転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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第五十一話

 

 翌朝、窓から入る朝日で目が覚めたシリウス。ポラリスとアトリアはまだ寝ていて、ピーニもモームを枕にして寝ていた。シリウスは起こさないようにベッドから降りてササっと着替えた。着替え終わると家畜小屋のドアが突然開いた。

 

「っ!」

「のわあ!?だ、誰だ!?」

「それはこっちの台詞ですよ。村長から聞いてないんですか?」

 

 突然だったのでシリウスは即座に剣を抜いて侵入者に突きつけたが、よくよく見ると村人だった。剣を突きつけられて腰を抜かした村人だったが、昨日村長に言われた事を思い出した。

 

「…あー、そういや家畜小屋に誰か泊まってるって言ってたな。忘れてた」

「忘れないでくださいよ。ビックリして剣を抜いたじゃないですか…大丈夫ですか?」

「ああ、すまんね」

 

 剣を収めて村人に手を出して起こした。

 

「ふえええぇぇぇ…」

「おっと、失礼しますね」

「ああ。さて、仕事っと」

 

 起きたポラリスが泣き出したのでシリウスはすぐに戻り、村人も家畜の世話を始めた。

 

「ポラリス~、アトリア~、おしめ変えようね~」

「ふえええぇぇぇ…」

「…」

 

 ポラリスとアトリアのおしめを変えて抱き上げるがポラリスは泣き止まなかった。

 

「ふえええぇぇぇ…」

「ポラリス~、どうした~?よしよし」

「…」

「アトリアもよしよし」

 

 寝ていたところにさっきの騒ぎでびっくりして起きたらしく中々泣き止まない。シリウスは二人をギュッと抱き締めてあやし続けた。

 

「あー…すまねえな」

「いえ、私も過敏に反応しましたし」

 

 村人はシリウスに謝りながら家畜を外に連れ出していった。数分後、ようやく泣き止んだもののまだぐずついているので、シリウスはポラリスの額と鼻の頭にキスをした。すると途端に笑顔になりシリウスに手を伸ばしている。

 

「ま~♪」

「は~い、なあに~♪」

「…」

「おっと、アトリアも~、ちゅ~♪」

 

 ポラリスとのやり取りを見ていたアトリアにもシリウスは同じように額と鼻の頭にキスをした。

 

「…朝っぱらからイチャついてるわね」

「ああ、おはよう」

「起きて早々にそんなものを見せられてる私の身にもなってちょうだい。どんな顔をすればいいのよ…」

「そら笑うか、見て見ぬふりをすればいいんじゃないか?」

「そういうことを言ってるんじゃないわよ」

 

 これから三人のイチャつきを毎日見せられると思うとゲンナリしてきたピーニだった。ピーニの枕にされていたモームも起き出してシリウスを見つめていた。

 

「おはよう。朝食はもうちょっと待っててな」

 

 シリウスは昨日の鍋など洗う物とおしめを洗濯するために家畜小屋を出て井戸へ向かった。幸い井戸には誰もおらず井戸から水を汲んで洗濯と洗い物を始めた。慣れているのであっという間に終わり家畜小屋に戻って干せそうな場所に干しておいた。干し終えると次は朝食の準備に取り掛かり、昨晩と同じように鍋に水を張って野菜を切って入れた。

 

「…昨日と同じならピーニが嫌かな…これを使ってみるか」

 

 シリウスはスープの素を取り出して鍋に一つ入れてみた。スープの素を溶かして全体に馴染むように混ぜていき味見をしてみた。

 

「うまっ…ポラリスとアトリアには少し濃い気が…二人の分だけ薄めるか」

 

 器に二人分だけよそって水を入れて濃さを調節した。

 

「…うん、これぐらいだな。ご飯できたぞー」

「今行くわ」

 

 周囲を警戒しながらピーニがモームに乗って家畜小屋から出てきた。

 

「何で乗ってるんだよ」

「試しに乗って見たら乗り心地が悪くなくて。嫌がらないし、楽だしね」

「まあ、いいけど。じゃあ、いただきます。ポラリス~、あ~ん」

「あ~」

「アトリア~、あ~ん」

「…」

「あむっ…!今日のは美味しいわね!」

「今回はスープの素を使ってみた。モームのご飯はドライフルーツと…パンって食べれるのか?」

「大丈夫じゃない?基本的に何でも食べるし」

 

 ドライフルーツと適当な大きさに切ったパンをモームの前に置いた。モームはドライフルーツにのしかかって食べた後、パンを見て頭の葉っぱを揺らしている。ポラリスとアトリアに食べさせつつ見守っているとモームはドライフルーツと同じようにのしかかってパンを食べた。

 

「おお…食べた」

「そんなに驚くこと?」

 

 モームがパンを食べた事によく分からない感動を覚えつつ朝食を取った。

 

「…よし、洗い物終了。日課でもやるか」

「ねえ、あいつがこっちに来るわ。私は隠れるから」

 

 ピーニが指差す方を見ると商人がシリウスの方へ歩いてくるのが見えた。

 

「おはようございます」

「おはようございます。どうしましたか?」

「ええ、準備が早めに終わったのでそろそろ出ようかと思いまして」

「分かりました。私もすぐに行きます」

 

 商人と別れてシリウスは日課を中止にして荷物を取りに家畜小屋に戻った。使った藁を元に戻して背負い袋に荷物を詰めて忘れ物が無いか確認して家畜小屋から出た。

 

「しばらく荷物の中で我慢してて」

「分かってるわよ。あんたも大人しくしてなさいよ」

 

 ピーニと一緒に荷物に隠れているモームは葉っぱを揺らしながら背負い袋の口の隙間から外を見ている。商人は既に馬車に乗り込んでおりシリウスも馬車に乗った。

 

「では出発します。それ!」

 

 馬車は村を出て次の町へ向けて出発した。道中では商人が懸念していた盗賊や魔物などは出てこず平和な馬車旅となった。ソンカの村を出て二日後、“ルーデニック”の町に到着した。

 ルーデニックは壁に囲まれたこの世界ではよくある町だ。この世界では魔物の襲撃があるので大きな街や都市は大体壁で囲まれている。町を横切るように川が流れていて生活用水として利用されたり、船を使って物資の運搬が行われたりしている。正門でレムドーと同じように軽い審査を受けた後馬車はルーデニックに入った。

 

「では私はこれで。私どもの店は南地区の〈デンヤン〉という店ですので是非お越しください。それでは」

「ここまでありがとうございました」

 

 宿屋の前まで送ってくれた後、商人は自分の店へ戻っていった。商人を見送ってからシリウスは宿屋に入った。

 

「はい、いらっしゃい」

「泊まりです。取りあえず三泊で」

「三泊なら3000リクルだよ」

「(高え…)…はいこれ」

「確かに。部屋は二階の突き当たりだよ。鍵はこれね。一階の奥に井戸があるから洗濯とかはそこでね。食事は一階の酒場か外で食べてくれ」

「分かりました」

 

 受付から鍵をもらい、指定された部屋へ向かった。部屋に入るとやや埃っぽいもののちゃんと掃除がされていた。ベッドとテーブルと椅子と棚が置いてあるごく一般的な部屋だ。シリウスは窓を開けた後、荷物を下ろしベッドに座った。

 

「ふぃ~、疲れた。ピーニ、出てきてもいいぞ」

「よっと…ふぅ~、やっと自由だわ」

「でも他のがいる所では出ない方がいいかもね」

「…まだ自由じゃないのね」

「ちょっとの間の辛抱だよ。売られたくないでしょ?」

「それはまあ、そうだけど…」

「あ~」

「…」

「ほら、二人が慰めてくれてるぞ」

「…はいはい、ありがと」

 

 ピーニはポラリスに捕まってアトリアに突っつかれながら投げやりにお礼を言っている。ルーデニックに来るまでの二日間、商人が見ていないところで二人によく捕まったり突っつかれたりしたのでもう慣れっこだった。ピーニがポラリスとアトリアの玩具にされている間、モームはベッドの上を自由に這いずっていた。

 

「…いい加減、名前を付けないとな」

「名前って、モームの?」

「ああ。モームって魔物の総称だろ?この子の名前を決めないと」

「まあそうね。いつまでもモームってのも味気ないしね」

「名前、名前…うーん…(星から取るとして、何か良い名前…)」

 

 シリウスの頭の中では星の名前が大量に浮かんでいる。

 

「(…何でこんなに名前が分かるのか…前世じゃ私は何してたんだ?天文学者とか?いや、そんなんじゃないな。雑学好きなオタクの方がしっくりくるな。いやいや、今そんな事を考えてる場合じゃない。ピンとくる名前…)…カペラ、とか?」

 

 現代日本ではカペラはぎょしゃ座の一つでぎょしゃ座で最も明るい恒星だ。

 

「あら、いい名前ね」

「そう?変じゃない?」

「?どこも変じゃないと思うけど」

「いや、それならいいんだ。よし、君はこれからカペラだ」

 

 シリウスはモーム改めカペラを手の上に乗せながら言った。カペラは葉っぱを揺らしながらシリウスを見つめている。

 

「うーん…伝わってるのかな?」

「なら【契約】する?」

「【契約】?」

 

 【契約】、正式名称は【魔物契約】と言い、魔物と契約して使役する魔法の事である。魔物を使役して戦わせる魔物使いがよく使っており、中には商人が物資の運搬のために使う事もある。契約内容は多岐に渡るが力を貸す代わりに魔物が求める物を定期的に差し出すというのが一般的だ。魔物が欲しがる物は大体美味しいご飯や魔力だったりするが、中には対価を求めなかったり、逆にとんでもない対価を要求してくる魔物もいる。

 

「でも私はそんなの使えないぞ」

「私が使えるから安心なさい。それでどうする?」

「…一方的に縛りたくはないんだけどな」

「ああ、それなら大丈夫よ。契約内容を変えて意思疎通するだけにすればいいわ」

「そんな事ができるの?」

「ちょっと面倒だけどね。で、どうする?」

「なら頼む」

「分かったわ。ならさっさとしましょうか」

 

 ピーニは魔法の準備を始めた。足元から魔法陣が出現するとピーニは魔法陣の一部を書き換え始めた。

 

「えーっと…意思疎通だけ…ここと、ここに、それからここはいらない…ここは…一応残しておきましょ…できたわよ。魔法陣の中に入ってちょうだい。カペラもね」

 

 シリウスは言われた通り魔法陣の中に入り対面にカペラを置いて座った。

 

「んじゃ始めるわ」

 

 ピーニが魔法陣に魔力を注ぎ込むとシリウスの頭の中にカペラの意思が伝わってきた。

 

「これは…カペラの考えてる事か?…え?対価いらない?いいの?」

「(プルプル)」

「ご飯くれるだけで十分?何で?…助けてくれたから?苛めないから?え~…そんな事で」

「(プルプル)」

「名前付けてくれて嬉しい?大好き?あー、うん、ありがとう。えー、取りあえず契約って事でいい?」

「(プルプル)」

 

 シリウスとカペラの両者の了承の意志を確認して魔法陣が光り契約が完了した。

 

「ふぅ…これで終わりね。にしても随分好かれてるわね」

「あー、うん、予想外過ぎたけどな…」

「(プルプル)」

「はいはい、ありがとうね」

「大好き、ずっと一緒にいるですって。良かったわね」

「あー、まあ、うん。というかピーニは分かるのか?」

「何となくぐらいだけどね。カペラのは分かりやすいけど他の魔物ならそうはいかないわ」

 

 意思疎通ができてからカペラは好意を隠さずに伝え、葉っぱを揺らしながらシリウスにすり寄っている。シリウスはすり寄ってくるカペラの頭を撫でている。

 

「う~…」

「…」

「ん?どうした~、ポラリス~、アトリア~」

 

 カペラばかり構うシリウスに抗議するようにポラリスは不機嫌そうな声を上げ、アトリアも何か言いたげな目でシリウスと見つめている。

 

「んふふ~♪ママは二人の事も大好きだよ~♪」

「ま~♪」

「…」

 

 二人を抱き締めながら頬擦りするとポラリスはすぐに機嫌を直して笑顔でシリウスに抱き着き、アトリアは表情こそ変わらないもののご機嫌な雰囲気を漂わせている。

 

「(プルプル)」

「カペラも大好きだぞ。ママは皆の事が大好きだぞ~」

「ま~♪」

「…」

「(プルプル)」

「はぁ~…見せつけっちゃってまあ…」

「ピーニも混ざるか?」

「お断りするわ」

 

 ルーデニックにやってきたが観光そっちのけでポラリスとアトリアとカペラとイチャついている。

 

「…」

「ん?アトリア~、どうした~?」

「…ぁ」

「!!」

 

 何かを話そうとしているのかアトリアが口を開けたり閉めたりしている。今まで無かった反応にシリウスは目を見開き、アトリアと目を合わせて静かに待っている。

 

「ぁ…ぁ…」

「…」

「…ま、ま」

「!!」

 

 アトリアは掠れる声で、だが確かにシリウスの事をママと呼んだ。シリウスは固まって目を見開いてアトリアを見ている。シリウスの心は歓喜に包まれてファンファーレまで流れているが、その前に確かめなければならない事があった。

 

「…いいの?私がママで?」

「ま、ま…ま、ま」

 

 シリウスが問うが、アトリアは掠れる声でママと繰り返しシリウスに手を伸ばしている。シリウスの目から涙が溢れ出し、我慢できずアトリアを強く抱き締め、アトリアも精一杯シリウスに抱き着いている。

 

「はぁ~…こういうのは私がいないとこでして欲しかったんだけど…」

 

 一人蚊帳の外に置かれたピーニは口では文句を言っているものの優しく見守っている。

 

「んふふ~♪アトリア~♪」

「ま、ま」

「う~、ま~」

「ポラリス~♪」

「(プルプル)」

「カペラ~♪」

 

 愛らしくて可愛らしい家族に囲まれて幸せなシリウスだった。

 

「…そろそろいいかしら?」

「ああ、すまなかったな。嬉しくてつい」

「別にいいわよ。それよりこれからどうするの?あいつの店にも顔を出すんでしょ?」

「まあな。買うかどうか分からんがな。取りあえず今日はその辺を散策でもするかな」

 

 シリウスは財布と剣を持ち、ポラリスとアトリアを抱き上げ、カペラとピーニを外套の中に隠した。

 

「カペラ、ピーニ、静かにな。ポラリス~、アトリア~、行くぞ~」

「あ~」

「…ぁ」

「(プルプル)」

「はいはい」

 

 シリウス一行は宿を出てルーデニックの散策へ出掛けた。

 ルーデニックは雰囲気はレムドーに似ており、古い建物と新しい建物が混在して立っている。だが町を縦断する川がある分自然が豊かで花壇や街路樹が植わっており、ルーデニックで暮らす人も穏やかな者が多い。

 

「ほ~ん…レムドーやブーナガストよりは治安は良さそうだな…まあ、それでもターエルには劣るけど」

 

 シリウスは路地裏でたむろするいかにも悪人面な男達をチラッと見ながら大通りを歩いている。シリウスは町の人にギルドの場所を聞いてそちらの方へ向かうとペンダントを付けたハンターの一団がギルドへ入っていったので後ろから便乗した。

 

「お!〈スピアービル〉の奴らが帰ってきたぞ!」

「全員無事だ!ならあいつを倒してきたのか!?」

 

 シリウスの前にいる一団は〈スピアービル〉というチームで全員三級のこの町でトップのハンター達だ。シリウスは彼らを横目に掲示板に貼ってある依頼を見ている。

 

「…労働系は他の町と大して変わらんな。強いて言うなら船の修理とか、水路の掃除とかか?採取系も似たようなもんで討伐系は…ジャイアントラットの討伐。デカい鼠か。水路だからめっちゃ面倒そうだな。ホーンビートルの討伐。デカいカブトムシか。角に要注意だな。甲殻も硬そうだから魔法が使えないと大変だなこりゃ。これまた色々あるな」

 

 シリウスが依頼を見ていると他のハンター達と話していた〈スピアービル〉のリーダーの男が受付へ向かった。

 

「メタルボアの討伐完了だ。これが証だ」

「た、確かにメタルボアの牙ですな…」

 

 男は持っていた袋から巨大な牙を取り出し受付に置いた。

 メタルボアは猪型の大型の魔物で非常に気性の荒く目についた動くもの全てに襲い掛かる。体長は5mほどありその巨体から繰り出される突進は当たれば良くて瀕死、悪ければ即死だ。また巨大な牙も持っており鉄ぐらいなら噛み千切れるほど鋭く頑丈で剣で斬りかかっても弾かれるほどだ。そして最大の特徴は金属製の外皮だ。剣や矢を軽々と弾き、鎚などの鈍器でも中の分厚い筋肉で阻まれてほとんど効果が無い。ハンターと言えども備え無しで挑めば返り討ちに合うほどの強敵だ。

 

「すげえ!あんなデッカイのを倒したのか!」

「流石〈スピアービル〉だぜ!」

「キャー!ルービル様~!」

「素敵ー!」

「ハッハッハッハ!僕に掛かればこんなものさ!だが皆、ありがとう!」

「「「「「キャー!!」」」」」

 

 女性達から黄色い声援を受けているイケメンは〈スピアービル〉のリーダー、〈猛き槍〉の異名を持つルービル・ストードルである。自信過剰で女好きだが容姿が良く腕っぷしも強いので町の女性達から非常にモテてチヤホヤされている。

 

「まーた始まったよ…」

「ほっときましょ。そのうち飽きるでしょ」

 

 チームのメンバーは慣れているのでさっさとその場を離れて空いている席に付いている。シリウスはうるさそうに眉間に皺を寄せてチヤホヤされているルービルを睨んでいる。

 

「うるせえな…」

「う~」

「…」

「よしよし、大丈夫だよ」

 

 シリウスだけでなくポラリスとアトリアもご機嫌斜めになっておりシリウスがあやして宥めている。

 

「ん?おぉ…(見た事が無いが中々の美少女だな。今まで見てきた中でも上位に入るぞ。これは声を掛けるしかあるまい!)」

 

 するとルービルがシリウスの姿を見つけてしまった。見慣れぬ美少女を見つけたので早速唾を付けておこうと爽やかな笑顔を見せてシリウスに近づいた。

 

「やあこんにちは!僕はルービル・ストードルだ!よろしく!ギルドに依頼かな?よかったらこの僕が!力になろう!」

「…」

 

 シリウスの冷たい視線に気づかずにベラベラ喋るルービルは馴れ馴れしくシリウスに触ろうと手を伸ばした。

 

「…触んな」

「へっ?」

 

 普段よりかなり低い声でシリウスはルービルの伸ばした手を叩いた。

 

「な!?あの女、ルービル様に…!」

「許せないわ…!」

「おおー、あいつ、やりやがったぞ」

「どうなるか楽しみだ」

 

 思わぬ展開に女性達は怒りを覚え、男性達はハラハラドキドキしながら見守っている。

 

「ハハハ、これは失礼…おや?子供がいるのか。やあ、こんにちは!」

「ふえええぇぇぇ…!」

「…ぁ、ぅ」

「触るな!」

「アッーーーーー!!」

「「「「「ヒエッ!?」」」」」

「「「「「キャー!?ルービル様ー!?」」」」」

 

 シリウスはポラリスとアトリアに触ろうとしたルービルの股間を思いっきり蹴り上げた。可愛い愛娘達に無遠慮に触れようとした時点でシリウス的にアウトだ。

 ルービルは汚い悲鳴を上げて股間を抑えたまま崩れるように倒れた。男性達は内股になって青褪めて、女性達はルービルが倒れて悲鳴を上げている。

 

「…あーあー、可哀想」

「あいつにはいい薬だ…多少同情するけど」

 

 周囲が阿鼻叫喚になっているが〈スピアービル〉のメンバーは自業自得だと言わんばかりに見捨てている。

 

「ちょっとあんた!あたしのルービル様に何するのよ!」

「あんたのじゃないわ!私のよ!ルービル様に何て事を!」

「どう責任取るのよ!」

「ふえええぇぇぇ…ふえええぇぇぇ…!」

「ぅ…ぁ…」

「あ"あ"?うるせえな…よしよし」

 

 憤怒の表情で詰め寄ってくる女性達を絶対零度の視線とドスの聞いた声であしらい、怯えて泣いているポラリスとアトリアには優しくあやしている。シリウスの視線と声に威圧され一歩引いた女性達の隙を付いてシリウスはギルドを出た。

 

「…こ、こえ~」

「可愛い見た目からあんな声が出るなんてな…」

「おおお俺は、びびびビビッてねねねねねえし!?」

「吃りまくってるじゃねえか」

「…ハッ!?に、逃げられた!?」

「に、逃が、逃がさないいいわよよよよ…!」

「な、何よあんた。震えてるじゃない…!」

「あ、あんただって…!」

 

 シリウスの堂の入った視線と声で騒動を見聞きしていた者達はシリウスの豹変ぶりに怯えていた。

 

「フンッ、ったく…!」

「ふえええぇぇぇ…」

「ぁ、ぅ…」

「よしよし、大丈夫大丈夫」

「…とんでもない声出すわね、あんたは…」

「(プルプル)」

「汚い手で触ろうとしたあいつが悪い」

 

 ギルドを出たシリウスは花壇の傍に置いてあるベンチに座りポラリスとアトリアをあやしている。一部始終を近くで見ていたピーニとカペラはシリウスの変化に驚いていた。

 

「…何か散策する気も失せたな。どっかで食べ物を買って後は部屋でのんびりするか」

「それがいいわ。外に出るのもいいけど自由に動き回れないしね」

 

 シリウスは昼食用にサンドイッチやホットドッグを売っている屋台を見つけていくつか買った後宿の部屋に戻った。

 

「さて、いただきます。ポラリス~、あ~ん」

「あ~」

「アトリア~、あ~ん」

「ぁ…」

「カペラ~、あ~ん」

「(プルプル)」

「カペラにも食べさせるの?」

「カペラも家族だから当然だろ?」

「(プルプル)」

「美味しいか?は~い、あ~ん」

 

 ポラリスとアトリアとカペラに順番に食べさせている。ピーニはカペラをペット枠と思っていたが、シリウスはペット=愛する家族なのでポラリスとアトリアと同じように可愛がっている。ポラリスとアトリアとカペラがお腹いっぱいになったので残ったのを口に放り込んだ。

 

「ふぅ、ごちそうさまでした。後はのんびりするか」

「そうね。私は日光浴でもしようかしら」

「あ~、う~」

「のわあ!?放しなさい!私は日光浴をするのよー!」

「ぅ、ぅ」

「だから突っつくのを止めなさい!」

「(プルプル)」

「カペラも止め、アッハッハッハ!?ちょ、そこは、アハハハハ!?」

「ふふふ」

 

 ポラリスに捕まり、アトリアに突っつかれ、カペラに足の裏をこそばされて笑いながら悶えるピーニをシリウスは微笑ましそうに見ていた。

 

「た、助けてー!」

 

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