【お天気】スキルの追放令嬢 ~美少女メイドと始める砂漠のスローライフ?~   作:月城 友麻

37 / 86
37. 人型機動兵器?

 翌朝、ロッソのよく見える気持ちの良いカフェテラスで朝食をとった一行――――。

 

「ねぇ、今スキルランクいくつ?」

 

 オディールは食後のお茶をすすりながらミラーナに聞いた。

 

「え? 十五……かな?」

 

「へっ!? じゅ、十五ってSランク冒険者を超えてますよ!」

 

 横で聞いていたヴォルフラムはビックリして目をまん丸にする。

 

「だって、毎日最大出力の魔法打ちまくってるんだもの。そのくらい行くわ」

 

 ミラーナはちょっと得意げにヴォルフラムを見る。

 

 インフラの土木工事はほぼすべてミラーナがやってきたのだ。その行使した魔法量は世界でもトップクラスになっている。ただ、敵を倒しているわけではないのでレベルは低いままだが。

 

「じゃあ、今日はゴーレム作ろうよ、ゴーレム!」

 

 オディールは好奇心で目をキラキラと輝かせる。

 

「ふふっ、ゴーレムってこれの事かしら?」

 

 ミラーナはポケットから丸い石ころを出して嬉しそうにテーブルに置いた。

 

 するとその丸みを帯びた石ころはちょこちょこと動き出し、ミラーナの手の上によじ登っていく。

 

「えっ!?」「はぁ!?」

 

「ハムスターゴーレムの『ハム』ちゃんよ。可愛いでしょ?」

 

 ミラーナは腕を登るハムを見せながらニコッと笑う。クリっとした目がついていて、黄金色に光っている。

 

「す、すごいね。もうやってたんだ」

 

「だって、オディがハムスターも作れるって言うから練習してたのよ」

 

 ミラーナはオディールの腕にハムを乗せた。

 

「うわぁ……、良くできてる……」

 

 石でできたハムはクリっとした目を輝かせ、小首をかしげてオディールを見上げている。

 

 オディールはハムを手のひらに乗せると、すべすべしたハムの頭をなで、嬉しそうに微笑んだ。

 

「ここまでできてたらワーカーゴーレムもできるね」

 

「ワーカーゴーレム?」

 

 首をかしげるミラーナ。

 

「こういうのだよ、農作業や力仕事をやってもらおうかと思って」

 

 オディールは設計図を出して広げた。

 

 そこにはいかつい装甲で異彩を放つ人型機動兵器モビル・アーツのスケッチや、手足のパーツの概要が細かく書かれている。

 

「……。何……? これ……?」

 

 ミラーナはその見たこともない異形の造形に眉をひそめ、渋い顔をする。

 

「モビル・アーツだよ。ほらこの(かぶと)のような装飾、カッコいいでしょ?」

 

 しかし、メイドで働きづめだったミラーナには、その異世界のアニメの造形は難度が高すぎた。

 

「……。もっと可愛いのがいいわ」

 

「えっ。いや、これにはロマンが……」

 

「なんかこう丸っこいのがいいの」

 

 ミラーナは口をとがらせて頑固に譲らない。

 

 いや……、えぇっ。

 

 オディールは凍り付く。夢の等身大モビル・アーツの計画が根底から否定されてしまったのだ。堂々とした巨大なブーツから伸びる精悍な脚、無機質な胸部に強靭な肩。これらが生物のように力強く大地を駆け抜ける、そんな情景を思い描いていたオディールは言葉を失った。

 

「こういうのがいいのよ……」

 

 ミラーナはそう言いながら紙に卵のような図形をかいて手足を生やし、丸い目玉を描いた。

 

「卵……」

 

 オディールは言葉に詰まる。人型機動兵器モビル・アーツを作るはずが、このままだとハンプティダンプティみたいなファンシーな妖精になってしまう。

 

「きっとこういう可愛い子の方が人気出るわよ」

 

 ニッコリと笑いながらさらに違うバージョンの卵を描いていくミラーナ。

 

 その嬉しそうな姿にオディールは何も言えなくなってしまう。やはり異世界の少女にモビル・アーツの魅力なんてわかるはずもなかったのだ。

 

 すっかりしょげ返ってしまったオディールを見たミラーナは、焦った様子で言う。

 

「あ、そのうちにこのモビル何とかも作るわよ。でも、最初は卵で行きましょうよ」

 

 重いため息と共にオディールは静かにうなずいた。

 

 

       ◇

 

 

 その後二人で、熱い議論を交わしながら、ときに微笑みを交えて、卵型ゴーレムの設計をじっくりと詰め上げていった。

 

 スピードを求めれば車輪が必要だが、車輪だと階段は登れない。となると脚と車輪のハイブリッドが答えだろうが、卵の下部に両方はなかなかうまく収まらない。

 

「二輪は止めて一輪にしようか?」

 

 オディールはシュッシュと卵の下の方にタイヤを埋め込んだ絵を描いた。

 

「えっ! 倒れないかしら?」

 

「一輪車に乗ってる人もいるじゃん? そこは賢く頑張ってもらって……。それで脚はこう!」

 

 そう言いながら長い腕を四本描いた。

 

「え? 腕……なの?」

 

「普段は車輪で動いて、階段などは下側の腕でゴリラみたいに歩くんだよ。どう?」

 

 そう言いながら、可愛いクリっとした目を描き加えるオディール。

 

 その、ぬいぐるみのような愛らしさにミラーナは嬉しそうに微笑む。

 

「あら可愛い! モビル何とかよりこっちの方がずっといいわよ」

 

「は、ははは……。そうかもね……」

 

 オディールは死んだ魚のような目で力なく答えた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。