転生したらママになりました。   作:大神降ろし

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第百三十七話

 

 ビリアの町にやってきたシリウス達はエルヴェの森で手に入れた魔物の素材を売るためにギルドへやってきた。シェネドとルジャナフスクとレネはハンターへの登録を無事に済ませてシリウス達の所に戻ってきた。

 

「待たせた」

「終わったぞー。見ろこれー」

 

 三人の首からは七級のペンダントが掛けられていた。

 

「六級に上げるには依頼をこなせばいいんだっけ?」

「ええ、そうよ。労働系の依頼をいくつか達成して、装備を整えた後に薬草採取みたいな外で簡単な依頼をこなしていけば六級への昇級試験が受けられるわ。昇級試験も新人が倒せるような魔物の討伐だから三人なら何の問題も無いわ」

「そうか。ではこの後いくつかしてみるとしよう」

「お、お待たせしました…」

 

 この後の予定を立てていると買い取りが終わったらしく職員が袋を持ってきた。

 

「えー…ランドラプターの牙20本、爪30本、鱗と皮がそれぞれ15枚。それからアースドラゴンの牙4本、爪6本、鱗10枚、甲殻2つ、塊肉4つ、血が入った瓶5本、心臓と腸、骨10本。しめて1050000リクルとなりますが…よろしいですか?」

「「「「「1050000!?」」」」」

「はい、それで構いません」

 

 内訳はランドラプターの牙が3000リクル、爪が2000リクル、鱗が1000リクル、皮が3000リクルとなり、アースドラゴンの牙が10000リクル、爪が20000リクル、鱗が5000リクル、甲殻が30000リクル、塊肉が5000リクル、血が50000リクル、心臓が100000リクル、腸が40000リクル、骨が20000リクルとなる。ランドラプターは中級のハンターでもある程度なら狩れるが、アースドラゴンはランドラプターの比では無いぐらい強いためかなりの高値が付いた。特に血と心臓は上位のポーションの材料となるので買い取りの中でも最高値が付いている。

 

「ではこちらを…ふんっ!ふぅ…お確かめください」

 

 職員は金貨が詰まった袋を受付の上に置いた。かなりの重量があるらしく受付が軋むほどだったが、ルジャナフスクはそれを片手で持ち上げて近くのテーブルへ向かった。

 

「あ、あれを片手で…!?」

「魔法使いなのに凄い力だ…!」

 

 職員達が戦々恐々としているが、シリウス達はそれに気づかず椅子に座った。

 

「えー…まずはこれ、全部山分けでいいよね?」

「うむ。それと我の名前だがルジャナ・ドーンとしてある。以後そう呼ぶとよい」

「あー…シェネドが気づいたみたいに家名から気づく人がいるかもしれないから?」

「そうだ」

「分かった、ルジャナ」

「…順応が早いな」

「気にしない気にしない。えー、五等分だから…ほい、これ皆の取り分ね」

 

 買い取り金額の1050000リクルを手早く五等分にしてそれぞれに210000リクルを配った。

 

「シリウスちゃん、計算早いわね…」

「な、何で、分かったの…?」

「やってたらその内シェネドにもできるようになるよ」

「坊ちゃま、これ合ってるのか?」

「ああ、合っている」

「ああ、そうだ。シリウスちゃん、これ。宿代ね」

「あ…え、えっと…ぎ、銀貨が無い…」

「ならシェネド。その金貨一枚とこの銀貨百枚と交換よ」

「う、うん…えっと…いち、に、さん…こ、これで、合ってる…?」

「坊ちゃま、何枚渡せばいいんだ?」

「よい、お前は仕舞ってろ。金貨二枚と銀貨四十枚、我とレネの宿代と通行料の分だ」

「はっ、通行料…!えっと、えっと…!」

「金貨一枚と銀貨二十枚よ」

「え、えっと…!これと、これを…こ、これでいい?」

「別にいいんだけど…」

「駄目よ。受け取りなさい」

 

 エルフィナに強引に手渡されて渋々財布にお金を入れた。シリウスとエルフィナとルジャナフスクは大量の金貨を目にしても何とも思わず、その辺りの事は全く気にしていないレネはいつも通りだが、今まで目にした事が無いぐらいの金貨の量にシェネドは恐れ戦いていた。

 

「こ、こここ、こんなに、き、金貨が、がががが…」

「普通にしてなさい。ハンターをしてるとこれぐらいのお金なんていくらでも見るわよ」

「それはエルフィナぐらいだろ」

「な、何で、平気なの…?」

「そりゃあこれ以上の額を見た事があるからな。もうあそこには行きたくない…」

「あー…あはは…」

 

 遠い目をするシリウスに事情を知っているエルフィナは乾いた笑いしか出なかった。それを知らないシェネドとルジャナフスクとレネは首を傾げていた。

 

「そろそろ出た方がよいだろう。先ほどの金を見て良からぬ事を企む者がいても不思議ではない」

「ルジャナがいるのにそんな事してくる奴がいるかね?」

「徒党を組み分断すれば不可能ではない。ともかく行くぞ」

 

 それぞれ袋を仕舞い席を立って依頼が張られている掲示板へ向かった。掲示板には討伐系の依頼は少なく採取系や労働系が多く張られていた。

 

「騎士団がいるから討伐系は他の町より少ないわね」

「シェネドとルジャナとレネの依頼だから別にいいけどな。それよりこれ、私達が手伝ってもいいのか?」

「別に手伝っちゃいけないなんて決まりは無いから大丈夫よ」

「ふむ…本屋の片づけ。これなら我らでもできそうだな」

「レネちゃん、頑張るぞー」

「シェネドはどれにするんだ?」

「ど、どれにしたらいいか、分からない…」

「うーん、そうねぇ…店番の手伝いなんてどう?」

「で、でも…人と、話すの、苦手…」

「ずっと私達が一緒にいるとも限らないでしょ?少しでも人に慣れないと。じゃあこれにしましょう」

「あ、ああ…!?ま、まだ、心の準備が…!?」

 

 もにょもにょ言っているシェネドを放っておいて依頼を決めたエルフィナは依頼書を持って受付へ向かった。

 

「これ、お願いね」

「あ、はい。えっと受けるのは…」

「我とこの者らだ」

「やるぞー」

「あ、あうぅ…」

「では終わりましたらこの半紙にサインを貰ってください」

 

 職員から半紙を貰ってシリウス達はギルドを出た。ルジャナフスクとレネは依頼の本屋へ向かい、シリウスとエルフィナはシェネドを引っ張って市場の方へ向かった。市場は特筆するようなものが無く、他の町と同じように買い物客で賑わっていた。

 

「えー、店番の手伝いは露天商の果物屋だな」

「あ、あれじゃない?」

 

 エルフィナの指差す方に市場の一番端に果物を撃っている露天商があった。立地が悪いので客もほとんど寄ってこず、前を通った人もチラッと見ただけでそのまま通り過ぎていった。店主は内気で引っ込み思案らしく声を張り上げる事ができず、前を通る客を見ている事しかできなかった。

 

「失礼、少しいいですか?」

「え、あ、はい…な、何でしょうか?」

「依頼を受けた者ですけど」

「あ、ああ、来てくれたんですね。えっと…依頼は、店番を手伝ってほしくて…」

「お客さんを増やせばいいんですね。分かりました。客引きは私達がするので店主さんは会計をお願いします。エルフィナはこの子達をお願い」

「あら、私も手伝うわよ?」

「いや、いいよ。シェネドの依頼で上級のハンターが手伝うのはどうかと思うし。皆~、フィナおばちゃんと待っててね~」

「ふふふ、おいで~♪」

 

 ポラリス達をエルフィナに預けて何をしたらいいか分からないシェネドを引っ張って店の前に立った。

 

「んんっ…新鮮な果物はいかがですかー!」

「し、シリウス…!?」

「ほら、シェネドも声を出せ。じゃないといつまでも終わらんぞ。いらっしゃいませー!」

「え、あ、うぅ…い、いらっしゃいませぇ…」

「声が小さいぞ」

「だ、だってぇ…」

 

 恥ずかしがって声が出ないシェネドに発破をかけているシリウスだが、シェネドはモジモジするだけだった。シリウスの客引きで多少は店の前に来る人は増えてきたが、それでも売り切るにはまだまだ足りなかった。その時、周りの商人の声やシリウスの声を聞いてずっと周りをキョロキョロしていたアトリアがエルフィナの膝の上から下りようとしている。

 

「あら、アトリアちゃん、どうしたの?」

「ままー」

「ママの所に行きたいの?うーん、でもねぇ…」

 

 チラッとポラリス達の方を見たシリウスがアトリアの様子に気がついて近づきアトリアを抱き上げた。

 

「アトリア?どうしたの?」

「い、いら、ちゃまちぇ?」

「!ふ、ふふふ…!アトリア、いらっしゃいませだよ」

「いらっちゃいまちぇ?」

「うん、そうだよ」

「いらっちゃいまちぇー!」

 

 舌足らずな言葉で客引きを手伝い始めたアトリアを見て、店の前を通った人達は微笑ましそうに見つめていた。市場で聞き慣れない子供の声が聞こえて振り返ったり、近くまで来る人達も増えてきて客引きは成功した。

 

「いらっちゃいまちぇー!」

「あらあら、ふふふ…じゃあこれを三つ貰おうかしら?」

「は、はい、30リクルです…」

「私も一つちょうだい!」

 

 アトリアの愛らしい姿に皆絆されて、徐々に買ってくれる人達が増えてきた。アトリアのおかげで果物は順調に売れていき、夕暮れ前には八割ほど売る事ができた。

 

「き、今日はありがとうございました…!おかげでこんなに売れて…!」

「いえいえ、仕事ですし。むしろ全部売る事ができなくて申し訳無いぐらいで」

「い、いやいや、ぼ、僕一人ならここまで売れなかったから…本当にありがとうございます」

「折角ですから幾つか貰っても?もちろんお代は払いますので」

「い、いえいえ!お代なんて…!どうぞ好きなだけ持っていってください…!」

「わ、私の依頼なのに、全然できなかった…」

「初めはこんなものよ。これから頑張ればいいわ」

 

 シェネドが引き受けた依頼だったが、ほとんどシリウスとアトリアが客引きをしており、シェネドは端の方で所在なさげにしながらずっと立っていた。

 

「シェネド」

「うぅ…」

「次、頑張れ」

「うん…」

 

 遠慮する店主に無理矢理お金を渡して林檎に似た果物を幾つか買ったシリウスは、落ち込むシェネドを一言励まして半紙にサインを貰った。宿屋への帰り道でルジャナフスクとレネと合流して宿屋に戻り、夕食を取るために酒場に入り席に着いた。

 

「そっちはどうだった?」

「うむ。積み上げられていた本を棚に移したり、埃を取る依頼であった。その程度レビテーションで事足りる故、依頼期間を数日予定していたらしいが、明日の昼にでも終わる予定だ」

「レネちゃんも頑張ったぞー」

「こっちはほとんどシリウスちゃんとアトリアちゃんがやったわね」

「うぅ…」

「ほう、そうなのか」

「おー、よく頑張ったなー」

「あーい♪」

 

 レネに撫でられて嬉しそうにしているアトリアに対してシェネドは落ち込んでいた。

 

「シェネドもルジャナみたいな片づけの方がよかったかもな」

「まだ、そっちの方が、できそう」

「じゃあ明日はそういう依頼を探しましょうか」

「えぇ…まだ、やるの…?」

「当たり前でしょ。せめて六級にならないとシリウスちゃんと一緒に依頼なんてできないわよ」

「ん?そうなのか?」

「そうよ。シリウスちゃんがシェネドの依頼を手伝う事はできるけど、逆にシェネドがシリウスちゃんの依頼を手伝う事は七級の今じゃできないの。チームを組んで依頼をする時はそのチームで一番ランクが低い人のランクで扱われるの。だから今のシリウスちゃんは七級の依頼しかできないの。もちろん個人で依頼をすれば四級の依頼はできるわ。だからシェネドが六級にはならないとシリウスちゃんと外での依頼は一緒にできないわよ」

「うぅ…それは、やだ…がんばるぅ…」

 

 俯きながらも頑張ると言ったシェネドの頭をシリウスが撫でるとアトリアも慰めるようにシェネドを撫でた。

 

「いーこー」

「ふふふ、良い子だってさ」

「うぅ…子供に、気を遣われる…心に、刺さる…がんばるぅ…」

 

 落ち込むシェネドを慰めていると頼んでいた夕食が運ばれてきた。夕食はマルイモとソーセージのシチューと焼き魚とパンだ。

 

「いただきます。ポラリス~、あ~ん」

「あ~。う~…」

「ありゃ?どうしたの~?」

「あむっ…うーん…レネが作ったご飯の方が美味しいわね…」

「レネの、シチューの方が、好き」

「あんまり美味しくないわね、これ…」

「むおん?今から何か作るか?」

「待て。流石にそれはいかん。ここの料理人が怒りかねん」

「そうね。今日はこれを食べましょう」

「アトリアはどうかな?あ~ん」

「あー。むー…やっ」

「むーん、駄目か…スピカ~、あ~ん」

「あー……ぅ…」

「スピカ、言ってもいいんだよ。まあ、その顔で分かったけど」

 

 レネの料理をずっと食べていたのですっかり舌が肥えたポラリス達は、ここの料理の味が気に食わないらしく、カペラとハダルとリゲルも一口食べたが、これやだと言い出してしまった。皆がもう少し大きかったら有無を言わさず食べさせているが、流石に幼女相手にそれをするのは親バカなシリウスにはできなかった。

 

「うーん…あまりワガママを言わせるのは…でも無理矢理は…まあ正直味もいまいちだし…いやでもなあ…」

「あらあら…まあ、今回は仕方が無いんじゃない?流石にこれを無理矢理食べさせるのは私も気が引けるし」

 

 酒場にいる人達は美味しそうに食べているが、シリウス達はそれ以上に美味しいレネの料理を食べ慣れているのでいまいち食が進まなかった。

 

「…むっ!?ティンときた!さっき買っといたこの果物を食べやすい大きさに切り分けて…ポラリス~、あ~ん」

「う~?あ~。あ~♪」

「よしよし、次はこっちを…ポラリス~、あ~ん」

「あ~。う~…」

「ああ、交互に食べさせるのね。考えたわね」

「アトリア~、あ~ん」

「あー。あーい♪」

「は~い、次はこっち~、あ~ん」

「やっ!」

「アトリア~、これ食べたらこっちの美味しい果物食べてもいいよ~」

「うー…あー…」

「うん、良い子。えらいえらい♪」

 

 味がいまいちな夕食をシリウスは果物と交互に食べさせる事で乗り切った。シリウス達も無言で夕食を掻き込んだ後、口直しに残った果物を食べて厩舎でウェズンと小一時間ほど戯れてからルジャナフスクとレネの部屋に集まった。

 

「今日は何とかなったが、意外なところで落とし穴があったな。何か考えないと」

「美味しすぎて問題が出るとは思わなかったわね」

「ならこれから毎日作るぞー」

「いや、それは大変だろ?」

「大丈夫だぞー。美味しい物、色々、いっぱい、作るぞー」

「…まあ、レネは数百年の経験と知識があるからな。それぐらい容易だろう」

「マジで!?」

「そんなにあったの!?」

「凄い…!」

「はえー、凄いわねー」

 

 ルジャナフスクがまだ人間だった頃、両親を病で亡くし当主になった時に若きルジャナフスクが感じたのは死への恐怖だった。両親の死体を目の当たりにしたルジャナフスクは死にたくない一心で違法であろうと禁術であろうと構わず古今東西様々な魔法の資料を取り寄せて不死の研究の没頭した。当時は貴族間での争いが水面下で多発しており、病に見せかけて毒殺するなどは日常茶飯事なぐらい多くあった。両親の死も誰かの手によるものかもしれないと思ってからは誰かに毒殺されるのではと疑心暗鬼になり誰も信用できなくなり、唯一信じられる幼い頃からの専属メイドのレネだけを傍に置いて身の回りの世話をさせた。料理長が作る豪華な食事にも一切手を付けようとせず、レネが作る料理しか食べようとしなかった。レネもそれが分かっており、怖くて震えるルジャナフスクを何度も見ていて何とかしてあげたいと思いつつ、頼られたのが嬉しくて胸の奥がポカポカしながらずっとルジャナフスクの世話をしていた。研究だけに没頭し続けた結果、エルヴェドーン家は没落してしまったが、ルジャナフスクはもちろんレネも特に何も思わなかった。住処を移してからもルジャナフスクは変わらず研究を続け、レネも変わらずルジャナフスクの世話をし続けた。それはルジャナフスクの術で人形になっても今日まで続けられており、今のレネは全ての家事や雑務を高水準にこなすメイド・オブ・オール・ワークとなっている。

 

「よーぼーがあればどんなのでも作るぞー」

「厨房が無いから無理であろう」

「ならここのを借りるぞー」

「料理を作りたいから貸せと言うのか?確実に機嫌を損ねるぞ」

「ぬぅ…どこかに厨房は落ちてないかー?」

「ある訳無かろう」

 

 レネは家事をする事に何の疑問も持っておらず、誰かのために料理をする事にも抵抗は一切無い。むしろそれが自分の仕事だから盗るなと言わんばかりで、今もシリウス達が言えばすぐにでも料理を作る気満々だ。

 

「子供達の食事は明日考えればよい。もう遅いから休むといい」

「そうだな。じゃ、おやすみ」

 

 二人の部屋から出て自分達の部屋に戻り、いつものようにシリウスを中心に皆仲良く眠った。翌朝、身支度を整えて皆で宿屋を出て屋台でサンドイッチを購入して朝食を取った。屋台の物はポラリス達も美味しそうに食べていたので少しの間食事は外で取る事になった。食べ終わった後はルジャナフスクとレネは依頼の続きをするために再び本屋へ向かい、シリウス達は依頼完了の報告をするためにギルドに向かった。

 

「ほらシェネド、行ってこい」

「う、うん…あ、あの…」

「はい、どのようなご用でしょうか?」

「こ、これ…」

「ああ、依頼完了の報告ですね。お預かりします」

 

 シェネドからサインが書かれた半紙を貰った職員は半紙と書類を確認してから受付の下から報酬が入った袋を出した。

 

「確認しました。こちら報酬になります」

「あ、ありがとうございます…」

 

 無事初めての依頼を達成できたシェネドは報酬の入った袋を大事そうに抱えてシリウス達の所に戻ってきてシリウスに差し出した。

 

「ん」

「いや、それシェネドのだから取っとけって」

「でも、今回できたのは、全部、シリウスのおかげ。だから、上げる」

「貰ったら?シェネドも今はお金に困ってないし」

「えぇ…んー…本当にいいのか?」

「(コクコク)」

 

 シリウスが受け取るまで差し出し続けるのが目に見えるので仕方なく袋を受け取った。袋の中は銀貨が一枚と銅貨が五十枚の150リクル入っていた。

 

「失礼します。エルフィナ・ノーゼルさんでしょうか?」

「そうだけど、何か用かしら?」

「実は―――」

 

 これから何をしようかと話していたら一人の職員がエルフィナに声を掛けてきて何か耳打ちしてきた。それを聞いていくうちにエルフィナの眉間にはドンドン皺が寄っていった。

 

「断るわ。もうそういうのはしないの。それに私はもう〈グローミナス〉じゃないしね」

「そこを何とか曲げていただけませんか?」

「曲げないわ」

「お待ちいただきたい」

 

 そっぽを向いて冷たくあしらうエルフィナに白を基調とした制服を着た神経質そうな痩せ型で頭髪がやや寂しい中年の男性が声を掛けてきた。面倒な事になってきたと表情を隠そうとしないエルフィナにエルフィナをジッと見つめる男性。シリウスは一波乱あるのかとポラリス達をあやしながらその様子を見守っている。

 

 

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