転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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第百二十一話

 

 ギルドを出たシリウス達はその足で市場へと向かった。

 市場は朝から賑わっており、飲食店の店員やハンターや奥様方が買い出しに来て賑わっていた。ウェズンに乗っているセイルとセネルをシリウスとシェネドが落ちないように見て、エルフィナが必要な物資を次々と購入していった。

 

「ナガニンジンを十、いえ二十とマルイモとカラタマを十にそっちのスクワッシュとキャベジを三つね」

「はいよ!全部で1400リクルだ!」

「…前より高くなってない?」

「あー、まあ、そうなんだが…どこも似たり寄ったりだぜ?」

「そうなのね…はいこれ」

「毎度!」

 

 ナガニンジンが一本5リクル、マルイモとカラタマが一つ5リクル、スクワッシュことカボチャモドキとキャベジことキャベツモドキが一つ200リクルとなる。

 本来ならこれの半額ぐらいの値段なのだが、隣国との関係悪化に伴い出入国と輸出入が厳しく制限され物が中々入ってこなくなったのと、戦争への不安感から備蓄のために農家が出荷量を制限し出したのが原因で物価上昇に歯止めがかからない状況になっている。市場で買い物をしている他の客もその事で話し合っていて皆不安を抱えている。

 

「どこも高くなったわね…」

「国境付近の町じゃこれの倍はするらしいわよ」

「やっぱり戦争になるのかしら…」

「どうやら近々兵士の募集が始まるらしいわよ」

「徴兵はまだされないのね。でもそれもそのうち…」

「どうしてこうなったのかしらね…」

「おいおい、店主よ。これ、高くねえか?」

「仕方ねえだろ。物が中々入ってこないんだから。こっちもギリギリまで頑張ってんだぜ」

「…やっぱり戦争が始まるのか?」

「まだ争いは起こっていないが、睨み合いはこの頃頻発してるみたいだぜ。おかげで品物を仕入れるだけでも一苦労だ」

「マジかよ…本格的になる前に離れた方がいいかもしれねえな…」

「ハンターは身軽でいいな…俺は店があるから離れられねえよ」

「身軽って言ってもこのご時世で国を出れるかは分からねえけどな」

 

 戦争数歩手前まで情勢が悪化しているらしくそこかしこで不安そうに話し合う声が聞こえている。

 

「戦争か…アールレディアは大丈夫なんだろうか?」

「関係が悪くなってるのはガルディス帝国とシードール共和国でアールレディアが貿易してるのはまた別の国だから取りあえずは大丈夫よ。戦争が起こったらどうなるかは分からないけどね」

「王都まで攻められると思うか?」

「流石にそこまでは無いと思うけど…何だかんだ言っても優秀な軍人がいるから一方的にやられる事は無いと思うわ。最悪攻め入られてもトルプナートで抑えられるはずよ。あそこの防御は相当だからね。さ、次はお肉とお魚を見にいきましょ」

「お肉ー!」

「お魚ー!」

「あ~」

「あーい!」

「え、あ、あ…ぅぅ…」

 

 暗い話が飛び交う中でセイルとセネルはウェズンの上で買い物を楽しんでいた。セイルとセネルに釣られてポラリスとアトリアも笑顔で返事をし、スピカも返事をしようとしたが途中で恥ずかしくなり顔を赤くして俯きシリウスの首元に顔を埋めたのでシリウスはスピカの頭を優しく撫でている。

 

「ま~、う~」

「ままー!んー!」

「はいはい」

 

 自分も撫でてと主張してくるポラリスとアトリアを順番に撫でて、カペラとウェズンとハダルとリゲルも物欲しそうに見ていたので撫でているとセイルとセネルがそれをジッと見ていた。

 

「ふふふ。よしよし」

「!!えへへー!」

「!!にへへー!」

 

 シリウスに撫でられて上機嫌になったセイルとセネルは満面の笑みを浮かべ、その笑顔を見た通行人達もほっこりしている。

 

「さーて、お肉はっと…んー…日持ちがするお肉…ハダルちゃんとリゲルちゃん用のも…そのビッグボアのハム一つとソーセージを、そうね…六本貰おうかしら。後、そっちの干し肉を五つね」

「はいはい!ハムとソーセージ六本と干し肉五つ!しめて6550リクルだよ!」

 

 内訳はビッグボアのハムが4000リクル、ソーセージが一本300リクル、干し肉が一つ150リクルとなっている。

 

「…こっちも高くなったわね」

「悪いね。こっちも頑張ってるんだけど中々獲れなくてね」

「気にしないで。はいこれ。さて次はお魚よ」

「まだ買うのか?これぐらいあればトルプナートまで余裕だろ?」

「王都よりトルプナートの方が物価が高いのよ。ここより二、三割は高いからなるべくこっちで買った方がいいわ」

「…肉とかは現地調達の方がいいかもな」

「確かにね」

「お肉、美味しい。いっぱい、食べたい」

「なら道中で何か見つけたら狩るか」

 

 魚が売っている店では干物を五つ購入し、その後少なくなっていたパンと香草などを追加で購入して宿屋へ戻った。ちなみに干物は一つ1000リクルでパンは一つ50リクルだった。

 

「随分買ったな…」

「これぐらい必要経費よ。それに足りないよりは全然いいし」

「確かにな。ああ、そうだ。エルフィナ、これ」

 

 シリウスは財布から金貨を一枚取り出してエルフィナに差し出した。今回の買い物で13000リクル以上掛かっており、全てエルフィナが立て替えたので自分達の分を支払おうと出したのだ。

 

「いやいや、シリウスちゃん、多過ぎるわよ」

「まあまあ、いいからいいから。シェネドの分も入ってるから」

「いやいやいや」

「まあまあまあ」

 

 妙な押し問答がしばらく続いたが、ベッドの上にいるポラリス達がシリウスを呼ぶ声がしたので、シリウスは金貨をエルフィナの方に放り投げてポラリス達の方へ向かった。飛んできた金貨を思わず掴んだエルフィナだったが掴んだ瞬間負けを悟った。

 

「しまった…策士ねシリウスちゃん…」

「んー?何のことか分からんなー」

 

 すっとぼけるシリウスをジト目で見るエルフィナだが、やがて諦めたように溜め息を吐いて金貨を懐に仕舞った。

 

「あ、あの…私の分…」

「ん?ああ、いいからいいから」

「で、でも…」

 

 シェネドが言い淀んでいると部屋のドアが勢いよく開けられてセイルとセネルが入ってきた。

 

「ハンターのお姉さん!遊ぼー!」

「皆で遊ぼー!」

「いいよ。今日は何する?っとその前に皆にプレゼントがあります」

「「プレゼント!?」」

 

 目を輝かせる二人にシリウスは笑いながら部屋の隅に置いていた袋から何かを取り出した。

 

「じゃじゃ~ん。ぬいぐるみ~」

 

 シリウスの手にはデフォルメされた少々歪な熊と兎とカピバラのぬいぐるみと手の平サイズの熊のぬいぐるみが二つあった。コツコツ毎日作り続けて昨日ようやく完成したが、ぬいぐるみ作り初心者なので左右の耳の大きさが違ったり、よくよく見ると目の位置が微妙にズレていたり、少し歪んでいるので真っ直ぐ座らなかったりと不具合だらけのぬいぐるみとなった。手の平サイズの熊のぬいぐるみの方はセイルとセネルが興味深そうに見ていたのでこういうのが好きなのかと思って余った材料で急遽作った。布が一つでは足りず持っていたぬいぐるみ用に買った三種類の布をパッチワークのように縫い合わせて作られている。

 

「「ふわあああぁぁぁ…!」」

「あ~♪」

「あーうー♪」

「ふわふわ…」

「ふふふ…セイルちゃんとセネルちゃんは小さくてごめんね」

「ううん!ありがとうお姉さん!」

「可愛い!お姉さんありがとう!」

 

 ぬいぐるみを持ったまま満面の笑みでシリウスに抱き着いてお礼を言うセイルとセネルを抱き留めながら頭を撫でるシリウス。ポラリスは熊のぬいぐるみを、アトリアは兎のぬいぐるみを、スピカはカピバラのぬいぐるみを持ってそれぞれ抱き締めてモフモフしている。

 

「すごい、可愛い…」

「私が思ってたぬいぐるみと全然違ったわ…」

「エルフィナはどんなぬいぐるみを想定してたんだ?」

「もっと、こう…もうちょっと可愛くなかったり、モコモコじゃなかったりとか…」

「私の中のぬいぐるみは全部こうなんだけどな」

 

 この世界のぬいぐるみはもう少しリアル寄りでシリウスから見れば可愛くない部類に入るが、そんなぬいぐるみでもこの世界の人々から見れば可愛く見えるらしく貴族の子供達にはかなり人気だ。ぬいぐるみが作られている店はまだ少なく高級品の部類に入り、平民では中々手が届かない代物だ。手作りする者もいるがぬいぐるみの中の綿が無く、ペラペラの状態のぬいぐるみが大半だ。

 

「…あまり他の人に見られないようにした方がいいかもね」

「そんなにか?」

「平民はまだ羨ましがるだけかもしれないけど、貴族の子供があれ欲しいなんて言えば取り上げられる可能性もあるわ」

「子供の時からクズかよ…」

「気持ちは分かるけど外では言わないでね」

 

 基本的にオルティナ王国の貴族の子供は我儘な性格が多く、今エルフィナが言った事が起きても何もおかしくなかった。

 

「セイルちゃん、セネルちゃん。そのぬいぐるみね、外にはあまり出さないでね。できるなら家族以外には見せない方がいいかも」

「どうしてー?」

「なんでー?」

「ぬいぐるみを持ってる子が少ないから自分も欲しいって言って取っていっちゃうかもしれないんだ」

「やだー!これセイルのー!」

「だめー!これセネルのー!」

「そうだね。だから、しー、だよ」

「「分かった!しー!」」

 

 素直に返事をしたセイルとセネルはシリウス達と外に出てウェズンも加えてポラリス達とぬいぐるみを使っておままごとを始めた。終始笑顔で遊ぶ子供達を微笑ましそうに見ているシリウス達。

 

「あ、ここにいた。そろそろ夕食ができます、よ…?」

「あ、お姉ちゃん!」

「見て見て!」

「えっ!?ちょっ、それ、どうしたの!?」

「ハンターのお姉さんに貰った!」

「ちゃんとお礼言った!」

 

 厩舎前で遊んでいるとコルルが呼びにやってきたので、セイルとセネルはシリウスから貰ったぬいぐるみをコルルに見せており、コルルは言葉を失って口をパクパクしている。

 

「そんなに驚く事ですか?ただの手作りですよ?」

「手作り!?これが!?」

「ええまあ。有り合わせで作った物ですが」

 

 コルルも貴族御用達の店に飾られているぬいぐるみを見た事があったが、シリウスが作ったぬいぐるみの方が数倍良い出来に見えた。シリウスは有り合わせで作ったと言っており、ポラリス達の方を見るとそちらにはセイルとセネルが持っているぬいぐるみよりさらに良い出来のぬいぐるみが三つもあった。

 

「そういえば夕食ができたんですよね。すぐに行きますね。ポラリス~、アトリア~、スピカ~、カペラ~、ウェズン~、ハダル~、リゲル~、ご飯だよ~」

 

 固まってしまったコルルの様子に首を傾げながらも夕食ができたのでぬいぐるみで戯れているポラリス達を呼びにいった。正気に戻ったコルルに案内されたのは食堂ではなく、食堂に隣接している一家が普段食事をする部屋だった。

 

「食堂でなくていいんですか?」

「ええ。ここなら妖精さん達も一緒に食事できるからって」

「あ」

「ちょ、それは」

「…妖精さん?」

 

 気を利かせてくれたのだがまだピーニの事を知らないシェネドは首を傾げている。シリウスとエルフィナは顔を合わせてどうするかと目で会話していたが、もう手遅れなので諦めて説明する事にした。

 

「―――という訳だ」

「妖精…初めて見た」

「突っつくんじゃ無いわよ!」

「ひえっ…」

 

 ピーニに怒鳴られてシリウスの後ろに隠れるシェネドに苦笑しながらもちゃんと言い含めている。

 

「シェネド、妖精は凄く珍しい種族だから他の人には言うなよ」

「そう、なの?」

「ああ。バレたらあちこちから狙われかねないからな。頼むぞ」

「分かった。誰にも、言わない」

 

 ポロっと口に出すのではと不安に思っていたシリウスだが、シェネドは口に出せばシリウスに迷惑が掛かるかもしれないと思い絶対に言わないように心に決めた。

 

「はいはい!お待たせしました!」

「たくさん作りましたからいっぱい食べてくださいね」

 

 家族十人が集まって食事ができる大きさのテーブルが料理でドンドン埋まっていく。特製シチュー、分厚いステーキが一人一枚、大きなカミツキウオの焼き魚が丸々一匹、山盛りの揚げたてコロッケ、新鮮な野菜サラダ、キノコと山菜のパスタ、野菜がたっぷり入ったキッシュなど所狭しとテーブルに置かれている。気合いが入り過ぎた料理の数々にシリウスとエルフィナはの顔は引き攣り、シェネドは完全に固まっている。

 

「「すごーい!」」

「もう!作り過ぎよ!」

「どれも美味そうだな…」

「凄い量ね…」

「あーあー、こんなに作って…」

「ハッハッハ!いやあー、作り過ぎたね」

「作っていくうちに楽しくなってしまっての」

「とはいえ、どうしましょうか?」

「三人だけでは流石にね…」

「あー…なら皆さんも一緒にどうですか?あ、でも仕事があるか…」

「そうねぇ…うん、今日は私達だけで何とかしましょう。あなた達はお言葉に甘えなさい」

「え?いいの?」

「ちょっと、大丈夫なの?」

「食べていいなら俺は全然構わないぜ?」

「ゲミル兄は遠慮が無さすぎ」

「「ご飯ー!」」

「いいわよ、今日ぐらい。そういう訳なのでこの子達だけお願いできますか?」

「ええ、もちろん構いませんよ」

 

 仕事は祖父母と両親がやり、兄弟姉妹はシリウス達と食事をする事になった。シリウスの後ろには窓があり、そこからウェズンが顔を出しているのでウェズンだけ仲間外れになる事は無かった。

 

「あぐっ!美味しい、はぐっ!止まらない、あむっ!」

「落ち着いて食えよ…ポラリス~、あ~ん」

「あ~。あ~♪」

「ままー!んー!」

「はいはい。アトリア~、あ~ん」

「あー。あーい♪」

「スピカ~、あ~ん」

「あ、あー…」

「カペラ~、あ~ん」

「(プルプル)♪」

「ウェズン~、あ~ん」

「ヒィン♪」

「ハダル~、あ~ん」

「シャー♪」

「リゲル~、あ~ん」

「ワフゥ♪」

「ふふふ。ほら、シリウスちゃんもあーん♪」

「いや自分で食えるから…ちょ、押し付け、むぐぅ」

「うっま!シチューうっま!」

「…皆、仲が良いね」

「家族が仲が良いのは良い事でしょ。ん、美味し」

「はぐっはぐっ!うめえ!」

「ゲミル兄、がっつかないでよ。恥ずかしい」

「「美味しー!」」

 

 サハル達四兄妹とシリウス達はワイワイ騒ぎながらご馳走を食べていく。サハル達がいてくれたおかげで大量にあった料理も次々と無くなっていった。

 シリウス達がご馳走を堪能している時、西門では一台の馬車が護衛と共に王都を出発していた。馬車の中には顔に治療跡が残っているブルヌと側近が乗っている。

 

「ちぃ、まだ痛みやがる…!あいつ、絶対に許さねえ…!」

「しかし、よろしいのですか?会長からは王都の支店の開店準備を指示されてますが…」

「既に指示する事は全部した。後は残った奴らだけでもできる。それよりもあいつを捕まえる事の方が重要だ!」

「ですが、用事もなく持ち場を離れるのは…」

「そこも問題ねえ。本店に進捗状況の報告と品物の運搬も兼ねてるんだ。何も問題ねえ」

「…それでしたら私も異存ございません」

「ギルド内で問題を起こしたんだ。そんな事をすればペナルティを科されるはず。そうすればほとぼりが冷めるまで町を出る。次の町はトルプナートだ。あそこは俺様の庭みたいなもんだ。多少力を持っていても何も問題ねえ。クックック!捕まえたらまずはたっぷりと躾てやらねえとな!ほら、急げ!できるだけ早くトルプナートに着くんだ!」

 

 シリウスへの復讐を企み歪んだ笑みを浮かべるブルヌを乗せた馬車はトルプナートへと向かった。

 ブルヌの存在を半ば忘れているシリウスはご馳走を食べてお腹いっぱいになりまったりしていた。

 

「ふ~、ごちそうさまでした。ポラリス、アトリア、スピカ、カペラ、ウェズン、ハダル、リゲル、お腹いっぱいになった?」

「あ~♪」

「あーい♪」

「う、うん…」

「(プルプル)♪」

「ヒィン♪」

「シャー♪」

「ワン♪」

「そっかそっか」

「げふー…もうはいらないわ…」

「お腹、いっぱい。満足」

「とても美味しかったわ」

「ふー…久々のご馳走だったな」

「誰かの誕生日でもこんなに出ないしね」

「あー、食った食った」

「ゲミル兄は遠慮無さすぎ」

「「美味しかったー♪」」

 

 大量の料理を全て食べきり、皆満足げな表情を浮かべていた。食後のお茶を飲みつつ食休みをし、セイルとセネルがポラリス達と戯れるのを見ながらシリウス達はサハル達と会話している。

 

「へー、そんなに旅してるんだね…」

「大変ね」

「いや別に。もう慣れたし」

「ターエルって、ここからどんくらい掛かるんだ?」

「んー…二、三週間ぐらいかしらね」

「そ、そんなに歩いたんですか?」

「よく、そんなに、歩けるね」

「そうか?」

 

 歳も近いから敬語じゃなくてもいいと言われたのでサハル達とタメ口で会話しており、長女のリエルにこれまでシリウスが旅してきた話を強請られたので話している。

 

「どうして旅をしてるんだい?」

「はじめは世界中の色んなものを見てみたいってだけだったけど、色々な事に巻き込まれたり、顔を突っ込んだりしてな。あんまり一ヵ所にいられなくて。取りあえずアールレディアとフェアンダリアに行く事にしてる」

「…それって貴族絡みかい?」

「そうだな。貴族ってあれだろ?傲慢なくせに自分の物に手を出されたらキレる器のちっちゃい奴だろ?だから逃げてるのさ」

「…それ、外では言わない方がいいわよ」

「分かってるよ。心の中だけにしておくさ」

「貴族相手にすげー事言うな…」

「肩を持つ訳じゃないけど、中には良い貴族も一応いるわよ…まあ、数える程度だけど」

「王族は?今の状況を作ったのってどこぞの王子なんだろ?」

「確か第三王子だったかしら?シードールの大使を畜生呼ばわりしてそこから互いに罵詈雑言の応酬。大使達は怒って国に帰っちゃって両国の関係は急速に悪化して今になったわ。他の王族も、まあ似たり寄ったりね」

 

 今の王には王妃との間に長男の第一王子、次女の第二王女、三男の第三王子がおり、側室との間に長女の第一王女、次男の第二王子の五人の子供がいる。

 王はかなりの高齢で体調も崩しがちで次期国王を選出しようとしているが、王位継承権第一位の第一王子はおつむが弱く、擦り寄っている貴族達の言葉を鵜呑みにして貴族に有利な政策を提案したりしており、王位継承権第二位の第二王子は義兄である第一王子を蹴落として王になろうと画策し良からぬ連中と繋がりがあると噂されており、王位継承権第三位の第三王子は勉強が嫌いで国政から距離を取っており貴族の子女達とお茶したり、パーティーを開いたりと遊び惚けており、今回シードールとの関係悪化の張本人でもある。

 誰も一長一短過ぎて王は側近と頭を悩ませている。

 

「正直誰が王になっても今より悪くなる気がするんだが…」

「シリウスちゃん。皆そう思ってるから大丈夫よ」

 

 サハル達も力強く頷いており、この国の未来に暗雲が立ち込めているのは王都に住んでいる者ならだれもが感じている事だった。暗い話は置いておきポラリス達があくびするまでハンターの仕事の話をしたり、宿屋の経営で困った客の話などで盛り上がっていた。皆に声を掛けた後、部屋に戻り寝る準備をしているとセイルとセネルが入ってきてベッドに潜り込んだ。

 

「えへへー」

「にへへー」

「よしよし。じゃあ寝るか」

 

 昨日同様シリウスが真ん中で子供達がシリウスに抱き着いて寝転んでいる。昨日と違うのはぬいぐるみも添い寝しているのとピーニが久々に外に出てカペラを枕にして寝ている事だ。

 

「んー…!はぁ…やーっとのんびり寝れるわー…おやすみ…」

「ああ。皆もおやすみ」

 

 

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