転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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唐突にUA、お気に入り、評価が爆増して何事かと戦々恐々としている作者です。
8/20 一般総合日間ランキング6位までいただきました。
このような拙作を評価していただき本当にありがとうございます。
これからも頑張って書いていきます。

今回は会話文が多めです。


第三十三話

 

 ジャイアントアントの巣を攻略して無事に町に帰ってきたハンター一行。

 

「あっ!帰ってきたよ!」

「お帰りー!」

「無事に魔物の巣を攻略できたみたいだね!」

「これでしばらく外も安全じゃわい」

「これでぐっすり眠れるな!」

「あんたはいつでもグースカと寝てるじゃないのよ!」

「ワハハ!そうだったか!」

 

 ジャイアントアントの巣を攻略する事は町の人達にも知らされており、攻略できた事で町周辺の安全が確保されたと安堵している。町の人達から手を振られながら一団はギルドへと向かった。

 

「今戻った。巣の攻略も無事に済んだ。ほれ、討伐の証だ」

「そうですか、それは良かった…はい、確認しました。お疲れ様でした。ではこちらが報酬となります」

 

 ヴァレットは討伐した証拠に職員にマザーアントの頭を見せた。

 討伐系の依頼は倒した魔物の一部を証拠に持って帰る決まりになっており、その証拠を見せないと依頼を達成していないと見なされてしまう。昔に倒していないのに達成したと偽った者がいた事でギルドが定めたルールだ。今回のジャイアントアントの巣の場合だとマザーアントの触角または頭を持って来れば達成となる。

 職員から事前に小分けされた報酬を各自受け取っていった。

 

「おーい、集まってくれ!素材の分配をするぞー!」

 

 テーブルをいくつか持ってきてその上に剥いだ魔物の素材を乗せて分配が始まった。相談しながら別けられていき各々が満足する形で分配していった。シリウスにも別けられてソルジャーアント一体とジャイアントアント三体分の素材が別けられた。

 

「むぅ…何で私は一体だけなのよ。しかもジャイアントアント」

「し、仕方が無いじゃないリヤンちゃん。私達倒してないもの」

「私は倒したからな」

「ムキー!その顔止めなさい!腹立つ!」

 

 シリウス渾身のドヤ顔に腹を立てるリヤン。

 

「まあリヤンは置いておいてだ」

「ちょっと!?」

「すいません。素材に関して相談があるんですが」

「おん?どした?」

「なんだなんだ?」

「おう言ってみな。相談に乗ってやる」

 

 シリウスが談笑しているハンター達に声を掛けると何だ何だと寄ってきた。

 

「実は装備を新調したいと思ってるんですが、そういうのまだした事が無くてどうすればいいか相談したくて」

「ほうほう、装備の新調とな」

「それは是非とも聞かねばな」

「おーい皆ー!嬢ちゃんが装備を新しくしたいから知恵貸せってよー!」

「あん?装備?」

「面白そうだな。暇だし付き合ってやるか」

「こういうの考えるのが楽しいんだよな」

「さてさて素材は、ソルジャーアントか」

「取り合えず顎は武器一択だな」

「今使ってるのは何だ?」

「このショートソードですね」

「ほーん?結構上質な鉄使って、って鋼鉄じゃねえか!?」

「オイオイ!新人にこんな武器やったのか!?」

「余ってたんだからいいじゃねえか。それに役に立ってんだからよ」

「渡したのお前かよ!過保護が過ぎるだろうが!」

「ヴァレットよー!お前はよー!ほんとによー!」

 

 ヴァレットの過保護っぷりにハンター達は寄ってたかって責めたてている。ヴァレットは新人の教導に力を注いでいるがその中で気になる者がいれば今のようにかなり過保護となり、見ている方がやり過ぎだと言うぐらいあれもこれもと装備を渡す悪癖がある。

 

「…あっちはほっとくか」

「そうだな」

「まああのショートソードはサブとして、顎の方でメインを作ればいいだろ」

「今より多少長くなるな。その辺は大丈夫か?」

「多分大丈夫です。ダメでも訓練で使えるようにします」

「おお、頼もしい。じゃあ武器はそれでいいとしてだ」

「残ったソルジャーアントの甲殻で鎧の類もできるな」

「うーん…でも一体だけだからな。一部にしかできんな」

「候補としては篭手、胸当て、脚甲、後は盾か」

「何がいいか…ところで嬢ちゃん。その赤ん坊、ずっと抱えてるのか?」

「まあ、そうですね。大体抱っこですね」

「そうなると胸当てはダメか」

「盾もな~、左に付けれねえし、右は剣だろ?」

「なら篭手か脚甲だな」

「嬢ちゃんはどっちがいい?」

「そう、ですね…篭手ですかね」

「ほうほう。その心は?」

「左手でポラリスを抱いてるので全部右手でしなきゃなのでそっちの防御を高めてる方がいいかなと。後、脚甲は今のところ必要なさそうですしね」

「なるほどな。ちゃんと考えてたんだな」

「なら次の機会にでも脚甲を考えてもいいんじゃないか?蹴ったりする時にあると結構便利だぞ?」

「ジャイアントアントの素材ならあるんですが、そっちはダメなんですか?」

「ダメじゃないけど、ジャイアントアントはあんまり丈夫じゃないんだよな」

「俺も試しに作ってみたんだけどよ、すぐに壊れちった…」

「戦闘にはちっとばかし柔いんだよ。生活には全然問題は無いんだがな」

「そうそう。鉄の代わりに色んな所で使ってるぜ。水桶に使ったり、物入れに使ったりしてるぜ。顎の方は薪割りに使ったりするとこもあるな」

「だからまあ、ジャイアントアントの素材は売っちまった方がいいぜ」

「そうなんですか。分かりました、そうします」

「剣と篭手か。いくらぐらいになると思う?」

「素材は持ち込みだからな、いくらかは安くなると思うが…」

「5.6000ぐらいは掛かるんじゃないか?」

「うへえ…そんなにするんですか?」

「鍛冶屋にもよるけどな。そんぐらい掛かると思っとけ」

「また、金が飛ぶ…」

「嬢ちゃんもその悩みを抱えてるのか…」

「こればっかはな…」

「ハンターあるあるだな。装備で金が飛んでいく事は」

 

 世の真理に直面しシリウスとハンター達は揃って溜め息をついている。

 

「ま、まあそれは置いておいてだ。素材はギルドか素材屋が買い取ってくれるぜ」

「売るとしたらどっちの方がいいですか?」

「あー、どっちもどっちだな。ギルドはほぼ一律だし、素材屋は需要と交渉次第じゃ高値で買い取ってくれるが逆もあるからな」

「俺は何回あのクソ親父に買い叩かれた事か…」

「それはお前の交渉が下手なだけだろ」

「んだと!?」

「まあそういう事だ。自信があるなら素材屋、安定ならギルドでいいと思うぜ」

「分かりました。色々相談に乗っていただきありがとうございました」

 

 シリウスは相談に乗ってくれたハンター達に頭を下げてお礼を言って、すっかり蚊帳の外になっていたリヤンとミーリの所に戻った。

 

「よう、お待たせ」

「う、ううん。大丈夫だけど…」

「あんた、よく聞きに行けるわね…」

「そうか?知らない事は知ってる人に聞くもんだろ?」

「そらそうだけど…」

「その、聞きにくいかなって…」

「なんだ?見た目が怖いとか恥ずかしいとかか?そんなもん捨てちまえ。知らない事を聞いて何が悪い?恥ずかしい?聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ。それに話してみると全然怖くないぞ。むしろ滅茶苦茶親身になってくれる」

「ぶぅ…ズルいわそれ」

「…シリウスちゃん、凄いね」

 

 ある意味開き直っているとも取れるシリウスの発言にリヤンとミーリは素直に称賛している。シリウスの真剣な表情と発言に頬を赤らめており褒めた後視線を逸らしている。

 二人の行動に首を傾げているシリウスだが、まあいいかと放置して素材の買い取りをしている受付へ向かった。

 

「すいません。素材を買い取って欲しいのですが」

「はいはい。こちらでしてますよ。それで素材の方は?」

「これです」

「ジャイアントアントですね。数は三つと。フムフム…質の方もまずまず…そうですね、これなら…900リクルでいかがでしょう?」

「それで構いません」

「では…こちらです。お確かめください」

 

 職員からお金の入った袋を貰い空いているテーブルで数え始めた。

 

「銀貨がひぃ、ふぅ、みぃ…うん、900リクル。予想より高かったな」

 

 現在ターエルではゴブリン襲撃の所為で色んな物資の需要が高まっている。町の修繕は手元にある分でどうにかなったが使えば当然その分は無くなるのでどこからか調達しなければならない。商人達は儲けのチャンスと色んな物資を持って訪れており、ハンター達も魔物の素材をかき集めている。

 

「さて、少し時間があるな。今から鍛冶屋に行ってみるか。リヤン、ミーリ。私は行く所があるから先に帰るな」

「あら、そうなの?んじゃまた明日ね」

「じゃあね~ポラリスちゃんもばいば~い」

「あ~」

 

 二人と別れてシリウスはギルドを出ていつもの鍛冶屋へ向かった。鍛冶屋からは金属を叩く音が聞こえなかったが取り合えず入ってみた。

 

「失礼します」

「あん?…ああ、おめえか」

 

 鍛冶屋の店主は水を飲んで休憩している最中だった。

 

「休憩中にすいません。あれでしたら出直しますが」

「ガキが生意気言うんじゃねえ。さっさと用件を言え」

「そうですか?なら、装備の製作を依頼したいのですが」

「装備だぁ?ふんっ、どれだ?」

「剣と篭手です。篭手は右腕だけで構いません。素材はこれで」

「ソルジャーアントか。なら、まず採寸するからこっちに来い」

 

 シリウスは店主に言われた通りに椅子に座り右腕を出した。店主は目盛りが書かれた板を右腕に当てたり、同じく目盛りが書かれた紐を腕に回したりして採寸していく。

 

「…もういいぞ。篭手の方はこれでいいが、剣は今おめえが使ってる物より長く重くなるぞ」

「構いません。扱えるように訓練するだけですので」

「ふんっ、ガキが一丁前な事を…剣と篭手、できるのは七日ほど掛かる。そん時に取りに来い」

「分かりました。お願いします」

 

 伝える事は伝えたと言わんばかりにシリウスに背を向けて早速仕事に取り掛かった店主に頭を下げてシリウスは鍛冶屋を後にした。

 シリウスはラトミシアの家で料理を作るために市場へ買い出しに向かった。市場では相変わらず奥様方が集まっており商人達も負けじと声を張り上げている。シリウスは野菜を売っている露店に近づき奥様方に交じって吟味し始めた。

 

「うーん…具材はマルイモと玉葱モドキのカラタマとナガニンジンと後は…このデカいカボチャモドキにするか。具材はこれでいいとして後はチーズと牛乳だな。すいませーん!マルイモとカラタマとナガニンジンを、十個ずつ!それとそのデッカイの一つ!」

「はいよ!全部で40リクルだ!」

「やっす。やっぱ安いよこの町…はいこれ」

「まいど!」

 

 シリウスは野菜を購入した後は乳製品の露店へ向かった。

 

「チーズ…結構種類があるな。すいませーん、シチューにいれるチーズはどれがオススメですか?」

「いらっしゃい!シチューにならそうだな、こいつがいいぜ!程よい塩味がシチューに溶け出し、持てば溶けたチーズがいい感じに伸びる。うーん、たまらん!」

「ではそれを二つと、こっちはパンのお供とかか。ならこっちは三つほどと後は牛乳を二人、いや、三人分で」

「おうさ!全部で200リクルだ!」

 

 代金を支払って袋に物を詰め込んだ。牛乳は木でできた密封容器に入っている。最後にパンを多めに買って合計300リクルほどとなった。

 

「よっと…これで夕食と明日の朝食分はあるな。さて、ちっと早いけど行きますか」

それなりの量となった食品を持ってラトミシアの家に向かった。

 

 辿り着いた時、ちょうどラトミシアが店を閉めようとしていた。以前のラトミシアより若干やつれている感じがして、シリウスはやっぱり食べてないと確信した。

 

「…あれ、どうしたの?その、荷物は…?」

「ご飯を作りにきたんですよ。その顔、また食べてないんでしょ」

「ギクッ。そ、そんなこと、な、ない、よ?」

「目を見て言いなさい。全く…」

 

 目を逸らしながらバレバレな嘘を言うラトミシアに呆れつつそのまま押してラトミシアの家に入っていった。台所はシリウスが以前に使ってから変わった様子が無かった。つまり使用されていない。ラトミシアの性格上、どこかへ食べに行くなんて事はほぼしないはず。露店で購入するぐらいならできるだろうがあのやつれ具合からそれもしていないと推測した。

 

「―――と考えたんですが、間違ってます?」

「す、すごい…!ぜ、全部合ってる…!」

「合ってちゃダメでしょうが。ちゃんと朝昼晩三食食べなさい」

「で、でも…ご飯、作れないし…そ、それに…人、怖い…声がおっきい人や、グイグイ来る人が、特に…」

「あー、まあ分からなくもないですが、店の人は商売ですから仕方ないでしょ?」

「う、うぅ…」

「あー、んー…まあそれは追々考えていきましょう。取り合えず台所使わせてもらいますね」

「い、いいけど、なんで?そ、その荷物は…?」

「さっき言ったでしょ。ご飯を作りにきたんですよ。まあ私自身も料理はそこまでできないので、その、言い方はアレですけど練習台になってもらおうかと」

「!!ぜ、全然!大丈夫!ど、どんなのでも!ぜ、絶対食べるから!」

 

 玄関先でシリウスの言葉を聞いていなかったラトミシアだったが、ここに来た理由を知り一気にテンションがMAXになった。友達が料理を作って御馳走してくれる、それだけで天に舞い上がるような気持ちになっている。席に座ってソワソワと身体を揺らして今か今かと待ちわびている。

 ラトミシアの大げさすぎる反応に苦笑しつつシリウスは台所で買ってきた物を広げた。野菜の皮を剥き、一口サイズに切り分けて鍋に油を敷き炒め始めて、野菜に火が通った辺りで小麦粉を振りかけてその後牛乳と水を鍋に入れた。ひたすら混ぜ続けとろみが出てきたところでカボチャモドキとチーズを入れてさらに混ぜ続け、チーズが程よく溶け出したところで味見をし塩を入れて調整して完成。

 買ってきたパンとチーズも手頃な大きさに切り分けて皿に盛りつけた。

 

「うーん、こんな感じか…?味も悪くはないし見た目的にも特に問題は無さそうだが…何か簡単に行き過ぎて大丈夫かと思ってしまう。まあいいか。取り合えずこれで反応を見よう。はーい、できましたよー」

 

 ラトミシアの待つテーブルに料理を持っていき配膳していった。ラトミシアは尻尾があればはち切れんばかりに振るほど期待に目を輝かせながら料理を見ている。

 

「はいどうぞ」

「あむっ。!!美味しい!あぐっ!はぐっ!」

「そんなにがっつかなくても誰も取りませんよ、やれやれ。いただきますっと。ポラリスも食べよっか。はい、あ~ん」

「あ~。あ~♪あ~♪」

 

 ポラリス用の薄いシチューを食べたポラリスは美味しいのか手足をバタつかせ笑顔になっている。

 自分の作った料理を笑顔で食べてくれる。その事が存外嬉しくてシリウスも笑顔になり笑顔が溢れる食事となった。

 

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