キラの妹が居たらっていうだけのお話   作:イングリット可哀想可愛い

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 ちょっとオリジナル要素入れました。
 でも実際こういうのありそうなんだよな。


PHASE8 花と歌姫

 

 暗黒の宇宙を駆けるアークエンジェル。

 そのブリッジで、マリューたちは補給をどうするかという話をしていた。

 

「さて、何か考えがある人はいるかしら?」

 

 静まり返るブリッジ。

 マリューは視線をナタルに向けるが、ナタルも首を横に振った。

 

「……この近くに地球軍の基地は?」

「……ありませんね」

「……そう」

 

 このままでは、生活用水すら無くなってしまうだろう。どうにかできないものか、と頭を悩ませるマリューたち。

 そんな中で、何かを思い付いたムウ。

 

「……あっ。なるほど、これなら」

 

 全員の視線が彼に集中する。そんな視線を受けながら、ムウは自慢げに笑みを浮かべた。

 

「やっぱり俺は、『不可能を可能にする男』だな」

 

 我に秘策あり──ムウの目はそう言っていた。

 

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 プラント。ナスカ級ヴェサリウス。

 ヴェサリウスからクルーゼと共に下船したアスランは、アプリリウス市に向かうシャトルに、父であるパトリックと共に乗っていた。

 

「アスラン。クルーゼ。お前たちの報告は受けている。ストライクのパイロットの情報は、こちらで揉み消しておいた。もう気にするな」

「ありがとうございます。閣下」

「父上⁉︎それは、どういう──?」

「君としても、公にしたいことではないだろう?ストライクのパイロットが、君の親友であることなど」

「そ、れは……しかし、それでは──‼︎」

 

 キラが、ストライクのパイロットであることを公に出来ないということは、例えプラントで保護できたとしても、いずれは始末されるか、その経歴を抹消されて、キラ個人としての人生は終わる。

 

「だがな、アスラン。ストライクのパイロットが巻き込まれたコーディネイターであることなど、公にするわけにはいかんのだ。ただでさえ五月蝿い穏健派の連中がもっと五月蝿くなるからな」

「ち、ちうえ」

 

 厳しくて、無愛想で、そして不器用で。

 それでも、きっと。若者の未来を、こんな風に終わらせてしまうような人では、無かったはずなのだ。

 ──父は、どうしようもないぐらいに、変わってしまった。きっと、あの日。父の中の何かが、壊れてしまったのだろう。

 

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 アークエンジェル。ブリッジにて。

 

「デブリから補給するって、そんなこと」

「この状況で、それ以外に補給する方法があるか?」

「そ、れは……」

「まぁ、あんまり良くないよな。これは」

「しかし艦長。フラガ大尉の考えは、現状最適解であるように思います。何より、デブリ帯の中で、敵に遭遇することは考えづらいでしょう。艦が瓦礫と衝突事故を起こしてしまうかもしれませんから」

「ま、それに関してはこっちも同じだけど。ノイマン曹長の腕の見せ所だな」

「簡単に言わないでください」

「ふーん。できないのか?」

「できないとは言っていません。簡単ではないと言ったんです」

「つまり、できるのね。ノイマン曹長」

「えぇ。まぁ」

「……分かったわ。この辺りにあるデブリをマーキングして。そこまで急ぐわよ」

 

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 一方その頃。

 食堂でフレイはサイに諭されていた。

 

「いやよ。何で謝らなきゃいけないのよ?」

「そうは言ってもさ。フレイ。あの時の発言が原因で、キラに迷惑かけちゃったし。セラも、ちょっと怒ってただろ?こんな艦で、顔を合わせづらくなるなんてことお前も嫌だろ?」

「それは、そうだけど……」

「とにかく。ちゃんと謝っておこう。フレイ」

「……サイが、そういうなら」

 

 渋々、と言った様子でそう言うフレイ。

 そんな、少し微妙な空気の食堂に、キラとセラが入ってくる。

 自然な動きでセラはキラを背に庇い、フレイを明らかに警戒していた。

 

「キラ!大丈夫だった?何か、酷いこととかされてない?」

 

 そうキラを心配するミリアリア。

 それにキラは、本当に何とも無かったと、そう思わせるために、笑いながら答えた。

 

「うん。大丈夫だったよ。酷いことは何もされてないから」

 

 そんなキラに、フレイは謝ろうとして、セラがフレイの前に出た。

 

「キラに何かようかしら?」

 

 はっきりとわかるぐらいには冷たい声音。

 そして、どこまでも冷めきった瞳。

 完全に、フレイのことを敵として見ているような、そんな瞳。

 

「え、えっと、その、キラに、この前のこと、謝りたくて……」

「あっそう。ならそれは必要ないわ。キラは酷いことは何もされていないからね。そうよね、キラ」

「えっと、うん。そんなに気にしなくて大丈夫だよ」

「そ、そう。なら、良かったわ」

「ならもう話は終わったわね。私たちはブリッジに用があるから、ここで」

 

 そさくさと、キラの背を押して食堂から出ていくセラ。

 ミリアリアはそんなセラを見て、悲しそうな目をしていた。

 

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「デブリ……ですか?」

 

 マリューたちから補給のための作戦を聞かされるセラたち。

 マリューは作戦の説明を続けた。

 

「氷塊や、燃料を運ぶ関係上、人手は多い方がいいの。ただでさえ人員が足りないから、貴方たちの手も貸してほしいの」

 

 そうしてセラたちは、ストライクを護衛として、デブリたちを索敵することにした。

 

 -----

 

 アプリリウス市。最高評議会。

 代表議長『シーゲル・クライン』の号令で、査問会が開幕する。

 

「それでは、只今より、ヘリオポリス襲撃事件の査問会を始めよう」

 

 議員たちの前に出るクルーゼ。

 芝居がかった仕草で恭しく一礼する。

 

「それでは、私の方から説明させていただきましょう」

 

 そして空中投影型のスクリーンに映し出される、ヘリオポリスでの戦闘記録。

 それを見た議員の反応は様々だった。

 いくら何でもやりすぎではないか、と思うもの。この戦闘も仕方ない、と思うもの。

 

「クルーゼ隊長。貴方はこの襲撃も仕方ないものだと捉えているのか?」

 

 そう問いかけるシーゲル。

 その問いを受けて、恭しく返すクルーゼ。

 

「確かに、少々強引な行動であったことは認めますが、しかしながら、原因を求めるのならば、地球軍にも幾分かの責任はあると存じます。そもそも、中立国を巻き込んでこのような兵器を開発した地球軍こそ、すべての元凶なのです」

 

 そうして、全ての責任を地球軍に転換するクルーゼ。それを聞いて、真っ二つに別れる議員たち。

 そんな流れを断ち切って、パトリックは話題を転換する。

 

「今は襲撃事件の是非を問うても仕方ないでしょう。それよりも、間近に差し迫った問題がありましょう。地球軍の新兵器。その恐ろしさを」

「ザラ国防委員長、そう言う訳には──」

「しかし議長。地球軍の兵器の恐ろしさは無視することはできない程のものです。あの機体が量産されてしまった暁には、我々の有利も覆ることでしょう」

「それほどのものなのですが、ザラ国防委員長」

「その通りです、ジュール議員。それについては、アスラン・ザラから報告がございます」

 

 そうして、アスランは前に出て、報告を開始した。

 

「クルーゼ隊。アスラン・ザラです。まず、この私が乗るイージスという赤い機体ですが、この機体は──」

 

 

 -----

 

 

 セラたちは、目の前のデブリを見て、驚愕した。

 

「大陸サイズのデブリなんて……」

「スゲェー大きさだな、これ」

 

 あまりにも、巨大な瓦礫。まるで、一つの街そのものが、吹き飛ばされたかのような──

 

「───そう、これが、そうなのね」

 

 資源採掘用のポッドに乗っているセラは、この残骸を見て、これがそうであることに気づいた。

 

「……っ!あれは………!」

 

 艦長席から立ち上がったマリューは、目の前のデブリが何なのか理解したのか、震えていた。

 

 -----

 

「これほどの新兵器とは……どうやら地球軍は我々と徹底抗戦するつもりのようだ」

「確かにこれは脅威だが、だからと言ってこれ以上戦火を広げる訳にはいかん」

「例え我々がそうだとしても、地球軍は戦火を広げますよ。この兵器たちが、何よりの証拠です」

 

 既存のMSとは一線を画した、圧倒的なまでの性能を誇る新型MS。単純な戦闘では、ジンやシグーとは比べ物になるまい。

 異次元の防御力を誇るフェイズシフト装甲。

 携帯火器とは思えない威力を誇るビームライフル。

 重斬刀を遥かに上回る切れ味と威力のビームサーベル。

 ストライカーパック。可変機構。スキュラ。ミラージュコロイドといった、脅威的な各種新武装。

 これほどの機体をナチュラルのみで作れるとは思えないが、いずれにせよ、これほどの機体が量産されてしまえば、こちらに勝機はない。唯一上回っている質の面で敗北して仕舞えば、MSの性能差で何とかしているザフトでは、どうしようもなくなってしまう。

 それほどの、機体。

 我らザフトを叩き潰し、コーディネイターを殺す。

 その為の、機体。

 

「皆さん。静粛に。静粛に」

 

 そうして場を納め用とするシーゲルの声も虚しく、議会は紛糾していく。

 そんな中で、パトリックは立ち上がり、全員の視線を自分に集中させた。

 

「皆さんのいう通りです。我々は、何も戦いたい訳じゃない。しかし!戦うことを止めようとしないのは、連合なのです!」

 

 全員の視線が、パトリックに集まっている。

 今この場の主役は、他ならぬ彼である。

 

「『血のバレンタイン』24万3421人もの犠牲者を生み出したあの惨劇。それほどの被害を受けたにもかかわらず、あれに対する報復として我々が選んだのは、同じく核による殲滅戦ではなく、NJによるものでした。我々は、ギリギリまで穏当な対応を続けていたのです!にも関わらず、地球軍の対応は、これです!和睦の使者を殺し、中立国を巻き込み、そして我々を殺す為の兵器を作り上げた!」

 

 -----

 

 キラたちは気付く。眼下にあるこの瓦礫。これこそが、ユニウスセブンなのだと。

 調査の為に、そこに降り立つキラとミリアリアたち。

 扉を開き、そこにあったのは。

 赤子の死体を抱える、母親の死体であった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

「っ!ミリィ、こっち!」

 

 咄嗟にミリアリアの体を引っ張り、彼女から死体を隠す。

 そして、固まったままのキラに声をかけた。

 

「一度戻ろう。キラ。マリューさんたちに報告しないと」

「えっ、あっ、うん」

「いいですよね。ナタルさん」

「………あぁ。一度、戻るべきだろう」

 

 -----

 

 議会では、パトリックの演説に同意するものが多い。

 そうだ。悪いのは我々じゃない、あちら側なのだと、そう主張する。

 

「戦わなければ守れないのなら!戦うしかないのです!」

 

 そうして、査問会は、終わった。

 

 査問会の終了後、アスランは外でパトリックを待っていた。

 と、そこにシーゲルが話しかけてきた。

 

「やぁ、アスラン君。今日はご苦労様」

「いえ……そんな。議長の方こそ、お疲れ様です」

「ありがとう。いやしかし、君とラクスは運が悪いな。君が戻ってきたこのタイミングで、彼女も追悼慰霊団として、ユニウスセブンに向かっているのだから」

「えっ?ラクスが?」

「君たちはどうやら、入れ違いになってしまうらしいな」

 

 -----

 

 ブリッジで、キラはマリューに抗議していた。

 

「本当に、あそこから物資を取るつもりなんですか!マリューさん!」

 

 その言葉を聞いて、顔を辛そうに歪めるマリューを見かねて、ムウが代わりに答える。

 

「仕方ないでしょう。別に俺たちだって喜んでいる訳じゃない。水が見つかった、良かったって。でも、俺たちは生きてるんだ。生きてるってことは、生き続けなきゃならないんだよ」

 

 そうして、キラたちは宇宙に出た。

 宇宙空間で、ストライクに乗ったキラが見守る中で、ミリアリアは、避難民の子供達と共に折った折り紙の花を、添えるようにばら撒いた。ブリッジで、居住区で、人々は祈り、悼む。

 きっと。彼ら彼女らを癒してくれると信じて。

 

 -----

 

 アスランは一人、墓参りに来ていた。

 しかし、この墓には何もない。母は、ユニウスセブンに行った時に、荷物も含めてほとんど持っていってしまっていたから。遺物も、遺体も、何もない。

 ここにあるのは、名前が刻まれた石のみ。

 それでも、きっと。届いて欲しいと思うから。アスランは、そこに花を添えた。

 

 -----

 

 セラは一人。ユニウスセブンを探索していた。

 無論、独断である。

 バレないようにこっそり一人乗りの小型ポッドを借り、それを使って目的地まで向かっていた。

 彼女の頭に乗っかっているチュチュは、大丈夫なのかと問うようにコンコンとヘルメットを叩く。

 

(確か、この辺りだったかしら)

 

 元々、セラは身内を大切にする少女だった。

 だから、まめに文通していたし、彼女の住所も、把握していた。

 そこは、立派な屋敷だった。しかし、みるも無惨に半壊していた。

 

「……お邪魔します」

 

 返ってこないとは思うけれど、それでもそう声をかけて。

 セラは、彼女の、レノア・ザラの屋敷を、訪れていた。

 色々な幸運が、重なっていた。

 アークエンジェルが訪れた大陸が、たまたま彼女の住所が記載されていた下側だったこと。

 たまたま、一人乗り用の小型ポッドが、残っていたこと。

 そして、アスランたちとの会話で、やっぱり彼女が、ここで犠牲になったということを知ったこと。

 だから、セラは、ここにきた。

 

(きっと、ザフトがここを訪れるなんて、非常に難しいことでしょうね。何せ、このデブリを調べれば、核攻撃がどっちの手によるものなのか、はっきりとした証拠付きで手に入るかもしれないもの。核攻撃を自作自演だとかふざけたことを宣った連合なら、そこまでの妨害も考えられるわ)

 

 アークエンジェルがここまでこれたのは、偶然だ。

 おそらく、正規の手段でここを目指してくることは、非常に難しいだろう。

 

(そうだとすれば、きっと、アスランたちは───)

 

 遺品も遺体も、回収できていないのだろう。

 そうして、セラは、恐らくはレノアの自室と思われる部屋を、開いた。

 

「………レノア、さん」

 

 返ってくることはない。彼女は、既に屍であった。

 ある意味、運が良かったのだろう。核攻撃による爆風でも、爆熱でもない。宇宙空間に突然放り出されたことによる、凍死であった。

 だから、そうとわかるぐらいには、彼女の遺体は、綺麗だった。

 

 設備も何もない宇宙空間で、できることなんて何も無い。だから、せめて。

 セラはレノアの左手薬指の指輪を外し、大切に布でくるんで、ポケットにしまった。

 それから、レノアの手帳に挟んであった、その栞に気づいた。

 

(あ、れは────)

 

 よく、覚えている。

 コペルニクスで、初めて母の日を知った日。

 プレゼントをどうしよう、とアスランからそう相談されて、

 キラが花束とかでいいんじゃ無い、と言って、

 子供の小遣いで買うには高すぎるって私が却下して、

 じゃあ一輪の花とかで、とキラが言って、

 それだと寂しすぎるだろう、とアスランが却下して、

 私が、押し花とかどうって提案して、そして、それにしよう、と。

 ついでに、いつもありがとうってメッセージ入れるのとかいいんじゃ無い、ってキラの言葉を参考にして、そうして、3人で作った、ダリアの、栞。

 何とか小遣いを捻出して買えたのは、五輪ほどで。

 一番綺麗にできたやつを、アスランがプレゼントすることになって。二番目に綺麗なやつは、キラが、三番目に綺麗なやつは、私が、母さんに渡すことになって。

 あとの二つは、どうしようかって話になって、結局、殆ど本を読まないキラじゃなくて、私とアスランで一枚ずつ待つことになった、栞。

 大切な、大切な、思い出の一つ。

 

 

 迷って、迷って、迷って。

 彼女の手元に残しておこうとも思って。

 でも、アスランにとってもこれは、大事な思い出のはずだから、ってそう思って。

 最終的に、持って帰ることにした。

 

 

 少し、焦げてはいたけれど、少し、使い古されてはいたけれど。それでも、あの時と変わらず綺麗で。きっと、幼い子供が作ったものだから、思い出補正みたいなものがあるのだけれど。それでも、綺麗だった。

 

(─────何で?)

 

 どうして、キラは。アスランは。殺し合いなんて、しているのだろう。

 静かに泣くセラを慰めるように、チュチュはコンコンとヘルメットを叩いていた。

 

(そろそろ、戻らないと)

 

 コッソリと、バレないようにアークエンジェルに戻って。

 そこで、避難ポッドが一つ、格納庫にあった。

 

(?あれは────?)

 

 バレないようにノーマルスーツを脱いで、何食わぬ顔でキラの隣に立つ。

 

「ねぇ、キラ。あれ、何?」

「あっ、セラ。どこ行ってたの、もう。えっと、あれだよね。なんか、民間船が壊れちゃってて、で、そこから出てきた、救助ポッドだよ」

「ふーん。また、ナタルさんに怒られるんじゃ無い?」

「もう怒られたあとだよ」

 

「それじゃ、開けますぜ」

 

 マードックはそう言って、ポッドの電子ロックを解除した。

 

『ハローハロハロ』

 

 まず、無重力空間を転がるように出てくるのは、ピンク色の球体。何というか、どことなく、トリィやチュチュに似ている気がした。

 

「ありがとう。ハロ」

 

 そんな、鈴の音みたいな、綺麗な声がして。

 ピンク色の髪の、女神のような少女が、ポッドから出てきたのだった。

 

 





 感想評価が増えたなら、もっと投稿頻度が増えるかもしれないし増えないかもしれない。
 だけど、やってみなくちゃ何も始まらない。
 やってみる価値はありますぜ。

(感想評価乞食)
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