エルヴェの森を彷徨いルジャナフスクの古城に着いてから七日が経った。
いつものように着替え終わったシリウス達は食堂へ向かいレネが作ってくれた朝食に舌鼓を打っている。レネも分かっているのでウェズンとハダルとリゲル用の食事をちゃんと別で用意している。朝食を食べているシリウス達だがその場にはルジャナフスクはいなかった。
「ルジャナフスクはどうしたんだ?」
「坊ちゃまは部屋でコソコソしてたぞ。ご飯だって言っても今忙しいって断りやがった。後で正義のレネちゃんパンチをお見舞いしてやる」
「…あー、ほどほどにな。スピカ~、あ~ん」
無表情ながらも怒り心頭なレネがシャドーボクシングをしているのを見て苦笑しながらポラリス達に食べさせている。朝食後、真っ直ぐ蔵書室へ向かったピーニとシェネドを見送り、シリウスとエルフィナは一度部屋に戻り何をしようか考えながらポラリス達を撫でていたら、廊下からルジャナフスクとレネが言い争う声が聞こえてきた。
「ええい、貴様一体何をするか。こちらを見た瞬間ドロップキックなどかましおって。折角作った物が台無しになるところだったぞ」
「やちゃましい。レネちゃんのご飯を無視する奴はタダじゃ置かねえ。大人しく正義のレネちゃんパンチを喰らえー」
「何訳分からん事を言っておる」
騒ぎながらもルジャナフスクとレネはシリウス達の部屋に入ってきた。
「待たせたな。これを子供達に贈ろう」
「おぉ…」
「あらまあ…」
「おおん?」
ルジャナフスクが取り出したのは可愛らしい動物のぬいぐるみだった。三つもありそれぞれ犬と猫と牛のぬいぐるみでシリウスが作ったぬいぐるみよりも完成度が高く目や耳の位置もズレていなかった。
「おぅ…マジかよ…私のより完成度たけぇ…私の立場が…」
「これ凄いわねー。お店で出しても何の違和感も無いわ。こういうぬいぐるみを作った事があったの?」
「いや、無い。だがシリウスのぬいぐるみを検分したのでな。そのおかげで思ったよりも容易くできた」
シリウスの作ったぬいぐるみと並べてもその違いは一目瞭然で、シリウスのは手作り感が満載なのに対して、ルジャナフスクのは店に置かれても何ら違和感が無いレベルの完成度を誇っていた。しかもぬいぐるみを作った事が無いのにこの完成度なので、違いの差を見せつけられたシリウスはかなり落ち込んでおりベッドに倒れ込んでいる。ベッドに倒れたシリウスを心配してポラリス達がシリウスをペチペチと叩いたり、頭を撫でたり、頬擦りしたり、甘噛みしたりして慰めている。
「何故そこまで落ち込む?」
「何故って…そら初めて作ってこの差は落ち込むでしょ…」
「我がここまでの完成度になったのは数多の人形を作ってきたからだ。その経験がある故の完成度だ。手探りで一から作り上げたシリウスと比べるものではない」
「そうかぁ…?そうかも…」
「おおー、可愛いなー。レネちゃんも欲しいぞ」
「言うと思ったわ。ほれ」
「おおー」
予想していたのか、ぬいぐるみを欲しがったレネにルジャナフスクは懐からぬいぐるみを取り出してレネに手渡したが、渡したぬいぐるみはデフォルメされているが何故か幼虫の姿をしていた。
「…いや何で幼虫?」
「こやつは昔から虫が好きらしくてな。メイドの仕事をほっぽり出して森で虫捕りをした事もある。我も幾度も巻き込まれたわ」
「あ~♪う~♪」
「いぬしゃん!ねこしゃん!」
「ぉぉ…うし、さん…」
「…まあ、いっか。ポラリス達も嬉しそうだし。ポラリス~、アトリア~、スピカ~。おじちゃんが皆のために作ってくれたんだよ~。ちゃんとありがとうって言おうね」
「あ~う~」
「あーとー!」
「…ぁ、あり、が、と…」
「うむ」
ぬいぐるみを持って満面の笑みでルジャナフスクにお礼を言ったポラリスとアトリアと恥ずかしそうにぬいぐるみで顔を隠しながらお礼を言ったスピカにルジャナフスクは静かに頷いた。ベッドの上でレネと共にシリウスが作ったぬいぐるみとルジャナフスクが作ったぬいぐるみで遊び始めたポラリス達をシリウス達は少し離れた所から見守っている。
「ぬいぐるみ作ってくれてありがとね」
「詫びの品なのだから礼は不要だ。ところでだ、催促する訳ではないが、いつ頃出るつもりだ?」
「んー…もう二、三日ってところ、か?」
「そうねぇ…それぐらいかしらね。シェネドも文句は言わないでしょ」
「そうか。どこに行くつもりだ?」
「まずはアールレディアかな。その後は何時になるかは分からないけどフェアンダリアに行く予定」
「ふむ…大丈夫だとは思うが、一応確認しておくか…」
「何か言った?」
「何でもない」
ルジャナフスクの独り言に引っ掛かりながらもシリウスは楽しそうに遊んでいるポラリス達を眺めている。
「そーら、虫さんが乗った牛さんが来たぞー」
「う~♪う~♪」
「(プルプル)♪」
「かちぇら!ねこしゃん!」
「ブルル…」
「シャー♪」
「くまさん、と、ねずみ、さん…」
「ワフ?ワン!」
レネは牛のぬいぐるみの上に虫のぬいぐるみを乗せてポラリスの傍を通らせ、猫のぬいぐるみの頭の上にカペラが乗りアトリアがぬいぐるみごとカペラを抱き締め、ウェズンが熊のぬいぐるみを咥えてスピカの顔に近づけ、ハダルはカピバラのぬいぐるみの上でとぐろを巻き、リゲルは犬のぬいぐるみと対峙してちょっかいを掛けて楽しく遊んでいる。
「すっかり仲良くなったな」
「レネって子供の扱いが上手なのね。あやした事があるの?」
「いや、無いはずだ。まあ、あやつの精神年齢は低いから別段不思議ではないがな」
「何かレネちゃんの悪口が聞こえた気がしたぞ」
「言っておらん。気にせず続けよ」
「むー?まあいいや。そーれ、牛と兎の突進だー。喰らえー」
「あ~♪」
「キャッキャッ♪」
「わ、わあ…!?」
「(プルプル)♪」
「ヒィン♪」
「シャー♪」
「ワフ♪」
ぬいぐるみの突進を喰らって皆転がったところにぬいぐるみを乗せられて楽しそうに笑うポラリス達。
「(可愛いな…やっぱりうちの娘達は世界一可愛い。異論は認めん…そういや少し前からアルヘナに会えていないな。何度も夢の中に行こうとしても弾かれる感じが…ま、まさか、顔も見たくないって思われてるとか…?私、気づかないうちに何かしちゃったか?ノーウ!なんてこった…!可及的速やかに何とかせねば…!)」
ほっこりとした表情でポラリス達を見守っていたシリウスだったが、ふとアルヘナに会えない事を思い出して気づかないうちに自分が何かしてしまったのではないかと気が気でなくなり焦り始めていた。
「シリウスよ、どうした?何を焦っておる?」
「シリウスちゃん?どうしちゃったの?」
「あわわわわ…!?な、何とかせねば…!」
エルフィナとルジャナフスクの声も聞こえないぐらい慌てふためており、事態解決のため必死に考えている。シリウスは深刻に考えているが、別にシリウスが知らず知らずのうちに何かをしたという訳では無い。
アルヘナがシリウスに命令してルジャナフスクがレネの新しい身体に魂を移している儀式を覗き見した件でシリウスはアルヘナの事は話さずアルヘナの分まで謝罪して頭を下げた。シリウスにとってはアルヘナはもう娘なので親が頭を下げるのは当然だと思っての行動だったが、エルフィナ達やアルヘナにとっては青天の霹靂ともいえるほどの衝撃だった。エルフィナ達はアルヘナの事をシリウスの子供だとは思っていなかったのでそこまで大切な人だと考え、アルヘナは何故そこまでするのかと理解できなかった。今まで散々娘になれと言われ続けてきたので自分が娘だから代わりに頭を下げたのか、これが愛というものなのかとひたすら思考し続けた。シリウスが夢の中に入ろうとしているのは分かっていたが、何故か会おうと思うと胸がモヤモヤしだしたので会わずにいた。恥ずかしいという感情を知らないアルヘナは、その胸のモヤモヤが何なのか、愛とは何なのかと現実逃避気味に考え続けている。
アルヘナが相当絆されている事に気づいていないシリウスは自分の所為で嫌われたと思っており、何とかご機嫌取りをせねばと必死に考えている。
「(アルヘナの好きな事は何だ!?ルジャナフスクの儀式に興味を示していたから魔法関連の何かか!?いや、呪法の方がいいか!?うわーん!どうしたらいいんだー!)」
「ちょっとシリウスちゃん、本当にどうしたの?」
「何を頭を抱えておる。子供達も見ておるぞ。落ち着かんか」
「あいたっ!?」
頭を抱え出したシリウスの額にルジャナフスクはデコピンを放って正気に戻したが、デコピンの威力が強過ぎてシリウスは大きく仰け反って地面に倒れそうになりエルフィナが慌てて支えた。
「わっと!?シリウスちゃん、大丈夫?」
「ふおおおぉぉぉ…!」
「むっ、すまん。強過ぎた」
「だ、大丈夫…!」
「何を悩んでいるかは知らんが、あまり思い詰めても逆効果だ。気分転換してからまた考えるといい」
「…そうだな。少し身体を動かすかな。皆~、ママはお外に行くけどどうする~?」
「あ~」
「あーう!ままー!」
「ぃ、いく…」
「(プルプル)」
「ブル」
「シャー」
「ワン!」
「皆も付いていくみたいね」
突如頭を抱え出したシリウスを心配してぬいぐるみ遊びを中断して手を伸ばしてくるポラリス達を順に撫でて安心させた後、ポラリス達を抱いて外に向かった。庭に出るとレネがどこからか大きなソファーを持ってきてくれたのでそこにポラリス達を置いた。
「ここで待っててね~。さて、何をするか?」
「その前にレネがソファーを一人で持ってきた事に疑問を持たないの?」
「レネは凄いからそれぐらいしてもおかしくないでしょ?」
「むふー」
「胸を張るな」
レネが胸を張りルジャナフスクがそれにツッコむのを横目に見ながら、シリウスは取りあえず素振りでもしようと剣を抜いた。
するとエルフィナが短剣を抜いて数歩ほど離れた所に立った。
「エルフィナ?」
「よく考えたらシリウスちゃんと一度も模擬戦した事が無かったからこれを期にしようと思ってね。嫌ならもちろんそれでもいいけど」
「いや、それは構わないけど…突然だな」
「シリウスちゃんが戦ってるのは横目には見てたけどちゃんと見た事が無かったからね。魔戦技と魔法は無し。お互の攻撃は身体には当てず寸止め。降参するか、どう見ても詰みと判断される状況で勝敗を決めるでどう?」
「私は構わんぞ」
「では我が審判をしよう。双方構えよ」
エルフィナは両手をだらんと下ろして自然体に、シリウスは左半身を後ろにして正眼の構えを取り合図を待った。
「では…始め」
始まりの合図があったがエルフィナはその場から動かず、シリウスも構えを取ったまま微動だにしていなかった。
シリウスはポラリス達を抱いて戦う方が圧倒的に多いので必然的に受けに回ってカウンターを狙う戦法を取るようになっており、エルフィナもそれを理解しているので少しの間どう攻めるかを考え、手の平で短剣をクルリと回した後動き出した。魔戦技を使っていないがそれでも素早い動きでシリウスに迫り、シリウスの剣の攻撃範囲手前で突如方向転換しシリウスの左に回り込んだ。シリウスはその動きが見えていたので右足を軸にしてエルフィナの方に向き直り牽制として剣を横に薙いだ。エルフィナは攻撃範囲ギリギリで止まり剣が通り過ぎた後、一気にシリウスの懐に飛び込み短剣を振るった。シリウスはバックステップをしながら剣を引き戻してエルフィナの短剣を受け止め鍔迫り合いに持ち込んだ。
「(思っていた以上に反応が速いわ。普通の人ならさっきの牽制の後そのまま攻めるか、一度離れる事が多いから行動を潰すために懐に飛び込んだけど見事に止められたわ。何だか楽しくなってきたわ…!)」
「(分かってたけど滅茶苦茶速ーい!目で追えるけどほんとギリギリだぞ。隙を見せたら絶対突っ込んでくるって警戒してたから受け止められたけどそう何度も上手くはいかないし…くわぁー!どうしよ…)」
一撃入れるのも無理ゲー過ぎて内心奇声を発しながら表情は澄ましているシリウスに対して、エルフィナはシリウスの実力に舌を巻いており少し楽しくなってきてウズウズしだしている。
鍔迫り合いはエルフィナが力を抜いて後ろに下がった事で終わり、シリウスもそれを見送り剣を構え直したが、それと同時にエルフィナが一気に距離を詰め最速で逆手に持った右手の短剣を振るってきた。剣での迎撃が間に合わないと判断しナックルガードで殴って弾くと間髪入れず左手の短剣が襲ってきたのでそれを右腕の篭手で防ぎ、一瞬硬直した瞬間を狙ってナックルガードでエルフィナに殴り掛かった。エルフィナは頭を下げながらシリウスの右側に移動してガラ空きの胴体に短剣を振るおうとしたが、シリウスが避けられたと分かった瞬間手元で剣を回し逆手に持ってエルフィナ目掛けて突きを放った。エルフィナは攻撃を断念し後ろに下がる事で避けたが内心驚きに溢れていた。
「(今ので決めるつもりだったのにあっさり防がれちゃった。それどころか反撃までしてくるなんて…ああ、もう駄目。完全に切り替わっちゃった…)ふ、ふふ…ふふふふふ…」
「あー…エルフィナ?(やっべぇ…絶対変えちゃいけないスイッチを変えちゃったみたい…)」
エルフィナは不気味な笑い声を上げて満面の笑みで肉食獣の目をしてシリウスを見ていた。シリウスは追い詰められた草食獣みたいに震えたが、そんな事をしても事態が好転する訳ではないので気合いを入れ直した。
エルフィナは左右にユラユラと揺れながらシリウスに少しずつ近づいてきた。
満面の笑み、肉食獣の目、ユラユラと揺れる身体。
傍から見れば完全にヤバい人にしか見えず、それにロックオンされたシリウスは顔が引き攣るのを自覚しながらも警戒を強めている。
リズムよく揺れるエルフィナを注視していたが、突如エルフィナの姿が消えたと思ったらシリウスの懐に飛び込んできていた。揺れる途中で膝を曲げて地面スレスレまで伏せてシリウスの視界から一瞬消えて、その間に地面を蹴ってシリウスの懐に飛び込んだのだ。リズムよく揺れていた所為で左右どちらかに移動した瞬間に来ると無意識に思い込んでしまったのもあり、気がついたらエルフィナが目の前にいるという状況になっていた。
「(マジかよ!?)ちぃっ!」
闇雲に剣を振るっても受け流されて負けると判断して後ろに下がりながらエルフィナの攻撃を防いている。距離を取ろうと下がっているがエルフィナはさせまいとシリウスにピッタリくっ付いて短剣を振るい続けている。エルフィナの猛攻の前に防戦一方のシリウスは何とか逆転の機会を伺っているが、攻撃一辺倒に見えながらもシリウスからのカウンターを警戒しており隙は全く無かった。
「(あ、これ無理ですね)ぬぅっ!?くぅっ!?あっ!?ぐえっ!?」
徐々に速くなっていくエルフィナの攻撃を捌き切れなくなっていき、遂にシリウスの防御が破られ鳩尾に短剣の柄頭が深々と突き刺さった。
「それまで」
「うぐおおおぉぉぉ…!」
「ふぅ…あっ…ご、ごめんなさい、やり過ぎたわ…シリウスちゃん、大丈夫?」
「おごごごご…!」
クリーンヒットしたらしくシリウスは腹を抑えて悶えており、ようやく正気に戻ったエルフィナが慌てて介抱している。
「目にも止まらぬ速さに猛攻、そしてそれを防ぎ対処する防御と判断力。どちらとも相当の実力を持っておるのだな」
「おぉー、どっちも凄かったぞー。ビュンって消えて、グワーってなったけど、それをブンッってやって…とにかく凄かったぞー」
「いやぁ…私もシリウスちゃんがここまでできるなんて思いもしなかったわ…」
ルジャナフスクもレネもエルフィナもシリウスの実力を褒め称えているが、痛みに耐えながら聞いていたシリウスは正直自分にはそこまでの実力は無いと思っている。一撃すら入れる事ができず、ひたすら翻弄されて防御一辺倒だったし、魔戦技を使われると瞬殺されるから三人が言うほど強くは無いと本気で思っていた。当然シリウスの考えは誤りであり、元一級のエルフィナの動きにある程度付いていけて、攻撃を防ぎながら反撃まで行えるものは早々いない。
「ま~」
「ままー」
「かあ、さま…だ、いじょ、ぶ…?」
「(プルプル)」
「ブルル…」
「シャー」
「ワフ」
「だいじょうぶ~?」
「おにゃかいちゃいにょ~?」
「よちよちなにょ~」
「あたちもなでりゅ~」
「いちゃいのいちゃいのとんでけ~」
「んぐっ…ふぅ…もう大丈夫だよ~。皆ありがとね~…そういや今更思い出したんだけどさ。昨日と今朝も見たけどサンダーフォールを落とした所に精霊いなかったんだけど」
「何?ふむ…魔力が足らなかったか?確認してくる。もしかしたらまた魔法を撃つかもしれぬから子供達にも言っておけ」
ポラリス達と精霊達を撫でながら今更思い出した事を言うとルジャナフスクは二日前にサンダーフォールを落とした場所へ向かった。十数秒後、再び雷が落ちて轟音が鳴り響いた。事前にポラリス達の傍にいて耳を塞いでおいたのでポラリス達が泣く事は無かった。雷は一回だけでなく三回も鳴り響き、どうやらルジャナフスクが確実に精霊が生まれるように念入りに魔法を放ったようだ。
「ななな何の音…?」
「ちょっと煩いわよ!また押し潰す気!?」
蔵書室からピーニとシェネドが慌てて出てきた。本の山に下敷きになった時と同じ音が何度も鳴っているのでこのままいればまた潰されるのではと思って出てきてようだ。
「ん?ああ、ちょっと精霊を生み出そうと思ってな」
「…え?」
「あー、そういう…なら他の魔法もあったでしょうが!」
「ちょうどいい魔法がサンダーフォールだったんだから仕方が無いね」
「どういう、事?」
「魔力が濃い場所に魔法を撃てば精霊が生まれるみたいよ」
「…んー?」
ピーニはすぐにピンときたが、シェネドはよく分かっておらずエルフィナから説明を受けても今一理解していなかった。
「戻った。これだけしておけば必ず生まれるだろう。話は変わるがまだ動けるか?」
「私か?まあ、大丈夫だけど」
「では先ほどの続きだ。次の相手はこやつだ」
ルジャナフスクが手を翳すと地面に魔法陣が現れてそこから一体の人形兵が召喚された。
「えっ」
「し、召喚…?」
「正確にはこれは物品召喚だ。無機物限定で離れた場所からこのように呼び出す事が可能だ。シリウスの方は霊体召喚という」
「へー…ん?え、これと戦うの?私が?」
「連戦などよくある事だ。だがこのまま戦えばシリウスの圧勝に終わるだろう。故にこうする」
ルジャナフスクの指から魔力糸が出てきて人形兵にくっつけられた。すると人形兵は滑らかな動きに変わり剣を抜いて盾を構えた。
「今のこれは我が思考して動かしている。これならそこそこできるはずだ。さあ、構えよ」
「マジかよ…はぁ…やるしかないか」
断れる空気ではないので止む無くポラリス達をエルフィナに預けて剣を抜いた。
「ちょっと、一体何を考えてるの?」
「何、先ほどの戦いを見て少し興が乗ったのだ。では行くぞ」
ルジャナフスクの魔力糸で繋がっている人形兵は盾を構えたままシリウスへ駆けていった。
シリウスは溜め息を吐きながら剣を構えた。シリウスにとって予想外の第二ラウンドが始まった。