アルヘナによる母上殿連呼攻撃により倒れたシリウスだったが、スピカの泣きそうな声で秒で復活した。今は小屋の中で膝の上にスピカを乗せてあやしており、アルヘナは少し離れた所にある椅子に座っている。
「んっふふふ~♪」
「かあ、さま…?」
「気持ち悪い声を出すな」
「いや~、嬉しくってさ♪アルヘナもこっちにおいで~♪」
「行かなければそっちが来るのだろう?選択肢など無いではないか…」
呆れたように溜め息を吐きながらアルヘナは椅子から下りてシリウスの膝の上に座った。
「~~~!アルヘナ~!」
「ぬわぁ!?ええい、抱き着いていいとは言っておらんぞ!離せー!」
「むぎゅ~♪」
「ぁぅ…」
膝の上に乗っているアルヘナとスピカを纏めて抱き締めて頬擦りをするシリウス。開き直ってある程度素直になったアルヘナだが抱き着かれるのは嫌なのか抵抗しており、スピカは恥ずかしがっているが内心嬉しくてされるがままになっている。結局アルヘナの抵抗は無駄に終わりその日はずっとシリウスに抱き締められてスピカと一緒にこれでもかと甘やかされた。
魂だけの存在だがそれでもアルヘナはシリウスよりも倍以上年上だが、シリウスはそんなの関係無いと言わんばかりに自分の愛娘で子供達のお姉ちゃんとして扱っている。こうまで自分を虚無の魔女として扱わない者を見た事が無いアルヘナは逆に清々しさすら感じながらシリウスに頬擦りされていた。起きるまでシリウスに甘やかされまくったアルヘナはシリウス達を見送った後グッタリしながらベッドに倒れ込んだ。疲れ切ったが心の中では感じた事のない満足感が存在しており、自分のチョロさに笑いが込み上げてきた。
一方夢から覚めたシリウスは相変わらず皆に抱き着かれていた。
「(まーた抱き着かれてら…動けないから離れて欲しいんだけどなー)」
今度エルフィナとシェネドに提案しようかとも考えたが、何故か脳裏には笑顔で拒否するエルフィナと号泣一歩手前のシェネドが映し出された。説得は無理そうと小さく溜め息を吐きながら皆を起こさないようにゆっくりと身体を起こした。音を立てないように身支度を整えて天幕を開けて外を見るとルジャナフスクは寝る前と同じ位置で本を読んでおり、既に起きていたレネが朝食を準備し終えて後片付けも終えていた。二人が仲間になってくれて頼もしいが、やる事が無くなって手持無沙汰なのはどうすればいいのかと起きて泣き出すポラリス達のおしめを変えながら何とも言えない表情で考えていた。
「起きたか」
「おはよー。ご飯できてるぞー」
「おはよう。うん、ありがと…」
「どんどんやる事が無くなるわね…」
「眠い…」
「お腹空いたわー」
何とも言えない表情のシリウスとエルフィナにルジャナフスクとレネは首を傾げている。シリウスとエルフィナは食事などの仕事をローテーションする事をルジャナフスクとレネに提案する事を考えながら朝食の昨夜残ったシチューとパンを食べている。
朝食を取り終えて天幕を片づけた後再び歩き出したシリウス一行。道なき道を進んでいるがルジャナフスクは迷う事無く森の中を突き進んでいる。幸運にも最初以降魔物と出くわす事無く代わり映えしない森の中を歩く事四日後、遂にエルヴェの森を抜ける事ができた。
「やっと森を出れたな」
「ずっと森の中にいたから太陽が眩しいわね」
「美味しいご飯、フカフカのベッド、どこ?」
「そうよ。美味しいご飯はどこなのよ?」
「ビリアの町はあそこだ」
ルジャナフスクが指差す方向を見ると既に城壁が見えていた。
「予想以上に近かったな…大丈夫なのか?」
「森の浅い所には魔物もあまり出てこないからね。仮に出てきてもすぐに兵士達がやってきて討伐するから意外と安全よ。そういえば噂の方は大丈夫かしら…?」
「しばらく森の中にいたから噂はもう消えてるんじゃないか?」
「だといいんだけど…」
森を出て土の道を歩いて町に入る列に並びながら周囲を見回すが特に怪しい人物はおらずエルフィナの心配は杞憂だった。噂は確かにビリアの町まで来ていたが、シリウスの言う通り十数日ほど姿が見えなかったので噂は自然と立ち消えていた。シリウスとエルフィナは門番にハンターの証のペンダントを見せて町に入る許可を得れたが、身分証明をできる物を持っていないシェネドとルジャナフスクとレネが足止めを喰らっていた。
「身分を明かせる者が無い者は通行料が必要だ。一人当たり3000リクルだ」
「高い…そんなに、持ってない…」
「レネちゃん、財布持ってないぞ」
「財布なら我が持っておる。少し待て」
「ほい、これ。三人分」
「ふむ…9000リクル、確かに」
「それとギルドってどこにあるの?」
「ギルドなら大通りを真っ直ぐ行った広場にある」
「ありがと」
財布を覗いて肩を落としているシェネドと財布を取り出そうとしているルジャナフスクの横でシリウスが三人分の通行料をさっさと支払ってギルドの場所も聞いていた。
「し、シリウス…」
「む?すまんな。後で返そう」
「これぐらいいいよ。魔物の素材を売ればプラスになるし」
「ままー、おにゃか、しゅーたー」
「もう少しだけ待ってね。アトリアは何が食べたい?」
「うんとね、えっとね。おいちいの!」
「美味しいのか。じゃあ探さないとね」
毎日ルース達と遊んでいるアトリアは最近になって舌足らずだが言葉を話せるようになってきた。愛娘の成長に嬉しいシリウスは笑顔になりながらアトリアを撫でてビリアの町に入っていった。町の中はこれまでの町と同様レンガ造りの家々が建ち並んでいるが、他の町と違う点は入ってすぐ銅像が建っている事だった。
この銅像の人物はビリアン・ドウェルト。英雄と称される人でこの町の名前はこのビリアンから取られた。
かつてこの近辺に凶悪な魔物が住み着いてしまい、当時は村だったビリアを度々襲撃し犠牲者が後を絶たなかった。
そこで立ち上がったのが若きビリアンだった。ビリアンは仲間と共に魔物が寝静まった頃を見計らって夜襲を仕掛けた。魔物の周辺に油を撒いて火を付けて行動を制限し、矢を放って少しずつ削っていった。焦れた魔物が我が身を省みない突撃で包囲網に穴が空いて仲間に危機が迫った時、ビリアンが吶喊して魔物の脳天に剣を突き立てて見事討伐した。村を救ったビリアンだが他の村々も救うべく仲間達と共に旅立っていった。
魔物の襲来、盗賊の略奪、領主の不正、出会った問題をビリアン達は次々と解決していった。噂は広がり善良な者達には希望が芽生え、悪徳な者達は厄介な者が現れたと警戒し出した。その噂は王の耳にも届きビリアン達は王との謁見を許された。ビリアン達の手腕と正義感に敬意を表し騎士の称号を与え騎士団の創設を認めた。ビリアンは結成した騎士団と共に国中を駆け回り悪を撲滅していき、名実共に英雄となり王だけでなく貴族達も多少の思惑はあれど祝福した。
だが輝かしい功績を妬んだ仲間の一人の謀略によりビリアンは謂れのない罪に問われ、全ての称号を剥奪されて王都より追放されてしまった。しかしビリアンは恨み言一つ言わずに一人王都を立ち去った。王都を立ち去ったビリアンはこれまでと変わりなく一人で悪を撲滅していき、その姿から冤罪ではないかという声も上がり始めた。ビリアンの味方である貴族が密かに調べた結果冤罪だと判明し即座に王に報告した。王はすぐに動き計画に加担した者全てを捕らえて尋問した結果、ビリアンの罪はでっち上げだと全ての罪を認めた。王はビリアンを呼び戻し国民にも冤罪だった事を発表し、計画に加担した者全てを処刑すると発表した。
だがそこでビリアンが待ったを掛けた。仲間の心の闇に気づけなかった自分にも責任があると言って罪の減刑を求めてきた。ビリアンのその姿を見た計画を企てた仲間は心の底から悔い、王と国民はその慈悲深さに心を打たれビリアンの要求に答えた。ビリアンはそれからも仲間達と切磋琢磨して国を支え続け、晩年は亡くなるまで後進の育成に努めた。その高潔さと慈悲深さを讃えて大きくなり町となった彼の生まれ育った村の名前に彼の名前を使い銅像も建てた。
だがそんな英雄譚を知らないシリウスは銅像を見てこう思った。
「(誰だ、このハゲちゃびん…)」
酷い感想である。
「ままー、あちゃま、ちゅりゅちゅりゅー」
「「「「「ぶふっ!?」」」」」
アトリアの純粋な発言に周囲の人達は不意打ちを喰らって吹き出した。幸いにも皆肩を震わせて笑いを堪えており、怒っている人はいなかった。シリウスとエルフィナは苦笑し、シェネドは蹲って笑いを堪え、ルジャナフスクはクツクツと笑い、レネは首を傾げている。
「た、確かに、つるつる、だな…ぷっ」
「おいおい、笑っちゃ駄目だろ」
「そういうお前も顔がにやけてるぞ」
「ひぃー、腹がいてぇ…!」
幸いにも皆肩を震わせて笑いを堪えており、怒っている人はいなかった。辺りに笑いが広がっていくが、そこに水を差す者が現れた。
「何て事を言うんですか!?謝りなさい!」
腰に剣を差して金属の胸当てをした短髪の少女が突然アトリアに怒鳴ってきた。
「びえええぇぇぇ!」
「よしよし、怖かったね。大丈夫、ママがいるよ」
いきなり知らない人に怒鳴られて初めはキョトンとしていたが、徐々に泣き顔になっていき、遂に決壊して号泣し出した。シリウスがアトリアをあやしている間にエルフィナは少女の前に立って抗議している。
「ちょっとあなた。子供相手に何て事言うのよ」
「何ですかあなたは!英雄に対して暴言を吐いた子供を躾けようとしただけです!英雄を馬鹿にするなんて!」
「何が躾よ。気に入らない相手に噛みついてるだけじゃない。たかが銅像でしょうが。この子が何したっていうのよ」
睨み合う少女とエルフィナの一触即発な雰囲気に笑っていた周囲の人達も流石に止めに入った。
「おいおい嬢ちゃん、落ち着けって」
「英雄が好きなのは分かるが、こんなちっちゃな子供にそこまで怒鳴らなくてもいいだろ?」
「何の騒ぎだ?」
「ほれ、あの狂犬がまた騒いでるんだよ」
「ああ、またか。飽きねえな」
「何でそっちの味方するんですか!?悪いのはその子でしょ!?後そこ!五月蝿いですよ!」
周囲の人達からアトリアを擁護する言葉ばかり上がり、少女はヒステリックを起こすように喚いている。少女は英雄ビリアンの熱狂的なファンであり、少しでも英雄を貶す言葉が聞こえると誰にでも噛みつく狂犬と住民から噂されていた。エルフィナの冷たい視線にも一切怖気ずに睨み返すしょうじょだったが、エルフィナの後ろから殺気染みた重圧と視線を感じた。
「おい。そろそろいい加減にしろよ…」
「全くだ。幼子の言葉すら受け流せんとは度量の狭い事よ」
「こらー、レネちゃんの友達を苛めるなー」
エルフィナの後ろには堪忍袋の緒が切れる一歩手前なシリウスと冷たい視線で少女を見下ろすルジャナフスクと膨れながらシャドーボクシングをするレネがいた。特にシリウスのドスが利いた低い声と路傍の石を見るような冷たい目に少女や周囲の人達はギョッとした顔で見ていた。
「ま、まあまあ。落ち着けって、な?」
「そうそう。ほら、深呼吸、深呼吸」
「ほらほら、そんな怖い顔してると他の子も泣いちゃうぞ」
周囲の人達が導火線に火が付く寸前のシリウスを必死に宥めていると大通りの方から一人の男が駆けてきた。
「ペリネ!貴様、またか!?」
「げっ、教官…」
教官と呼ばれた男は真っ直ぐ少女、ペリネの元に駆け寄って拳骨を落とした。
「~~~!」
「この馬鹿者がっ!あれほど言ったのに貴様と言う奴は…!」
「で、でも!英雄を侮辱する者は…!」
「黙れっ!今日と言う今日は許さんっ!」
言い訳しようとするペリネに再び拳骨を落とした教官はシリウスに向き直って深々と頭を下げてきた。
「旅のお方!不快な思いをさせて誠に申し訳ない!この者にはキツく言っておくのでどうかご容赦願いたい!」
「…はぁ…まあ、そこまで言うならこちらも引き下がりましょう。ただ、このような事、二度と無い様にお願いしたい」
「忝い!」
教官はもう一度頭を下げた後、殴られて頭を抑えているペリネの耳を引っ張って連れていった。
「いだだだだっ!?き、教官!?千切れます!?」
「黙れっ!何度も指導したのに貴様は!さっさと来い!」
教官に引き摺られていくペリネが見えなくなるまでシリウス達と周囲の人達はその様子を見ていた。
「はぁ…町に入って早々災難だったな」
「本当ね…アトリアちゃん、大丈夫?もう怖い人はいなくなったからねー」
「ぐすっ…」
「大丈夫かー?ほーれほれ」
「教官の方が、怖かった…」
「あの者はいつもああやって噛みつくのか?」
「ああ。英雄が好きで自分も立派な騎士になるっていうのは良い事なんだがな…」
「英雄の事になるとすぐに熱くなって暴走するんだよ」
「この前なんて暴動を起こしてたな。商人とその護衛をボッコボコにしてたぜ」
「まあ、その商人らも悪いんだけどな。あんな見下した言葉は俺もカチンときたもんだ」
「その度に教官が頭を下げてくんだけどな。ああ、教官ってのはあそこにある騎士校の教師の事だ」
住民の指差す方向に町で一番大きな建物があった。
そこは騎士を育成する騎士校で多くの訓練生が騎士になるべく日夜厳しい訓練をしている。先ほどの少女、ペリネもそこの訓練生でビリアンのような立派な騎士になろうと血の滲むような努力をしており、優秀な成績を収めているが、よく騒動を起こすので問題児として扱われていた。
「やれやれ…さて、気を取り直して宿を探すか」
「宿なら中央広場を西に行った所にあるぜ」
宿屋の場所を教えてもらいシリウス達は大通りを歩き始めた。子供を三人抱きかかえてポニーを連れたシリウスと2mを超える大柄なルジャナフスクと大量の荷物を軽々持つメイド服のレネは非常に目立っていて注目を集めていた。シリウスとエルフィナとルジャナフスクは見られているのに気づいているが無視し、シェネドは居心地を悪そうにしながらシリウス達に付いていき、レネは全く気づいていなかった。
中央広場にも英雄ビリアンの銅像が建っており、その周囲には花壇があり色とりどりの花が植えられている。このビリアの町には東門と西門と中央広場と騎士校に計四体の銅像が建てられており、西門は若かりし頃のビリアン、中央広場と騎士校は騎士団長だった頃のビリアン、東門は壮年の頃のビリアンが建てられている。銅像を横目に見ながらシリウス達は先に宿屋へと向かうために西へと歩いた。
旅人用の店が多く並んでいるエリアの中に宿屋がいくつかあったので、そのうちの厩舎がある宿屋に入った。
「はい、いらっしゃい。食事かい?それとも泊まりかい?」
「泊まりだ。部屋割りはどうする?」
「我とレネは同室でよい」
「私達も同室でいいとして…二人部屋を二つでお願いね」
「二人部屋でいいのかい?三人部屋も少ないがあるぞ?」
「二人部屋でいいわ」
「そうか?まあ、そういうなら…えー、泊まりなら一泊3000リクルだ」
「なら三泊で。人数分の代金だ」
シリウスはまたエルフィナとルジャナフスクが財布を出す前に三日分の宿泊代金の45000リクルを出した。
「おおぅ…随分金持ちだな…えー…うん、確かに。これが鍵だ。部屋は二階の奥の二部屋だ。食事は一階の酒場か外で取ってくれ。水場はこの奥にあるから洗濯はそこで済ませてくれ」
宿屋の主人から鍵を貰ったエルフィナ達は先に部屋へ向かい、シリウスは表で待たせているウェズンを厩舎に連れていってから部屋に向かった。部屋はベッドが二つ、テーブルと椅子が二つ、棚が二つのごく普通の部屋だった。その部屋でエルフィナとシェネドが何故か二つのベッドを引っ付けていた。
「何してるんだ?」
「あら、お帰りシリウスちゃん。ベッドを引っ付けてるの」
「ん…引っ付いた。これで、落ちない」
「いや、何で?」
「何でって、皆で寝るためよ」
「…前々から聞きたかったんだけど、何で私に抱き着いて寝るんだ?」
「あら?駄目だった?」
「駄目、なの…?」
「いや、駄目って訳じゃないけど…」
「ならいいじゃない」
「わ、私は、き、気にしない…」
「えぇ…」
軽く流されて何とも言えないシリウスではあったが、二対一なので何も言えず荷物を置き、魔物の素材を持って部屋を出た。ルジャナフスク達と合流してウェズンを迎えにいき、皆で宿屋を出て中央広場のギルドへ向かった。ビリアの町では魔物の討伐などは騎士団が行う事が多いので他の町よりもハンターの数は少なく、ギルドの建物もそこまで大きくなかった。ギルドに入るとロビーでたむろっている数人のハンターがシリウス達を物珍し気に見てきた。
「おい、あれ見ろ」
「ん?子連れ?依頼者か?」
「にしても女だらけだな。どれも良い女だ」
「一人デカい男がいるぞ」
「もう相手がいたのか…ちっ」
不快な会話が聞こえたが一々反応してもキリが無いので無視して受付に向かった。
「ギルドへようこそ。ご依頼ですか?」
「いえ、ハンターです。買い取りをお願いします」
「えっ!?あ、いえ、失礼しました。買い取りならあちらの受付でお願いします」
シリウスとエルフィナはペンダントを見せると職員は子連れのハンターに驚きつつも買い取りの方の受付に案内した。
「買い取りならこっちでしてますよ。どんな素材です?」
「ランドラプターとアースドラゴンですね」
「「「「「ぶふっ!?」」」」」
シリウスとエルフィナは袋とレネのマジックバックに入っていた魔物の素材をテーブルの上に出した。職員達とギルド内にいたハンター達はその素材と量に吹き出した。
「あああアースドラゴン!?」
「嘘だろマジか!?」
「あれ倒せる奴いたのかよ!?」
「騎士団の奴らだって多くの被害を出して撃退するのがやっとだったのに!?」
「い、一体どこで!?どうやって!?」
「どこって、エルヴェの森ですけど…」
「我の魔法で倒した」
何て事無い様に言うシリウスとルジャナフスクに職員達とハンター達は開いた口が塞がらなかった。
アースドラゴンは職員の一人が言ったように騎士団が討伐しようとして返り討ちに合い、撃退するのが精一杯だったぐらい強いのだ。翼が無くブレスも吐かないもののその分膂力が増しており、尻尾の攻撃を喰らえばたとえ鎧を着ていても鎧はへしゃげて中の人はグチャグチャに潰れるほどの威力を持っている。
それを倒したと言われても俄かには信じ難いが目の前には確かにアースドラゴンの素材が存在し、倒さなければ手に入らない骨や肉などもあった。
「あ、あの、もしかして上級のハンターですか…?」
「いや違う。だが、そうだな…ハンターになっておいた方が色々と面倒は少ないか。手続きはどこですればいい?」
「えっ!?あ、えっと、こ、こちらです…」
「あー、ずるーい。レネちゃんもなりたーい」
ハンターですらなく全くの無名の魔法使いと判明して言葉を失っていた職員だが、半ば呆然としながらもルジャナフスクとレネを別の受付に案内した。
「シェネドもハンターになっておけば?また通行料取られるのは嫌だろ?」
「それはそう。行ってくる」
「それで幾らで買い取ってくれるので?」
「り、量が量なので少々お待ちください…」
買い取りの職員は応援を呼ぶために裏へ向かった。シリウスとエルフィナは入り口近くの窓から顔を出しているウェズンとポラリス達を撫でながら手続きが終わるのも待つ事にした。
「ま~♪ば~♪」
「ままー♪ふぃにゃばぁば♪」
「かあさま…おばさま…」
「(プルプル)♪」
「ヒィン♪」
「シャー♪」
「ワフ♪」
「「「「「「じ~」」」」」」
「ごめんね、皆。宿に戻ったら出してあげるからね」
ポラリス達が撫でられているのをカバンの中からジッと見ているルース達に謝りながら甘えてくるポラリス達を撫でている。慈愛に満ちた二人の表情をハンター達はギルドに入ってきたキリっとした表情との落差に驚きながら見つめていた。