ルーミアだけど、どうやらめっちゃ強いらしい   作:ポンデーニュ

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何番煎じか分からないネタですがよろしくお願いします。


第一章 月への足跡
第1話「仄暗い洞窟の中から」


光があるならば闇もある。

 

中二病ですらまず思いつかないレベルの陳腐なフレーズではあるが、これが意味するところは、つまるところ太陽光がモノにあたって影ができるよねってことだ。うん、簡単でよろしい。

もちろんこの光は太陽でなくても良い。人工的な照明よろしく、LEDなる発明品から発せられる光でも良いのだ。モノっていうのも何も無機物だけでなく、生物でも何でも良い。

 

さて、こんな耳があったら一方からもう一方へとするりと抜け落ちてしまうレベルの中身のない話は置いておいて、ひとまず現状を整理しよう。

 

「………うん、そうね。私、ルーミアだわ」

 

一から全部説明しよう。

いや、私自身本当に理解が出来ていないので説明というよりは言葉の羅列と命名した方がよっぽどマシだろう。こうして居もしない誰かさんに向かって独白めいたことを行っているのがその混乱の証拠だ。

 

 

 

東方Project、可愛い女の子たちが弾を飛ばしてキャッキャする人気コンテンツ。恐らくかつての私はそれを好き好んで楽しんでいたんだろう。

…ええ、''恐らく''と言ったのは、私はかつての…つまり前世の記憶をほとんど持ち合わせていないのだ。家族とか友人とか、なんなら自分の名前も…そして性別すら分からない。

ではなぜ今は''私''と自称しているのか。これはもう少ししたら説明するので少し待ってほしい。

 

さぁ、本題に入ろう。一先ず数十億年くらい前の話からしないといけない。

意味が分からないと思うが、もう少し待って欲しいのだ。全部きちんときっかり説明するから。

 

意識が鮮明になってまず最初に視界に映ったのは闇だった。真っ黒で見渡す限りの闇、どこを見ても黒一色で自分の体すら認識できなかった。

闇に溶けていて、どこからが私でどこまでが私かすら分からない。なんなら私は存在しないのかもしれないし、全てが私なのかもしれない。そんなレベルで境界線がなかったのだ。

感覚的には水上でぷかぷか揺れている感じだ。浮いているような、流されているような、そんな感覚。音も何も無いのだ。なんなら五感の存在すら怪しい。

 

知識だけは常識程度のものは持ち合わせていた。太陽と月があって、海は広くて住んでいた場所は日本。天皇がいて、割と長い歴史を持っていて太平洋戦争で負けた…みたいな一般常識だ。現代ではインターネットが普及して、人々は電子のつなぐ見えない糸に縛られていることも知っている。

東方に関してはその知識の一つだ。しかし他の娯楽に比べて知識量が多いことから私は…かつての私は、これが好きだったというのが類推できるのだ。

 

もうどれだけ時間が経ったかも分からない、気が遠くなるくらい私は暗闇だった。だけど不思議と苦痛じゃない。こんな場所に長く独りでいたら気でも違ってしまいそうだが、なんなら心地良さまであった。

そしてとてつもないほど冷静でその状況を受け入れていた。

今にしてみれば、この不思議な適応現象も少しは理解のできる話なのだが…まあこれもおいおい話そう。

 

暫くそんな状態でゆらゆらぼーっとしていたら、その闇の中に一粒の点が見えたのだ。本当に豆粒サイズのそれが、遠くに遠くに、地平線ならぬ地平点のようであった。

 

素早く近づいてそれを手に掴まないと、すぐにでも消えてしまうかもしれないのに、なぜだか私は「よいしょ」なんて言いそうな具合でのそのそと点に近付いていった。勿論私に実体はありやしないので、動く…なんて表現はおかしいのだが、とにかく近づいて行ったんだ。ゆらゆらと、流されるように、私はいつか見た青空の雲だった。

 

それは眩い光を放っていた。

私はその切れ目のような何かに…そう、近づいて分かったがなにかの裂け目のようだったのだ。

ともかくそれに、自ら飲み込まれて行った。

 

 

 

そして、辺りを見渡す。

 

まさに地獄だった。

宙からは巨大な岩石が降り注ぎ、その衝突を繰り返し地響きが止まらない。ドロドロと見るからに灼熱な溶岩が地表から吹き出るわ、雷が少し先を爆発させるわ…これを地獄と言わずしてなんなのかというものだ。

 

……いや、待てよ、この光景知ってる。

 

…地球誕生だ。子供の頃図鑑で見た、溶岩が流れ休む暇なく音を鳴らす雷。空は空として完成していない、地獄の中の地獄。まさにそれに瓜二つだった。

 

「!?!?」

 

私は途端にパニックになって素早くさっきまでいたブラック空間に舞い戻ろうとした。

でも叶わない、もうあの暗闇は無くなってしまっていたのだ。裂け目が存在していなかった。

私は途端に母親のお腹の中から産み落とされ、遂に逃げ場を失ってしまったのである。

 

「ぎゃああああ!」

 

もうパニックで悲鳴をあげてあたふたした。

とてつもない長い時間を、意識を保ちながら暗闇で過ごし、そんな中でも全く取り乱さないどころか本当に平常心で俯瞰していたのに、途端にこれである。

 

「ぎゃああああ!」

 

二度目の悲鳴。ああ、あの心地よい暗闇に戻りたい。そうしてずっと揺られていたい。

あ、目の前でなんか爆発した。

 

「ぎゃああああ!」

 

この辺りでようやく私は声の様子から自分が女であることを認識した。それもそこそこ幼い女の子、陳腐な表現だが本当に鈴を鳴らしたかのような綺麗な音だった。

 

「ぎゃああああ!」

 

鈴もこんな音を出されて堪らないだろう。

 

そもそもなんで私は生きているんだろう。これって酸素あるの?

言い出したらきりがないが、そもそもあの暗闇は一体なんだったんだ?

今まで当たり前のように受け入れていた色々なことが、ここにきて途端に頭の中をぐるぐる循環し始めた。おまけに周りはこんな地獄と来たものだから、もうパニックもパニックで、どうにかなりそうだった。

 

まず本当にこれは本当に地球誕生だとして、だとしたら私はなぜ地球誕生(仮)に立ち会っている?

 

……いずれにせよ、どうにかして生き延びなければならない。

その為には――――ドッガーン!!

 

「ぎゃああああ!」

 

私は雷に打たれて爆発した。

END.

 

だってそうだろう、爆発してしまったら人は死んでしまう。何となくわかるものだ。

 

私は確かに爆発して四散した感覚があったし、死のような何かを感じた。

でもおかしいのだ。本当におかしいのだ。

 

高いところから落ちる夢を見て、ビクッと体を反応させて目が覚めた経験はないだろうか?まさにそれだった。

 

私は四散したはずなのに、次の瞬間ビクッとしたのだ。

あの夢落ちの感覚で、私は平然とその場に立っていた。地面は爆発でえぐれているので、私の体は先程よりY軸がマイナスの位置にある。しかし差異はそれだけだ。しっかりと両手両足はついてるし、それを自由自在に動かすことが出来る。

 

私はぽかーんとしてしまってその場に立ち尽くしていた。勿論爆発音やら形容しがたい''地獄音''が辺りで鳴り響いているのだが、耳に入らなかった。

 

そしてようやく、一際近いところで大きな轟音が鳴り響いて、私はハッと正気に戻ったのだ。わざとらしい程に自分の体に触れて、その実体があるのを確認したのは今でもよく覚えている。

 

 

 

さて、私はそれからというもの何度か四散したり、溶けたり、ともかく色んな経験をした訳だがその都度ビクッと現象を経験したのである。

 

この異常な事態に慣れてきた頃合で、私は自分の体をよく見てみた。黒と白の洋服で首元からは短い赤ネクタイがある。私のかつての''常識''内の服装だった。

しかしなんだか久しぶりだ。ずっと闇に溶けていたのでこうして身体を持つという感覚がイマイチ慣れない。

 

 

 

それからはまた、かなりの長い年月が経った。その過程で爆発や雷は数が減り、徐々に地面もなだらかになっていった。

私はただそれをぼけーっと眺めていた。途方もない時間を、闇という本当に何もない空間で過ごしたんだ。まだこっちの方が退屈しない、いくらでも暇なら潰せる。軽く数億年くらいはクレーターの数を数えたり山登りをしたり、色んなことをして過ごした。

 

しばらくして、今までと比べ物にならない振動が起こった。地面が割れて私は何かよく分からないものに挟まれてぺしゃんこになってしまった。が、あのビクッと現象によってすぐになんともなく復活。

いつの間にか宙には月が昇っていて、そのクレーターの少ない綺麗な地表を露わにしていた。

 

やっぱり、本当に、地球誕生なんだろう。それかもしかすると全く別の惑星の誕生だろうか?月なんてどこにでもありそうだし。

 

酸素もまだ無いはずだし、恐らくとんでもない気圧だ。

だけど私は平気で存在している。

…うん、私、人間じゃないんだわ。

 

この辺の話については本当に何もないし、私はただ散歩しながら地球(仮)を歩いて時間を潰していた。暗闇の中にいた頃ほど時間の進みは早くないが、それでもすぐに時は過ぎていった。

なんというか意識すると時間はすぐに進んでいくのだ。こう、TVの録画でCMを飛ばす時のような、そんな時間の感覚に近いだろう。

 

自分が人間でないのは分かりきっていた事だが、どうやらそれなりに人間離れした能力を持っているらしい。硬そうな岩山を殴ってみれば山は消えたし、地面に頭突きをすれば地震が起きた。

 

 

 

そんなこんなでようやく水が発生した。

私はその頃、恐らくかなり高度の高い位置にいたんだろう。ちょっと高いところに登ってかなり長い間昼寝なんかをしていたんだ。

だからこう、一部始終を視認することは出来なかったが海が形成されていたのだ。それはとてつもない嵐で、また今までとは変わった地獄の様相を呈していた。

 

ここで食料や水の話をしておこう。まあこの話の流れで分かると思うが、私は一切これらを必要としなかった。

しかし私だってたまには何か食べたいし飲みたい。これは空腹なんていう問題じゃなくて、なんというか感性なのだ。何かを口に入れたいという、欲求なのだ。

一度そこらの岩石に噛み付いたことがあったけど、ただ硬くてゴリゴリするだけだった。

溶岩を飲もうとしたこともあった。結果はあのビクッと現象が起きただけだ。

恐らくこの現象は私が修復不可能なくらいの痛手を受けると起こるのだろう。無限コンティニューのようなものだ。

…本当に残機が無限であるかは分からないが、しかしもう身体を得て数億年。数え切れないくらいこの現象を経験してるが未だにゲームオーバーには至らない。実質無限みたいなものだろう。

 

水の海ができているのを見た時、私は嵐だろうがなんだろうが構わなかった。久しぶりに水が飲めると思ってすぐに飛びついて行った。

 

とてつもなく不味かった。これ、多分毒だし私の知ってる水じゃない。しかも死ぬほど熱い。

 

というわけでしばらく私は海に近づくのをやめて、吹き荒れる嵐を眺めながらお昼寝したりお散歩したり…ああ、本当に特筆すべき点がないのではやく話を進めよう。

 

しかし空模様は少しずつ変わっていった。雲ができていたのだ。相変わらず嵐だけど。

 

 

 

そしていよいよ転機が訪れたのだ。

空が、晴れている!

太陽が、出ている!

 

今までずっと夜のような暗さや嵐だったのでこれはもう本当に大きな転換だった。私は思わずスキップしてルンルンであった。

…が、一つ違和感だったのは身体の調子がいつもより格段にスッキリしないということだ。だけどもそんなことは些細なことだった。青空の前にはどんなことも些細なことなのだ。

 

すると大きな湖に出くわした。

 

私は「わあ!」なんて声を出してしまった。

だってそうだろう、久方ぶりに太陽の光が反射する湖を見れたんだから。なんて美しく、情緒的で牧歌的なのだろう!

 

私は急いで走って、湖のすぐそばまでやってきた。ふと覗きこむ。

そこには、太陽の光が反射した為に、私の顔が映っていた。

そう、鏡や反射するものが存在しなかった為、私はここにおいて初めて自分の姿を確認したのだ。

 

「………これが、私…?」

 

金髪ボブ、真紅のような瞳、白黒洋服にロングスカート……可愛い、スゴく可愛いのだが…。

 

そもそも手足があって喋れることから人型だろうとは予測していたが、もっとバケモンの可能性もあっただけに今は安堵感も大きい。しかし、それ以上に…これって…私は……。

 

「え、ルーミア?」

 

困惑した表情の美少女が、水面に揺れていた。

 

「………うん、そうね。私、ルーミアだわ」

 

ようやく話が繋がった。大きく大きく端折ったが、こういうことなのである。

 

自分の髪が金髪なのは知っていたし、服装のことも知っていた。

しかし、まさか自分がルーミアだとは思いもしなかった。

点と点が繋がったような感覚もあったが、やはり私は驚きを通り越して大パニック状態だった。

 

「…………ルーミア!?え、私、ルーミア!?」

 

久しぶりのパニックだ。

洞窟を暇つぶしに作っている最中に大きな地響きが起きて、あの水もどきが凄まじい勢いで流れ込んだ時よりもパニックだ。

 

東方紅魔郷1面ボス、ルーミアが、私なのだ。

ただ一つの相違点は赤いリボンを頭に着けていないということ。

 

「………」

 

私は両腕をピンと、地面に平行に伸ばした。

 

「……そ……そーなの……かー」

 

いやですね、これをやらないといけないと思ったんだよ。例えば空のペットボトルなんかが机の上に放置されていたら、きっとかつての私はそれを捨てずには居られないようなそんな性格だったんだと思う。やらなきゃいけないと思ったことはやってしまう性質が色濃く根付いてるみたい。

 

しかし…………どうやらこの私にも一応羞恥心と言った感情が存在しているらしい。もう当分はやらないでおこう。

雲の合間にチラリと見てる太陽が、何だか私を嘲笑っているような気がした。

 

##########

 

今が何年で何日なのかは全くわからないけど、私はこの地球に生きています。

ああ、でもやっぱり…寂しい。

 

さて、私は自分がルーミアであることを認識した訳だが、特に生活が変わる訳では無い。それまで通り緩やかな変化を遂げる地球を見ていた。

 

しかしまさかルーミアがこんなに古代……いや古代なんてもんじゃない。まだ生命すら誕生していない時期からいるなんて…。まあもしかしたら地下深くに原始生物がいるのかもしれないが、それは私の与り知らぬ所だしそんな小さいのを生物とはあまり実感できないだろう。

 

そんなこんなで海はようやく青くなり、なんかよく分からない氷河期みたいなのが起こって地球は進化を遂げていく。

 

そして私の方でも発展があった。飛べるのだ。

ルーミアなら飛べるだろうと思って飛ぶイメージをすると、私の体は簡単に宙に浮いた。

それからはもう自由自在に飛び回って久々の変化に私は時間を忘れて楽しんだ。軽く1万年くらいは暇をつぶせて夢中になった。

 

さらにもう一つ、昼と夜の区別ができて明らかになったことだが、私は昼の時明らかに不調なのだ。夜の時は簡単に吹き飛ばせる岩山だって、昼ではせいぜい拳程度の穴を空けられるくらいだ。

これは私が闇妖怪であることが関連しているのだろうか…?

 

この長い時間、考える時間はいくらでもある。

今の私の推測として、この私ルーミアは恐らく妖怪ではない。もちろん人間でもないだろう。

では何か?最初は神様なのではないかと思ったが、恐らくそれも違う。神様というのは信仰がないと多分生きていけないはずだ。今のこの世界に私を信仰する何かが存在するとは思えないのだ。

 

結論として、概念だと思う。

私は、きっと概念なのだ。闇という概念そのものなのだ。これで全て説明がつく。あの最初の空間のことも、私のこの不死性のことも。

だってそうだろう、闇というのは暗い場所があれば否が応でも存在する。そんな概念が消えるわけが無いのだ。

私はその闇が実体化したものなのだろう。

 

地球は尚も変化を遂げていく。寒い時期や暑い時期が繰り返されたり…ああ、一応そうした温度の変化は分かるようだ。もちろんそれによって死んだりはしない、体が欠損しない限りはなんの影響もないのだ。温度の変化一つで概念が消え去ることなんてありえないのだから。

 

しかしやはり寂しいものだ、何か目に見える生物でも存在してくれれば話し相手にでもなってくれるかもしれないのに。

 

私は最近少しはマシになった海で泳ぐのにハマっている。今も水の上でぷかぷか状態だ。

こうしているとあのブラック世界を思い出す。お母さんの温もりのような、温かいお布団の中のような…あの感覚が少し思い出せるから。

神様、いるのか分からないけど私にお友達をください。寂しいのです。

 

##########

 

神様がいるのかは分からないけどお友達ができるかもしれない。海がようやく私の知る海になって、そして遂に目に見える生物も誕生した!

よく分からない海藻だが、なにやら賑やかになっている!!

 

そして魚の先祖様とも出会った。透明なのだったり、やたら足が多いのだったり。

 

もうね、本当に嬉しいのだ。同じ生き物がこうしているだけで本当に私はようやく孤独から解放された気がして涙が出そうだった。

最初は話しかけたりして遊んでみた。観察するのも面白い。皆私の友達なのだ。

もちろん捕まえて食べてみた。あまり美味しくない、ゴリゴリしている。友達は美味しくないようだ。

 

##########

 

それからも絶え間なく地球は変貌していった。

とにかく、生物はあらゆる進化を遂げ、それらは陸にあがり、いよいよ図鑑で見ていたような恐竜が誕生した。

名前は分からないがしっぽにコブのついたやつ、なんだか火を吹きそうな見た目の真っ赤なやつ。

空飛ぶやつだって現れたのだ。

 

そして、恐竜以外にも生物は現れた。

それは、妖怪と人間だ。

まず妖怪だが、これは私のかつての''常識''の範囲外の生物なのだ。最初は古代の生物か何かだと思ったが、火炎をぶちまけたり頭が分裂したり…それに空飛ぶ目玉なんて私は知らない。

それにもう一つ、これらを妖怪だと定義した最大の理由は私がルーミアだからである。この世界は恐らく東方Projectの世界だ。だったら妖怪がいること自体なんら問題はない。

 

次に人間だが、これも驚いた。いつのまにか竪穴式住居のような簡素な家々が立ち並び、そこに人が住んでいたのだ。恐竜が存在していた時期に人間がいたなんて、どう考えてもありえない。

が、そう、これも東方の世界だという理由で納得した。恐らく月に移住していった人々の先祖なのだろう。

 

恐竜、妖怪、人間との接触だが…現時点では人間とは一度も接触していない。

なんだか怖いのだ、無性に怖いのだ。ああいう人型で知能の持った種族と話すなんて…もう何十億年もしていないのだ。なんて話せばいいかも分からないし、なんだかそういう相互的なやり取りが酷く怖かった。相手の考えていることを考えたり、本音を言ったり嘘を言ったり……ああ、そんなやり取りが怖い!

これなら化け物じみた気持ち悪い目玉妖怪のほうがまだマシだ。

 

ええ、そうですとも。私はコミュ障ですとも。

でもしょうがないじゃない、これまでお友達は暗闇かそこらの岩か、クソまずい魚しかいなかったんだから。

 

しかし人間は本当に賢かった。妖怪、恐竜はもちろん人間よりも強いが、彼らには知識があった。

物凄いスピードで技術を発展させ、ほんの数百年で今は見た目では平安時代?くらいの文化水準にまで達している。あくまで見てくれがそうなのであって、恐らく内部はもっと進んでいるのだろう。もちろん中まで入ったことはない。門番もいるし、空から侵入して見られたらなんて思われるかわからない。

私は遠くからそうした人の発展を眺めるのが好きであったが、あまりにも発展しすぎてしまったのか、彼らの''探知''に引っかかってしまって光線を撃たれたことがあるのだ。

ちょうど昼だったし、私は丸焼けになって死んでしまった。かなり遠くから見ていたはずなんだけど…。

 

さて、妖怪や恐竜の中にはもちろん私に敵意を向けるものもいた。夜ならば瞬殺できるが、昼の私はとにかくか弱い。

そこらの低級妖怪程度の力しかなく、何度もビクッと現象を繰り返した。

 

………ってこんな独白してる間に、気色悪い妖怪に見つかってしまった!!

 

「ひぃー!」

 

走る、走る。昼は本当にか弱いのだ、だから虐めないでほしい。

 

緑の地面を踏みしめながら後ろを振り返る。

ドラゴンみたいな空飛ぶ恐竜妖怪が私を空から追跡している。……飛んで逃げるのも意味が無い!

昼は飛行速度も落ちるんだ、すぐに追いつかれてしまう。

 

別にどうせ生き返るから死んでも良くないかと思われるかもしれないが、普通に痛いのは嫌だし何よりあの現象は未だに不気味で気味が悪いのだ。

 

それに概念だろうが、生物的要素が多いから生への欲求もちゃんとある。だから死にたくないのだ。

 

ヤシの木の亜種みたいなの大樹の森の合間を抜けていく。これならば上空からは木の葉だらけで私の姿を確認できないだろう。

 

「ふ、ふぅ……は、はぁ……」

 

息も絶え絶えでぺたりと座り込む。どうやら逃げきれたそうな。

もうこんな経験はこりごりだ。昼の私にももっと対抗手段があればいいのに…………ん?

 

そういえば''弾幕''は扱えるのだろうか?

東方といえば弾幕、弾幕といえば東方だ。

この私が使えない方がおかしいのではないだろうか?

 

私はそっと手をかざし、正面に向かって弾を出すようにイメージした。

手のひらからはブチッブチッと真っ黒い小さな稲妻が、線香花火のように現れるだけ。

だが手応えはある。

 

「ん~?」

 

今度は強く念じてみる。

思いっきり、弾け飛ぶように……。

 

ドッガーーーーーンッッッッ!!!!

 

「ぎゃあああああ!」

 

私はその衝撃で尻もちをつき、ちょうど真後ろが坂になっていたらしい、ぐるぐると回転して後転しながら坂を転がっていった。

 

な、なんだ今のは?

私は確かに弾幕をイメージした。米粒のような弾幕だ。それを弾きだすように、身体の中から押し出すようにイメージした。

 

それが………私の、私の手から出たその黒い塊は、勢いよく前方へと放たれ、周囲の木や地面を呑み込んでぽっかりと穴をあけたのだ。

あれはそう、まるで…画像ファイルの編集で、真っ黒なペンを選んでぐりぐり塗りつぶしたかのような…そこがぽっかりと空いているようなものだった。

そこだけは光が反射しておらず、完全な闇だった。

 

恐ろしい…こんなものが私の手から放たれたのはもちろんだが…しかし……。

 

昼の私でこの威力なのか………?

 

この思考の間も私は坂をぐるぐると回転して下り、やがて地面は緑から土色に変わって周囲も暗くなった。どうやらそのまま洞穴に落ちてしまったらしい。

 

 

――どすん!

 

ようやく私はぐるぐる回転をやめて、穴の底に落ちたようだ。

 

「いてて……」

 

とにかく一旦ここから抜け出さないと。こういう暗闇は落ち着くが、まだまだ私は自分のことについて知る必要があるのだ。

……ん?

 

「………ひぐっ…ぐすっ」

 

なんだ?声が……嗚咽が聞こえる。小さな女の子の声だ。

人間か?知能を持った言葉を扱える妖怪を私はまだ知らない…ならば人間か?

 

私はなぜだか恐怖も感じずに、その声の元へと歩いていった。

 

足音が反響して、洞窟にコツコツとした音が響き渡る。

 

「うぁ……うぅ……ひぐっ……」

 

時折水滴が滴り落ちるこの洞窟の中で、私は白髪の綺麗な幼女と出会った。

彼女は怯えて泣きじゃくり、体育座りをして肩を震わせていた。中央に赤い十字のある、ナースキャップのような帽子を両腕で抱えて。

 

ちょうど地面の隙間から、この洞窟に差し込む光が、彼女の姿を照らしているようだった……。

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