最近会えていなかったアルヘナと出会えて怒っていない事を確認できて安堵したシリウスだったが、起きる直前にアルヘナから母上殿と言われ歓喜に包まれた。起きてしばらくの間気持ち悪い声で笑っていたが、途中からピーニが起きていてそれを見られてドン引きされた。
「ピーニ?何でそんな顔してこっちを見るんだよ?」
「何でも無いわよ…」
嬉しすぎて見られていた事に気づいていないシリウスはピーニの様子に首を傾げながらポラリス達のおしめを変えていた。
「シリウスちゃーん、何か良い事が合ったのー?」
「合ったな。とびきり良い事が」
「何々ー?教えてー」
「後でな~」
朝起きたら妙に機嫌が良いシリウスを見てエルフィナはアルヘナ関連で進展があったと察した。ウェズンを撫でながら誰もいない時に改めて聞こうと今は黙っておく事にした。
食堂へ向かい朝食を取った後、ルジャナフスクは研究の続きをするため自室へ向かい、エルフィナはレネから食料を貰いにいき、シェネドとピーニは読み掛けの本を読破すべく蔵書室へ向かった。シリウスは洗濯物を干した後、部屋に戻り武器の手入れや荷物の整理を行っている。
「…よし、武器の手入れ完了。荷物の方も食料を入れたらオッケー。お待たせ~。ママと遊ぼっか~」
諸々の準備を終えたシリウスは少し前からジッとシリウスの方を見ていたポラリス達とルース達の元に向かった。構ってほしい、甘えたい、一緒に遊びたいと思ってシリウスを見ていたポラリス達とルース達はシリウスが来てくれて嬉しそうに笑っている。皆を一頻り撫でた後はエルフィナが戻ってくるまでぬいぐるみ遊びをしたり、手遊びをしたり、ウェズンに乗って歩き回ったりして遊んだ。
「ただいまー。よっと」
「お帰り。随分貰ったな」
「これでも減らしてもらったんだけどね。レネったらあれもこれもってドンドン渡してくるんだから」
始めはレネから渡された食料は二週間ほどあったが流石に多過ぎだとエルフィナが削って十日分まで減らした。それでもかなりの量となっており三等分にしても中々の重量だった。
「よっ、ほっ、っと何とか入ったわ」
「ほいほいほいっと。後はこっちに…ふぎぎぎ…!」
「シェネドの分も入れておきましょう。あら?あの子ったら全然荷物持ってないじゃない。次の町に着いたら色々買うように言っとかないと」
荷物に食料を詰め込んでいき水を補給したらいつでも出発できるようになった。ちなみに三等分の割合はエルフィナが4、シリウスが5、シェネドが1だ。シリウスが一番多い理由はマジックバックを持っているからで、シェネドが一番低い理由は単純に力と体力が無いからだ。
「ま~。ば~」
「ままー!ふぃーばぁば!」
「かあさま…おばさま…」
「(プルプル)」
「ヒィン」
「シャー」
「ワン!」
「はやく~」
「あしょぼ~」
「こっち~」
「なでて~」
「うに~」
「あそぶ…」
「あらあら、ふふふ。じゃあ遊びましょうか」
「だな。ほらほら、引っ張らなくてもそっちに行くから」
用事が済むまで大人しく待っていたポラリス達とルース達を撫でた後は皆が満足するまで遊びまくった。さっきと同じようにぬいぐるみ遊びや手遊びだったが、エルフィナも加わった事でポラリス達はずっと笑顔で楽しそうに遊んでいた。今は遊び疲れてシリウスとエルフィナの膝の上でお昼寝をしている。
「さーて、ポラリスちゃん達はお昼寝してるから色々聞けるわね」
「ん?ああ、朝言ってた事か」
シリウスは昨日の夢の中での出来事を語り始めた。アルヘナ関連だろうなとは予想していたが、まさかアルヘナが絆されてシリウスの娘になったとは思いもしておらずポカンと口を開けていた。間抜けな顔を披露しているエルフィナに気づかずシリウスは嬉しそうにアルヘナの事を語っている。
「いやぁ、怒ってるかなって思ってたらまさか母上殿って…うへへ~♪」
「…あー…えー…よ、良かったわ、ね…?」
〈虚無の魔女〉が言っては何だか特筆するような事が無いシリウスに絆されて心を許すとは思ってもみなかったが、シリウスからアルヘナの過去を聞いていくうちにある程度納得はできた。
「なるほどねぇ…一切下心が無くて、行ってきた事を真っ向から否定する事無く、同じ視線で話し掛け続けていたらそりゃ絆されるわね」
「娘になれーって下心満載だったけどな。それに言うほどの事はしてないぞ?ただ話をしただけだし」
「普通は〈虚無の魔女〉って知ればまともに話せないものよ」
「そんなに凄いのか?」
「歴史書にはほぼ必ず書かれてる事よ」
今一〈虚無の魔女〉の恐ろしさを理解していないシリウス。シリウス的には過去にどれだけの事を仕出かしたとしても関係無く大事なのはこれからだ、と思っているためだ。
「すぅ、すぅ…」
「うにゅぅ…」
「んぅ…」
「ふふふ、よしよし」
シリウスに抱き着いて寝ているポラリス達を優しく撫でながら何気なしに外を見てみるとルジャナフスクが古城の外で向かっているのが見えた。
「あ、ルジャナフスクだ」
「あら本当。何しに行くのかしら?」
少し気になってそのまま見ていると少しして森の中で見たボロボロの人形兵達は古城に向かってゾロゾロ集まってきた。
「修理でもするのかな?」
「ああ確かに。あんなにボロボロだものね。それにしても凄い数ね。ここに来る時にあれだけの数に襲われてたら一溜まりも無かったわね」
ボロボロの人形兵達はドンドン集まってきており、その数は百を優に超えていた。人形兵達は列を成して真っ直ぐ古城へ向かい、古城の別館の中へ次々と入っている。
「あっちは入ってなかったな」
「こっちよりボロボロだったから入らなかったけど、あそこに人形兵を置いてるのかしら?」
「そうっぽいな。あ、レネだ」
時折列をはみ出してあらぬ方向に歩く人形兵が出てきているが、別館の入り口で人形兵の数を数えていたレネがはみ出した人形兵の首根っこを掴んで引き摺っていった。しばらくすると外にいた人形兵も全員戻ってきたらしくルジャナフスクも戻ってきた。レネはルジャナフスクに身振り手振りで何かを伝えた後古城へ戻り、ルジャナフスクはそのまま別館の中に入っていった。
「どれだけ人形を作ってたんだろうな?」
「今見ただけでも百は超えてたし…ここの見回りの他にもいると思うから…二百はいそうね」
「よくそれだけ作れたな…」
「ルジャナフスクと戦うとなったら二百前後の人形兵を掻い潜らないといけないわね。本人も凄腕の魔法使いだし、やりたくないわ…」
エルフィナと話している間とポラリスとアトリアとスピカがお昼寝から起きてきた。だがまだ寝惚けているからか頬を撫でるシリウスとエルフィナの指に吸い付いている。
「(うわあああぁぁぁ!可愛いいいぃぃぃ!!でも駄目だあああぁぁぁ!耐えなきゃあああぁぁぁ!)」
「(あはーん!可愛いわあああぁぁぁ!でも駄目よ私ぃ!ここで声を上げちゃあああぁぁぁ!)」
あまりの可愛さに二人は身悶えしながらも起こさないように必死に何かを耐えていた。少しの間指を吸っていたポラリスとアトリアとスピカだったがようやく目が覚めた。指を吸っている事に気づいたポラリスとアトリアは何事もなかったかのようにシリウスとエルフィナに甘えだしたが、スピカだけは違い顔を真っ赤にしてシリウスに抱き着いて顔を隠してしまった。
「ぁぅぁぅぁぅ…」
「んっふふふ♪よしよし♪」
「あらあら♪ふふふ♪」
満面の笑みでスピカを撫でるシリウスとエルフィナ。自分も撫でてとポラリス達とルース達も集まってきて皆をこれでもかと撫でまくるシリウスとエルフィナは幸せでいっぱいだった。
「どーん。ご飯の時間だぜー」
「ノックぐらいしろよ」
「また泣いちゃったらどうするの」
「う~♪」
「れー!」
「ぅ…ごはん…」
「(プルプル)♪」
「ブル♪」
「シャー♪」
「ワフ♪」
「「「「「「ごはん~♪」」」」」」
「皆は喜んでるぞ?」
「はあ、やれやれ…皆~、ご飯食べよっか~」
レネはシェネドとピーニを呼びに蔵書室へ向かい、シリウスとエルフィナは先に食堂へ向かった。食堂に入るとそこにはテーブルの上に所狭しと並ぶ大量の豪華な食事が並べられていた。
肉厚で肉汁溢れるローストビーフ、チーズたっぷりの熱々グラタン、一mはある魚を丸々使ったアクアパッツァ、じっくりコトコトと野菜が溶けて肉が崩れるほど煮込んだビーフシチュー、山盛りのミートボールスパゲッティ、飾り切りされた瑞々しい野菜サラダ、レネお手製の市販の物より柔らかいフワフワのパン。
適量なら涎が溢れるご馳走だが量が半端じゃなかった。
「うわぁ…」
「こ、これは、凄いわね…」
シリウスとエルフィナの顔は引き攣り、ポラリス達とルース達はテーブルの上の料理に目を輝かせている。
「う、うわぁ…」
「ちょっと、こんなに作って大丈夫なの?」
「大丈夫だぞー。レネちゃんは食べれるぞー」
「お前は、本当に…はぁ…」
後から来たシェネドとピーニも引いており、只々頭が痛いルジャナフスクはもう溜め息しか出なかった。だが作ってしまった物は仕方が無いので皆席に着いて夕食を取り始めた。
「美味しい…美味しいけど…」
「全部は、食べれない…」
「うっま!取りあえず食べれるだけ食べればいいのよ!うっま!」
「全く…こんなに作りおって…」
「うま、うま。流石レネちゃん」
「ポラリス~、あ~ん。こんなに作って食料は大丈夫なのか?」
「大丈夫だぞー。今日はお祝いだからいいんだぞー」
「ルース~、あ~ん。お祝い?」
「お祝いではなく壮行会と言ったであろう」
「レネちゃんは覚えてない!」
「胸を張って言うな、全く」
「アトリア~、あ~ん。態々ありがとうな」
「いいって事よ。それよりまた食ってないなー。おらぁん口を開けろ」
「またかよ、むぐっ、モグモグ」
ポラリス達とルース達に食べさせながら、エルフィナとレネに食べさせられて何とか七割ほどは食べたがそこで限界が来た。エルフィナとシェネドも苦しそうにしており、ピーニはテーブルの上で満足げに寝転んでいた。
「げっふぅ…もう、駄目…」
「流石に、これ以上は…」
「もう、無理…」
「あ"ー食った食った」
「ぬぅ…流石に食い過ぎたか」
「何だ何だ、もう限界か?情けないなー。モグモグ」
「貴様は本当によく食うな…だが食い掛けを残すのは意に反するか」
ルジャナフスクはお腹の辺りに手を置くとお腹に魔法陣が現れて一瞬光った。
「よし」
「今の、何だ?割と凄い魔力を感じたけど…」
「体内にある食した物を魔力に即時変換しただけだ。あまり使いたくはないが残すのは意に反するのでな」
「食べた物は放っておいても魔力になるの?」
「そうだ。変換する速度も人と同じにしてある。今回のように即時変換も可能ではあるが、あまり急激に魔力を増やすと身体に負担が掛かる故緊急時にだけにしている」
「今回は緊急時って事?」
「今回は例外中の例外だ。食事を残すのは意に反する」
残った料理は全てルジャナフスクとレネの胃に収まった。食べ過ぎて苦しいシリウス達はウェズンが支えてくれて何とか部屋に戻ってこれた。だがお腹が苦しくてベッドに蹲ったり、椅子にだらしなく座り込んだりで動けなかった。ポラリス達とルース達は三人の様子を心配そうに見ている。
「すぅ~…ふぅ~…よし、少し落ち着いた。ポラリス~、アトリア~、スピカ~、カペラ~、ウェズン~、ハダル~、リゲル~、ルース~、ネプト~、ラヌス~、トゥル~、メルク~、ユテル~。もう大丈夫だよ~」
「ま~」
「ままー」
「かあさま…」
「(プルプル)」
「ブルル」
「シュー」
「ワフ」
「いちゃいの~?」
「よちよち」
「いちゃいの、とんでけ~」
「あたちもにゃでにゃですりゅ~」
「いっぱいにゃでにゃで~」
「よしよし…」
笑顔が戻ってきたシリウスにポラリス達も笑顔になって抱き着き、ルース達は苦しそうにしていたシリウスの頭やお腹を優しく撫でてくれた。愛娘と家族に優しくされてデレデレになっていたシリウスは幸せをお裾分けするためにポラリス達とルース達をエルフィナとシェネドの所に派遣した。
「ほ~ら、フィナおばちゃんとシェネドお姉ちゃんが苦しそうだから撫でてあげて」
「あ~、う~」
「ふぃーばぁば!」
「おばさま…」
「(プルプル)」
「ブルル…」
「シャー」
「ワフ」
「「「「「「にゃでにゃで~」」」」」」
「あぁー…癒されるわー…」
「…私は、どんな反応を、したらいいの…?」
「笑えばいいんじゃね?」
ポラリス達とルース達のおかげで少し楽になり幸せいっぱいのエルフィナと撫でられてもどう反応すればいいか分からず困っているシェネド。シリウスは対照的な反応の二人を笑って見ていた。
苦しさがマシになってきたところでポラリス達とルース達が強請ってきたのでシェネドも巻き込んで皆でぬいぐるみ遊びをする事にした。経験の無いシェネドはアタフタしながらぬいぐるみの手足を動かして一緒に遊び、シリウスとエルフィナはそれを見て笑いながら慣れた手付きでぬいぐるみを動かしている。ポラリス達があくびをするまでぬいぐるみで遊びいつものようにシリウスを中心にしてベッドで眠った。
「アルヘナ~、ママですよ~。どこ~?恥ずかしがらずに出ておいで~」
夢の中にやってきたシリウスは早速アルヘナを探し始めた。だが探せど探せどアルヘナは見つからず暗闇が続くだけだった。
「ぬぅ…こうなったら最後の手段だ…!すぅ…アルヘナー!大好きだぞー!」
シリウスは息を思いっ切り吸った後大声でアルヘナへの好意を叫び出した。
「自尊心に満ち溢れた顔が好きだー!思いもしなかった事を言われて間の抜けた顔が好きだー!普段は仏頂面だけど私が来た時に少し明るくなる顔が好きだー!私に抱き着かれて怒りと恥ずかしさが半々になった真っ赤な顔が好きだー!」
「や、止めんか!何を恥ずかしい事を叫んでおる!?」
「うおおおぉぉぉ!アルヘナー!大好きだぞー!」
「ええい!いい加減にせぬか!」
夢の中でアルヘナへの愛を叫びまくっているシリウスをアルヘナは顔を真っ赤にしながら止めようと出てきた。
「!!アルヘナー!」
「ぬわぁ!?や、止めろー!離せー!」
アルヘナを見つけたシリウスはパアッと顔を明るくしてアルヘナに飛びついた。身長差から押し倒されたアルヘナはシリウスに力強く抱き締められて頬擦りまでされており、何とか引き剥がそうと藻掻いているがシリウスは離さなかった。しばらくの間シリウスの好き放題にされてしまい、ようやく満足した頃にはアルヘナは疲れ切ってグッタリしていた。
「むふ~♪満足。アルヘナ~、大丈夫か~?」
「(チーン)」
「うん、駄目みたいだ。困ったな。少し真面目な話をしようと思ったんだが…」
「…ま、真面目な、話、だと…」
「あ、起きた。そう、真面目な話。ほら、前にスピカに意地悪したじゃん。それをちゃんと謝ろうって言う話」
「意地悪?どの事だ?」
「王都にいた時スピカを苛めて私から離そうとした事だよ」
「ああ、あれか…謝らなければならんのか?」
「そらそうよ。アルヘナは私の娘。スピカも私の娘。つまり二人は姉妹。家族なんだから意地悪したらごめんなさいって謝らないと」
「ぬぅ…だがこの虚無の魔女のわしが頭を下げるのは…」
「虚無の魔女じゃないだろ?私の娘だ。それにアルヘナは皆のお姉ちゃんなんだから。お姉ちゃんはな、ママの次に妹達がその背中を見て育つんだ。皆の模範になるからちゃんとしないといけないんだぞ」
「…まあ、言いたい事は分かった。だがなぁ…」
「その前にここにスピカって呼べるの?」
「呼べるが…おい、まさか今謝れと言うのか?」
「思い立ったが吉日って言うじゃん?ほらほら、早く呼んで。呼ばないと呼ぶまでナデナデの刑にするけど」
「ええい、急かすな!呼べばよいのだろうが!」
アルヘナはプリプリ怒りながらスピカを夢の中へと誘った。何の前兆も無く夢の中へとやってきたスピカは真っ暗な空間に怯えて服をギュッと掴んで涙目になっている。
「スピカ~」
「ぁ…かあさま…」
シリウスの姿を確認してホッとしたスピカをシリウスが抱き上げるとギュッと抱き着いてきた。スピカが落ち着くまで頭と背中を撫でてあやし続けた。
「ぁ、かあさま…ここ…ど、こ…?」
「ここはね、夢の中だよ」
「ゆ、め…?」
「そう、夢の中。アルヘナ、あの子が呼んだんだよ」
「?…っ!?ひぃ…!?」
アルヘナの姿を見た瞬間、スピカは青褪めてガタガタ震えてシリウスに強く抱き着いた。
「どう見ても怯えてるではないか。やはり早すぎだろう」
「でもこういうのは早めに解消した方がいいじゃん。スピカ、大丈夫。もう苛められたりはしないよ。ママがついてるから。ね?」
兎にも角にもスピカを落ち着かせない事には始まらないのでシリウスはスピカを優しく撫でながら声を掛けている。シリウスに言葉を聞いてスピカはアルヘナを見て、シリウスを見てを繰り返し、やがてシリウスの事を信じたのか抱き着く力を弱めた。
「スピカ。あの子はね、アルヘナって言うんだ。ここに呼んだのはスピカに謝りたいからなんだ」
「…あ、るへ、な…?…あやま、る…?」
「うん。前にスピカに意地悪しちゃった事を謝りたいって。ほら、アルヘナ」
「ぬぐぐ…!」
スピカは何が何だか分からないといった表情をしており、シリウスはアルヘナを促すがアルヘナは何やら葛藤していた。シリウスに言いたい事は分かるのだが、それでも今まで虚無の魔女として生きてきた矜持が頭を下げるのを邪魔していた。険しい表情をするアルヘナを見てスピカはまた怯えだしてしまい、シリウスがあやしながらアルヘナをジッと見つめている。
「ぐぬぬ…!…はぁ~…悪かった」
アルヘナの心の中で天秤が揺れに揺れて、最終的にシリウスの方に傾いた。諸々を込めて深い溜め息を吐いた後スピカにちゃんと謝りシリウスも満足げに頷いている。
「スピカ~。ごめんってさ。どうする?」
「ぇ…?ぁ、ぅ…」
謝られたがどうすればいいか分からずオロオロし出すスピカにシリウスは助け舟を出す事にした。
「スピカは意地悪された時は嫌だった?」
「(コクン)」
「そっか。でもね、アルヘナはママとお話してその時の事をね反省、あー、悪い事しちゃったって思うようになったんだ。だから許してあげて?」
スピカはシリウスを見て、アルヘナを見てを繰り返し小さく頷いた。
「うんうん。んじゃあ仲直り」
シリウスはアルヘナの近くにしゃがみ込み、アルヘナとスピカの手を取って握手させた。握手した瞬間スピカはビクッとしたがシリウスがすぐ近くにいるのですぐに力を抜いた。
「ふんっ…別に慣れ合わなくても良かろうに」
「こらこら、何て事言うんだ。スピカは妹だろ?妹にそんな事言っちゃいけません」
「…いも、うと…?」
「そうだよ~。アルヘナはね、ここでずっと一人ぼっちだったんだ。一人ぼっちは寂しいからアルヘナを家族にしようって決めたんだ。スピカはどう思う?」
「ぁ、ぇ、えっと…ひ、とり、ぼち、は、や、だ…さびし、いの、やだ…」
スピカは幼い頃から古塔に一人で閉じ込められていたので一人ぼっちの寂しさは分かっているので反対はしなかった。それどころか一人ぼっちだったアルヘナに共感してアルヘナを見る目から怯えが薄らいだ。
「全く…どいつもこいつもお人好しばかりだな」
「よく言われるよそれ」
ピーニやエルフィナだけでなくアルヘナにまで言われてシリウスはカラカラと笑っていた。楽しそうに笑うシリウスをスピカは興味深そうに見上げ、アルヘナは鼻を鳴らして興味ありませんという顔をしながらも横目でシリウスをちゃっかり見ている。何も無い暗闇の夢の中でシリウスの楽し気な笑い声が響いていた。