キラの妹が居たらっていうだけのお話 作:イングリット可哀想可愛い
ちょっとオリジナル要素入れました。
でも実際こういうのありそうなんだよな。
暗黒の宇宙を駆けるアークエンジェル。
そのブリッジで、マリューたちは補給をどうするかという話をしていた。
「さて、何か考えがある人はいるかしら?」
静まり返るブリッジ。
マリューは視線をナタルに向けるが、ナタルも首を横に振った。
「……この近くに地球軍の基地は?」
「……ありませんね」
「……そう」
このままでは、生活用水すら無くなってしまうだろう。どうにかできないものか、と頭を悩ませるマリューたち。
そんな中で、何かを思い付いたムウ。
「……あっ。なるほど、これなら」
全員の視線が彼に集中する。そんな視線を受けながら、ムウは自慢げに笑みを浮かべた。
「やっぱり俺は、『不可能を可能にする男』だな」
我に秘策あり──ムウの目はそう言っていた。
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プラント。ナスカ級ヴェサリウス。
ヴェサリウスからクルーゼと共に下船したアスランは、アプリリウス市に向かうシャトルに、父であるパトリックと共に乗っていた。
「アスラン。クルーゼ。お前たちの報告は受けている。ストライクのパイロットの情報は、こちらで揉み消しておいた。もう気にするな」
「ありがとうございます。閣下」
「父上⁉︎それは、どういう──?」
「君としても、公にしたいことではないだろう?ストライクのパイロットが、君の親友であることなど」
「そ、れは……しかし、それでは──‼︎」
キラが、ストライクのパイロットであることを公に出来ないということは、例えプラントで保護できたとしても、いずれは始末されるか、その経歴を抹消されて、キラ個人としての人生は終わる。
「だがな、アスラン。ストライクのパイロットが巻き込まれたコーディネイターであることなど、公にするわけにはいかんのだ。ただでさえ五月蝿い穏健派の連中がもっと五月蝿くなるからな」
「ち、ちうえ」
厳しくて、無愛想で、そして不器用で。
それでも、きっと。若者の未来を、こんな風に終わらせてしまうような人では、無かったはずなのだ。
──父は、どうしようもないぐらいに、変わってしまった。きっと、あの日。父の中の何かが、壊れてしまったのだろう。
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アークエンジェル。ブリッジにて。
「デブリから補給するって、そんなこと」
「この状況で、それ以外に補給する方法があるか?」
「そ、れは……」
「まぁ、あんまり良くないよな。これは」
「しかし艦長。フラガ大尉の考えは、現状最適解であるように思います。何より、デブリ帯の中で、敵に遭遇することは考えづらいでしょう。艦が瓦礫と衝突事故を起こしてしまうかもしれませんから」
「ま、それに関してはこっちも同じだけど。ノイマン曹長の腕の見せ所だな」
「簡単に言わないでください」
「ふーん。できないのか?」
「できないとは言っていません。簡単ではないと言ったんです」
「つまり、できるのね。ノイマン曹長」
「えぇ。まぁ」
「……分かったわ。この辺りにあるデブリをマーキングして。そこまで急ぐわよ」
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一方その頃。
食堂でフレイはサイに諭されていた。
「いやよ。何で謝らなきゃいけないのよ?」
「そうは言ってもさ。フレイ。あの時の発言が原因で、キラに迷惑かけちゃったし。セラも、ちょっと怒ってただろ?こんな艦で、顔を合わせづらくなるなんてことお前も嫌だろ?」
「それは、そうだけど……」
「とにかく。ちゃんと謝っておこう。フレイ」
「……サイが、そういうなら」
渋々、と言った様子でそう言うフレイ。
そんな、少し微妙な空気の食堂に、キラとセラが入ってくる。
自然な動きでセラはキラを背に庇い、フレイを明らかに警戒していた。
「キラ!大丈夫だった?何か、酷いこととかされてない?」
そうキラを心配するミリアリア。
それにキラは、本当に何とも無かったと、そう思わせるために、笑いながら答えた。
「うん。大丈夫だったよ。酷いことは何もされてないから」
そんなキラに、フレイは謝ろうとして、セラがフレイの前に出た。
「キラに何かようかしら?」
はっきりとわかるぐらいには冷たい声音。
そして、どこまでも冷めきった瞳。
完全に、フレイのことを敵として見ているような、そんな瞳。
「え、えっと、その、キラに、この前のこと、謝りたくて……」
「あっそう。ならそれは必要ないわ。キラは酷いことは何もされていないからね。そうよね、キラ」
「えっと、うん。そんなに気にしなくて大丈夫だよ」
「そ、そう。なら、良かったわ」
「ならもう話は終わったわね。私たちはブリッジに用があるから、ここで」
そさくさと、キラの背を押して食堂から出ていくセラ。
ミリアリアはそんなセラを見て、悲しそうな目をしていた。
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「デブリ……ですか?」
マリューたちから補給のための作戦を聞かされるセラたち。
マリューは作戦の説明を続けた。
「氷塊や、燃料を運ぶ関係上、人手は多い方がいいの。ただでさえ人員が足りないから、貴方たちの手も貸してほしいの」
そうしてセラたちは、ストライクを護衛として、デブリたちを索敵することにした。
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アプリリウス市。最高評議会。
代表議長『シーゲル・クライン』の号令で、査問会が開幕する。
「それでは、只今より、ヘリオポリス襲撃事件の査問会を始めよう」
議員たちの前に出るクルーゼ。
芝居がかった仕草で恭しく一礼する。
「それでは、私の方から説明させていただきましょう」
そして空中投影型のスクリーンに映し出される、ヘリオポリスでの戦闘記録。
それを見た議員の反応は様々だった。
いくら何でもやりすぎではないか、と思うもの。この戦闘も仕方ない、と思うもの。
「クルーゼ隊長。貴方はこの襲撃も仕方ないものだと捉えているのか?」
そう問いかけるシーゲル。
その問いを受けて、恭しく返すクルーゼ。
「確かに、少々強引な行動であったことは認めますが、しかしながら、原因を求めるのならば、地球軍にも幾分かの責任はあると存じます。そもそも、中立国を巻き込んでこのような兵器を開発した地球軍こそ、すべての元凶なのです」
そうして、全ての責任を地球軍に転換するクルーゼ。それを聞いて、真っ二つに別れる議員たち。
そんな流れを断ち切って、パトリックは話題を転換する。
「今は襲撃事件の是非を問うても仕方ないでしょう。それよりも、間近に差し迫った問題がありましょう。地球軍の新兵器。その恐ろしさを」
「ザラ国防委員長、そう言う訳には──」
「しかし議長。地球軍の兵器の恐ろしさは無視することはできない程のものです。あの機体が量産されてしまった暁には、我々の有利も覆ることでしょう」
「それほどのものなのですが、ザラ国防委員長」
「その通りです、ジュール議員。それについては、アスラン・ザラから報告がございます」
そうして、アスランは前に出て、報告を開始した。
「クルーゼ隊。アスラン・ザラです。まず、この私が乗るイージスという赤い機体ですが、この機体は──」
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セラたちは、目の前のデブリを見て、驚愕した。
「大陸サイズのデブリなんて……」
「スゲェー大きさだな、これ」
あまりにも、巨大な瓦礫。まるで、一つの街そのものが、吹き飛ばされたかのような──
「───そう、これが、そうなのね」
資源採掘用のポッドに乗っているセラは、この残骸を見て、これがそうであることに気づいた。
「……っ!あれは………!」
艦長席から立ち上がったマリューは、目の前のデブリが何なのか理解したのか、震えていた。
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「これほどの新兵器とは……どうやら地球軍は我々と徹底抗戦するつもりのようだ」
「確かにこれは脅威だが、だからと言ってこれ以上戦火を広げる訳にはいかん」
「例え我々がそうだとしても、地球軍は戦火を広げますよ。この兵器たちが、何よりの証拠です」
既存のMSとは一線を画した、圧倒的なまでの性能を誇る新型MS。単純な戦闘では、ジンやシグーとは比べ物になるまい。
異次元の防御力を誇るフェイズシフト装甲。
携帯火器とは思えない威力を誇るビームライフル。
重斬刀を遥かに上回る切れ味と威力のビームサーベル。
ストライカーパック。可変機構。スキュラ。ミラージュコロイドといった、脅威的な各種新武装。
これほどの機体をナチュラルのみで作れるとは思えないが、いずれにせよ、これほどの機体が量産されてしまえば、こちらに勝機はない。唯一上回っている質の面で敗北して仕舞えば、MSの性能差で何とかしているザフトでは、どうしようもなくなってしまう。
それほどの、機体。
我らザフトを叩き潰し、コーディネイターを殺す。
その為の、機体。
「皆さん。静粛に。静粛に」
そうして場を納め用とするシーゲルの声も虚しく、議会は紛糾していく。
そんな中で、パトリックは立ち上がり、全員の視線を自分に集中させた。
「皆さんのいう通りです。我々は、何も戦いたい訳じゃない。しかし!戦うことを止めようとしないのは、連合なのです!」
全員の視線が、パトリックに集まっている。
今この場の主役は、他ならぬ彼である。
「『血のバレンタイン』24万3421人もの犠牲者を生み出したあの惨劇。それほどの被害を受けたにもかかわらず、あれに対する報復として我々が選んだのは、同じく核による殲滅戦ではなく、NJによるものでした。我々は、ギリギリまで穏当な対応を続けていたのです!にも関わらず、地球軍の対応は、これです!和睦の使者を殺し、中立国を巻き込み、そして我々を殺す為の兵器を作り上げた!」
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キラたちは気付く。眼下にあるこの瓦礫。これこそが、ユニウスセブンなのだと。
調査の為に、そこに降り立つキラとミリアリアたち。
扉を開き、そこにあったのは。
赤子の死体を抱える、母親の死体であった。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
「っ!ミリィ、こっち!」
咄嗟にミリアリアの体を引っ張り、彼女から死体を隠す。
そして、固まったままのキラに声をかけた。
「一度戻ろう。キラ。マリューさんたちに報告しないと」
「えっ、あっ、うん」
「いいですよね。ナタルさん」
「………あぁ。一度、戻るべきだろう」
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議会では、パトリックの演説に同意するものが多い。
そうだ。悪いのは我々じゃない、あちら側なのだと、そう主張する。
「戦わなければ守れないのなら!戦うしかないのです!」
そうして、査問会は、終わった。
査問会の終了後、アスランは外でパトリックを待っていた。
と、そこにシーゲルが話しかけてきた。
「やぁ、アスラン君。今日はご苦労様」
「いえ……そんな。議長の方こそ、お疲れ様です」
「ありがとう。いやしかし、君とラクスは運が悪いな。君が戻ってきたこのタイミングで、彼女も追悼慰霊団として、ユニウスセブンに向かっているのだから」
「えっ?ラクスが?」
「君たちはどうやら、入れ違いになってしまうらしいな」
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ブリッジで、キラはマリューに抗議していた。
「本当に、あそこから物資を取るつもりなんですか!マリューさん!」
その言葉を聞いて、顔を辛そうに歪めるマリューを見かねて、ムウが代わりに答える。
「仕方ないでしょう。別に俺たちだって喜んでいる訳じゃない。水が見つかった、良かったって。でも、俺たちは生きてるんだ。生きてるってことは、生き続けなきゃならないんだよ」
そうして、キラたちは宇宙に出た。
宇宙空間で、ストライクに乗ったキラが見守る中で、ミリアリアは、避難民の子供達と共に折った折り紙の花を、添えるようにばら撒いた。ブリッジで、居住区で、人々は祈り、悼む。
きっと。彼ら彼女らを癒してくれると信じて。
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アスランは一人、墓参りに来ていた。
しかし、この墓には何もない。母は、ユニウスセブンに行った時に、荷物も含めてほとんど持っていってしまっていたから。遺物も、遺体も、何もない。
ここにあるのは、名前が刻まれた石のみ。
それでも、きっと。届いて欲しいと思うから。アスランは、そこに花を添えた。
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セラは一人。ユニウスセブンを探索していた。
無論、独断である。
バレないようにこっそり一人乗りの小型ポッドを借り、それを使って目的地まで向かっていた。
彼女の頭に乗っかっているチュチュは、大丈夫なのかと問うようにコンコンとヘルメットを叩く。
(確か、この辺りだったかしら)
元々、セラは身内を大切にする少女だった。
だから、まめに文通していたし、彼女の住所も、把握していた。
そこは、立派な屋敷だった。しかし、みるも無惨に半壊していた。
「……お邪魔します」
返ってこないとは思うけれど、それでもそう声をかけて。
セラは、彼女の、レノア・ザラの屋敷を、訪れていた。
色々な幸運が、重なっていた。
アークエンジェルが訪れた大陸が、たまたま彼女の住所が記載されていた下側だったこと。
たまたま、一人乗り用の小型ポッドが、残っていたこと。
そして、アスランたちとの会話で、やっぱり彼女が、ここで犠牲になったということを知ったこと。
だから、セラは、ここにきた。
(きっと、ザフトがここを訪れるなんて、非常に難しいことでしょうね。何せ、このデブリを調べれば、核攻撃がどっちの手によるものなのか、はっきりとした証拠付きで手に入るかもしれないもの。核攻撃を自作自演だとかふざけたことを宣った連合なら、そこまでの妨害も考えられるわ)
アークエンジェルがここまでこれたのは、偶然だ。
おそらく、正規の手段でここを目指してくることは、非常に難しいだろう。
(そうだとすれば、きっと、アスランたちは───)
遺品も遺体も、回収できていないのだろう。
そうして、セラは、恐らくはレノアの自室と思われる部屋を、開いた。
「………レノア、さん」
返ってくることはない。彼女は、既に屍であった。
ある意味、運が良かったのだろう。核攻撃による爆風でも、爆熱でもない。宇宙空間に突然放り出されたことによる、凍死であった。
だから、そうとわかるぐらいには、彼女の遺体は、綺麗だった。
設備も何もない宇宙空間で、できることなんて何も無い。だから、せめて。
セラはレノアの左手薬指の指輪を外し、大切に布でくるんで、ポケットにしまった。
それから、レノアの手帳に挟んであった、その栞に気づいた。
(あ、れは────)
よく、覚えている。
コペルニクスで、初めて母の日を知った日。
プレゼントをどうしよう、とアスランからそう相談されて、
キラが花束とかでいいんじゃ無い、と言って、
子供の小遣いで買うには高すぎるって私が却下して、
じゃあ一輪の花とかで、とキラが言って、
それだと寂しすぎるだろう、とアスランが却下して、
私が、押し花とかどうって提案して、そして、それにしよう、と。
ついでに、いつもありがとうってメッセージ入れるのとかいいんじゃ無い、ってキラの言葉を参考にして、そうして、3人で作った、ダリアの、栞。
何とか小遣いを捻出して買えたのは、五輪ほどで。
一番綺麗にできたやつを、アスランがプレゼントすることになって。二番目に綺麗なやつは、キラが、三番目に綺麗なやつは、私が、母さんに渡すことになって。
あとの二つは、どうしようかって話になって、結局、殆ど本を読まないキラじゃなくて、私とアスランで一枚ずつ待つことになった、栞。
大切な、大切な、思い出の一つ。
迷って、迷って、迷って。
彼女の手元に残しておこうとも思って。
でも、アスランにとってもこれは、大事な思い出のはずだから、ってそう思って。
最終的に、持って帰ることにした。
少し、焦げてはいたけれど、少し、使い古されてはいたけれど。それでも、あの時と変わらず綺麗で。きっと、幼い子供が作ったものだから、思い出補正みたいなものがあるのだけれど。それでも、綺麗だった。
(─────何で?)
どうして、キラは。アスランは。殺し合いなんて、しているのだろう。
静かに泣くセラを慰めるように、チュチュはコンコンとヘルメットを叩いていた。
(そろそろ、戻らないと)
コッソリと、バレないようにアークエンジェルに戻って。
そこで、避難ポッドが一つ、格納庫にあった。
(?あれは────?)
バレないようにノーマルスーツを脱いで、何食わぬ顔でキラの隣に立つ。
「ねぇ、キラ。あれ、何?」
「あっ、セラ。どこ行ってたの、もう。えっと、あれだよね。なんか、民間船が壊れちゃってて、で、そこから出てきた、救助ポッドだよ」
「ふーん。また、ナタルさんに怒られるんじゃ無い?」
「もう怒られたあとだよ」
「それじゃ、開けますぜ」
マードックはそう言って、ポッドの電子ロックを解除した。
『ハローハロハロ』
まず、無重力空間を転がるように出てくるのは、ピンク色の球体。何というか、どことなく、トリィやチュチュに似ている気がした。
「ありがとう。ハロ」
そんな、鈴の音みたいな、綺麗な声がして。
ピンク色の髪の、女神のような少女が、ポッドから出てきたのだった。
感想評価が増えたなら、もっと投稿頻度が増えるかもしれないし増えないかもしれない。
だけど、やってみなくちゃ何も始まらない。
やってみる価値はありますぜ。
(感想評価乞食)