転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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第百二十二話

 

 翌朝、いつものように目が覚めたシリウスは昨日と同じでポラリス達とセイルとセネルが抱き着いていたので身動きが取れなかった。起こさないように離そうとするが、がっちりとシリウスの服を掴んでいたので起きるまでそのままにさせる事にした。

 

「(我が子の寝顔が可愛い…エデンはここにあった…)」

「…あんた、また変な事を考えてるでしょ」

「ピーニ、おはよう。変な事じゃない。真理だ」

「同じ事よ、全く…ほんと飽きないわね…」

「我が子に甘えられて嬉しくない親はいない」

「生憎こっちは親じゃないから分からないわ」

「んー…ふわぁ…シリウスちゃん、おはよー…」

「うにゅぅ…」

「ふにゅぅ…」

 

 ピーニと話していたらエルフィナとセイルとセネルが起きてきたのでようやく身動きが取れるようになった。寝惚け眼なセイルとセネルをエルフィナが自室へ送るために部屋を出ていき、シリウスはその間にパパっと着替えて起きてぐずりだしているポラリス達のおしめを変えた。

 

「ほら、シェネド起きろ。いつまで寝てるんだ」

「うー…あとごふん…」

「ええい、さっさと起きんかい」

「うわあー」

 

 毛布に包まろうとするシェネドから毛布を奪い取り叩き起こした。渋々起きて着替え出すシェネドを見ながら甘えてくるポラリス達を撫でている。戻ってきたエルフィナと共に食堂へ向かい待っていたセイルとセネルと一緒に朝食を取った。朝食を取り終わった後、部屋に戻り部屋を掃除してから荷物を持ち部屋を出た。受付では家族全員が待っており、セイルとセネルは泣きそうな表情をしていてシリウスの姿を見ると足に抱き着いた。

 

「今までありがとうございました」

「いえいえ。ほらセイル、セネル。ちゃんとお別れ言いなさい」

 

 エハルがそう言うがセイルとセネルはシリウスに抱き着いたまま動かなかった。

 

「セイルちゃん、セネルちゃん。ちょっとだけお別れだけど、また必ず会いにくるよ」

「…ほんと?」

「…嘘じゃない?」

「もちろん。約束するよ」

 

 涙目のままシリウスを見上げるセイルとセネルにシリウスは優しく微笑むとセイルとセネルは渋々手を離してそのままエハルに抱き着いた。

 

「またいらしてくださいね」

「いつでも歓迎しますぞ」

「次来た時もご馳走を用意しときますよ」

「娘達を助けてくれた恩は決して忘れませんわ」

「元気でね」

「今度来た時は一緒に買い物でもしましょ」

「頑張れよー」

「また来てくださいね!」

「またきてねー!」

「やくそくー!」

「ええ。ではまた」

 

 家族に見送られながらシリウス達は宿屋を出た。

 

「とっても、良い人達」

「本当にな。あそこに泊まれて良かったよ」

「それにしてもまた来るって言ったけどよかったの?」

「どうせテトラニーアとかターエルにも行くから問題無い」

「あらあら、そっちにも約束があるのね」

 

 他愛のない話をしながら西門に向かうとハンターの集団が西門前に集まっていた。

 

「あら?シリウスちゃん、ほらあれ」

「どれ?うわぁ…」

 

 シリウスがそのハンター集団を見ると一際大きい〈アイアン・マッスル〉のメンバーがその中におり、他に集まっているハンターも見覚えのある顔がチラホラいた。どう考えてもシリウスを見送りに来たとしか考えられず、あまり目立ちたくないシリウスは思わず声が出た。どうにか見つからずに出れないかと一瞬考えたが、無下にするのは気が引けたので仕方なくそのまま西門へ向かった。

 

「あ、来たよ!」

「おお!シリウス!」

「見送りにきたぜ!」

「やっぱり行っちまうのかよぉ!」

「寂しいが…それもまた人生じゃ」

「えっと…向こうでも頑張ってくださいね」

「頑張れよリーダー!」

「またいつでも王都に来いよな!」

「こっちにも聞こえてくるような活躍、期待してるぜ!」

「頑張ってねー!」

「男には気をつけるのよ!」

 

 口々にシリウスを激励してくれて、シリウスは何だか嬉しくなり自然と笑顔になった。

 

「ふっ…ああ。そっちも元気でな」

 

 シリウスの笑顔を間近で見たハンター達は普段の表情とのギャップの破壊力に固まってしまった。動かなくなったハンター達に首を傾げながらシリウスは西門から外に出た。

 

「じゃあなー」

 

 シリウスの声に我に返ったハンター達もシリウスが見えなくなるまで手を振って見送った。

 

「…行っちまったな」

「最後の最後ですげえもん見せられたな…」

「ちょっとドキッとしちゃった…」

「綺麗でカッコいいのにあの笑顔は反則だよ…」

「そういや昨日のあの変なの、どこ行った?」

「変なの?…ああ、あいつか」

「裏路地にはいなかったな。起きてどっかに行ったか」

「…そういや、昨日門が閉まる直前に馬車が一台出ていってたな」

「もしかしてそれか?」

「確かあいつ、ファデル商会って言ってたな。ファデル商会はトルプナートに本店があるから…返り討ちにあったのを逆恨みしてそこで待ち構えてるとか?」

「…すっごいあり得そうね…」

「あの子、大丈夫かしら…?」

「なあに!シリウスならどうとでもするさ!」

「そうそう!あいつはそう簡単にへこたれんさ!」

「おう!あいつはすげえ奴だからな!」

「うむ!うむ!」

「シリウスさんは確かに凄いけど…ファデル商会は悪い噂がたくさんあるって言うし…大丈夫かな…?」

 

 心配するハンター達の想いとは裏腹にシリウス達はのほほんとしながら道を歩いている。

 

「いい天気だな~…」

「そうねぇ…この前の昇級試験とは違うからのんびり歩けるわね」

「ぽかぽか…眠くなる…」

「寝るなよ」

「わか…スヤァ…」

「寝るなって言ったのに…っとにもう…」

 

 寝ながら歩くという器用な事をするシェネドの手を引きながらシリウス達はトルプナートに向けて歩いている。道中魔物も出てこず平和な時間が流れており、ポラリスとアトリアとスピカはぽかぽか陽気に包まれて穏やかに眠っており、カペラはシリウスと一緒に歩けて嬉しいウェズンの頭の上で景色を楽しんでおり、ハダルはウェズンの背中の上で日向ぼっこをしながら丸くなって寝ており、リゲルは地面に降りてシリウスの少し前を元気よく走っている。

 

「リゲル~、あんまり遠くに行っちゃ駄目だよ~。ウェズン、荷物は重くない?大丈夫?辛くなったらいつでも言ってね」

「ワン!ワン!ハッハッハ!」

「ブルブル…」

「ほら、シェネド。ちゃんと歩きなさい。それにしても器用ね…」

「スピー…」

 

 シェネドとウェズンに合わせているので歩く速度は遅いので、後ろから来る行商人やハンターなどに追い抜かれていっている。

 

「皆速いな。天気も良いからのんびり歩けばいいのに」

「野営地で一番良い場所でも取りたいんでしょ。魔物避けがあるからそこまで気にしなくてもいいわ。誰かが近づいてきてもすぐに気づくしね」

 

 追い抜かれても何も気にせずまったり歩き続け、途中何回か休憩を挟んで日暮れ前に野営地に到着した。既に野営地ではシリウス達を追い抜いていった者達が天幕を張って焚き火をおこし食事の準備をしていた。シリウス達は彼らから少し離れた所で荷物を置き天幕を張りだした。

 

「…なーんか視線を感じるんだが」

「女だけでしかも子連れなのが珍しいんでしょ。放っておきましょ。何かしてきても問題無いわ」

 

 先に着いた者達から視線を感じつつも無視して焚き火をおこした後夕食を作り始めた。本日の夕食はマルイモとナガニンジンとキャベジとソーセージのスープにパンでウェズンはナガニンジン数本とキャベジの葉数枚、ハダルとリゲルはハムを数枚の予定だ。シリウスとエルフィナが料理を作っている間シェネドはピーニと子供達の面倒を見ているが、リゲルはお腹が空いたのかシリウスの足にしがみついている。

 

「クゥ~ン…」

「よしよし。もう少しでできるからもうちょっとだけ待っててね」

 

 シリウスが頭を撫でながら言うとリゲルは大人しくシリウスの足を離してその場に座った。

 

「よし、できた。は~い、お待たせ~。ご飯だよ~」

「ワン!ワン!」

 

 スープを器によそい、ハダルとリゲル用の器にハムを置くとハダルとリゲルは勢いよくハムに齧り付いた。

 

「いただきます。ポラリス~、あ~ん」

「あ~」

「…うん。上手くできたわ」

「スープ、美味しい」

 

 薄味ながらも美味しいスープに舌鼓を打ち笑顔の夕食となったが、シリウスがポラリス達にスープを飲ませている時ふと手が止まった。

 

「そろそろスープ以外を食べさせた方がいいんだろうか…?」

「あー、どうかしらね…試しに上げてみたら?」

 

 エルフィナの提案でパンをスープに浸して柔らかくしてからポラリスの口元に持っていった。

 

「ポラリス~、これ食べれる~?」

「あ~。あ~♪」

「…大丈夫そうだな。よしよし」

「ままー!んー!」

「はいはい。アトリア~、あ~ん」

「あー。あーい♪」

「スピカ~、あ~ん」

「あ、あー…」

「(プルプル)」

「カペラも食べてみる?はい、あ~ん」

「(プルプル)♪」

 

 お腹がいっぱいになったポラリス達を見ながら、シリウスは少し冷めたスープとスープを吸いまくったパンをササっと食べた。

 

「シリウスちゃん、もうちょっと落ち着いて食べなさい。ポラリスちゃん達が大きくなって真似したらどうするの?」

「んぐっ…それはいかんな。次からは気をつける」

「わ、私が、片づける」

 

 食事の準備を何もしていないシェネドが率先して後片付けを行ったいるが、元々不器用でさらにやり慣れていないので時間が掛かっているが、シリウスはそれを馬鹿にせずに見守り、エルフィナは周囲の鳴子の確認と魔物避けの設置をしていた。

 

「…で、できた…」

「はい、お疲れさん」

 

 時間は掛かったものの後片付けを終え荷物に仕舞っているとエルフィナが険しい表情で戻ってきた。

 

「どうした?」

「いえね、ちょっと不快な事を耳にしてね。取りあえず天幕に入りましょう。そこで話すわ。あ、自然を装ってね」

 

 エルフィナの言葉に何となく察したシリウスはポラリス達を寝かしつけるように見せながら、首を傾げるシェネドを引っ張って天幕に入った。エルフィナも寝るために焚き火を決してわざとあくびをしながら天幕に入った。

 夜半過ぎ。

 夜の闇に乗じて黒い影達がシリウス達の天幕に慎重に近づいている。

 

「…寝たか?」

「…物音は聞こえねえ。寝息だけだ」

「ヘッヘッヘ…女だけで旅するなんて危ないぜぇ?」

「そうそう。こうやって襲われて持って帰られちゃうぞ~?」

「静かに。鳴子に触れるなよ」

「一緒にいたガキはどうする?」

「なあに。こんなとこに置き去りにはしねえさ。新しい親の元にでも連れていってやるさ」

「何て親切な…まあ、出合わせた対価としていくらか貰うけどな」

「あのチビ馬はいらねえな。明日の飯にでもするか」

「俺達は懐が潤って、あいつらは気持ち良くなる。誰も損しねえな」

「ちげえねえ。キッヒッヒッヒ!」

 

 下卑た笑いを上げながら天幕に近づいているのはシリウス達より先に野営地に着いた四人のハンター達だった。彼らは五級ハンターだが、最近の物価高騰で日々を暮らすのでやっとな生活が続いており、欲を発散させるための金が無かった。欲は積もりに積もって苛立ちが隠せなかったが、街中で誰かを襲えば捕まるので我慢するしかなかった。食い扶持を稼ぐためにエリンゼ森林に薬草採取の依頼も兼ねて食料などを取りにきたがそこでシリウス達を見つけ、しかも何をしても捕まる可能性が低い外なのもあって理性は容易く切れて今回の襲撃を企てた。これから起きる事に期待してズボンの一部を盛り上げらせながら男達は音を立てないように天幕に近づき中に入ろうとしたら、突然人の手が出てきた。

 

「へっ?」

「【フラッシュ】」

 

 手から強力な光が辺りを照らし、それを男達はまともに見てしまった。

 

「ぐわあああぁぁぁ!?」

「目がっ!?目があああぁぁぁ!?」

「ちくしょう!何も見えねえ!」

「いてえよぉ!」

 

 夜なのも相成って効果は抜群で男達は目が眩んで動けなくなった。魔物避けを設置した時に今回の襲撃をエルフィナが聞いており、返り討ちにするために寝たふりをして待ち構えていたのだ。

 

「ふんっ!」

「ごはぁ!?」

「誰をどうするって?」

「べふぉ!?」

 

 中から出てきたシリウスとエルフィナは目が眩んで動かない男達を次々と殴り倒している。特にシリウスはポラリス達を売り払い、ウェズンを明日のご飯にしようとしていた男達にブチギレており、先日のブルヌ以上に殴りまくっている。今も既に意識が無い男の顔面を執拗に殴っている。

 

「シリウスちゃん、シリウスちゃん。もうその辺で」

「フー、フー!…そうだな。こんな奴らに割く時間すらもったいないな」

「最低限の治療だけして縛ったら放置しましょう」

 

 止血だけして頑丈なロープで男達を雁字搦めにして適当な場所に放置して天幕に入った。天幕の中ではポラリス達を背に庇ってシェネドが震えながら杖を構えていた。

 

「ひぅ…!?ま、マジック」

「シェネド、私だ」

「あ…シリウス。お、終わった、の?」

「ああ」

「ふえええぇぇぇ…」

「うー、ひっく…!」

「ぅぅ…」

「(プルプル)」

「ブル…」

「シュー」

「ワフ」

「ポラリス、アトリア、スピカ、カペラ、ウェズン、ハダル、リゲル、もう大丈夫だよ」

 

 べそを掻くポラリス達を抱き締めてあやしていたらそのまま眠ってしまったのでシリウス達もその場に寝転んで眠った。

 

「クソがっ!ほどけぇ!」

「ひてぇ…ひてぇよぉ…」

「ちくしょう!相棒の顔をこんなに…!」

「おい!起きてるんだろ!?さっさとほどけよ!」

 

 翌朝、喚き散らす男達に起こされて全員不機嫌そうに天幕から出てきた。

 

「朝っぱらからうるさい!」

「ぐほぉ!?」

 

 喚く男の一人の腹にシリウスは蹴りを放って黙らせた。ようやく静かになったので不機嫌そうに鼻を鳴らした後、シリウスは天幕の中でべそを掻いているポラリス達の所へ向かった。

 

「朝から随分元気ね」

「ちくしょう!何でバレた!」

「私の耳はああいう悪巧みの声はよく聞こえるの。残念だったわね」

「クソがっ!この縄を解きやがれ!」

「嫌よ。それにまだ私は昨日ので満足してないの」

 

 冷ややかな目で男達を見下ろすエルフィナは短剣を抜いて男達に近寄った。

 

「こんな馬鹿な事を考えないようにその粗末な物を切り落とした方が世のためだと思わない?」

「「「「ひぇっ!?」」」」

 

 短剣を手の平で弄びながら冷たく嗤うエルフィナに男達は青褪めた。

 

「た、頼む!止めてくれ!」

「も、もうあんたらを襲ったりしない!本当だ!」

「それを信じろって言われてもねぇ」

「嫌だ!嫌だぁ!」

「だからうるさい!」

 

 男達がまた騒ぎ始めたのでようやく落ち着いてきたポラリス達がまたべそを掻きそうになったので再びキレたシリウスが天幕から飛び出してきて男の股間を蹴り上げた。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

「「「ひぇっ!?」」」

 

 声にならない絶叫を上げた後、泡を吹いて気絶した仲間に残った男達は躊躇なく急所を蹴り上げたシリウスに恐れをなして口を噤んだ。ようやく黙った男達にまた不機嫌そうに鼻を鳴らしながら遂に泣き出したポラリス達をあやすために慌てて天幕の中に戻った。

 

「あーあー…ま、痛めつけるのはこれぐらいにしときましょうか」

「ゆ、許してくれるのか…?」

「え、何で?」

「「「えっ!?」」」

「流石に無かった事にはしないわよ。取りあえずあなた達の荷物を…」

 

 エルフィナは男達の天幕に向かい、遠慮なく中に入って荷物を全部持ってきた。

 

「お、おい!何を…ゲフンゲフン!んんっ、何をする気だ…?」

「何って見ての通り、慰謝料を貰うんだけど?」

 

 大声を出し掛けてたが先ほどの惨状を思い出してすぐに小声に切り替えて問い掛けるとエルフィナは堂々と宣言した。

 

「ちょちょちょ!?待て待て待て!?」

「金は勘弁してくれよ!?」

「ただでさえ最近金欠なのに持っていく気かよ!?」

「当たり前じゃない、何言ってるの?って、本当に入ってないわね…」

 

 財布を見つけたエルフィナだが、どの財布の中身も銅貨が数枚しか入ってなかった。仕方なく何か他に無いかと漁っていくものの碌な物が入ってなかった。

 

「しけてるわねぇ…本当に何も無いじゃないの」

「エルフィナ、朝食が…何で強盗みたいな事してんだよ…」

「あらシリウスちゃん。慰謝料よ。慰謝料」

「ああ、そういう…なら食料辺りでいいんじゃないか?」

「そっちも全然無くてね…というより食べ掛けばっかりよ」

「なら駄目だな。なら何も無くてもいいよ」

「…まあ、そうね。こんな事に時間を割く事も無いわね。とはいえ、解いた瞬間に襲われないとも言い切れないからこのまま放置していきましょうか」

「そんな!?」

「何もしねえよ!」

「頼むから解いてくれぇ!」

「嫌よ。魔物避けは置いといて上げるから次来た人にでも解いてもらいなさい。じゃあね」

 

 シリウス達は男達を放置して朝食を取り、天幕を片づけてさっさと立ち去った。一部始終を見ていた行商人なども気にする素振りは見せたものの何もせずに立ち去っていった。

 

「誰かー!解いてくれー!」

「もう悪い事しねえよー!」

「助けてくれー!」

 

 男達の情けない声が空しく響き渡り、日暮れ前に野営地にやってきた別のハンター達に解放されるまでそのままだった。襲ってきた男達の事を記憶から消したシリウス達はトルプナートへ向けてのんびり歩いている。

 その後は特に何事も起こらずに歩き続けて六日後、ようやくトルプナートが見えてきた。外から見ても分かるほどの分厚い城壁に多数の兵士が見張りをしており、まさしく難攻不落の城塞であった。

 

「でっけぇ…」

「ここほどの城塞都市は中々無いからね」

「ここ、良い思い出、無い」

「なら予定通り一泊だけしてさっさと出るか…ん?」

 

 シリウス達がトルプナートに近づいていると城門から兵士達が駆け出してきてシリウス達の前に立ちふさがり槍を向けてきた。

 

「おいおい、随分なご挨拶だな」

「もう、どういうつもり?」

「ひぇ…」

 

 槍を向けられて怯えるシェネドを庇ってシリウスとエルフィナは前に出た。すると兵士達の後ろから黒いフルプレートアーマーとフルフェイスメットと大盾を持った一際身体の大きい隊長らしき者が出てきた。

 

「遂に来おったな賊共が!だがこの“黒棘”のアッデイがいる限り、トルプナートには入れさせんぞ!」

「「「…はぁ?」」」

 

 

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