戻ってきたシリウスは自分がやった事をようやく理解した。
冷汗が出たがやってしまったものは仕方が無いと割り切って書類にサインをした。
「…はい、確認しました。ではペンダントの方を交換いたしますので渡していただけますか?」
「分かりました」
シリウスは首に掛けていたペンダントを外して職員に渡した。職員は受け取ったペンダントを箱の中に入れ、別の箱からペンダントを一つ取り出した。そのペンダントは金でできており、五級である事の証だ。シリウスは渡された金のペンダントを首に掛けた。
「これで嬢ちゃんは晴れて五級になったわけだ」
「五級からは依頼の難易度もさらに上がりますのでご留意ください。それと他の町からの依頼も受ける事ができるようになります」
「と言っても近隣の村や町からの分だけだけどな。だから精々一泊か二泊程度で帰ってこれるさ」
職員とヴァレットから説明を受けた後、ボスの素材を受け取りシリウスはロビーへと戻ってきた。
「すいません、わざわざ持っていただいて」
「気にするな。完治したとはいえ無理は禁物だ。しばらくはのんびりするこった」
「お、戻ってきた」
「よう。さっき皆で話してたんだけどよ、ランクは上がってたか?」
「あー、まあすぐに分かりますよね。はい、上がりました」
シリウスは首元のペンダントを皆に見えるように持ち上げた。
「おお…五級のペンダント」
「やっぱりなってたな」
「ボス猿を倒したんだから上がるんじゃねえかって皆と話してたんだが、予想的中だな」
「こりゃ祝わねえとな!」
「あ、それならシリウスが泊ってる宿屋の女将さんがお祝いで御馳走を作るって言ってたわよ」
「お、ちょうどいい。俺達もそこに行こうぜ」
「今からなら予約も間に合うだろう。俺、ちょっくらひとっ走りしてくるぜ」
「おう。頼んだぞ」
「ひゃっほう!今夜は宴だぜ!」
「知り合いにも声を掛けねえとな!」
「他の奴らも来たがるだろう。俺も行ってくる」
ハンター達はこうしちゃいられないと早速行動し始めた。もう大騒ぎになる事間違い無しでシリウスは完全に諦めた。
「あーあー、もうしーらない」
「シリウスが遠い目をしてる…」
「諦めちゃったんだね…」
「しばらくは嬢ちゃんの噂で大盛り上がりになるだろうな。尾鰭が付く事は間違いないな」
ヴァレットの言葉に肩を落とすシリウスだったが、どうしようもないと割り切って顔を上げた。
「考えても仕方が無い。それよりボスの素材はどうしたらいいと思いますか?」
「そうだな…毛皮は防具に使うとして爪と牙か…うーん、普通ならナイフとかにするんだが、ブラッドファングほどの鋭さは無さそうだからな。まあ、予備に一本ぐらい作ってもいいかもしれん。爪はそれでいいとして牙はなあ…うーん」
「篭手の先端に付けて突き刺すっていうのは?」
「…お前さん、中々凄い事思いつくな。確かにアリかもしれんが、剣を持つ時にぶつかって持てなくなるかもしれんぞ?」
「じゃあダメですね。うーん、他に何か無いかな…あっ、魔具とかに使うのは?」
「いや、魔具は魔力を持った素材じゃないとダメなんだ。繋ぎで普通の素材も使うが…こいつはどうかな?本職に見てもらわないと何とも言えんな」
魔具の製作には魔力が含まれている素材と繋ぎの素材を専門の技師が専用の器具を使って加工して製作される。素材の良さと技師の腕が高ければ高いほど強い効果を持った魔具が作られる。
「「うーん…」」
ヴァレットとシリウスは腕を組んだり顎に手を添えたりして素材の使い道を悩んでいた。
「まあ、取りあえず魔具に使えるかどうか聞いてから決めればいいだろう。ナイフはブラッドファングのが二本あるんだよな?なら爪を使って予備として一本作ってもいいと思うぞ。毛皮は、そうだな…胴は赤ん坊がいるから左腕に付けてもいいんじゃないか?それならいざっていう時に赤ん坊を庇う事もできるだろうし。残った素材は置いとくもよし、売るもよし、好きな方を選べばいい」
「ふむふむ、なるほど。それも良さそうですね」
「お前達も分かったか?素材を手に入れたらどうすればいいか。今自分に必要な物は何か。ちゃんと考えるんだぞ」
「ほーい」
「はーい」
「本当に分かってるのかこいつら…」
「大丈夫ですよ。返事はこんなだけどちゃんと理解してますよ」
割といい加減な返事をしたリヤンとミーリに不安を持ったヴァレットだが、シリウスが擁護したので大丈夫と思い直した。素材の使い道が決まったところで夜の宴まで一時解散となった。
「じゃあまた夜にな」
「あはは…はい」
「また遠い目をしてる…」
大騒ぎになり自分がその中心に立たされて持ち上げられる事が分かっているのでシリウスは若干憂鬱になっていた。
「はぁ~…行きたくねえ…そらさあ?ちょーっとスゴイ事やったかもしてないけどさ、何もそこまで騒ぎ立てなくてもいいじゃん」
「うわぁ…メッチャ愚痴ってる…」
「こんなシリウスちゃん初めて見た…」
ロビーのテーブルに突っ伏しながら愚痴を溢しているシリウスにリヤンとミーリは若干引いていた。テーブルの上に座っているポラリスが突っ伏しているシリウスの頭を撫でるように叩いている。
「ま~」
「ポラリスは良い子だな~、ぎゅ~ってして頭を撫でちゃう」
「あ~♪」
「まーたやってるわ…」
「ふふふ、いいじゃない」
ポラリスとイチャついて多少回復したシリウスは立ち上がった。
「さて、夕食まで暇だから私は魔具の店に行ってみるが、二人はどうする?」
「面白そうだから付いてくわ」
「私も!」
「んじゃ、行くか」
ポラリスを抱いて素材の入った袋を背負ったシリウスはリヤンとミーリと一緒に魔具が置いてある店に向かった。他愛もない話をしながらだと僅か数分で着いた。
店に入るとそこは様々な魔具が所狭しと置かれていた。指輪や腕輪など分かりやすい物からバスケットボールぐらいの大きさの球体や柱みたいな角柱など用途が分からない物まであった。ただどの魔具にも共通するのが値段の高さでほとんどが万を下回る物が無いぐらい高かった。
「う、うわあ…たっか…」
「り、リヤンちゃん。絶対、ぜーったい壊さないでよ…」
「わ、分かってるわよ…」
「うーむ、これは一体何に使うんだ?」
「何であんたは変わらないのよ…」
「下手に触ったりしなければ壊さん。意識すればするほどドツボに嵌って壊しかねんぞ」
「むむむ…確かに」
「触らないように…近づかないように…」
シリウスに言われて過剰までに近づかないように商品を見だした二人に苦笑しながらシリウスも商品を見ている。力が上がる指輪、体力が回復する指輪、半透明の盾が出る腕輪、魔法の威力を軽減してくれるペンダント、空を飛べる靴、ドーム型の結界を張る球体、魔物が近寄らなくなる角柱。値段と簡単な説明文が書かれている紙を見ながらシリウスは様々な魔具を見ていた。
「うーむ…こういうのを見るとどれも欲しくなるなあ…まあ無理な話だけど。ローンを全部返して、野営グッズと物資を買い揃えて、いくらぐらい残る?最低でも30000ほどは手元に残しておきたいな。取り合えず今は買うとすればどれにするかと値段を確認しとくか」
シリウスは熱心に魔具を吟味し出して最終的に体力が回復する指輪に目を付けた。
「HPじゃなくてスタミナの方の体力回復(微)と言ったところだなこれ。値段は15000リクルか。うーん、中々高いが…他のよりはマシか。取り合えずこれを目標に金を稼ぐか。あ、後あれ聞いとかないと。すいませーん」
「はいはいいらっしゃいませ!お買い求めですね!」
「いえ違います」
「はあ?ちっ、何だ冷やかしか。買わねえんならさっさと帰んな」
シリウスが客ではないと知ると店長は手のひらを返して追い返そうとしている。リヤンとミーリはムッとするがシリウスは軽く流して不機嫌そうな表情をしている店長に声を掛けた。
「これなんですが魔具に使えますかね?」
「あん?魔物の素材か?……ちょっと待ってろ」
今は客ではないが魔具の製作依頼の客かもしれないと少し思い直し店の奥に引っ込んだ。
「何よあの態度。客じゃないからって偉そうに」
「私も、ちょっとヤだな」
「まあちょっと態度悪いよな」
店長の態度に文句を言っていると店長が奥から器具を持って戻ってきた。
「どれ、そいつ貸してみろ」
言われた通りに店長に素材を渡すと器具に入れた。
「それは何ですか?」
「あん?あー…まあいいか。こいつは素材に含まれる魔力があるかを調べる装置だ。この素材は…魔力は無いな。だが割と良い素材だな。繋ぎには使えそうだ。どうだ、こいつを売る気は無いか?売ってくれるなら、そうだな…牙一本に2000リクル、爪一本に1000リクル出そう」
牙は四本、爪は十本あり、予備のナイフを作る予定なので売れる爪は九本となる。
「うーん、2000リクルに1000リクルか…そうだな…なら、牙二本、爪四本売ります」
「へっへっへ、毎度!」
シリウスはボスの牙を二本と爪を四本受付に置き、店長は受付の下の金庫から金を取り出して袋に入れてシリウスに渡した。
「数えますね。ひぃ、ふぅ、みぃ…銀貨が八十枚、8000リクルありますね。それとあそこの体力を回復する指輪、一応取っといて貰えますか?時期は分からないけど一応買おうと思ってるので」
「おっほ!素材を売ってくれるだけじゃなくて買ってもくれるのか!いいぜ!今回だけ特別だ!」
良質な素材を手に入れただけでなく商品も売れると知ると途端に上機嫌になり、シリウスが買う予定の商品を丁寧に梱包して奥に持っていった。
「ねえいいの?あんなこと言って」
「大丈夫だ。元々買おうと思ってたし、売った事でその資金も入ったからな」
「でも何であの指輪にしたの?他にも色々あったよ?」
「他のは高すぎてな。それに少しでも体力が回復するのはかなり良い事だぞ。あるのとないのでは全然違うからな」
店を出るとリヤンとミーリに買った理由を話しながら宿屋と向かうシリウス。
「…あ、いけない忘れてた」
「ん?何をだ?」
「ほら、薬草採取の依頼に行ったじゃない?」
「…ああ。そういやそうだったな。ボスが出てきてすっかり忘れてた」
「それで依頼完了の報告したって言うの忘れてた。ゴメンね」
「気にするな。それでいくらになったんだ?」
「ふっふーん!聞いて驚きなさい!なんと9500リクルよ!」
「…は?」
「驚くよね。私も驚いて叫んじゃったもの」
「…い、いや、いやいや、いやいやいや。たかが薬草だろ?何でそんな額になったんだ?」
「取れば取るほど追加報酬が出るって書いてあったじゃない?三人合わせて六つあったんだけど、それに一つ1500リクルの値段が付いたのよ」
「それで元々の報酬と合わせて9500か…」
「報酬は私が預かってるからご飯の時に持ってくるね」
「じゃあまた夜にね!」
宿屋の前で二人と別れシリウスは部屋に戻った。途中で厨房から怒号など物凄い音が聞こえて気がしたが無視した。
「はぁ~、やれやれ。色々合ったな…」
シリウスは荷物をその辺に置いてポラリスを抱いたままベッドに寝転がった。
「ボス、強かったな…魔法や魔戦技が使えればこんな怪我しなくても勝てたかもしれんな…よし。魔戦技は置いといて、攻撃系の魔法を何個か会得しなければ」
善は急げとベッドから起き上がり早速ミーリから借りた下級魔法の本を読み始めた。
「無属性、マジックボルト。火属性、ファイアーボール。水属性、バブルブロー。風属性、エアカッター。土属性、ストーンダーツ。氷属性、コールドウインド。雷属性、ライトニング。これで攻撃系の初歩は一通りか。取り合えず全部の術式を覚えて使うのはまた今度だな」
術式はどれも四角の中に丸と簡単なもので、それぞれ丸の位置が少し違ったり丸が少し太かったりするだけでどれも似たようなものだった。
「ぐぬぬ…間違い探しじゃないんだからもっと違いを見せろよな。えーっと、細いのがこっちで、太いのが…」
どれもこれも似ているため全部覚えようとしているシリウスは悪戦苦闘している。
シリウスは全部覚えようとしているが普通の魔法使いはそんなことはせず、自分に適性がある属性の魔法を選んで覚える。適性の属性は一つか二つほどでそれらを中心に覚えていき、平均で十個ほどの魔法を覚えている。記憶力に自信がある魔法使いは二十個ほど覚えていたりするが、シリウスのように取り合えず全部覚えるというのは誰もせず、挑戦する者もいるが結局覚えきれず断念している。本に書かれている魔法を使ってみて自分に合ってると思えば覚え、自分には合わないと思えば覚えない。それが一般的だ。
シリウスはポラリスをあやしつつ宴の時間まで勉強に勤しんでいた。
「…な、何とか、覚えたぞ。ものすっごい不安が残るが…まあ使う時に答え合わせすればいいか。さて、そろそろ行くかね」
本を閉じてお腹が空いているポラリスを抱き上げて部屋を出た。階段から酒場を覗くと既に満席状態となっており皆宴が始まるのを今か今かと待ちわびている。壁側にある一番大きな席の中央が空いており、その両隣にはリヤンとミーリが座っていた。
「絶対あそこだろ…うわぁ、行きたくねえ」
シリウスの復帰祝いと五級昇格祝いを兼ねているので主役は一番良い席に座らされるのは間違いなかった。行きたくはないがシリウスもポラリスもお腹が空いているので行かないという選択肢は無かった。
「はぁ~…行くか」
足取りは非常に重いがシリウスは酒場に足を踏み入れた。
「あ!来た!」
「おうおう!遅かったじゃねえか!」
「待ちくたびれちまったよ!」
「早くやろうぜ!俺はもう腹が減って減って」
「目の前の酒をお預けにされる気持ちが分かるか!?もう我慢出来ねえ!」
「ほらほら!こっちこっち!」
「はいはーい!主役のお通りでーす!」
入った途端に酒場にいた人達から歓声が沸き、ウェイトレス達に連れられて壁側の大きな席に連れられた。
「やーっと来たわね!もうお腹ペコペコよ!」
「シリウスちゃんはここね」
「やっぱり真ん中か…」
「そらそうでしょ。主役が真ん中じゃないとダメでしょ」
「ふふふ。あ!ご飯来たよ!」
「さあさあ!準備できたよ!」
「「「「「ウオオオォォォ!!」」」」」
厨房から女将がウェイトレス達と共に大量の料理を運んできた。それを見て再び歓声が沸き酒場内のテンションは最高潮になっている。全てのテーブルに所狭しと料理と酒が置かれ宴の準備は整った。
「よっしゃ!てめえら!酒は持ったか!?」
「「「「「オオオォォォ!!」」」」」
「よーし!じゃあ早速乾杯しようじゃねえか!」
一人の男が声を上げた後シリウスの方を向いた。
「やっぱり私か…はぁ~」
シリウスは溜め息をつきながら立ち上がると酒場全員の視線が向けられた。
「え~…今回私のためにこのような宴会を開いていただきありがとうございます。まあ、長ったらしい挨拶もあれなんで…乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
シリウスの乾杯の音頭を取ると皆一斉に杯を掲げた。近くの人と杯を打ち合い勢い良く酒を飲み干している。シリウスもリヤンとミーリと杯を打ち合い果実水を飲んだ。
「んぐっ、んぐっ、ぷはー!美味しいー!」
「あーむ。こっちも美味しいよ」
分厚く熱々の肉のステーキや、香草たっぷりの蒸した魚や、トロトロチーズがたっぷり乗ったピザや新鮮な野菜のサラダや、野菜と肉がゴロゴロ入ったシチューなど全てのテーブルに所狭しと並べられている。
女将を始めとした宿屋の料理人だけでは手が回らず近所の奥様方も応援に駆け付けたり、厨房だけでは足らず奥様方の家の台所で作られてから持ってきたりと、宴会が始まる数時間前からフル稼働で作られていた。女将以外の料理人は極度の疲労でダウンしたが、女将と奥様方はピンピンしており宴会にも参加している。
「ポラリス、あ~ん」
「あ~。あ~♪」
シリウスはポラリスにわざわざ作ってもらったポラリス用の宴会の料理を食べさせながら、シリウスもチビチビ飲みながら料理を食べている。
「シリウスちゃーん!」
「あ、ミネアさん」
大分飲んだのか顔が赤くなってほろ酔い気分なミネアがやってきた。
「すごいわ!あっという間に五級になるなんて!でも無茶はもうダメよ!」
「あー、まあ、善処します」
「もう!そればっかり!…まあ、今日はこれ以上言わないでおくわ。折角の宴会なんですもの、楽しまないとね!」
ミネアはシリウスと別れて別のテーブルで始まった酒の早飲み対決に参加しにいった。シリウスは酒場を見ながらご飯を食べているとふと酒場の入り口の方に人影が見えた。
「…なにやってるんだかあの人は」
酒場の入り口から中を覗き込んでいる不審な動きをしているのはラトミシアだった。シリウスのための宴会と聞いて来たはいいが、人がこんなにいっぱいいるとは知らず入るには入れなくなって入り口でウジウジしていた。
「うぅ…入りたいけど…でも、人いっぱい、怖いよ~…」
「そんなとこで何してるんですか?」
「ぴやぁ!?」
蹲っていたラトミシアにシリウスは近寄って声を掛けるとビックリして奇声を上げた。
「あ、あの、えっと、その、あぅ…」
「ああ、言わなくても大丈夫です。来たはいいけど人が大勢いて入れなかったんでしょ?」
「す、すごい。合ってる…!」
「そらわかりますよ。ほら、行きますよ」
「うぇ!?ま、待って!?まだ心の準備が…!」
ラトミシアはシリウスに手を掴まれてそのままシリウスが座っていた席まで引っ張られていった。
「あ、シリウス、って誰?」
「薬師で友達のラトミシアさんだ」
「なん、だと…!?」
「とも、だち…!?」
「何でそんな反応するんだよ」
シリウスの友達と聞いてリヤンとミーリは衝撃を受けている。今までずっと一緒にいたのにいつの間にか友達ができていた事に二人はショックを受けている。というより自分達は友達ではなかったのか?そういえば面と向かって友達と言われていない。リヤンは眉間に皺を寄せ、ミーリは頬を膨らませ、二人とも嫉妬の篭ったジトっとした視線をラトミシアに向けている。二人の視線に怯えてシリウスの背中に隠れるとさらに視線の圧が増した。
「おいおい、止めろって。一体どうし……あ、ああ~、もしかしてそういう…?」
喧嘩腰の二人を見て何かを察したシリウスはニヤニヤしながら二人を見ている。シリウスに察しられて二人は慌てて目どころか身体ごと逸らした。
「やれやれ…リヤンもミーリももう友達だろ?」
「「!!」」
友達だと言われた二人はピクっと反応したが身体は逸らしたままだったが、どちらも耳が赤くなってピクピクと動いているので内心嬉しいようだった。
「くっくっく…ほら、こっちに座って食べましょうか」
「う、うん」
ラトミシアを空いている席に座らせて一緒に食べ始めた。美味しい食事に笑顔になるラトミシアを見てシリウスも笑顔になり、それを横目に見ていたリヤンとミーリは表情には出さないがそんな顔を出させているラトミシアに妬いている。妬くと言ってもそこまで深刻なものではなく、精々ジト目で見たり頬を膨らませる程度だ。
食事も粗方済んだ辺りでテーブルが壁際に寄せられて陽気な音楽が響き渡った。陽気な音楽に乗って皆踊り出し酒場全体が盛り上がり始めた。シリウスも誘われてミーリにポラリスを預けて見知らぬ人たちと手を取り合って踊った。リヤンもその中に入ったり、ラトミシアも引っ張ってこられたが上手く踊れずクルクルと回っていた。
誰もが楽しそうに笑い合っており夜遅くまで笑い声が絶えなかった。