シリウスとの再会を祝して東屋でパーティーが開かれ、そこでレーディが代表して自分達のハンターチームにシリウスを誘った結果、シリウスは了承しエルフィナ達も参加を表明した。その事で皆は酔いや眠気が吹き飛んで喜び合い、レーディに至っては涙を流していた。シリウスの言葉も聞こえないぐらいの喜びようだったのでシリウスは兎にも角にもレーディを泣き止ませていた。
「落ち着いたか?」
「…ああ。すまない…」
数分後、ようやくレーディは泣き止み他の皆も落ち着きを取り戻した。
「ヘッヘッヘ!本当に今日は良い日だな!」
「全くだぜ!俺達に頼もしい仲間ができたんだからな!」
「あんまり期待はするなよ。後ろの方で魔法撃ったり、狩れそうな弱い奴をチマチマやるぐらいしかできないからな」
「いや、どっちもできる時点で凄いからな」
「というかシリウスって魔法も使えるのか?」
「魔法も魔戦技も使えるが、どっちつかずだから弱いぞ」
「いやいやいや!?どっちも使えるのかよ!?」
「普通どっちかだけだぞ!?」
「すっげえ器用だなおい!?」
「シリウスさん、凄いです~!」
「器用ねあんた…」
「凄いですね…確か上位のハンターの方でどちらも使える方はいるとは伺っていますが…」
「ああ、ルゥトさんか」
「彼の場合は付与魔法だからね。しかも時間も掛かるらしいわ。シリウスちゃんの場合はそれも無いからね。すぐに切り替えて攻撃魔法をバンバン撃ってるわ」
「いや凄すぎだろ!?」
「シリウスはとても凄いのだな!俺も見習わねば!」
「そう、シリウスは、とても凄い…!」
「何故シェネドが胸を張る」
「そうだぞー。シリウスは凄いんだぞー」
「お前も胸を張るのか」
シリウスではなくシェネドとレネが自慢げに胸を張り、ルジャナフスクがそれにツッコミをいれている。レーディ達からは尊敬と驚愕の眼差しが送られており、シリウスは居心地が悪く頬を掻きながら視線を逸らしている。
「ま、まあ、それは置いておいてだ…二十人以上のチームって大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。過去には五十人ぐらいいたっていうチーム、いえ、クランもいたって話よ」
「クラン?団じゃないのか?」
「昔はね。ただそれだと傭兵団とかと被るから、数年前にクランと名乗るようギルドで決まったわ。確か二十人以上だったらクラン判定されるはずよ。ただクランを組むってなると…」
「何かデメリットがあるのか?」
「いえそこまでじゃないけど。手続きに費用が掛かるのとギルドからちょーっと警戒されやすくなるぐらいよ」
「何で警戒されるんだ?」
「昔はあちこちにクランがあったんだけど、クラン間の抗争が激化して多くの死傷者が出た事があったの。軍も出動する規模の抗争もあったって話よ。またそんな事が起こるのではってギルド側も警戒してるのよ」
数十年前は一つの町にクランが一つ乃至二つあったのだが、意見の相違や依頼の奪い合いが多発して各クラン間で抗争が勃発、クラン関係者や無関係の一般人にも多くの死傷者が出てしまった。最終的に軍が介入して鎮圧し、当時のクランは全て解散させられ抗争に加担した者全てを処刑して何とか治めた。だがその事件があった所為で当時のギルドは管理責任を負わされて、抗争に加担したクランがあった町のギルド関係者はほとんどが解雇され、一時期深刻な人手不足に陥った。それ以来ギルド側はクラン結成には神経質になるぐらい注意を払うようにしている。
「そんな事があったのか…」
「今でもクランは数えるぐらいしかいないわ。そのどれもが生産系とか商売系だったりするわよ」
「俺達はそんな事しないぜ!」
「そうだ!喧嘩は売らないぜ!」
「でも売ってきたら買うんだろ?」
「当たり前だ!」
「それが駄目なんじゃないのか?」
「まあ結成自体は駄目じゃないし、依頼も普通に受けられるから大きな問題は無いわ。何だったら私が説得するし」
「それは最後の手段にしとこう。取りあえずクランは作れるって訳だ」
「私達は全員で二十五人か。それならクランになるな」
「明日にでもギルドに行って登録しようぜ!」
「その前に決める事が二つあるわよ」
「二つも?」
「一つはリーダーよ。クラン結成する際は代表者を一人選出しないといけないの。ギルドから話がある時に毎回全員で押し掛ける訳には行かないからね」
「じゃあシリウスだな」
「さんせーい!」
「賛成です!」
「「「異議なし!」」」
「うちも構わんで」
「シリウスならいいぞ!」
「うむ!」
「私は誰でもいいけど…まあ彼女でいいんじゃない」
「シリウスなら、私も賛成だ」
「はあっ!?ちょ、いやいやいや!?」
「じゃあシリウスちゃんがリーダーでいいって人は手を上げてー?」
「「「「「はーい!」」」」」
エルフィナの言葉に元気良く手を上げる者と笑いながら手を上げる者がいるが、二十四の手が確かに上がっている。
「嘘だろ…」
「まあまあ、私も手伝うからさ。ね?」
「俺も手伝おう」
「シリウスさん一人に全て押し付けはしませんよ」
「応よ!俺達にあれこれ言ってくれよな!」
「…はぁ~…引き受けるしかないのかよぉ…くっそ、こうなったら自棄だ。やってやる。あれこれ言って色々押し付けてやるぅ…!」
「ハッハッハ!その意気だぜ!」
「期待してるぜリーダー!」
「色々言ってくれよリーダー!」
「ちくしょう…!他人事だと思ってぇ…!」
「「「ハッハッハ!」」」
リーダーを押し付けられたシリウスは自棄になりながら引き受けたが、愉快気に笑っているホウルクァンドとコルベックとオヴェルを悔し気に睨んでいた。
「ふっ…ではリーダーに最初の仕事を頼もうか」
「くぅ…!早速かよぉ…!何なんだよ?」
「クランの名前を決めてもらいたい」
「はあっ!?それ、超重要じゃないか!?そういうのは皆で案を出し合って決めるもんだろ!?私一人に決めろってか!?」
「クックック!良い名前を期待してるぞ?」
「シリウスはー、どんな名前を付けてくれるんだーい?楽しみだなー」
「ワクワク、ワクワク…!」
「くっそ、楽しみやがってぇ…!」
リーダーになった直後にラーゼルから超重要案件を押し付けられ、ピナレスに煽られ、他の皆からも期待する視線に晒されてシリウスは恨めし気に睨みながらも脳内をフルで加速させている。
「(ふおおおぉぉぉ…!?クランの名前なんてそんな簡単に思い浮かぶかよ!くっそ!私一人に押し付けやがって…!絶対あれこれ雑用を押し付けてやるぅ…!………いや、それやっても何か皆笑顔で従うビジョンが過ぎったんだが…いや、今はそれどころじゃない!何か、何か無いか!?ちくしょう!私が浮かぶものなんて星関連だけだぞ!それでクランの名前に合うのなんて……………いや、別に星の名前を付けなくてもいいじゃん………いや選択肢が多くなっただけじゃん!?駄目じゃんか!?ええい!とにかく候補を上げていくしか…!あー…ブラックホール、シューティングスター、アステロイドベルト、スーパーノヴァ、グレートアトラクター…何か違うな…星とかを違う読み方に…スターズ…安直だな。それに何か寂しいし…星…いっぱい…うん?…星団とか、か?確か…えー…あ、アステリズム、だったか?うん、アステリズムと後は…光る…色…輝く…光り輝く、か…でも何か中二病っぽいし…いやクランの名前なんだから多少大袈裟でも…でもなぁ…)うーん…」
腕組みをして眉間にシワを寄せながら歩き回って悩むシリウス。依然としてレーディ達からの期待に満ちた視線は止まず、それがプレッシャーとなって余計に悩ませていた。
「(ひ~ん…そんな期待に満ちた目で見るなぁ…くっそ何でこんな目に…リーダーになったからだよなちくしょうめ!あー、もういいや!却下されたらリーダー特権で丸投げする!)…あー…
ルミナス・アステリズム…とか?」
「ルミナス・アステリズム?」
「なんかかっけえ!」
「いいなそれ!」
「俺それが良い!」
「聞いた事が無い響きですが…何か意味とかはあるのですか?」
「(それ聞く!?小っ恥ずかしくて言えねえよ!)あー…えー…」
「え?何か意味あるのか?」
「どんなどんな?」
「聞きたいです~!」
「教えてよー」
「いけずせんとはよ教えてえなぁ」
興味深々にシリウスが付けたクラン名候補の意味を聞いてくるが、シリウスは顔を引き攣らせながら必死に顔を逸らして有耶無耶にしようとしていた。だが逸らした方にエルフィナが笑顔で回り込んだので、逆を向くとレーディがジッとシリウスを見ていた。
「ねえねえシリウスちゃん。私、知りたいなー」
「どんな意味が?」
「(エルフィナー!?てっめ、ちくしょうがっ!逃げ道無くなった!)えー…あー…」
「む~!教えてくださ~い!」
前からはフィールが抱き着いてシリウスを前後に揺さぶり始め、いよいよ逃げ場が無くなってしまった。こういう時に限っていつもは止めてくれるラーゼルやフログレスも意味を知りたがっているので止めようとしなかった。
「(ぐぬぬ…!くっそ、今日は厄日だ…!)…えっと…光り輝く星々、みたいな、感じ?」
「光り輝く星々!なんかかっけえ!」
「俺気に入った!」
「俺も、ルミナ、なんちゃら!気に入った!」
「もう忘れたの!?」
「えらいおしゃれやねぇ」
「ピカピカ光るお星様!いいですね!」
「ま、まあ、悪くないんじゃない?」
「シリウス、色んな事、知ってる」
「おー、光る星かー」
「光り輝く星々…んん?」
「シリウスさん、もしや…」
「シリウスちゃん、もしかして…」
「ほう…クックック…」
ラーゼルとフログレスとエルフィナとルジャナフスクはシリウスがルミナス・アステリズムの名前に込めた意味を察して、ラーゼルとフログレスは感極まったように震えており、エルフィナも顔を赤くして頬を抑えて潤んだ目でシリウスを見つめ、ルジャナフスクは面白そうに笑っている。色々といっぱいいっぱいだったシリウスはそれを見てキレた。
「~~~ッ!ああそうだよ!皆一人一人が星のように光り輝けばいいなって思って付けたよ!文句あっか!?」
シリウスはクランの名前に込めた想いを逆ギレしながらぶち撒けた。光の当たらない場所にずっといて絶望のどん底に沈んでいた皆にとっては、その想いは全員の胸に突き刺さった。皆は満面の笑みになり、中には涙目になりながらも笑う者もいた。
「うおおおぉぉぉん!嬉しいぜえええぇぇぇ!」
「シリウスは良い奴だなあああぁぁぁ!」
「ちくしょう!涙が止まらねえええぇぇぇ!」
「そこの三馬鹿!五月蝿いぞ!」
シリウスに三馬鹿と呼ばれたホウルクァンドとコルベックとオヴェルは揃って男泣きをしている。
「シリウスさん!私、とっても嬉しいです!」
「おいおい、嬉しい事言ってくれるじゃんかよー」
「ふ、ふふふ…そんなことまで考えててくれてんなぁ。うち、嬉しいわぁ」
「ふ、ふん!べ、別に嬉しくないんだから!…でも、あ、あ…ありがと…」
「本当に変な子ね…」
「私達の事をそこまで考えてくれて嬉しいです!」
「だあぁ!抱き着くんじゃない!微笑ましそうに見るんじゃない!レーディは泣くんじゃない!」
フィールとサリーナに抱き着かれ、ピナレスは嬉しそうに見られ、ムツキに頭を撫でられ、ベナレットにツンデレっぽくお礼を言われ、バロッドからは変な奴を見るような目で見られ、レーディに再び泣かれてシリウスは恥ずかしさで怒鳴っている。
「ハッハッハ!いいなそれ!ハッハッハ!」
「ああ、そうだな…!」
「ヘッヘッヘ!俺達みたいなのが星みたいに輝くか!いいな!」
「ふ、ふふふ…ええ。本当にシリウスさんには敵いませんね…」
「星みたいに輝く…!俺は!今!感動している!」
「うおおおぉぉぉん…!シリウス、俺達の事、そこまで考えて…!うおおおぉぉぉん…!」
「グスッ…うん、嬉しいな…」
「ほっほっほ!おらがお星様か!いいなそれ!ほっほっほ!」
「くぅー!さいっこうだな!」
「ぼ、僕なんかのために…そこまでしなくてもいいのに…で、でも…嬉しいな…」
「あーあー!五月蝿いぞー!何も聞こえなーい!」
男性陣はただひたすらシリウスを褒めたり、込められた想いに感動して涙を流しており、シリウスは女性陣に抱き着かれながらも耳を塞いでいる。
「シリウスちゃん…!私の事もそこまで考えてくれてたなんて…!シリウスちゃーん!」
「ふぐぅ!?」
「そ、そこまで、想われてるなんて…これはもう、両想い確定。じ、純白のヴァージンロード、待ったなし…え、えへへ…」
「クックック!やはりシリウスといれば退屈せずに済むな」
「レネちゃんもお星様みたいにピカピカ輝くのかー?いいなそれー。カッコいいぞー」
そしてエルフィナはシリウスの想いを聞いて感極まって後ろから抱き着き、シェネドは妄想が捗ってニヨニヨしており、ルジャナフスクは愉快そうに笑い、レネは楽しそうにポカポカなオーラを出していた。
「ヘッヘッヘ!今日は最高に良い日だな!」
「そうだな!酒が止まらないぜ!」
「よっしゃあ!今日は飲み明かすぞー!」
「酒の肴、もっとくれー!」
「んお?いいぞー」
「まだ食べるのか」
「あいつらは…」
「ふふふ…まあ、今日ぐらいいいではないですか。では私も」
「ほっほっほ!おらもいくだぁ」
「全く…どいつもこいつも気が緩んじゃって…って、ちょっと!?それは私の酒よ!」
「あらあら、ふふふ…ほんまに今日はええ日やねぇ」
それから再びパーティーは大盛り上がりとなり、酒が進んだ男性陣が顔を赤くしながら肩を組んで歌ったり、無理矢理酒を飲まされてダウンしたシリウスを誰が介抱するかで腕相撲で争って見事レーディが勝ち取ったりと誰も彼もが笑顔のまま夜が更けていった。
そして翌朝。
「うー…頭痛い…」
シリウスが頭痛を訴えながら起きるとそこには惨状が広がっていた。本当に飲み明かしたのであろう男性陣は大の字になっていびきを掻いて寝ていたり、酒樽を抱き締めたまま寝ていたり、食べ終わった空の皿に突っ伏して寝ていたりしていた。女性陣は比較的マシだが涎を垂らして寝ていたり、服が捲りあがってお腹が見えていたりとあられもない姿を見せていた。ポラリス達とエルフィナとシェネドはいつものようにシリウスに抱き着いて寝ており、ルジャナフスクは座って眠り、レネはルジャナフスクの膝枕で寝ていた。
「あーあー…ひっでえ有様…っつう…!頭痛い…もう酒なんて飲まんぞ…」
シリウスは痛む頭を抑えながらポラリス達を起こさないように抱き着いて眠るエルフィナとシェネドを揺さぶって起こそうとしている。
「ほら起きろ。もうとっくに日が昇ってるぞ」
「んー…ふわぁ~…シリウスちゃん、おはよー………ありゃ…ここで寝ちゃったのね」
「んぅ…まだ、眠い…」
「…ん…む?朝か。レネ、起きよ」
「スピー…んが?うにー…むおっ、いつの間に外で…んん?何でこんなに散らかってるんだー?」
「昨日宴をしたからだ。ほれ、見ろ。警邏がこちらを見ておるぞ。寝ている者を起こしてさっさと片づけるぞ」
「分かったぞー。朝食を作るぞー」
「いやそれは後で…聞いておらんな」
レネは起きてすぐにテキパキと動き出し朝食の準備にとりあかったのでルジャナフスクは寝ている者達を起こし始めた。起き出したポラリス達のおしめを変え終わったシリウスも皆を起こすのを手伝い、その様子を見ていた警邏は問題なさそうと判断して見回りに戻っていった。
本当なら片づけるまで見るべきなのだが、アールレディアはとても広く、警邏が担当している所だけを見回るのに時間が掛かるのであまり一つの事に時間を割いている暇は無いのだ。
「ぬおおおぉぉぉ…!頭が痛え…!」
「み、水を…」
「うっぷ…!?吐きそう…」
「夜通し飲むからだ、たわけ。ほら、水だ」
「少しハメを外し過ぎましたね…」
「俺も少々飲み過ぎたようだ…」
「うおー…気持ち悪い…」
「食べ過ぎました…」
「ちょーっと飲み過ぎてしもうたなぁ…」
「は、吐きそう…うっぷ!?」
「ちょちょちょ!?えーっと、えーっと…!ほ、ほらこの空き樽に!」
「はぁ~…皆馬鹿ね」
「でも楽しかった。またやりたい」
シリウスはポラリス達を起きたエルフィナに預けて、二日酔いと食べ過ぎで苦しむ皆を介抱しながら後片付けをしている。結構騒いでいたがそこまで散らかっておらず、片付け自体は割とすぐに済んだ。レネが余った食材で作った胃に優しい朝食を皆で食べてようやく人心地が付いた。
「昨日は良かったな!」
「また美味い飯食いてえな!」
「いつでもいいぞ俺達は!」
「そんな頻繁ににはやりませんからね。今日はギルドへ行きクラン結成の手続きを行いますよ」
「手続きには全員の直筆の署名がいるから皆で行かないといけないの。前は代わりの人が書いても良かったんだけど、それで参加する気が無かった人の名前を書かれてすっごく揉めてね。それ以来本人が書かないといけなくなったの」
「もしメンバーが増えたらそこに追加で書けばいいのか?」
「ええ。逆に抜けたい時は名前を消せばいいの。誰か入れる予定があるの?」
「あー…もしかしたら程度だけど…まあ、あいつらはまだ来ないと思うし、先の話だよ」
後片付けと朝食も終わったので早速クラン結成の手続きをするために全員でギルドへ向かった。アールレディアのギルドは町の中心にあり、建物はあらゆる種族が入れるようにかなり大きく造られており、貴族の屋敷クラスの大きさをしている。中に入ると依頼を吟味するウェアウルフ、仲間と話し合うエルフ、買い取りの受付で交渉しているローシャン、別の受付で職員と話しているジャイアール、ロビーの端で武器の手入れをするドラゴニュートなど多種多様な種族のハンターが多くいた。シリウス達はひしめき合うハンター達の間を通って空いている受付に向かった。
「あら?エルザンドさん。今日は依頼をするの?」
「いや。今日は別の用があって来た。クラン結成の手続きをお願いしたい」
ラーゼルは顔馴染みである女のウェアウルフのギルド職員にここに来た理由を話した。
「クランって…本気なの?エルザンドさんのチームじゃ人数が一人足りないでしょ?」
「本気だ。人数の方も昨夜五名加わってくれたから人数は足りるはずだ」
「そうなの。では確認のためにペンダントを見せてください」
少し険しい表情の職員の言葉を聞いてシリウス達は首に掛けられたハンターの証のペンダントを見せた。全員にペンダントがある事を確認した職員は書類を何枚か取り出してラーゼルに渡した。
「ここの欄にクランに参加する人達全員の名前を書いてね。本人じゃないと駄目だから。それと手続き費用として10000リクルもお願いね」
「高いな…」
「ギルドがクランを警戒してる事は分かってるでしょ?」
「まあ、そうだが…」
「ラーゼル、はいこれ」
昨夜のパーティーでそれなりに散在して懐が寂しい事になっているのを知っているので、シリウスは財布から10000リクルを取り出してラーゼルに渡した。
「む?すまん」
「いいよこれぐらい」
職員に金を渡して書類を受け取ったラーゼルは欄に名前を書き、皆も続いて書いていき最後にシリウスが名前を書いて職員に渡した。
「ふんふん…では最終確認で名前を呼びますね。ラーゼル・エルザンドさん」
「うむ」
「フィール・ニーレディさん」
「は~い」
「イグロイ・ディナードさん」
「おう」
「ベナレット・イーニアさん」
「ええ」
「ハルマス・ライジェットさん」
「ああ」
「ピナレス・フェンフットさん」
「はいよー」
「ヨジェット・ハンレフさん」
「はい」
「バロッド・カーバンドさん」
「ええ…」
「ディラール・ウェルフラントさん」
「ここに!」
「ヘイゼル・イヴェロアさん」
「おう」
「ムツキ・カルメットさん」
「おるでぇ」
「ホウルクァンド・バルベルデさん」
「おう!」
「コルベック・ダリントンさん」
「おうさ!」
「オヴェル・ガーディリーさん」
「おうよ!」
「アスティード・フェイルノーさん」
「ああ!」
「フログレス・ステイラーさん」
「ええ」
「コースター・ハルトマーさん」
「んだ」
「サリーナ・ヴァイツェルさん」
「はい!」
「フーレ・オ・ス・レッテさん」
「えっと…はい」
「レーディさん」
「ああ」
「ルジャナ・ドーンさん」
「うむ」
「レネ・フォンテさん」
「いるぞー」
「シェネド・ノラさん」
「は、はい…」
「エルフィナ・ノーゼルさん…エルフィナ・ノーゼル!?あ、あの〈グローミナス〉の〈緑風〉のエルフィナさん!?」
「ええ、そうだけど。何か問題でも?」
「えっ!?い、いえ、何でもございません…」
エルフィナの名前が書かれていて驚きで声を上げた職員だが、エルフィナから黙ってろと言わんばかりの目で見られて慌てて口を噤んだ。だが職員の声を聞いた者達は皆エルフィナの名前を聞いてざわついている。
「〈緑風〉だって!?」
「おいおいマジかよ…」
「そんな大物だなんでここに…」
「クランって聞こえたぞ」
「ああ…あの半人集団か」
「アイツらと〈緑風〉にどんな繋がりが…?」
「なんか子連れも混じってるが…」
「依頼人だろ?さして気にするほどでもないだろ」
「えーっと…最後にシリウス・ノクティーさん…あの…リーダーって、本当ですか?」
「ええ、まあ」
「「「「「!?」」」」」
依頼人だろうと思っていたシリウスがクランの一人で、しかもリーダーだという事に周りのハンター達は驚きを隠せなかった。受付の職員も何度も書類とシリウスを見返し、ラーゼル達を見るがラーゼル達は頷くだけだった。
「えーっと…で、では確認できましたので、クラン〈ルミナス・アステリズム〉の結成を許可します」
戸惑いつつも書類の確認が済み、判が押されて正式にギルドからクラン結成が認められ、ここに一つのクランが誕生した。クラン結成はすぐにアールレディアのギルドマスターの耳にも入った。ギルドマスターは初老のピテクスで当時のクラン間の抗争の後始末に対処した事があり、緊張した面持ちでクラン〈ルミナス・アステリズム〉の書類を見ていた。
「まさかクランが結成されるとは…またあの時のような事が起きねばいいが…うん?何と〈緑風〉が…うーむ…〈緑風〉がおれば今回のクランは大丈夫、か?いや、結論出すのははまだ早い。見定めねば」
ギルドマスターが気を引き締めている時、シリウス達はクラン結成を喜び合い笑い合っていた。困難な事が合っても皆で乗り越えられると希望に満ちており、周囲の注目を浴びながらシリウス達は新たな一歩を踏み出した。