転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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お待たせしました。
続きをどうぞ。

着実に母親に成りつつあります。


第十二話

 

「(色々と弄ばれた気がするけど…まあいいか。気にしても仕方が無い)え~、それでお代はいくらで?」

 

 何とか持ち直したシリウスは服と靴の代金を払っていないのを思い出して袋を取り出した。

 

「ふふふ、ああお代ね。えっと、今履いている方は500リクルね。もう一つは1000リクルだけどそっちはできてからでいいわよ」

「あら、あたしったら代金の事すっかり忘れてたわ。え~あたしの方は…1000リクルでいいわよ」

 

 シリウスは銀貨五枚をコニーに、銀貨十枚をミネアに手渡した。

 

「はい、確かに」

「まいど~♪明日には一つできるからまた来てね♪じゃあね~」

 

 ミネアは頼まれた仕事をするためにメイク道具を持って店に戻っていった。

 

「よし、俺達も行くか」

「はい。色々とありがとうございました」

「いいのよ。気にしなくて」

「三日後にはできるからまた来ておくれ」

 

 マロスとコニーに挨拶して店を後にした。

 

「さて、これで服と靴は都合が付いたな。じゃあこの辺の店も案内しよう」

 

 ヴァレットはハンターが行き交う通りをゆっくりと歩き出しシリウスはそれに付いていった。武器や防具などの装備、水薬や軟膏などの薬、テントや毛布などの野営道具、魔法の道具など様々な店が立ち並んでおり、その店にハンター達が購入したり、冷やかしに来ただけなど大勢が出入りしている。通りには露店もありそこにも装備や薬など色々な物が販売されており、声を張り上げて客引きする者もいれば、店主と客が値段交渉で張り合う者もおり大変賑わっている。その辺りはこの町だけでなく他の町でも見られる普段の光景なのだが今は少しだけ違う部分があった。通りの端に何人かボロボロで倒れて仲間などに介抱されていたり、割れたガラス瓶を前に地面に四つん這いになって嘆く者がいたり、露店の店主が壊れた店と品物を見て泣いていたり、巡回の兵士が壊れた物を片付けていたりと災害でも通り過ぎたような光景があった。

 

「(うわぁ…)ミネアさん、強過ぎません?」

「あ~…まあ、うん。あの見た目だしな」

 

 滅茶苦茶心当たりがある二人はそっと目を逸らし散策を続けた。

 

「あの店はなんですか?」

「あそこは魔力が篭った道具、魔具を売っている店だ。かなり役立つから皆一つは持ってるが、高額だぞ」

「へぇ~、そういうのもあるんですね(おお~、まさにファンタジー)」

「ああ。俺も持っててな、これだ」

 

 ヴァレットは左腕に付けている腕輪をシリウスに見せた。シンプルなデザインで盾の装飾が施されておりその中心に白い宝石のような物が埋め込まれている。

 

「こいつは盾の腕輪って言ってな、魔力を込めると盾を作り出せるんだ」

「すごいですね。咄嗟の防御にはもってこいですね」

「そうなんだよ、よくわかったな。注意していても不意を突かれる事は有り得るからな。だからこうやって…」

 

 ヴァレットが腕輪に魔力を込めると白い宝石が一瞬光り、腕に半透明の盾が出現した。

 

「魔力を込めると真ん中の魔石から盾が出てくる。盾の場所はどこに出すかイメージすれば腕のどこからでも出せるぜ」

「おぉ~」

「ちなみにこれで500000リクルだ。少し大きめの家が買えるぞ」

「たっか…」

 

 余りの高さに目を見開いて驚くシリウス。

 

「確かにな。これを買う時も相当悩んだが、いざという時の事を考えると必要と判断してな、思い切って買った。まあその後しばらくはひもじい思いもしたけどな。お前さんの場合はその子がいるから余計悩むかもしれんがあるとなしじゃかなり違ってくるぞ。まあ薬草とか手伝いをするお前さんには余りそういう場面は無いかもしれんがな。一応参考程度に思っとけ」

「はい、ありがとうございます(なんかフラグが立った気もしないでもないけど…)」

 

 フラグが立った気がして不安に思っているシリウスだが、ヴァレットの言葉には納得している。いざという時、あるのとないのでは天と地ほど違う。自分だけなら自己責任だがシリウスにはポラリスがいる。万が一にも傷をつける訳にはいかない。装備を買う時は真剣に考えようと決めたシリウスだった。

 

「大体見て回ったな。後は日用品だったか。それなら反対側だな」

「さっき見た所のは?」

「いや、あるにはあるし普段使いもできるが割高だぞ」

「あ~、今回は縁が無かったということで」

「だな。よし行くか」

 

 二人は通りを出て大通りを横切り市場がある通りへ向かった。近づくにつれ威勢のいい声で客引きをする商人達の声が聞こえ始めた。

 

「いらっしゃいいらっしゃい!安いよー!」

「ちょっとそこの奥さん!新鮮な肉はいかが!今なら一つたったの5リクル!」

「魚ー!魚はいらんかねー!今朝釣れたばかりで新鮮だよー!」

「よう、そこの旦那。奥さんや彼女さんにアクセサリーとか送ってみない?きっと喜んでくれるぜ」

「靴磨くよー。一回3リクルでピカピカにするよー」

 

 店が立ち並びその前のちょっとした広場に所狭しと露店が並んでおり、露店の売り物である野菜や肉、魚などの生鮮食品を今日の夕食の買い出しに来た奥様達が挙って集まってきている。その青空市場の周りの店にも客が出入りしている。靴や服、カバンなどの革製品や椅子などの木材製品、包丁などの鉄製品やロウソクなど多種多様な店が並んでいる。

 

「すご…」

「だろ?ターエルで一番賑やかな場所さ」

 

 人の多さと賑やかさに圧倒されているシリウスに笑っているヴァレット。

 

「さて、欲しいのは日用品だが…具体的には何がいるんだ?」

「あ~、とりあえず赤ちゃん用の服とかおしめでしょ。玩具もいるか?後歯ブラシとコップと布とロウソクと…それと、あ~何がいるっけ?」

 

 一番初めに出てくるのがポラリス用の物だった。シリウスは完全に無意識だが着実に母親として育っている。ヴァレットは指折り数えているシリウスを優しく見つめている。

 

「赤ん坊用のはどこだったかな…ああ、角の店だったな。こっちだ」

 

 まずはポラリスの物から買うために赤子用の物を売っている店に歩き始めた。広場を横切る時も噂を聞いた人達から手を振られたりしてシリウスはその度に会釈した。以前まではまたかと辟易としていたが今は完全に諦めている。

 

「ここだったよな…?ああ、ここだここだ」

 

 目的の店に着き中を覗くと店の中は赤子用の品物がたくさん置いてある。服やおしめはもちろん、乳母車や木でできた玩具まであり一通り揃っている。

 

「いらっしゃいませ~何かご入用ですか~?」

 

 笑顔が素敵な女性店員が店に入ってきた二人に声を掛けてきた。

 

「すみません、服を、あ~、三着ほどとおしめを十ほど下さい」

「はい~かしこまりました~。採寸させてもらいますね~」

 

 やけに間延びする話し方をする女性店員は持っていたメジャーでポラリスの採寸をした後、シリウスの要望を聞き品物を取りに奥へ入っていった。シリウスはその間に何か使えそうな物は無いかと店内を歩き回っている。

 

「乳母車はいらんな。抱っこかおんぶ用の紐とかあれば便利なんだが…お、これかな?…うん、長さもちょうどいいな。色も結構あるな。赤色、青色、水色、緑色、黄色、白色か…白色と水色にしよ。後は玩具か…お~、よくできてるな…お、これなんかどうだろうか?ポラリス~これとかどう?」

 

 シリウスは木を丸くボール状に削り表面をやすり掛けして引っ掛からないようにできている木の玩具をポラリスに見せてみた。中に鈴が入っているらしく動かすたびにリンリンと音が鳴る玩具に興味津々なポラリスは手を伸ばしている。ポラリスに持たせてみると一杯触ったり動かして音を出したりと楽しそうに遊んでいる。

 

「これも買いだな。他は…お馬さんとかどうかな~?ワンちゃんや猫さんもいるぞ~」

 

 木でできた動物の玩具をポラリスの目の前で振ると、目をキラキラさせて手を伸ばしたのでこちらも購入が決まった。

 

「お待たせしました~。ご要望の服と~おしめです~」

 

 購入品が決まったところで店員が服とおしめを持って戻ってきた。特に指定はしていなかったがポラリスに似合いそうな服を持ってきてくれシリウスも一目見て気に入った。

 

「…うん、全部買います。後これも」

「はい~、ありがとうございます~。え~全部で~…1500リクルです~」

 

 内訳として服が一着200リクル、おしめが一つ20リクル、抱っこやおんぶの紐が50リクル、木の動物の玩具が一つ100リクル、木のボールが300リクルと中々に高い買い物になったがシリウスは戸惑う事無く支払った。購入した物は店員が気を利かせてくれ布に包んで纏めてくれた。ヴァレットはこういう店に入った事が無いらしく、シリウスの用事が終わるまで店内にある品物を興味深そうに眺めていた。

 

「おう、終わったか。結構買ったな…」

「あはは、見てるとあれもこれもって思っちゃって」

「はっはっは。お前さん、すっかり母親になったな」

「母親って…まだ十代ですよ」

 

 からかうように笑うヴァレットをジト目で見るシリウス。

 店を出た後は他の店を見て回り、シリウスが要望していた歯ブラシとコップと布とロウソクなど次々と購入していった。今日だけで銀貨五十枚以上、5000リクルを超える買い物をしたが必要経費なのでその辺りは割り切っている。

 

「今日はお付き合いいただきありがとうございました」

「お、おう。いや、そんなに丁寧に言わなくてもいいんだぞ?」

 

 買い出しが全て終わり宿の前まで戻ってきたシリウスはヴァレットにかなり丁寧な言葉と頭を深々と下げ感謝を伝えている。九十度ぐらいまで下げておりどれだけ感謝しているのかが見て取れるが、ヴァレットはやり過ぎとも言える感謝に逆に戸惑っている。

 

「ま、まあこれで必要な物は揃ったんだ。良かったな、ゆっくり休みな」

「はい、ありがとうございます。おやすみなさい」

 

 ヴァレットはシリウスに別れを告げて自分の家に帰っていきシリウスも大荷物を抱えて宿に入った。

 

「おや、おかえり!なんだいなんだい!ずいぶん別嬪さんになって帰ってきたじゃないか!」

「あはは、ただいま戻りました」

 

 受付にいた女将が出迎えてくれ褒めてくれたが、シリウスは未だに綺麗だとか可愛いだとか言われても今一ピンと来なかった。身体は女だが精神は男寄りなので何とも言えない表情を浮かべる以外無かった。

 

「それにずいぶん買い込んだもんだね!」

「いやあ、村から持ってきた物もそんなに無くて。あれもこれもって思ったらこんなになっちゃいました」

「はっはっは!なに、そういうもんだよ!夕食までは時間があるからゆっくり休みな!」

「はい、ありがとうございます」

 

 女将に挨拶してシリウスは部屋に戻った。

 

「ただいまっと。ポラリス~ちょっとの間だけこれで遊んでてね~」

 

 部屋に戻ったシリウスはポラリスをベッドの上に置き、買ってきた木の玩具を渡した。ポラリスはボールの玩具を転がしたり振ったりし、木の動物の玩具を持ったり突っついたりしながら遊んでいる。シリウスはそれを横目に買ってきた物を整理し始めた。

 

「(結構買っちまったな…いや、必要だったんだ。仕方が無い。歯ブラシとコップがあるからこれでやっと歯が磨ける…なんか粘ついてる感じがしてずっと気持ち悪かったからな。ポラリスの分もあるし今夜からちゃんと磨かないと。それと追加の布。今使っている布も洗えばまだまだ使えるからこれでしばらくは大丈夫。ロウソクは、まあしばらくは必要は無いだろうけどその内使うだろうからいっか。明日には外に着ていく服もできるし三日後には追加で服と靴が増える。これでしばらくは大丈夫か………いや、いやいやいや。安心しちゃダメでしょ私。宿代はサービスしてもらってるけど食事代とか諸々で減っていくんだから。バイトしなくちゃ。ハンターの仕事でも確か荷運びとか掃除とか接客とかあるって言ってたし。何なら外で薬草取り行ってもいいし。まずは薬草がどれか知る所からだけど…明日ギルドに行くか。どんな仕事があるのかだけでも確認しとかないと)…ん?おっと」

 

 整理し終えてからずっと今後の事を考えていたシリウスだったが、ふとポラリスが遊ぶ音がしない事に気づきベッドの方を見るとポラリスが半ベソを掻きながら手を伸ばしていた。遊んでいたが飽きたのか、シリウスに甘えたくなったのかわからないが、シリウスを呼んでいたが気づいてもらえず段々と泣きそうになっていたところだった。

 

「ごめんよ~ポラリス~。ほ~ら、よしよし」

 

 シリウスが謝りながらポラリスを抱き上げるとすぐに服をギュッと掴み、掴みどころか抱き着いた。それにシリウスは少し驚いたが心の中では温かい何かが溢れ出している。

 

「(困ったな~。何が困るってこれが嫌じゃない事なんだよな~…いや、もう半分ほど諦めてはいるけどさ。でも、もっとこうさ、わかるでしょ、って誰に言い訳してるんだ私は…)」

 

 心の中では戸惑っているが表情は誰が見ても愛しい我が子をあやす母親の表情をしていた。

 

「…まだ夕食までは時間はあるな。よ~し、ポラリス~一緒に遊ぼうか。ほ~ら、お馬さんが来たぞ~。おっと、こっちからは猫さんだ~」

「あ~♪う~♪」

 

 泣き止んだポラリスをベッドの上に置き夕食の時間まで一緒に遊ぶことにした。木の動物の玩具をポラリスの前で揺らしたり歩かせたりし、ポラリスは楽しそうに手を伸ばして捕まえようとしている。母娘の心温まる触れ合いはポラリスのお腹から可愛らしい音が聞こえるまで続いた。

 

「ん?ふふふ…お腹空いたのか~、そろそろいい時間だし、よ~しご飯食べよっか~」

 

 シリウスはポラリスを抱き上げて部屋を出て下に降りた。酒場は徐々に人が入りだしたところで席にはまだ余裕があったので他の席からは見えにくいカウンター席に座った。

 

「おやおや、そんな奥まった所でいいのかい?」

「いやあ…メイクされてるから、また騒ぎになりそうなので」

「はっはっは!見せつけてやればいいじゃないか!皆からチヤホヤされるよ!」

「いや、別にそういうのは…あんまり目立つのもちょっと…それにポラリスが泣きますし」

「おやおや、ふふふ。ああ、ご飯だね!今日のオススメはマルイモと特製のソーセージのシチューとカミツキウオの香草焼きだよ!その子用のはサービスしてあげるよ!」

「じゃあそれでお願いします」

 

 カミツキウオという聞いたことが無い言葉が出てきたが魚の種類だろうとシリウスは判断しオススメを頼んだ。

 膝の上に置いたポラリスと手遊びをしていると仕事を終えた近所の人達やハンター達が続々と入ってきて一気に満席になり酒場は騒がしくなった。

 

「はいよ!お待たせ!」

 

 しばらくすると女将が食事を持ってきてくれシリウスの前に置いてくれた。

 マルイモとソーセージが入った熱々のシチューと、顔がかなり厳つく噛まれたら指ぐらい食い千切りそうな牙を持ったカミツキウオを香草と共に焼いた焼き魚と、焼きたてのパンが本日の夕食である。ポラリスの分はソーセージの入っていないシチューだ。

 

「ありがとうございます。えっとお代は?」

「80リクルだよ!」

「え~っと、銅貨が八十枚っと」

「ひぃ、ふぅ、みぃ…はい確かに」

「じゃあ、いただきます」

 

 女将に食事代を払い手を合わせた後、木のスプーンでシチューを掬い息を吹きかけよく冷ましてから食べた。

 

「うっま…」

 

 シリウスは自身の語彙力の無さに呆れるがそれしか出ないぐらい美味しかった。

 

「ポラリス~、あ~ん」

「あ~」

 

 膝の上にいるポラリスに食べさせるとポラリスも美味しいのか笑顔で手足を動かし、シリウスと女将がそれを見てほんわかとしていた。

 

「ふふふ…さて、ゆっくり味わっておくれ。なにか用が合ったら誰かに声を掛けておくれ」

 

 女将は忙しそうに厨房に戻っていった。

 ポラリスの食事を優先しつつゆっくり味わって食べている。カミツキウオの香草焼きは見た目のインパクトはあるが油が程よく乗っており、香草の味付けで美味しさが倍増している。木のフォークで刺して食べており終始笑顔で食べている。パンも焼きたての熱々で柔らかくそのまま食べても美味しく、シチューに付ければ美味しさは跳ね上がっている。シリウスもポラリスも笑顔で食べ続け完食した。

 

「今日はあの子はいないのか?」

「ん~?誰の事だ?」

「ほら、あの子だよ。噂の」

「あ、ああ~あの噂の…なんだ、ここに泊まってるのか」

「そういや昨日の夜から見てないねえ…」

「まだ若いのに赤ん坊を連れて大したもんだよ」

「それに結構可愛いよな…」

「なんだおめえ、惚れたか?」

「ばっ、ちげえよ!」

「ハッハッハ!照れるな照れるな」

 

 目立たたずに奥まった所にいたのにも関わらず、いつの間にかシリウスの事が話題になっていた。今のメイクされた状態を見られたらさらに面倒な事になると思い、シリウスはポラリスを抱き上げ慎重かつ速やかに部屋に戻ろうとした。

 

「…ん?あ、いた!」

「え?あ、綺麗になってる!?」

「うわ、すご…」

「キャー!可愛い~!」

「あ、ちょ」

 

 だがウェイトレスに見つかりやんややんやと騒がれてしまいその騒ぎで目立ち見つかった。

 

「すげえ美人になってる!」

「うおおおぉぉぉ!可愛いぞおおおぉぉぉ!」

「おお…!わしが後十年若ければのお…」

「ぽ~…」

「なんだこいつ、見惚れてやがる」

「いや無理もねえって。こんなに綺麗になってたらな」

 

 酒場にいる全員に注目され尚且つ可愛いだの綺麗だの褒められまくり顔が段々と赤くなっていくシリウス。

 

「やだっ!照れてる!か~わ~い~い~!」

「こんなに可愛くて尚且つ綺麗なんて…何で私にはどっちも無いの…?」

「か、かわっ…!」

「こいつ、語彙力失ってやがる…」

「それだけあの子が可愛すぎたんだろ?しゃあねえよ」

 

 顔が赤くなったシリウスに周りはさらに大盛り上がり。

 ウェイトレスは余りの可愛さにやられ抱き着いたり、何故かダメージを受けてうちひしがれており、男達の方は可愛さに語彙力を失ったり、赤くなったシリウスを肴に酒を飲んだりとやりたい放題だ。

 

「~~~~~ッ!!」

「あ!?逃げた!」

「ねえ、何で…?何で私にはどっちも無いの…?ねえ?」

「ちょ!?私に聞かないでよ!?っていうか近いし顔が怖い!誰か助けてー!」

「ああ…行っちまった…」

「そんな失恋したみたいな声を出すなよ…惚れ過ぎかよ…」

「ハッハッハ!良いもん見れて酒が進むぜっ!おーい!酒、お代わりー!」

 

 余りにも褒め殺しにあい耐えきれずにシリウスは逃げ出した。その後も酒場はシリウスの事で盛り上がり地味に売り上げに貢献していた。

 部屋まで辿り着いたが顔を真っ赤にして目もグルグルになり混乱の極みにいるシリウスはポラリスを撫でたり抱き締めたりして平静を保とうとしている。…平静を保つのがポラリスを可愛がる辺りが母親そのものなのだが。

 

「ふ~っ、よし落ち着いた、大丈夫。ま~ったく何が可愛いだ…好き放題言いおってからに…」

 

 ブツブツと文句を垂れながらベッドに腰掛けてポラリスと手遊びして癒されようとしている。笑顔でシリウスの手を握るポラリスに自然と笑みが零れている。しばらくの間、ポラリスと遊んでいたが下の酒場が段々と静かになってきたのでコップと歯ブラシを持って部屋を出た。下に降りて水汲み場で桶に水を汲み、歯ブラシを濡らして歯を磨き始めた。

 

「(歯磨き粉はどっかに売ってないのかな?水だけじゃその内虫歯ができそう。やだなあ…歯医者なんてものないだろうし、虫歯になったら抜くしかないんじゃないのか?この歳で歯抜けとか入れ歯とか嫌だぜ)」

 

 歯磨き粉が無いのでその分隅から隅まで時間を掛けてしっかりと磨いた。口を濯いだ後、ポラリスの分の歯ブラシで優しく磨き始めた。

 

「は~い、ポラリス~、あ~んってして~」

「う~?」

「う~じゃなくてあ~」

「あ~」

「は~い、そのままね~」

 

 力を入れずに優しく痛くないように気を付けながらポラリスの歯を磨いている。他の宿泊客が水汲み場に来ても気づかないぐらい集中して磨いており、宿泊客はその様子を見て完全に母娘だと思っており微笑ましそうにしていた。余り長い時間はポラリスが我慢できないのでそこそこで切り上げた。

 

「赤ちゃんって濯げるのかな…?ポラリス~、ぐちゅぐちゅぺってできる~?」

「う~?」

「うん、ダメそうですね。しゃあない、口の周りだけでも綺麗にするか」

 

 濡らした布でポラリスの口の周りを綺麗に拭き、使った歯ブラシを綺麗に洗い部屋に戻った。部屋に戻るとポラリスが可愛らしいあくびをしたので寝る事にした。

 

「着替えは明日でいっか。その時にお湯で綺麗にしよう」

 

 ポラリスのあくびが伝染してシリウスも眠気を感じあくびをした。

 荷物をテーブルの上に置きポラリスをベッドの上に置いて自身もポラリスの横に寝転がった。毛布をポラリスに掛け一撫でして眠りについた。

 

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