転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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皆様のおかげでこの小説も百話に到達しました。
こんな拙作を読んでいただいてありがとうございます。
これからもシリウス達をよろしくお願いします。


第百話

 

 夕食を食べ終えて部屋に戻ったシリウスとエルフィナはまだ互いがいなかった間の事を話していた。

 

「そうだったのねー。そっちは平和で何よりだわー」

「エルフィナさんの方は盗賊団が可哀相に思えるぐらい酷い事になりましたね」

 

 エルフィナが受けたゲルナト盗賊団の討伐はエルフィナが物凄く張り切った所為で凄い事になった。罠という罠を見つけ解除し、伏兵を一人で全て倒し、逃げ道も全部潰した。作戦が全て水の泡にされた盗賊達はアジトに立て籠もったが、エルフィナは裏口から潜入し大暴れして盗賊達を正面へと追いやった。テンションMAXなエルフィナから逃げるために正面の出入り口へと走り全員捕縛されていった。中には兵士に助けを求める盗賊もいて捕まったのに安堵の溜め息を吐くほどだった。

 

「不気味に笑いながら一人一人をしばいていく姿はそら盗賊達も怖いでしょうね」

「ぶー、ひどーい…はっ!?そうだった!ごほうび!」

「ちっ、思い出したか」

「舌打ち!?今舌打ちしたシリウスちゃん!?」

 

 できるなら思い出してほしくはなかったが、思い出されて思わず舌打ちしてしまったシリウス。正直シリウスはごほうびの事を忘れていて何も用意していなかった。何か無いかと頭を捻っていたが膝の上にいてカペラを抱っこしているスピカが目に入った。

 

「そうだ、スピカ。ほら、エルフィナさんに言ってあげて」

「え…?で、でも…」

「とっても喜ぶよ」

「ぁぅ…」

 

 シリウスに促されてエルフィナの方を見るものの恥ずかしくてカペラで顔を隠すスピカ。その可愛らしい行為にやられながら何をしてくれるのか楽しみなエルフィナ。

 

「んんっ…!何かな何かなー♪」

「ぁぅ…ぇ、えっと…」

 

 笑顔でスピカが何を言うのか期待しながら待っている。

 

「ぉ、ぉ…お、ばさ、ま…」

「!!」

 

 カペラで顔を隠して恥ずかしそうにスピカはエルフィナの事を確かにおばさまと呼び、エルフィナの脳裏に稲妻が走った。

 

「スピカちゃーん!!」

「わぷっ…!?」

 

 エルフィナは満面の笑みでスピカを抱き締めてそのまま高い高いしながらクルクルと回りだした。

 

「そうですよー!フィナおばちゃんですよー!わーい!」

「わ、わ、わ…!?」

 

 テンションは最高潮に達して緩み切った顔でスピカを頬擦りするエルフィナは傍から見ればただのヤバい人にしか見えなかった。シリウスがスピカを取られた嫉妬でエルフィナをジトっとした目で見ながらリゲルにお肉を上げている。流石にリゲルはハダルみたいに隠しながらは無理があったので食堂に連れていくのは憚られた。

 

「…もうそろそろ返してくれてもいいと思うんですが」

「んふふ~♪…え?シリウスちゃん、何か言った?」

「私の娘を早く返せって言ってんだよこの野郎」

「まあっ何て口調なの!?私はそんな風に育てた覚えは無いわ!」

「育てられた覚えなんて無いわ」

 

 頬を膨らませて抗議するエルフィナだが、内心は気軽なやり取りに心が躍っていた。

 

「…なーにニヤついてんすか」

「あら?ニヤついてたかしら?」

「ええ。ちょっと引くぐらい」

「ひどーい。ぶぅー」

「いい歳した大人がぶうたれないでください」

「あっ!そうだわ!ごほうびはこれからもその口調で!敬語は何か距離が合って嫌だからお願いね!」

「ごほうびはもう上げたでしょうが。それで我慢しなさい」

「やだー!シリウスちゃんからもごほうびが欲しいー!」

「子供かあんたは…年上に敬語は当たり前です。止める気はありません。早くスピカを返しなさい」

「やだー!やーだー!」

 

 スピカを抱き上げているエルフィナはポラリスとアトリアも抱き上げて頬を思いっ切り膨らませて猛抗議している。

 

「ぶぅー!」

「う~?ぶ~」

「ぶー!」

「ぇ、ぁ…ぶ、ぶー…?」

 

 膨れるエルフィナを真似てポラリスとアトリアとスピカも頬を膨らませてぶうたれている。

 

「(可愛いなこんちくしょう!)…はぁ~…あー、もう、いい。後でやっぱり駄目って言っても聞かないからな」

「うん!えへへ~♪」

 

 我が子達の可愛らしい姿を見て折れるしかなく敬語を止めるとエルフィナは満面の笑みで喜んでいる。

 

「全く…ほら、子供達を返せ」

「はーい♪」

「何でこんなので喜んでるんだか…」

「だって敬語とか他人行儀みたいで嫌だったんだもん♪親友とか家族ぐらいの距離感になりたかったんだもん♪」

「もん、じゃない。もんじゃ…全く」

 

 ポラリスとアトリアとスピカを取り戻して抱き上げるシリウスの背中にエルフィナは満面の笑みのまま抱き着いて頬擦りもしている。

 

「はぁ~…何か疲れたな…もう寝るか」

「あ!じゃあじゃあ私も!」

「駄目です、じゃない、駄目だ。自分の部屋に帰れ」

「やーだー!一緒に寝るのー!」

 

 再び駄々を捏ね始めたエルフィナにイラっとしたが、同時にただ甘えてるだけだとも気づいた。

 

「(っんとにもうこの人は…)はぁ~…もう好きにしてくれ…」

「はーい!えへへ~♪ごめんね♪」

 

 お泊りセットを取りに最速で自分が泊っている宿屋に戻っていったエルフィナを見送った後、シリウスは溜め息を吐きながら寝間着に着替えてポラリス達も着替えさせた。寝間着に着替えてベッドの上にいるポラリス達は同じくベッドの上にいるリゲルに興味津々だった。

 

「ガウ?」

「う~?」

「うー?」

「ぅぅ…」

「(プルプル)」

「シュー」

 

 皆がシンクロして首を傾げる姿をシリウスは微笑ましく眺めていた。エルフィナが戻ってきて寝間着に着替え終わり皆でベッドに寝転んだが五人で寝るにはやや狭かった。両サイドをシリウスとエルフィナが寝て、真ん中にポラリスとアトリアとスピカが寝て、カペラとハダルとリゲルがその間に潜り込んでいる。精霊達はポラリス達の上だったりカペラの上だったり思い思いの場所で寝ている。

 

「狭い…」

「んふふ~♪こうやって寝るなんて何年ぶりかしら~♪」

「…はぁ…早く寝るぞ。ポラリス、アトリア、スピカ、カペラ、ハダル、リゲル、ピーニ、エルフィナ、おやすみ」

「ふわあー…おやすみぃ…」

「ふふっ♪シリウスちゃんもおやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

 可愛らしい寝息を立てて寝る子供達を撫でてからシリウスとエルフィナは眠った。

 

「ん…ん?ぬおっ」

 

 翌朝、いつもと同じ時間に目が覚めたシリウスは目の前で寝ているエルフィナにびっくりして声を上げた。

 

「あ…あー、そういやそうだった」

 

 駄々を捏ねに捏ねて一緒に寝たのを思い出したシリウスは呆れた表情をしながらエルフィナの幸せな寝顔を見ていた。

 

「なーんてそんなに一緒に寝たがるかねぇ…」

 

 辛い過去があるのは分かったが何故そこまで自分と一緒にいたがるのかシリウスは今一理解していなかった。ポラリス達を起こさないようにベッドから起きて着替えているとその音でエルフィナも起きてきた。

 

「う~…おはよ~…」

「おはようご、じゃない。おはよう」

 

 エルフィナは朝には弱いのか、ベッドから起きたがゆらゆらと頭が揺れている。寝ぼけながらもモゾモゾと着替え出した時ポラリス達も起き出した。

 

「すぅ、すぅ…う~…ふえええぇぇぇ…」

「うにゅぅ…うー…あああぁぁぁ!」

「んぅ…ぁ、ぁぅ…」

「ふえっ!?何事!?」

「は~い、おしめ変えようね~」

 

 寝ぼけていたエルフィナは泣き出したポラリス達に驚いていたがシリウスはいつものようにおしめを変えだした。

 

「あ、ああ…おしめか…ビックリした」

「寝惚け過ぎでしょ…は~い、スッキリ~。ポラリス、アトリア、スピカ、おはよう」

「ま~♪」

「ままー♪」

「かあさま…ぉ、おは、よう」

「ママですよ~♪」

 

 スッキリして甘えてくる子供達をシリウスはギュッと抱き締めた。

 

「(プルプル)」

「シュー」

「ワフ?」

「カペラ、ハダル、リゲル、おはよう。おいで」

 

 おしめを変えるのを傍で待っていたカペラとハダルとよく分かっていないリゲルを呼ぶと、カペラはシリウスの肩に乗って頬擦りをし、ハダルはカペラとは逆の肩に乗ってチロチロと頬を舐め、リゲルは呼ばれた気がしたのでシリウスの傍に近寄り頭を撫でられている。その様子をエルフィナは微笑ましく眺めている。

 

「うに~」

「あさなにょ~」

「おはようなにょ~」

「わたちも~」

「むぎゅ~」

 

 ポラリス達とイチャついていたら精霊達も起き出してきてポラリス達を真似してシリウスに抱き着いてきた。

 

「…ねえピーニ。この調子だとシリウスちゃん、精霊達と契約しちゃわない?」

「するでしょうねー」

「…今から精霊使いの事を教えておいた方がいいかもね」

「ま、別にすぐじゃないからゆっくりでもいいんじゃない?」

「それはそうだけど…」

 

 精霊達と仲が良いシリウスを見てこのままでは精霊と契約して精霊使いになるのではと不安に駆られ始めたエルフィナだが、ピーニはのほほんとしていた。精霊使いになってその様子を見られてしまえば権力者の耳に入り狙われる可能性を危惧しているエルフィナと、常日頃から精霊が見えるピーニの間にはかなりの認識の差があった。

 一頻りポラリス達と精霊達と戯れた後シリウスはいつものように洗濯をこなしてから食堂で朝食を取った。朝食後荷物を持ってエルフィナと共に依頼完了の報告と魔物保持の許可を貰うためにギルドへ向かった。

 

「カペラ達を持つ許可ってお金は掛かるのか?」

「うーん…滅多にいないから分からないけど…多分いくらかは取られると思うわよ」

「そっか。まあいいや。それで皆といられるなら安いもんだし」

 

 例え10000リクル取られても払う気満々なシリウスはギルドに入るといつも以上に注目を浴びた。

 

「おい、あれ…!」

「ん?おいおいおい、マジかよ…!?」

「あれって魔物だよな…?」

「あの見た目…もしやドラコウルフか…!?」

「ドラコウルフだと!?」

「あの大きさなら親がいるはずだが…」

「一体どうやって親を潜り抜けたんだ?」

 

 シリウスの右手に抱かれているリゲルを見たハンター達が好き好きに話すのを横目に見ながらシリウスは受付に向かった。

 

「どうも。魔物保持の許可が欲しいんですが」

「え、ええ…こちらでしておりますが…その、それは、ドラコウルフでは…?」

「それとか言わないでいただきたい」

「し、失礼しました…」

 

 育ての親として子供をそれ呼ばわりされてイラっとしたシリウスが職員を睨むと職員は少し顔を青くして謝罪した。職員は受付の下から書類をいくつか取り出してシリウスに差し出した。

 

「で、ではこちらの方にサインを…」

 

 シリウスが書類を読むと、ちゃんと世話をする事、万が一があれば所有者が全責任を取る事などが書いてあり、許可を貰うためにお金は必要なかった。全てちゃんと読んでシリウスは書類にサインした。

 

「…はい、確認しました。えー、所有するのはそちらのドラコウルフですね?」

「後、この子達も」

「(プルプル)」

「シャー」

 

 荷物の中からカペラとハダルが出てきて受付に乗った。

 

「…えーっと…こちらは…?」

「ん?モームとジャイアントスネークですけど」

「…あー…えっと…その…」

 

 まさか複数の魔物を保持するとは思っていなかった職員は困ってしまって他の職員に助けを求めるように振り向くが、他の職員もどうしたらいいか分からず困っていた。

 

「あら、別にここには複数の魔物を所有してはならないって書いて無いわよ」

「え、エルフィナさん…そ、それは今までそういう人がいなかったからで…」

「そういう可能性もあるかもとは思わなかったの?」

「そ、それは…」

「なら今回は可能性に思い至らなかったそちらの落ち度ね。それにこの子達はまだ小さいのだから別に許可を出しても大丈夫でしょ?」

「で、ですが、小さいとはいえ魔物は魔物です。モームはまだしもジャイアントスネークは…!」

「そんな心配は無いと思うけどねー。なら私が保証人になるわ。それなら良いでしょ?」

「なら俺達もなろう」

 

 後ろから声を掛けてきたのは依頼から帰ってきたルゥトだった。

 

「いいんですか?」

「ああ。見たところ君に懐いているみたいだし大丈夫だろう」

「へー、嬢ちゃん、こんな奴ら連れてたのか」

「わっ、ぷにぷにだ」

「ジャイアントスネークって小さい時はこんな見た目してたんですねー」

「ドラコウルフ…こんな近くで見るとはな」

 

 ゴルドもセレムもミラミスもレネイも特に悪感情を持たずにカペラとハダルとリゲルを興味深そうに見ている。

 

「…分かりました。書類の方も不備は無いですし許可いたします」

 

 エルフィナとルゥト達のおかげでカペラ達の所有が認められた。

 

「良かったね、カペラ、ハダル、リゲル」

「(プルプル)」

「シャー」

「ワフ?ワン!」

 

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