今年もよろしくお願いいたします。
今年最初の投稿です。
またいつも誤字報告してくださりありがとうございます。
自分でも確認はしてるのですがいつも漏れが出てしまい申し訳ありません。
それでは続きをどうぞ。
「はぁ、はぁ…ひ、酷い目に合ったわ…」
「お疲れ様」
「あんたねぇ…母親ならちゃんと止めなさいよ…」
「いやぁ…あの子達が楽しそうにしてるのを見てるとつい…」
「ついじゃないわよ!」
「ごめんって」
シリウスの肩の上に避難したピーニはシリウスに抗議しており、シリウスも止めなかった自覚はあるので素直に謝っている。楽しく遊んでいたポラリスとアトリアとカペラはベッドの上で仲良くお昼寝中だ。ポラリスとアトリアは手を繋いで寝ており、カペラはポラリスのお腹の上で寝ている。可愛くて愛おしい娘達の姿にシリウスは頬が緩みっぱなしだった。
「…ちょっとシリウス。あんた気持ち悪いわよ…」
「んんっ…失礼」
ピーニに指摘され表情を直したが寝がえりをうって二人が抱き合う姿を見るとすぐに崩れた。
「ぐふっ…!娘が可愛くて辛い」
「あんたは何を言ってるのよ…」
ピーニは呆れかえっているがシリウスは本気だった。いつまでも見ていられるが食料の確認や武器の手入れがあるので泣く泣く視線を切った。ピーニは日光浴をしながらだらけており静かな時間が過ぎていった。
「…う~…ふえええぇぇぇ…」
「…ぅ、ぁ…ま、ま…」
「ポラリス~、アトリア~、ママはここだよ~。よしよし」
起きたポラリスが泣き出し、アトリアがシリウスを探すように辺りを見回すとシリウスはすぐに二人を抱き締めた。
「ま~」
「ま、ま」
「ママですよ~♪」
頬擦りしながら抱き締めていると二人のお腹から可愛らしい音が聞こえた。
「んふふ~。じゃあご飯食べよっか~。カペラ、ピーニ、ご飯食べるぞ」
「(プルプル)」
「んえ?そういえばお腹空いたわね」
シリウスはカペラとピーニを懐に隠し肩掛けカバンを持って下の酒場へ向かった。酒場は男達が飲み食いして大層賑わっておりシリウスは席の間を縫うように移動して壁際の席に着いた。
「はい、いらっしゃい。今日のオススメはアクアパッツァだよ」
「ではそれで。後、子供用の薄いスープって用意できますか?」
「うーん…ちょっと聞いてきますね」
「お願いします」
ウェイトレスは厨房へ向かい、シリウスはポラリスとアトリアと手遊びしながら料理が来るのを待った。
「お待たせー。こっちが子供用ね」
「ありがとうございます」
テーブルの上に置かれたのはアクアパッツァとパンとポラリスとアトリア用のスープだ。二人のスープを味見するとちょうどいい濃さだった。
「貝も入ってるのか。川にこんなデッカイ貝類なんていたっけ?」
「普通にいるわよ。焼いたり煮たりすれば美味しいわ」
「…異世界ならありうるか。まあいい、いただきます。ポラリス~、あ~ん」
「あ~。あ~♪」
「アトリア~、あ~ん」
「ぁ…ぁ、ぉ…♪」
「カバンで隠してっと…カペラ~、あ~ん」
「(プルプル)♪」
「う~ん♪魚と貝の味がしてて美味しいわ~♪」
「あむっ…うまっ」
魚介類の出汁が出ていて非常に美味でスープにパンを浸して食べても美味しかった。
「地元だから良い店を知ってたな、あの商人は」
「これで悪どい事をしなければ素直に感謝するのに…」
「そっちの方が簡単に儲かるからだろ。人は楽な方に行きたがるからな」
商人の薦めで入った宿屋は大正解だったがピーニを売ろうとした張本人なので素直に感謝できなかった。
「ふぅ、ごちそうさま。ポラリス、アトリア、カペラ、美味しかった?」
「あ~♪」
「ぁ、ぉ…♪」
「(プルプル)♪」
「そっか、良かった」
「ふぃ~、食べたわ~」
皆大満足の夕食でご満悦のまま部屋に戻った。歯を磨き寝間着に着替えてベッドに入るとお腹いっぱいなので二人はすぐに寝た。
「ふわぁ~…私も寝るわ。おやすみ…」
「ああ、おやすみ」
カペラを枕にしてピーニも眠った。シリウスは少しの間寝ているポラリスとアトリアの姿を愛おしそうに見つめていたがやがて眠った。
翌朝、朝の日光を浴びて起き着替えた後ポラリスとアトリアのおしめを変えて洗濯し終わった後朝食を取っている。
「はい、あ~ん。今日はあの商人の店に行くついでに散策でもするか」
「もう行かなくてもいいんじゃない?」
「まあ、顔を出すだけだよ。欲しい物が合ったら買うかもだけど。アトリア~、お口拭くよ~。ついでにアトリアの服も買うか。その前にちゃんと綺麗にしようね~」
朝食を食べ終わり宿屋の人にお湯を貰って部屋に戻った。
「…ぁ、ぉ…♪」
お湯の中にアトリアを入れて優しく身体と頭を洗っており、アトリアは気持ち良さそうに目を細めている。すっかり綺麗になったアトリアの身体を布で優しく拭き、次いで髪の毛を拭いているとシリウスの手に何かが当たった。
「ふふ~ん♪お?何だ?」
探ってみるとアトリアの額上部辺りに小さな瘤みたいな突起があった。
「たん瘤か?アトリア、痛くない?」
「ぅ…?」
「大丈夫そうだな。なら何だろうな?角?アトリアは人間じゃなかった?」
「え!?そうなの!?」
シリウスの予想にピーニは驚いてアトリアを見ている。
「…まあ、いいか」
「いいの!?いや、駄目でしょう!」
「アトリアが人間だろうが、人間じゃなかろうがどうでもいい。アトリアは私の娘。ただそれだけだ」
シリウスはそう言い切ってアトリアを優しく抱き締め、アトリアも抱き締め返している。
「ま、ま♪」
「アトリア~♪」
「う~…ま~」
「ポラリス~♪」
「(プルプル)」
「カペラ~♪」
「…隙あらばイチャつくわねあんた達…」
一通りイチャついた後、ポラリスも綺麗にし準備を整えて早速散策へ出掛けた。南地区は商業区画でレムドー同様大小様々な店の他に倉庫などが建ち並んでいる。品物を乗せた馬車が行き交い、店員が品物を下ろし、町民が商品を買っている。シリウスは道行く人に店の場所を訪ねながら色んな店を覗いている。
「後でもっかい覗いてみるか。あ、あそこかな?」
通りから少し外れた所に〈デンヤンの店〉と書かれた看板を見つけた。開いているドアから中を見ると魔物の素材や怪しげな薬の他に何に使うのか分からない物まで置いてあった。
「…何かヤバイ店に思えてきた」
「だから行かない方がいいって言ったのよ」
中に入るのを躊躇っていると商談を終えた人が中から出てきた。
「またのお越しをお待ちしております。ややっ!?これはこれはよくお越しくださいました!」
「あはは…どうも」
客の見送りにきた商人に見つかってしまい逃げ出す機会を失ってしまった。仕方なく店に入ると入り口からは見えなかったが壁に魔物の頭部の剥製がいくつも飾られていた。
「ふえええぇぇぇ…」
「ぅ、ぅ…」
「ポラリス~、アトリア~、大丈夫だよ。よしよし」
魔物に見られていると感じたのか、ポラリスとアトリアが怖がって泣き出して抱き着いてきたのでシリウスはあやしている。
「おや、これは失敬。あれは貴族様に人気の品でございまして。先ほどのお客様も買われていかれたのですよ」
「そ、そうですか…私には分からない感性ですね」
「貴族様の間では持っている事が一種のステータスになるらしいですぞ。他にもこちらの品とかも人気ですな」
「あー…これは?ただの木に見えますが…いや、何か良い匂いが…もしかして香木ですか?」
「おおっ、ご存じとは。ご明察通り香木でございます。特にこちらは海を越えた国で作られる高級品でして中々手に入らないのですが、今回運良く機会に恵まれまして。複数の貴族様から売って欲しいと要望がありまして、オークションに掛けられる事になりました」
「はぁ~、凄いですね」
「ちなみにこちらの香木一本で最低でも10000000リクルいたします」
「ぶっ!?」
「小指の爪ぐらいの大きさの欠片でも100000リクルはしますな」
「…高すぎません?」
「お気持ちは分かりますが希少品でもありますし、かなりの手間暇も掛かっておりますので。これでもまだ安いほうですよ」
「…高いのだとどのくらいですか?」
「そうですな…聞いた話では馬車一杯の金貨というのもありましたな。流石に話を盛ったと思うのですがそれぐらい高かったと思われますな」
「………」
こんな枝きれにそこまで金を掛ける貴族の感性がますます理解できないシリウスだった。その後も商人の案内で商品を見ていくが、シリウスには必要無かったり、高すぎて手が出せなかったり、説明されてもよく分からない物だったりで溢れていた。
「面白い物はたくさんありますが…流石に手が出せないというか…」
「この辺りは貴族様や豪商などが買われる品ですので、一般の方は中々手は出ないかもしれませんな。ではこちらはいかがですかな?」
商人が差し出してきたのは虹色に輝いている水が入った小瓶だ。
「これは?」
「こちらは聖水でございます。神聖な物ですのでアンデッドなどはこれに近寄る事はできず、これを掛けると消滅しますぞ。また毒や病も治してくれる代物です。聖職者が魔力を注ぐ事で作られる物なのですが作れる者が少なく、作れる数に限りがあるので市場にはほとんど出回らないのですが、私どもは幸運にも四本ほど仕入れる事ができましてお一ついかがですかな?今なら特別に5000リクルでお売りしますぞ」
「5000リクルですか…うーん…(アンデッド云々はランタンがあるからいらんが毒や病治療はいいな。いざという時にあれば助かるし小瓶だから嵩張らないが…5000リクルか。中々高いが買えないわけじゃないな。多分普通ならもっと高いんだろうな)…分かりました、買いましょう」
「おおっ!毎度ありがとうございます!」
お金を支払って商人から聖水の小瓶を受け取りカバンに慎重に入れた。商人はもう少しいてほしそうにしていたが、これ以上いるとまた何か買わされるかもしれないので用事があると偽って店を出た。
「…よかったの?そんな高い物買って」
「まあ、悩んだけどな。毒や病気の治療はあった方がいいし。それに恩人だからサービスしてくれたんだろうから断るのも悪いと思ってな」
「ほっとけばいいのよ。お人好しなんだから…」
「否定はしない」
「後、気づいていると思うけど、それ絶対盗品よ」
「だろうな。まあバレなきゃ問題は無い。それに私が直接盗んだわけでもないしな」
店を出たシリウスは通りの方に戻って子供用の服を扱っている店に入った。
「いらっしゃいませ!」
「すいません、この子達の服を見繕ってほしいのですが」
「はい、かしこまりました!ではちょっと失礼しますね」
女性店員はポラリスとアトリアの身体の寸法を測り数着の服を持ってきた。
「お子様に合う服はこちらになりますね」
「ふむ…これは買いで、こっちも買い。これは…髪の色とちょっと合わないか。すいません、追加で持ってきてくれますか?」
「はい、かしこまりました!」
上客が来たと分かり女性店員は張り切って裏から服を追加でドンドン持ってきた。シリウスはアトリアの服の他にポラリスの服も新しく追加で買おうとしており、二人に似合う物はドンドンキープしていった。
「ありがとうございましたー!」
「うーん…少し買い過ぎたか?いや、必要だから仕方が無い」
「絶対買い過ぎよ!どんだけ使ってるのよ!」
「…まあ、確かに10000リクルはちょっと使い過ぎたと思わなくもないが…反省はしている。後悔はしていない」
「しなさいよ!」
「大丈夫。お金はまだあるから」
店から出たシリウスの手には大量の子供服が入った袋があった。途中から女性店員も混じって二人に似合う服を選んだ結果、合計金額が10000リクルを超えてしまった。右手に重たい袋を持って宿屋へと戻る途中で気になる一団を見つけた。
剣を持った厳つい男達が誰かを探すように辺りを見回したり通行人の顔を確認したりしている。町の人は不審にしているが剣を持った強面の男達を恐れてその場を足早に立ち去っている。
「おい、いたか?」
「いや、いねえ」
「やっぱ町にはいないんじゃないか?」
「…念の為、路地裏とかも確認するぞ」
「まだ探すのかよ…」
「黙って従え。さっさと見つけないと危ないのは俺達だぞ」
男達は路地裏に入っていき少しすると路地裏でたむろっている男達と言い争う音が聞こえた。
「何あれ?やな感じ」
「…多分、私が関係してるな」
「え?どうゆうこと?」
「戻ってから説明する」
シリウスは宿屋に戻るとブーナガストで合った事をピーニに説明した。
「…つまり?あんたは奴隷だったアトリアを助けるついでに他のハーフの奴隷を助けて、さらに色々と盗んで火を付けて逃げてきた、ってこと?」
「そうなるな」
「あんたバカ!?なーんでそんなことしたの!?」
「…骨と皮だけのアトリアを見たら我慢ならなかった。理由なんてそれだけだ」
「それだけって…あんた、そのためだけに犯罪を犯したの!?」
「そうだ。反省も後悔も微塵も無いぞ」
言い切ったシリウスにピーニは絶句している。初対面の赤の他人を助けるために罪を犯す、その意味が分からなかった。
「分からなくてもいい。私は嫌な事には嫌だって言うし、気に入らない事があれば割って入るだけだ。例えそれが法であってもだ」
「…正気?」
「正気で本気だ」
シリウスの真剣な目に本気だと理解したピーニは、ここ数日で分かり掛けたシリウスの事がまた分からなくなってきた。
「まあ、安心しろ。私の事でピーニは巻き込まないし、フェアンダリアにはちゃんと連れて行くから。後、もし私が捕まったら見捨てて逃げていいからな」
表情を崩し笑ってそう言うシリウスにピーニは深い溜め息を付いた。
「はぁ~…あんたの事を分かった気でいたけど、また分からなくなったわ」
「それはすまんな」
「でも、これだけは分かったわ。あんたはお人好しよ。それも超が付くほどのね」
「…そこまでか?」
「そうよ」
シリウスの笑顔を見てあれこれ考えていた自分が馬鹿みたいに思えてきたのでピーニは考える事を止めた。
「(シリウスを信じる。もうそれでいいわ)」
「何か言ったか?」
「何でもないわよ」
「ま~」
「ま、ま」
「ポラリス~、アトリア~、どうした~?うりうり~」
膝の上に乗せていたポラリスとアトリアが甘えるようにシリウスに手を伸ばし、シリウスは抱きあげて二人に頬擦りしている。
「まーたイチャついて…」
既に見慣れた光景に溜め息を付くが顔には笑みが浮かんでいた。一頻りイチャついた後シリウスは買ってきた物を荷物に詰め始めた。
「ぐぬぬ…やっぱり少し買い過ぎたか…」
「少しじゃないわよ。明らかに買い過ぎよ」
あれもこれもと二人に似合う服を買ったため背負い袋に入れるのに苦労している。
「ふんぬっ!よし、入った」
服や布を小さく畳んだり、パズルのように配置を変えたりして何とか入れたが、詰め込み過ぎて食料と水を追加すればパンパンになって何も入らなくなるほどになってしまった。
「…まあ、何とかなるさ………多分」
ピーニのジト目から避けるように顔を逸らしてポラリスとアトリアに構い始めた。逃げたシリウスをピーニはしばらく見ていたがやがて溜め息を付いて窓際へ移り外の景色を眺め始めた。シリウスはポラリス達と夕暮れになるまで遊び夕食の時間になったので下の酒場へ降りていった。昨日より早めに降りたおかげで壁際の席を簡単に取る事ができた。
「いらっしゃい。今日のオススメは魚のフライとクラムチャウダーだよ」
「ではそれを。後…」
「その子達の分だよね。分かってるよ」
「すいません、お願いします」
昨日と同じウェイトレスが対応してくれたおかげで注文がスムーズに済んだ。
「早く来ないかしらね。お腹が空いたわ」
「う~…」
「ぅ、ぅ」
「(プルプル)」
「もうちょっと我慢してね~。すぐ来るからね~」
皆お腹が空いておりシリウスは紛らわすようにポラリスとアトリアの頬をプニプニしたり手遊びしたりして時間を稼いだ。
「お待たせー」
ポラリスが泣く前に夕食がやってきた。川で取れた魚のフライと同じく川で取れた貝のクラムチャウダーだ。魚も貝もシリウスの前世よりかなり大きかった。
「でっか…」
「そう?これぐらい普通じゃない?」
「そうなのか?…まあいい、いただきます。ポラリス~、あ~ん」
「あ~。あ~♪」
「アトリア~、あ~ん」
「ぁ…ぁ、ぉ♪」
「カペラ~、あ~ん」
「(プルプル)♪」
「あむっ。ん~♪美味しいわ~♪」
ポラリスとアトリア用の魚と貝の出汁のスープも美味しく二人は笑顔で食べている。カペラも魚を気に入ったのか美味しいと連呼しながら食べており、ピーニもクラムチャウダーを堪能している。
「あむっ、うまっ。フライもクラムチャウダーも、うまっ」
美味しい食事で皆が笑顔になり楽しい夕食となった。
食べ終わり部屋に戻り寝間着に着替えて皆仲良くベッドで眠った。