転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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第百十五話

 

 エリンゼ森林の奥でラキュラスの花を無事に手に入れる事ができたシリウス達は森の中間地点の野営地で一晩明かした後、森を抜けるために険しい道を歩いている。行きと同じようにフェイクツリーと出くわすが、既に対処法が分かっているので距離を保って通り過ぎていく。

 

「ウェズン、大丈夫?疲れてない?」

「ブルル…」

「そう?疲れたら言ってね」

「馬と、仲良し」

「ああ。私の可愛い義娘だからな」

「…義娘?」

「深く考えちゃ駄目よ…止まって」

 

 周囲を警戒しつつも和気藹々と話しながら森を歩くシリウス達だったが、もう少しで森を出る辺りでエルフィナが何かを察知し、木の陰から前を覗くとアングリーベアが歩いていた。空腹らしく涎を垂らしながら獲物を探してうろついている。

 

「うぅ…魔物、怖い」

「私の後ろに下がってな。通り過ぎていきそうか?」

「…ええ。こっちに気づいて無さそうね。そのうちどこか行くわ」

 

 エルフィナの言葉通りアングリーベアはシリウス達に気づく事無く森の中へ消えていった。アングリーベアが戻ってくる前にさっさと森を出ようと急いだ。

 

「…!止まって」

「どうした?もう森を抜けるが?」

「待って…誰かいる…」

 

 エルフィナは藪に隠れながら森の外を慎重に探ると見覚えのある黒い外套を着た男達が森の前の丘に隠れていた。

 

「サヌワット…!まだ諦めてなかったのね…」

「またあいつらか…何でこの森にいるのが分かったんだ?」

「多分、王都を出るのを見ていたか、誰かから聞いたかどっちかだと思うけど…」

 

 逃げたサヌワットの構成員達はこのまま戻ってもボスに殺されるだけなので何が何でも子供を連れ去らなければならず、シリウス達の行動をつぶさに観察していた。ハンター達が話していた噂を聞き、王都を出たのを確認してエリンゼ森林へ行ったのを確信した構成員達はラキュラスの花を採ってきて森を出た瞬間を襲う計画を立てた。エルフィナが気づかないぐらいの距離を保ち、森から出てくるまで森の前の丘にずっと潜んでいたのだ。悉く自分達の邪魔をしたシリウスとエルフィナを亡き者にすべく相当準備に準備を重ねており、今までと本気度合いが違った。

 

「何が何でもポラリスちゃん達を捕まえる気ね。じゃないと自分達も危ないしね」

「絶対に渡さんぞ」

「当然よ。でも彼らも後が無いはずだからなりふり構わず来ると思うわ。丘で隠れてるけど他にも気配を感じるし。多分この時のために雇った荒くれ者かしらね。数は…十、二十、いえ、もっといるわ。流石にマズいわね…」

「その数を三、いや、二人でやるのは無理、いや、相当厳しいな」

「シリウスちゃん、別に無理って言ってもいいのよ」

「いや、どんな方法を使っても絶対にポラリス達を守る。無理だろうが無茶だろうがそれを押し通すだけだ」

「…わ、わ、わた、しも、やる…!」

 

 シリウスとエルフィナがこの状況を切り抜ける方法を考えていたらさっきからずっと震えながら俯いていたシェネドが声を上げた。

 

「シェネドは別にいいんだぞ?」

「そうよ。これは私達の問題なんだから」

「や、やる…し、シリ、ウスには、恩が、ある…だから、やる…!」

「恩って…(私、何かしたか?)」

「…その心意気は買うけど本当に大丈夫?相手はプロの殺し屋が十人ほどと荒くれ者が数十人もいるのよ。私達も余裕なんて無いからあなたを助ける事はできないわ」

 

 エルフィナは敢えて厳しい言葉をシェネドに送ったがシェネドは意思を曲げなかった。

 

「だ、大丈、夫…!ほ、ほんとは、使いたく、なかったけど…し、シリウスの、ためなら、つ、使う…!」

「…何か切り札があるみたいね。分かったわ」

 

 こんな駄目な自分に優しくしてくれたシリウスに恩を返すためにシェネドは隠していた力を使う事を決めた。

 

「私がサヌワットを何とか引き剥がすからシリウスちゃん達は荒くれ者達を何とかして。もしかしたらサヌワットがそっちに行くかもしれないけど…」

「こっちは何とかするから気にするな」

「わ、私が、何とか、する…!」

「…無茶だけはしないでよ。じゃあ…行くわよ!」

 

 エルフィナは勢いよく森を飛び出して真っ直ぐサヌワットの構成員達に向かい襲い掛かった。

 

「!!ぐわあ!?」

「まず一人!」

「出てきたぞ!」

「手筈通りにやれ!」

「お前達はもう一人の方をやれ!」

「応よ」

「ヘッヘッヘ…貰った代金分は働くぜ」

「ガキさえ捕まえれば女は好きにしてもいいからな。楽しみだ!」

 

 サヌワットの構成員達はエルフィナと交戦し始めて、残った荒くれ者達は森の方へ向かった。

 

「来たな」

「ま、まず、わ、私が、や、やる…!そ、その…き、嫌わない、でね…」

「ん?ああ」

 

 よく分からない事を言われ首を傾げるシリウスを横目にシェネドは森を出て懐から取り出したワンド型の杖を荒くれ者達に向けた。だがその杖の先端は震えており、それを見た荒くれ者達はニヤニヤと嗤っている。

 

「お?ヘッヘッヘ。嬢ちゃん、震えてるぜ?」

「ほらほら、そんなもんしまいな」

「そうそう。大人しくするなら痛い事はしないでやるぜ?」

「逆に気持ちよくしてやるからよ!」

「「「「「ギャハハハハ!!」」」」」

 

 自分達に怯えていると勘違いして嗤う荒くれ者達だがシェネドは違う事を恐れていた。

 “これ”を使えばきっとシリウスも自分を嫌ってしまう。

 いや、嫌うどころか悍ましい物を見たような目で自分を見て否定してくるだろう。

 それがとても恐ろしい。

 短い付き合いだが優しくしてくれ、事あるごとに気遣ってくれるシリウスはシェネドの中でかなり大きな存在となっていた。

 シリウスに嫌われるのは恐ろしい。

 だがここでシリウス達を置いて逃げる方が嫌だった。

 シェネドは目を瞑り深呼吸をして覚悟を決めた。

 

「【ポイズンクラウド】!」

 

 シェネドの杖の先端から紫色の毒々しい球体が放たれ、荒くれ者達に当たる前に破裂して紫色の煙が充満した。

 

「ぬあっ!?な、何だこ、ごぼぉ!?」

「ゲホッゲホッ!が、があ!?」

「ど、毒だ!離れろ!」

「こんなの聞いてないぞ!」

「舐めやがって!死ねや!」

 

 毒の煙に覆われた者達は苦しみながら地面に倒れ、逃れた荒くれ者達が怒りの表情を浮かべてシェネドに襲い掛かろうとしたが、その後ろから一条の雷が飛んできた。

 

「があああぁぁぁ!?」

「な、何だ!?」

「させねえよ」

 

 シリウスが剣を抜いてライトニングを放って森から出てきた。

 

「な!?二人!?」

「おい、どっちだ!?」

「見ろ!剣を持った方の女がガキを持ってるぞ!」

「あのガキ共を捕まえちまえばいいんだ!近づいてしまえば魔法は撃てねえ!」

 

 それぞれ獲物を抜いてシリウスとシェネドに駆け寄る荒くれ者達だが、シリウスは慌てる事無く剣を蛇腹状にしてその場で横に薙いだ。

 

「なあっ!?」

「な、何だあ、ぎゃあ!?」

「痛え!?ちきしょう!」

「【パラライズニードル】!」

「いっ!?何だこの針!?ぐ!?」

「か、身体が…!?」

 

 蛇腹剣になるとは思わず驚いて固まった荒くれ者達にシェネドは別の魔法を放った。黄色い針がいくつも飛んで何本かは荒くれ者達に刺さり、刺さった荒くれ者達は身体が痺れて地面に倒れた。

 

「く、くそっ!?」

「こいつら、強いぞ!?」

「【マジックボルト】!」

「ぐわあ!?」

「またやられた!?」

「ふんっ!」

「ぎゃあ!?」

「たかが女二人に好き放題やられてたまるか!」

「囲め!囲んでタコ殴れ!」

 

 魔法と蛇腹剣で倒していくが多勢に無勢で周りを囲まれてしまった。怒りの表情を浮かべている荒くれ者達だったがその気勢も森から魔物の鳴き声が聞こえてきて消えてしまった。

 

「グオオオォォォ!」

「ひぃ!な、何だ!?」

「ま、魔物だ!?」

 

 戦闘音を聞きつけてシリウス達が少し前に出くわしたアングリーベアが森から飛び出してきて手近にいた荒くれ者に襲い掛かった。

 

「ぎゃあああぁぁぁ!?」

「う、うわあああぁぁぁ!?」

「た、助けてくれえええぇぇぇ!?」

 

 仲間を襲われて恐慌状態に陥り大声を上げながら逃げ惑う荒くれ者達にアングリーベアは次々と襲い掛かっている。

 

「ひ、ひぃ…!?」

「迂闊に動くなよ。あいつらが騒いで逃げてるからまだ狙われてないだけだからな。シェネド、ウェズン、森の中まで下がるぞ」

「う、うん…!」

「ブル」

 

 荒くれ者達が襲われている間にシリウスはウェズンとシェネドを連れて森の中に一旦退避した。逃げ惑うだけの荒くれ者達だったが、何人かは意を決してアングリーベアにボウガンや弓を使って攻撃をし始めてアングリーベアの身体に矢が何本も刺さるが致命傷には程遠く、むしろアングリーベアを怒らせるだけだった。

 

「先ほどから向こうが騒が、魔物だと!?」

「アングリーベア!森から出てきたのか!」

「そんなもの放っておけ!それよりこいつだ!」

「くぅ!(さっき見たアングリーベアが戦いの音を聞きつけて来たのね!シリウスちゃん達は…森にいるみたいね。くっ!こいつらを倒してアングリーベアも倒す…中々辛いわね!いえ、態々倒す必要は…でも…いえ、今は現状を打破する方が先決ね!)」

 

 構成員達と戦っていたエルフィナだったが突如方向転換しアングリーベアに突撃していき、擦れ違うざまにアングリーベアを斬りつけて再び構成員達の方へ向かっていった。斬りつけられて怒り心頭なアングリーベアは逃げ惑う荒くれ者達を放ってエルフィナと構成員達に突撃した。

 

「こいつ、俺達を巻き込んで!?」

「このクソアマがぁ!」

「ええい!魔物風情が邪魔するな!」

「グオオオォォォ!」

「(さあて、ここからどうしようかしら?)」

 

 エルフィナがアングリーベアを連れていったおかげで難を逃れる事ができた荒くれ者達だが、数を大きく減らし十人を切っていた。

 

「た、助かった、のか?」

「くそっ、額が良いからって理由でこんな依頼引き受けるんじゃなかったぜ!」

「腹の虫が治まらねえ…!さっきの女達を犯さねえと割に合わねえぜ!」

「散々回した後は売り払ってやるぜ!」

「どこだ!?出てこい!」

「【マジックボルト】」

「ぎゃあ!?」

 

 好き放題宣う荒くれ者達に苛立ったシリウスは魔法を放って黙らせた。

 

「【マジックボルト】。【マジックボルト】。【マジックボルト】」

「ぐわあ!?」

「お、お助け、ぐが!?」

「ひいいいぃぃぃ!?逃げろ!」

「助けてくれえええぇぇぇ!」

 

 無表情でマジックボルトを連射してくるシリウスに恐れをなして荒くれ者達は逃げていった。シリウスは逃げた荒くれ者達に目も暮れずにエルフィナの方へ向かった。

 

「このアマが!さっさと死ね!」

「お断り、よ!」

「ぐはあ!?」

「グオオオォォォ!」

「ええい邪魔だ!」

「撃て撃て!」

 

 アングリーベアが乱入して混戦状態となり構成員達の陣形が崩れて先ほどよりも楽に動けているエルフィナ。構成員達はボウガンと短弓で矢をアングリーベア目掛けて撃ちまくっておりアングリーベアの身体には矢が突き刺さりまくっている。矢には少しでも掠れば動けなくなるぐらいの痺れ薬や即効性で毒性が強い毒も塗られており、それが何本も当たっているアングリーベアはかなりふらついていて遂に倒れて動かなくなった。

 

「グ、グオオオォォォ…」

「全く…余計な体力を使わせて…!」

「はあっ!」

「がはっ!?」

「くそっ!アングリーベアの所為で計画が台無しだ!」

「いやまだだ!距離を取って撃ちまくれ!近づけなければこいつは何もできん!」

 

 数は減ったもののまだ諦めない構成員達はエルフィナから距離を取ってボウガンと短弓で応戦している。矢に毒が塗られているのをアングリーベアで確認しているのでエルフィナは当たらないようにしているが避けるために体力を消耗している。

 

「はぁ、はぁ…(流石に三日も森の中にいたから疲労が溜まってるわね…)」

 

 森の中を歩き続けていくらか疲労が溜まっているに加えて、全力で戦いながら回避を余儀なくされて息が上がり始めたエルフィナ。それを見て構成員達は攻勢を強め始め、それを避けるのにさらに体力を使う羽目になり、負のスパイラルが続いている。このままではとエルフィナが危惧し出した時、横から構成員達目掛けて雷と針が飛んできた。

 

「ぐわあ!?」

「ぐっ!?何だこの針、ぐぅ!?か、からだ、が…!?」

「今のはまさか!?」

「【ポイズンダーツ】!」

「があっ!?ぐぅ…ごふっ!?」

 

 シェネドが放った紫色の毒々しい矢が構成員に当たると構成員は吐血して倒れ痙攣した後動かなくなった。

 

「間違いない!呪法だ!」

「な、何だと!?」

「まさか…いえ、今は後回しね!」

 

 シェネドが使う魔法、呪法に構成員達は動揺して固まってしまい、エルフィナも一瞬固まったがすぐに動いた。元々動揺していないシリウスとエルフィナは固まった構成員達の隙を逃さず、シリウスは蛇腹剣を振り回し、エルフィナは駆け寄って擦れ違いざまに短剣を振るっていく。

 

「く、くそっ!ぐわあ!?」

 

 構成員達は次々と倒れていき最後の一人もエルフィナに倒されるが、その直前に苦し紛れに放ったボウガンの矢がシェネドの肩に刺さった。

 

「あぐっ!?」

「シェネド!?」

「うぅ…ゲホッ!」

 

 シリウスはすぐにシェネドに駆け寄り矢を引き抜いたが、矢に塗られている毒が身体に入ってしまいシェネドは吐血して急速に顔色が悪くなっていった。

 

「毒か!ほら、これを飲め!」

 

 シリウスはすぐに解毒のポーションを取り出して飲ませようとするが、シェネドは咳と吐血を繰り返して飲める状況ではなかった。

 

「毒の回りが速すぎる。余程強い毒みたいね」

「ええい、ならこうだ!」

 

 シリウスは解毒のポーションを自分で呷りシェネドに口移しで無理矢理飲ませた。

 

「まあ!?」

「んぐっ!?んんっ、んぶっ!」

 

 口移しで飲ませてる間にも吐血してシリウスの口の中に入ってくるがシリウスは気にする事無く飲ませ続けた。ポーションを全部飲んだのを確認してシリウスはようやくシェネドから口を話した。

 

「ぷはっ。よし、全部飲んだな。これで一安心…だよな?大丈夫だよな?」

「ええ、上位の解毒だから効くはずよ。それにしてもシリウスちゃん、大胆ね…」

「え?何が?」

「だって、その、えっと…く、口移し、で飲ますなんて…」

「一刻を争う状態で手段なんて選んでられるか。シェネド、どうだ?大丈夫か?」

「ゲホッゲホッ!う、うううんんん!だ、だだだ、だい、だいいい、大丈、夫ぶぶぶ、だ、だ、だよよよ!?」

「無理すんな。まだ咳き込んでるし顔色も悪いじゃないか。ほら、ジッとしてろ」

「へふっ!?あば、あばばばば…!?」

 

 顔を真っ赤にして慌てふためくシェネドの頭を自分の膝の上に乗せて落ち着かせようとするシリウスだがむしろ逆効果だった。緊急事態で人命救助なのでシリウスは既に何とも思っていないがシェネドとエルフィナは違った。

 

「(き、きききき、キスうううぅぅぅ…!?し、しかも、し、しし、舌…うぅ…か、顔が、見れないぃ…!)」

「(き、緊急事態だったとはいえ凄いものを見てしまったわ…しかも全く動じてないし…シェネドの方は凄い事になってるけど……………何だろ。少しもやっとする)」

 

 シリウスに膝枕されているシェネドは顔を手で覆っているが耳まで真っ赤にして悶えており、エルフィナは面白くなさそうな顔をしている。

 

「う~」

「うー!んー!んー!」

「ぅぅ…」

「(プルプル)!」

「ヒィン!ブルブル」

「シャー!」

「ワン!ウウウ…」

「ん?皆どうしたの?」

 

 一部始終を見ていたポラリス達も嫉妬して抗議の声を上げており、シリウスはまさか嫉妬されているとは思えず不機嫌な理由が分からず戸惑っているが、取りあえずポラリス達の頭を撫でてご機嫌取りをしている。

 

「ふぅ…いつまでもこんな事してちゃ駄目ね。さて、私はこの辺りを少し片づけるわ。流石にこのままじゃここを通る人に迷惑だしね。シリウスちゃんはシェネドの事を見ててあげて」

「分かった」

 

 深呼吸して気持ちを切り替えたエルフィナが荒くれ者達と構成員達とアングリーベアの死体を片づけるために動き出した。シリウスは傍に布を敷いてその上にポラリス達を置きあやしながら膝枕を続けた。三十分ほどそうしていたら少しシェネドの顔色が良くなってきて落ち着きも戻りつつあったが、まだシリウスと目が合わせられなかった。

 

「少しマシになってきたみたいだな」

「う、うん…」

「?何で目を逸らす?」

「な、何でも、無い、よ?」

「…まあ、言いたくないならそれでいいが」

「ま~」

「ままー!」

「かあ、さま…」

「ん~?どうした~?」

 

 ポラリス達が甘えてきたので笑顔で頭を撫でているシリウスを見て、シェネドは顔を赤くしながらその笑顔に見惚れている。人命救助とはいえキスをされて意識しないはずが無く、シリウスの一挙手一投足に目を奪われている。

 

「(うぅ…は、はじゅかちいぃ…!でも、目が離せない…いつも、キリっと、してるのに、今はとっても笑顔…はっ!?ま、まさか私に優しくしてくれたのって…!?つまりそういう事…!?)」

 

 シェネドは少し思い込みが激しかった。

 自分に優しくしてくれたのは自分に惚れているからなのだと、どう考えたらそんな答えになるのかという予想斜め上の答えを出してしまった。しかもシェネドの中ではそれならキスした理由にも説明が付くと納得してしまい、シリウス本人から違うと言われない限り考えを改める事は無くなってしまった。

 

「(そ、そんな…わ、私達、女の子同士なのに…で、でも、シリウスは私に初めて優しくしてくれて…べ、別に、私は、い、嫌というわけでは、で、でもいきなり、こ、こここ、恋人は、さ、流石に…と、取りあえず、お友達、からで…お友達…初めてのお友達…)ふ、ふへへ…」

「(百面相していたと思ったら気持ち悪い声で笑ってるんだが…)」

 

 膝の上で百面相していたシェネドが突如ニヨニヨしだしたので若干引いているシリウス。放っても大丈夫そうなのでポラリス達をあやしつつシリウスはエルフィナの方を何気なしに見ていた。エルフィナは死体を一ヵ所に集めた後、構成員達の懐や荷物を漁っていた。

 

「エルフィナ、何してるんだ?」

「ああこれ?サヌワットっていう証拠が無いか探してるの。サヌワットみたいに名前が付いていたり、有名な盗賊なら首と証拠をギルドに持っていけば報酬が貰えるわ。証拠も見つけたから

シリウスちゃん達は少しの間こっちを見ないでね」

「私の事は気にしなくていい。見てるからやってくれ。皆は目を閉じていようね~」

 

 ポラリス達の目を閉じさせたり、エルフィナの方を見させないようにしたシリウスを確認してエルフィナは荒くれ者達が使っていた斧を持ってサヌワットの構成員達の首を落とし始めた。

 

「(私も関わってる事だから目を逸らすのもな。にしてもグロいな…あれを持って歩くの?やりたくねえな…いや、よくよく考えれば魔物の素材を剥ぐのも似たようなもんか。そう思えば……………やっぱ無理)」

 

 市民などは引く光景だが、ハンターにとっては割とよくある光景なのでエルフィナも特に嫌そうな顔をしていない。首を落とし終え袋に詰め込んだエルフィナは残った死体に火を付けて燃やし始めた。

 

「これでよし。燃え移る心配も無いし後は放置ね」

「残った装備はどうするんだ?」

「余裕があれば持って帰って売るんだけど、そんな余裕も無いから置いていってここを通る人に上げるわ。明らかに毒なのは持って帰ってから処分するとして、ポーションとお金だけ貰っていきましょう」

「…火事場泥棒みたいで何か嫌だな…」

「まあ、否定はできないわね。でもここに置いといてもそのうち誰かに持っていかれるだけだけど、どうする?」

「…いや、選り好みできるほどの余裕は…無い事も無いが、使うかどうかは置いといて取りあえず持って帰る」

 

 サヌワットの構成員達と荒くれ者達が持っていた様々なポーション十数本とお金を持って野営地で天幕を張った。毒で体力を消耗したシェネドは天幕に入るとすぐに眠り、シリウスとエルフィナは夕食を食べた後、もう一度周辺を歩き回り何もいない事を確認してから天幕に入って眠った。

 

 

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