて………大丈夫だよ、フレイ」

 

 頭に血が昇ったのか、フレイはガルシアたちを睨みつけながら言い放つ。

 

「いい加減にして!その子の言ってることは本当よ!だってその子、コーディネイターだもの‼︎」

 

 その瞬間、ガルシアたちの目の色が変わった。

 

「ちょっ!フレイ!アンタ!」

 

 思わずそう叫び、静止させようとするセラ。しかし、もう既に遅い。

 

「……ほう、ほうほう。君は、コーディネイターなのかい?」

「……そうですよ。それが何か?」

 

 キラの言葉を聞いたガルシアは、目を細めた。

 

「待って、待って下さい!わ、私もコーディネイターです!」

 

 このままだと不味い、そう判断したセラは、自分もコーディネイターであると名乗った。

 少なくとも、キラを一人にするわけにはいかない。

 

「ほう。君も」

「彼女は確かにコーディネイターですが、あの機体とは何の関係もありません」

「ちょっ、キラ、何言ってっ──!」

 

 セラを巻き込むまいと、あの機体とは何の関係もない、と。そう話すキラ。

 だが、つまり、これは──

 

「ふん。連れて行け」

 

 セラを置いて、キラは軍人たちに連れて行かれてしまった。

 

「キラっ‼︎」

 

 咄嗟に走り出そうとして、マードックに抑えられた。

 

「大丈夫。きっと大丈夫だよ、セラ」

 

 そして、キラは扉の向こうに姿を消した。

 

 -----

 

 キラがいなくなった食堂でトールはフレイを責めていた。

 

「何だってあんなこと言ったんだよ!キラのこと、何も考えていないってわけ⁉︎」

 

 トールに負けじと言い返すフレイ。

 

「何よ!別に良いじゃない!キラはコーディネイターだけど、ザフトじゃないんだもの!」

「ふざけんな!地球軍が今、何と戦っているか、分かってんのか!」

 

 トールとフレイの口喧嘩がヒートアップしていきそうになって。

 

「………二人とも、少し、静かにしてくれる?」

 

 そんな、怒りを滲ませたセラの声に、二人は慄いた。

 

(あんのバカ兄。何勝手に庇ってんのよ。私も守るって言ったじゃない。バカ。バカ。バーカ。………大丈夫、かな。コーディネイターだけど、民間人だし、でも、あいつらがそんなの気にするとは思えない。あぁぁどうしよう?このままだと不味いよね?キラに何するのかわからないから怖いなぁ、アイツら。……………いっそのこと、巻き込んでハイジャックも、ありっちゃあり、かしら」

「それはアリ寄りのナシだぞ」

「……………また、声に出てました?」

「うん。バッチリ出てた」

「……そうですか。

 ……………………その、何かあったら………」

「うん。分かってる。こっちでもすぐに動けるようにしておくよ」

 

 ノイマン視点のハイジャックはアリ寄りのナシなので、それをすることに躊躇いはあまりない。

 マードックはセラたちの会話が聞こえないふりをしつつ、軍人たちの隙を窺っていた。

 

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 キラは格納庫のストライクの足元で、ガルシアたちと会話する。

 

「ストライクのロックを外せばいいんですか?」

「それもやってもらいたいが、しかし、君はコーディネイターなのだろう?」

「…………何が言いたいんですか」

「いやぁ、何、君ならば、作れるのではないかね。これと同じ、あるいはそれ以上のものを」

 

 つまり、自分に人殺しの道具を作れと、そういうことか。

 

「お断りします。僕は軍人じゃありませんから」

 

 本当は戦いたくなんてないんだ。

 戦争なんて嫌で、誰かを殺すのも、誰かが死ぬのも嫌で、だから、僕は、僕は──

 

「しかし、君はもうこちら側に付くしかないのではないかね?」

「何を、言って───」

「君は、『裏切り者のコーディネイター』だ」

「───っ‼︎」

 

 裏、切り者?僕は、僕は───アスランを、裏切った?

 

「既に君は、それに乗って同胞たるコーディネイターを殺めたのだろう?そんな君が、どうして今更コーディネイターの仲間面ができると?」

 

 ガルシアは、既にヘリオポリスでの戦闘について、些細を報告されていたのだろう。

 ストライクがジンを一機撃墜したという事を、ガルシアは知っていた。

 ジンを撃墜した、ということは、つまり。

 キラは、人を、同胞たるコーディネイターを殺した、ということだ。

 

「そ、れは───」

「君は既に人殺しだ。もう戻れないぞ。ならばいっそのこと、こちらに着くことも良い選択ではないかね。連合に味方するコーディネイターは、珍しいがいないわけではないのだから」

 

 

 -----

 

 

 アークエンジェルの食堂で、セラは言い表せない不安を感じていた。キラが連れて行かれたのも、不安の原因ではあるが。しかし、それ以外にも、何か、不味いことが起きているような気がする。

 

「………あの、マードックさん」

「ん?何だ、嬢ちゃん」

「アルテミスの『全周囲光波防御帯』って、何か弱点とかありますか?」

 

 訝しげな顔をするマードック。何だってそんな事を今聞くんだ?と思いつつ、訊かれたのだから答えねばとも思ったので、素直に話すことにした。

 

「うーーーん。そうだなぁ、強いて言えば、あれを展開している間は、こっちからも攻撃できないってことだな。逆に言やぁ、それ以外の弱点らしい弱点はねぇよ」

 

 マードックの言葉を聞いて、セラは言い表せない不安を振り払おうとした。こちらから攻撃できないことぐらいしか弱点が無い、ならば、この基地が落ちることは、多分、無いはず──そこまで考えて、当たり前のことに思考が行き着く。

 

「──あの、『全周囲光波防御帯』って、どれくらい展開できるんですか?」

「あ?それは範囲的な意味か?それとも時間的な?」

「時間的な方です」

「うーーーん。さぁなぁ。この基地の情報は、ちょっと書類で読んだぐらいだから、詳しくは知らねぇんだけど、確か、敵が感知できる範囲にいなかったら、その間は節約のために切っているって話だったな。後、補給とかのために切ることもあるって話だった」

「節約のために切ることがあるってことは、ずっとつけられるわけじゃ無いんですね」

「そりゃぁな。燃料は必ずいるし、できる限り使いすぎないほうが良いだろうよ」

 

 多分、この辺りは、ザフトでも分かる情報だろう。

 感知されない場合と、補給する場合。このどちらかの場合では、『全周囲光波防御帯』は使用されない、と。ある程度偵察していれば分かるような情報である。

 となれば───

 

(ザフト視点で、どうやったらこの基地を攻略できるか考えてみましょうか。

 必要な最低ラインは、隠密性か持久性。この基地のレーダーを潜り抜けられるようなステルスか、この基地よりも長い間、居座り続けられる持久力か。

 持久力の方は、複数の戦艦を使えば簡単にできる。だけど、ナスカ級の方は相当大きな損傷を与えたから、多分撤退している。

 だとすれば、この基地のレーダーを、潜り抜けられるステルスで来る。

 だけど、そんなステルス機能、ザフトでは開発されていないはず。そんな機能があるなら、ヘリオポリス襲撃の時に使わない理由がない。

 なら───ザフトの現在の技術とローレシア級の機能を考えると、ザフトでは攻略できないはず」

 

 ただ、今ローレシア級には、地球軍が開発した新型のGしかないはず。そうして、セラはナタルたちから教えられた、奪われた四機のGの性能について思い出す。

 

 X-102『デュエル』。五機の中では最も平凡で、これといった特徴のない機体。わかりやすい長所もなければ、致命的な短所もない。最も優等生に近い機体。

 X-103『バスター』。五機の中で、最も単体火力に優れた機体。過剰なくらいの火力だが、それと引き換えに接近戦用の武装がない。弱点のわかりやすい機体。

 X-303『イージス』。五機の中で、唯一変形機構を持つ機体。その特殊性はストライク、ブリッツに次ぐ者でもある。武装も、MA形態でのみ使用可能な『スキュラ』という高威力のビーム砲を持っており、また、MA形態での巡航速度は、五機中最速であり、艦の防衛戦において、最も厄介な機体である。

 そして、X-207『ブリッツ』。五機の中で、最も特殊な装備を持つ機体。その装備とは、『ミラージュコロイド』。あらゆるレーダーを無効化し、透明化するため目視することも不可能に近い、そんな完璧に近いステルス。そう。つまり───

 

(ブリッツなら、アルテミスの感知を潜り抜けて、光波防御帯の内側に忍び込むことができる!」

 

 そこまで思考が巡ったセラは、立ち上がり、ノイマンとマードックたちに声をかけた。

 

「アークエンジェルを動かします!力を貸して下さい!このままだとこの基地が‼︎」

「何だお前は!突然騒ぐな!」

 

 セラに銃口を向ける軍人。コーディネイターでもあるという話を聞いていたのか、民間人だというのに躊躇いがない。

 そのまま引き金を引こうとして──ノイマンの足払いに引っかかる。

 

「ぐわっ!」

 

 今度はノイマンに気を取られたもう一人の軍人。その隙に、セラは隠し持っていた拳銃でもう一人の持つ銃を撃ち落とす。

 手を押さえて蹲る軍人の顔面に、ノイマンのサッカーボールキックが直撃。そのまま流れるように、足払いをかけた軍人の首に手刀を落とし、意識を奪う。

 制圧完了。

 

「悪いな!全員!ブリッジに急ぐぞ」

「「「「了解!」」」」

 

 そうして、クルーたちはアークエンジェルのブリッジまで走り出した。

 

「あっ、そうだ。ヤマト。その拳銃、没収だ」

「………ですよねーー」

 

 走りながらも、ノイマンに拳銃を手渡すセラ。緊急時だったので出し惜しみしなかったが、使わなければ良かったとほんのり思う。

 

 ブリッジに辿り着いたちょうどその瞬間。基地を振動が襲う。遅かったか。

 

「これは⁉︎まさか、攻撃?でもどうやって……」

「おそらくブリッツのミラージュコロイドです。あれなら、単騎でアルテミス攻略も不可能じゃない!」

「ぐっ!とにかく出航準備急げ!」

 

 ノイマンの指示通りに、セラたちはアークエンジェルの出航準備に取り掛かっていくのだった。

 

 -----

 

 客員士官室では、振動に気付いたムウが、何やら突然叫び出した。

 

「うわーーー!!大変だ!助けてくれーーーー!!!!!空気が抜けてーー‼︎息が、出来なーーーーい‼︎‼︎」

 

 息できないのにそんなに騒げるわけないだろ。そんなツッコミは置いといて、ムウが何をしたいのか察したマリュー。ムウと同じように、悲鳴を上げる。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎誰か!誰かぁ‼︎助けてぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」

 

 すっごい迫真。いまだに戸惑っているナタルに、ムウとマリューは急かす。

 

「ほら、あんたも早く!」

「貴女も叫びなさい、ナタル!」

「えっ?えっ……?えっと、き、きゃぁぁぁぁぁぁ。助けてぇぇぇぇぇ」

 

 棒読み気味のナタル。

 そんな中、足音が扉の前まで響く。コッソリと、扉の影に隠れたムウ。

 軍人たちが扉を開けて、中の様子を確認しようとしたそのとき。ムウの膝蹴りが炸裂する。その一撃で一人がダウン。すぐさまもう一人にもアッパーをお見舞いし、軍人たちをノックアウトする。

 

「よしっ!アークエンジェルに急ぐぞ‼︎」

「このまま巻き添えで死ぬのだけは、ごめんね」

「えっえっええぇぇぇ?」

 

 飲み込みきれないけれど、先に走る二人について行き、アークエンジェルまで急ぐナタル。

 基地を襲う振動は、徐々に強くなってきた。

 

 -----

 

 驚くぐらいに作戦が上手くいって、正直ニコルはちょっと怖かった。

 

「この兵器。あまりにも恐ろしすぎます……。よくもまぁ連合はこんなものを」

 

 光波防御帯の発生装置は完全に破壊した。

 後は、未だに起動していないだろう、足付きとストライクを落としさえすれば……!

 ブリッツはそのまま、アルテミスの格納庫まで飛んでいった。

 

 -----

 

 ストライクのコックピットの中で、キラはロックを解除寸前まで持って行き、その後ロックを掛け直す作業を続けていた。

 つまりは時間稼ぎである。

 

「おい、まだか?」

「話しかけないでください。気が散ります」

「チッ……んだよクソ」

 

 その瞬間、基地を振動が襲う。

 動揺する軍人たち。

 

「何だ!何が起こったのだ!」

「恐らくは敵MSが侵入した模様!」

「何だとぉぉ⁉︎」

 

 ガルシアと側近の会話に気を取られる軍人たち。その瞬間、キラの蹴りによって、コックピットを覗き込んでいた軍人が文字通り蹴り飛ばされる。

 コックピットが締まり、ロックをすぐさま解除。起動したストライクは、止まる間も無く格納庫から脱出した。

 

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 アークエンジェル。ブリッジにて、マリューたちはすでに出航準備を完了させていたノイマンたちと合流。

 

「良くやったぞ!坊主ども!」

「何なんですかこの基地」

 

 サイとミリアリアの頭を撫でるムウ。そして、この基地に対しての愚痴を漏らすサイ。

 そこで、状況を把握したマリューは、すぐさま指示を出す。

 

「ストライクと通信を繋げて!」

「は、はい!」

 

 ミリアリアは通信機器を操作。ストライクとの通信を開始する。

 

『キラくん!聞こえる⁉︎』

「マリューさん!はい‼︎」

『一旦アークエンジェルに戻ってソードストライカーを装備して!侵入してきたのはブリッツよ!』

「っ!了解です!」

 

 すぐさまソードストライカーを装備。出撃する。

 

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 ブリッツと接敵。戦闘を開始するストライク。

 

 伸ばしてきた『グライプニール』を躱し、仕返しと言わんばかりに、ロケットアンカー『パンツァーアイゼン』を打ち込む。しかしそれも躱され、ビームライフルによる射撃が襲いかかる。

 射撃を躱し、ブリッツに接近。対艦刀『シュベルトゲベール』で迎撃。ブリッツは、『グレイプニール』を天井に引っ掛けることで急制動。斬撃を回避しつつ、ビームライフルで反撃する。

 

「『ローエングリン』、展開!扉を吹き飛ばして!」

 

 陽電子破城砲の発射体制に入ったアークエンジェルを見て、何をしようとしているのか気付いたニコルは、艦が動きずらいここで決着をつけようと、『グライプニール』と『トリケロス』より展開したビームサーベルで、より苛烈に、そして繊細にストライクを攻め立てる。

 天井に『グレイプニール』を引っ掛けることで、ターザンのように振り子運動で攻撃。

 隙をついて『トリケロス』から『ランサーダート』を発射。ストライクは頭部イーゲルシュテルンで撃ち落とす。

 

「『ローエングリン』、てぇーー‼︎」

 

 格納庫の扉を吹き飛ばして、脱出体制に入る。

 それを確認したキラは、『シュベルトゲーベル』で勢いよくブリッツを弾き飛ばす。

 すぐさま体制を立て直し、『グレイプニール』で艦を捕まえ、接近しようとして──すぐさま『グレイプニール』を外して大きく退避。『ゴットフリート』はその右足を掠めていく。

 

「ちっ!やっぱり警戒心が強い!」

「くっ!やっぱりなんて精度の砲撃!」

 

 アークエンジェルに着艦するストライク。

 膝をつき、吹き飛ばされないようにする。

 

「最大戦速!急いで離脱しなさい!」

 

 全速力で脱出するアークエンジェル。

 そうして、アークエンジェルは燃え盛るアルテミスから退避したのだった。

 

 -----

 

 キラは、とても疲れていた。

 ムウやマードックの呼びかけを無視して、キラに与えられた部屋まで急ぐ。着替えることもなくベッドに飛び込み、泣きながら眠る。

 思い起こすのは、ガルシアにかけられた言葉。

『裏切り者のコーディネイター』。

 大切な親友を裏切り、そして、人を殺してしまったのだ、ということを思い知らされた。

 声を押し殺して泣くキラを慰めるように、トリィはキラの頭に止まる。

 

 そっと、キラを起こさないように扉が手動で開けられ、静かにセラが入ってくる。セラの肩に乗っていたチュチュは、トリィと同じように、キラの頭まで登ってくる。

 セラは、静かにキラのベットに座り、そっと、キラの頭を撫でた。

 

 





 今日ガンダムベース行きました。ライフリどこぉ?
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