転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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第百十八話

 

 シリウスが持つ蛇腹剣の強化が終わるまで道場に通い詰めて日々練習に励んでいるシリウス。シェネドはそれを眺めながらシリウスに借りた魔法の本と杖で道場の庭で魔法の練習をしている。

 

「えっと…【マジックボルト】!」

 

 シェネドが魔法を唱えると杖の先からマジックボルトが飛び、標的の石に直撃してバラバラになった。

 

「これなら戦闘でも使えそうだな」

「わわっ!?き、急に来ないで…心臓に悪い…」

「すまんすまん」

 

 虚幻流の魔戦技である無影動で音も無く隣に来たシリウスにシェネドは驚いていた。この四日間、依頼には行かず道場で魔戦技の練習ばかりしていたシリウスはシーゼルとその祖父の指導により戦闘でも使えるぐらいスムーズに扱えるようになった。最初の二日間は躓いたり、壁に激突したりと生傷が絶えなかったが、三日目からはコツを掴んだのか失敗する事が無くなり、四日目にはシーゼルからは花丸を、祖父からは及第点を貰えた。

 

「もう、使えるように、なったんだね」

「いや、まだだ。あの子達を抱いて使えなかったら意味が無い。という訳で、ポラリス、アトリア、スピカ、カペラ、ハダル、リゲル、しっかり捕まっててね」

「あ~」

「あーい!」

「う、うん…」

「(プルプル)」

「シャー」

「ワン!」

 

 シリウスはポラリス達をしっかりと抱きかかえて深呼吸をして魔戦技を発動させた。

 

「ふぅ…魔戦技【虚動】」

 

 残像を残しながらシリウス達は3mほど先に高速移動した。

 

「っと…ポラリス、アトリア、スピカ、カペラ、ハダル、リゲル、大丈夫?何ともない?」

「あ~」

「あーい!」

「う、うん…」

「(プルプル)」

「シャー」

「ワン!」

「大丈夫そうだな、良かった。次は無影動を…」

 

 続いてシリウスは無影動を使い音も無くシェネドの隣に戻ってきた。

 

「良し。こっちも皆大丈夫そうだ」

「その子達、凄いね。この前の時も、平然としてた…そういえば、エルフィナさんは?」

「情報収集に行くって言ってたな。そろそろ帰ってくるんじゃないか?」

「シリウスちゃーん、ただいまー。色々仕入れてきたわー」

 

 エルフィナが戻ってきたので鍛錬場に入り話を聞く事にした。

 

「まず最初。サヌワットの方はもう大丈夫よ。また追手を差し向けてくるかもしれないけどその時にはここにはいないし、もし来たらドラゴンファングの彼らが妨害してくれるってさ。さっきそこでルドと会ってそう言ってたわ。次はアールレディア方面の情勢ね。どこもそうだけど物価が上がって治安も悪くなっているわ。おかげで盗賊になる人が増えてきてるみたい。道中でも襲われるかもしれないから注意してね。それと盗賊討伐の強制依頼にも巻き込まれるかもしれないから一応覚えててね。それと盗賊を討伐するために貴族の私兵がうろついている可能性もあるわ。こっちを盗賊と勘違いはしないと思うけど、中には決めつけて襲ってくる事もあるから気をつけてね。治安が悪くなってるから町の中でもトラブルに巻き込まれるかもしれないからそっちも気をつけてね。後、魔物の方なんだけどこっちも何だか活発に動いているみたい。普段は森とか山の奥にいる魔物が平原に出てくるケースが増えてきてるわ。そういう魔物はかなり強いから見つけたら絶対に手を出さない事。こっちに来たら私が時間を稼ぐから何とか逃げてね。最後なんだけど…何だかシリウスちゃんに似た人を捜してる人がいるみたいなの」

「私を?」

「ええ。シリウスちゃん、ターエル近くの村に居たんでしょ?」

「ああ。まあ、盗賊か何かに襲われて滅んだっぽいけど」

「どうやらその時偶々外出してて生き残った人がいるみたい。それで聞いた限りじゃ短めの茶髪の女の子を捜してるみたい。他にもいっぱいいると思うけど何となく引っ掛かって…」

「そうか…でも前話した通り、その辺の記憶は無いんだよな」

 

 既にエルフィナにはターエルにいた頃の事を話した時に村での記憶を失った事を話してあった。

 

「シリウス、昔の記憶が、無いの?」

「ああ。まあ、別に無くても支障無いから構わんがな。それに正直昔の記憶よりこの子達の方が大事だしな」

「ま~」

「ままー!」

「かあさま…」

「(プルプル)」

「ヒィン」

「シャー」

「ワン!」

「は~い、ママですよ~」

 

 甘えてくるポラリス達の頭を撫でながら優しく微笑むシリウス。

 

「ふふふ…そろそろ出来上がる頃だし鍛冶屋に行きましょうか」

 

 鍛錬場を出て鍛冶屋に向かうと店主が外に出てきたところだった。

 

「ん?おお、お主か。剣なら出来上がっとるぞ。中に入るといい」

「どこかにお出掛けなのでは?」

「構わん構わん。終わったから一杯引っ掛けようとしただけじゃ」

 

 店主と共に中に入り強化された剣を渡された。前までは柄やナックルガードの色は灰色で刀身は銀色だったが今は黒く光っている。シリウスが持つと以前より重さが増しておりそれなりに力を入れないと持てなかった。

 

「重くなったな…」

「アダマンタイトは重い鉱石じゃからな。その代わり威力と頑丈さは倍増したといっても過言ではない」

 

 シリウスが試しに振ってみると重さが増したので途中で止められず床に当たってしまい、当たった石の床は軽く罅が入り砕けていた。

 

「重いが…まあ、許容範囲か。使っていくうちに慣れるな」

「それとこっちは防具じゃ」

 

 店主が持ってきたのは手首から肘まで覆う銀色の篭手と足首から膝まで覆う脛当てだった。ポラリス達をエルフィナに預けて早速装着していく。手首と足首を動かすのに支障が無いように作られているので重さ以外は何とも無かった。シリウスは屈伸したり、蹴りを放ったりと動きを確かめた後、篭手を軽く弾くと金属音が響いた。

 

「この重さに剣も加わるのか…正直右腕が心配だが…まあ、慣れれば何とかなるか。うん、気に入った」

「シリウス、似合ってる」

「重さに慣れるために少し外に出て動いてみましょうか」

「そうだな」

「ああ、待て待て。もう一つあるんじゃ」

 

 店主はシリウス達を呼び止めて棚から何かを持ってきた。それはヒーターシールドとバックラーの中間ぐらいの大きさの銀色の盾だった。

 

「素材が中途半端に余ってしまったので盾を作ってみた。いらんかもしれんが何かの足しにはなるじゃろ。持っていけ」

「はぁ…盾、ねぇ…」

 

 店主に渡された小盾と中盾の間ぐらいの盾をシリウスは眺めている。重さ的には中盾クラスだが硬さは中盾の中でも上位に入り、店売りされれば上位のハンター達が挙って買いにくるほどの代物だ。かなり良い物を渡されたシリウスだがどう使えばいいか中々思いつかなかった。

 

「基本的に回避がメインだからな…盾受けする事がほとんど無いから持て余しそうなんだが…まあ、何かに使えるかもしれんし、緊急時には必要になるかもしれんか」

 

 一応貰っておく事にして支払いを済ませて鍛冶屋を出てギルドへ向かった。

 

「お?よう、シリウス!」

「ん?ああ、ガッソムか」

 

 ギルドに入り依頼を受けるために掲示板に近づくとその前にガッソム・エッソが仲間達と共にいた。

 

「おん?ガッソム、誰だ?」

「おお、忘れてたぜ!ほら、この前話したリーダーだ!」

「ああ!こいつが!」

「すっげえ活躍したってな!」

 

 ガッソムの周りにいた大柄の男達はシリウスに笑い掛けながら近づいてきた。

 

「おおっと!自己紹介がまだだったな!俺はナゼル・テッドだ!」

「俺様はラゴル・エストビーってんだ!」

「わしはビータ・リウムじゃ」

「俺達四人合わせて!チーム!」

「「「「〈アイアン・マッスル〉!!」」」」

 

 大槍を持ったモヒカンが目立つ男ナゼル・テッド、斧を持ち鉄仮面を被った男ラゴル・エストビー、頑丈そうな篭手を付けたスキンヘッドにカイゼル髭をした男ビータ・エウムとガッソム四人が揃って満面の笑みでモストマスキュラーのポーズをして名乗った。

 

「…えぇ…」

「(ポカーン)」

 

 エルフィナは只々濃すぎるキャラにドン引き、シェネドは何が何だか分からず口を半開きにして呆然としていたがシリウスは違った。

 

「おぉ~」

「う~?」

「キャッキャッ!」

「ぅ…?」

 

 シリウスは四人揃ったボディビルダーにも勝るとも劣らないポーズに拍手し、ポラリスとスピカはよく分かっておらず首を傾げていたが、アトリアは楽しそうに笑いながら手を叩いている。

 

「お、おぉ…!」

「こんなに受け入れられるなんて…!」

「は、初めてだ…!」

「くぅ…!」

「今度は泣き出したわ…」

「暑苦しい…」

 

 ガッソム達がいつもするポージングは誰が見ても暑苦しいと不評だったが、シリウスとアトリアに初めて受け入れられて男泣きしている。シリウスは前世でもこういう人がいる事を知っていたので特に引かず、アトリアはポージングが面白かったので笑っていた。

 

「あ、あはは…」

「テゴンじゃん。どうしたんだ?」

「あ、えっと…実は僕も〈アイアン・マッスル〉の一員で…」

「え?でも筋肉付いてないぞ?」

「えっと…ガッソムさんに誘われて何度か依頼に行って…それで気に入られたのかチームに入れてもらって…」

「おう!テゴンがいるといないとじゃ全然違うぞ!」

「いやあ、荷物運び舐めてたな!」

「荷物が少ねえから戦いやすいったらありゃしねえ!」

「うむ、うむ」

 

 以前のフォレストビーの依頼で知り合ったガッソムに誘われて何度か依頼をこなしたテゴンは荷物運びと解体で貢献しそれが認められてチーム入りしたのだ。良い人達というのは分かるが暑苦しい事この上なく、さらに事あるごとに筋肉を付けろと筋トレに誘ってくるのが難点だ。

 

「ガッソム達はこれから依頼か?」

「おう!そうだ、シリウスも一緒に行かねえか!?」

「お、それいいな!」

「俺様達だけじゃちぃっと大変だからな!」

「ガッソムから色々聞いたぞ!類稀な指揮のおかげで犠牲がゼロになったとな!」

「いや、それは言い過ぎだって。それで何をするんだ?」

「こいつだ!」

 

 ガッソムが渡してきた依頼書にはアングリーベアの討伐が書いてあった。森から迷い出てきたのか街道沿いをうろついているらしく、早期の討伐が求められているため報酬は高めに設定されていた。

 

「アングリーベアか。これ、一頭だけだと思う?」

「うーん…どうかしらね…目撃されたのは一頭だけって書いてあるけど、いないとも言い切れないわね…」

「お、おお…」

「俺達がいくら考えても思いつかなかったのに…!」

「聞いた話通りじゃの…!」

「やっぱりシリウスさんは凄いなぁ…」

「な、すげえだろ!」

「凄い、ね」

 

 エルフィナと話し合うシリウスをアイアン・マッスルのメンバーとシェネドは褒め称えているが、普通に考えれば思いつきそうな事なので素直に喜べないシリウスだった。

 

「(こんなの普通に気づきそうだが…ああ、脳筋だからか。いや、シェネドとテゴンはそっちにいたら駄目だろ)」

「(この人達、今までどうやって依頼をこなしてきたのかしら?もしかして全員で正面から突っ込んで倒すとか?あり得そう…身体中に傷跡だらけだし)」

 

 シリウスとエルフィナの思った通り、アイアン・マッスルのメンバーは全員脳筋でいつも真正面から突っ込んで倒しており、その所為で被害がいつも出ている。シリウスがフォレストビーの巣を攻略した時にガッソム一人だったのは他のメンバーが怪我の療養で休んでいたためだった。

 

「あー…まあ、取りあえず行くか」

「そうね」

 

 シリウス達はアイアン・マッスルのメンバーと共に依頼を受けて西門から外に出て街道沿いを歩き始めた。

 

「この辺りだな」

「そうね。さて、痕跡は…」

「よーし!探すぞ!」

「「「おう!」」」

 

 シリウスとエルフィナが痕跡を探そうとしたらガッソム達が張り切ってそこらじゅうを歩き回り始めてしまった。

 

「あーあー…これじゃあ痕跡が無くなりそう…」

「…全員集合ー。集合ー」

 

 シリウスは手を叩いて全員を集めた。

 

「ん?どうした?」

「何だ何だ?」

「痕跡を探すんだろ?」

「そうだよ、探すんだよ。その辺を適当に歩き回って探すんじゃなくてな。そんな事すれば痕跡が消えるだろうが」

 

 シリウスがガッソム達を集めて説教している間にエルフィナは痕跡を探しすぐに見つけたが、シリウスのお説教が終わるまで待つ事にした。

 

「ったく…今はこのぐらいにしとくが、もっとちゃんとしろよ。ハンターだろうが」

「お、おう…何か、すまん」

「考え無しですいません…」

「反省してます…」

「この歳になってお説教されるとはの…」

「ご、ごめん…」

 

 いつの間にか正座して聞いていたガッソム達が素直に反省していた。

 

「終わった?痕跡は見つけたわ。足跡から二頭いるわね。二頭とも街道沿いの平原の方にいるみたい」

 

 エルフィナに続いて歩き出して数分後、平原に黒い影が見えた。二頭のアングリーベアが互いに唸り声を上げながら睨み合っていた。

 

「あれか」

「どっちも少し小さめね。多分若いアングリーベアね」

「よーし、早速突っ込んで…!」

「待て馬鹿。いきなり突っ込む奴があるか馬鹿」

 

 武器を取り出してアングリーベア目掛けて駆け出そうとしたガッソム達をシリウスは慌てて止めた。

 

「何でだ?」

「そうだぜ。倒さなきゃいけないんだろ?」

「突っ込まなきゃ倒せねえぜ?」

「我らが今までそうやってきたのだが…」

「だから傷だらけなのね…」

「考え無しで突っ込むからそんなにボロボロになるんだろうが」

「じゃあどうするの…?」

「それを今から考えるんだよ」

 

 シリウスは二頭のアングリーベアとその周辺を観察している。二頭のアングリーベアは丘の下で睨み合っており、その中央にどちらかが仕留めたのか動物の死体があった。それを奪おうともう一頭がやってきて睨み合いに発展しているようだ。

 

「そうだな…真ん中の獲物を吹き飛ばして、それに気を取られてるうちに背後から同時攻撃って感じか?」

「悪くないわね。それで行きましょう」

 

 シリウスとエルフィナはチームを二つに分けて睨み合うアングリーベアの背後に回り込んだ。

準備が整ったのを確認したシリウスは中央にある動物の死体に手を向けた。

 

「【マジックボルト】」

 

 シリウスの手からマジックボルトが放たれて死体のすぐ傍に当たり、その反動で死体は二、三mほど吹き飛ばされた。アングリーベア達は驚いており、吹き飛ばされた獲物を見て固まっていた。

 

「今だ。行くぞ」

「よっしゃあ!」

「行くぜ行くぜ!」

「出番だコラァ!」

「わしの力を見せてやろう!」

「何でこの人達、叫ぶの…?」

「奇襲が台無しね…」

「テゴン、いつもこうなのか?」

「あはは…まあ、うん…」

 

 静かに行けば被害も無く片付いたかもしれないのにガッソム達は叫びながらアングリーベア達に突っ込んでいった。当然アングリーベア達も気づきガッソム達に向き直った。

 

「オラァ!」

「ドラァ!」

「ゼエァ!」

「キエィ!」

 

 それぞれ気合いを込めて武器を振るうが、アングリーベアは腕を振るって攻撃を弾いたり、噛みついて受け止めたりしている。

 

「あーあー…しょうがないわね…シェネド、手前のアングリーベアに魔法当てられる?」

「え?た、多分…」

「ならお願いね」

 

 シェネドは杖を取り出してアングリーベアに狙いを定めて魔法を放った。

 

「【マジックボルト】!」

 

 マジックボルトはナゼルとラゴルの間を通りアングリーベアの腕に当たった。アングリーベアが気を逸らした隙にエルフィナは瞬動で一気に懐に飛び込み首に短剣を突き刺した。

 

「おお…!」

「すげえ…!」

 

 あっさりと鮮やかにアングリーベアを倒したエルフィナをナゼルとラゴルは尊敬の眼差しで見ている。

 

「おーい、こっち連れてこーい」

「し、シリウスさん?何をする気?」

「見てれば分かる」

 

 アングリーベアが腕を振り回して中々近づけなくなり膠着状態に陥ったガッソムとビータを見てシリウスが声を掛けた。ガッソム達は言われた通り丘を駆け上がってシリウスの方へ向かい、アングリーベアも当然それを追い掛けて丘を駆け上がっている。

 

「シリウス!頼むぜ!」

「お手並み拝見といこう!」

「あいよー」

 

 ガッソム達が脇を通ったのを見計らってシリウスは迫りくるアングリーベアに手を向けた。

 

「【サンダースピア】」

 

 シリウスの手からサンダースピアが放たれてアングリーベアの頭に突き刺さった。頭蓋骨を貫き体内に放電されてアングリーベアは全身から煙を出しながら倒れた。

 

「はい終わり」

「お、おお…!」

「鮮やか…!」

「すげえなあいつ!」

「はー、大したもんじゃ」

「す、凄い…!」

「シリウス、やっぱり、凄い」

「あらあら、魔法で止めを刺しちゃ装備の確認ができないのに…」

 

 鮮やかな手並みにガッソム達は称賛し尊敬の眼差しでシリウスを見ている。

 

「あ、しまった。装備の確認で来てたの忘れてた…」

「あらあら、ふふふ…剥ぎ取りしている間に素振りでもする?」

「おん?何だ?装備を変えたのか?」

「ああ。剣を強化して篭手と脛当てを追加してな」

「へー…お、なら俺達が相手になるぜ!」

「そりゃあいいな!」

「うむ、異論はない」

「あー…じ、じゃあ僕は剥ぎ取りしてますね」

 

 テゴンがアングリーベアの剥ぎ取りをしている間、シリウスはガッソム達と軽い手合わせをして装備を確かめている。

 

「よっ。ほっ…うーむ、重いな…」

「いてて…すげえ衝撃くるんだが!?」

「そりゃあアダマンタイトが使われてるからね」

「アダマンタイト!?」

「マジかよ!?」

「一体いくら掛かったのか…」

「あのー…終わったけど…」

「お、早いな。流石」

「い、いや別に、これぐらい…」

「いやいや、こんな短時間で剥ぎ取れるのは凄いから」

 

 剥ぎ取った二頭のアングリーベアの素材をそれぞれ分けて持ち王都に向けて歩き始めた。

 

「力自慢がいると全部持って帰れるな」

「ハッハッハ!まだまだ行けるぜ!」

「おうよ!俺様達の筋肉はこれぐらいじゃへこたれないぜ!」

「鍛え方が違うのさ!鍛え方が!」

「見よ!この筋肉の躍動を!」

「テゴンもここまでとは言わないがもうちょっと筋肉を付けた方がいいぞ」

「そ、そうだね…」

「シリウスちゃん、よく普通に話せるわね…」

「わ、私も、あれぐらい、筋肉を付けた方が…」

「止めときなさい。そっちは地獄よ」

 

 和気藹々と話しながら王都に戻ってきてギルドに入ると受付で騒いでいる人がいた。

 

「だから!ここにいるはずなんだ!教えろって言ってるんだ!」

「ですから何度も申し上げるように人探しの依頼を出してください」

「うるせえ!女が俺に歯向かってるんじゃねえ!」

 

 大柄の男が受付の女性職員に差別的な発言をしながら怒鳴りつけていた。対応している女性職員はうんざりした表情を隠しておらず、話を聞いているハンター達も男を睨んでいる。

 

「何だあれ…」

「最低ね…」

「近づきたくない…」

「男の風上にも置けねえ!」

「ああ?」

 

 ガッソムの言葉が聞こえた男が振り返るとシリウスが視界に入った。

 

「!!やっと見つけたぞ!俺の嫁!」

「…はあ?」

「「「「「はあああぁぁぁ!?」」」」」

 

 男からとんでもない発言が飛び出し、ギルド中が驚愕の声を上げた。

 

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