「ふふふ~♪スピカ~♪スピカ~♪」
「ぁぅ…」
完全に心を開き一緒にいたいと言ってくれたスピカにシリウスは親バカ全開で溺愛していた。ギュッと抱き締めて頭を撫でながら頬擦りをして名前を呼びまくっており、スピカは今更恥ずかしくなってきたのか、頬を赤くして俯きシリウスのされるがままにされていた。
「シリウスちゃーん。もういいかしらー?」
「…あっ、エルフィナさん。いたんですね」
「いたわよー。ずっとここにいたわよー」
「え?」
「気づいてなかったのね…」
スピカが心配で心配で堪らず見つけた瞬間はスピカ以外何も見えていなかった。何となく気づいていないんだろうなぁと思っていたエルフィナだったが、本当に気づいていなかった事に割と傷ついていた。
「うわーん。シリウスちゃん、私の事なんて、どうでもいいんだー。うわーん、寂しいなー」
「嘘泣きな上に棒読みじゃないですか…はぁ、気づかずにすみませんでした」
丸分かりな嘘泣きで悲しそうにするエルフィナにシリウスは溜め息を吐きながら謝罪した。エルフィナもシリウスもわざとなのは分かっていたがスピカは違った。
「ぁぅ…ご、ごめ、ん、なな、さ、いい…」
「え?い、いいのよ全然!ほら、おばちゃんはもう大丈夫だから、ね?」
自分の所為でエルフィナを悲しい思いをさせたと勘違いして俯きながら謝るスピカに、エルフィナは慌ててスピカに近づいて大丈夫アピールをし始めた。シリウスに心を開いたからか、あれだけ怯えていたエルフィナもシリウスが信じているので怯えも少なくなっていた。
「(あれ?これってチャンス?いける?いけちゃう?よし、いっちゃおう)」
己の欲望に突き動かされてエルフィナはスピカに手を伸ばした。スピカは一瞬震えて目をギュッと瞑ったが逃げる素振りは見せなかった。エルフィナはそのままスピカの頭に手を置いて帽子の上から優しく撫で始めた。
「(やった!ついに…ついにスピカちゃんと仲良くなれたわ~!本当は帽子無しが良いんだけど、それはまた今度ね)んっふふふ♪」
頭を撫でられているスピカはキョトンとした顔でエルフィナを見ている。ニコニコしながらスピカを撫でていたエルフィナだったがふと視線を感じてそちらを見るとシリウスがジーっとエルフィナを見ていた。
「…何見てんすか」
「あらあら。シリウスちゃん、焼き餅?」
「ええ、そうですが?めっちゃ焼いてますが?」
「あらあら、ふふふ♪」
「…何笑ってんすか」
スピカを取られて嫉妬MAXなシリウスが無言の圧をエルフィナに送り続けており、エルフィナは微笑ましくて笑っている。
「ふふふ…スピカちゃん、ほら。ママが呼んでるわよ」
「ぇぅ…?」
「スピカ~、おいで~」
「…ぁ、ぅ、うん…」
シリウスに呼ばれてスピカはふらつきながらシリウスの所まで歩いていき、シリウスはスピカを抱き上げた。
「よしよし、ふふふ♪それじゃあ、スピカ。帰ってご飯…あ」
「シリウスちゃん?どうしたの?」
「やっべ、ポラリス達の事、すっかり忘れてた…!」
「あ、あらあら…」
いなくなったスピカの事で頭がいっぱいでポラリス達の事をすっかり忘れていた。一応ピーニがいるものの思い出した途端、不安が膨れ上がってきた。
「やばい…!絶対泣いてる…!スピカ、急いで戻るぞ!」
「私も行くわ」
スピカを抱き上げてエルフィナと共に宿屋へ駆け出した。幸い宿屋からそう遠くない場所だったので今出せる全速力で走れば五分ほどで宿屋に着いたが、既に大きな泣き声が聞こえていた。
「「あああぁぁぁ!!」」
「あー、えーっと、ど、どうしたら…!?」
「ほ、ほらほら。美味しい水飴があるよー…駄目だ。泣き止まない…」
「ほーら、よしよし。大丈夫よー。お母さんはすぐに帰ってくるからねー」
「あー、もう!シリウスー!早く帰ってきなさーい!」
「ブルルル…」
「(プルプル)」
宿屋の厩舎前では阿鼻叫喚の騒ぎが起こっていた。
始めはピーニがぐずついていたポラリスとアトリアをカペラとウェズンと一緒に必死に宥めていたがついに決壊して号泣し出した。大きな泣き声を聞いてコルルと兄のサハルが初めに駆けつけて、妖精のピーニと魔物のカペラに驚いていたがピーニの必死過ぎる懇願に疑問は後回しにしてポラリス達を泣き止ませる事にした。だが二人が加わってあやしても変わらずポラリスとアトリアは泣き続け、いつまでも戻ってこないコルルとサハルを探しにコルル達の母親のエハルもやってきてあやすものの泣き止む事は無かった。今はエハルが二人を慣れた手つきで抱っこしてあやし、コルルとサハルが玩具とお菓子で泣き止ませようとしていた。
「ポラリス!アトリア!」
「ま~!」
「ままー!」
シリウスが声を掛けると二人はシリウスに手を伸ばし出した。シリウスは駆け寄ってスピカを一旦降ろしてから二人を抱き締めた。
「ま~!あああぁぁぁ!」
「ままー!あああぁぁぁ!」
「ごめんね、二人とも。もうママはどこにも行かないよ。よしよし」
大泣きしながらシリウスに抱き着くポラリスとアトリアをしばらくあやし続けていたらようやく二人は泣き止んできた。
「ま~」
「ままー」
「よしよし」
「(ジー)」
「ん?ふふふ。よーし、スピカもギュー」
「ぁ、ぅ」
羨ましそうな目でポラリスとアトリアを見ていたスピカに気づいたシリウスは微笑ましくなり、三人纏めて抱き上げてクルクルと回り出した。
「そ~れ、クルクル~♪」
「あ~♪」
「キャッキャッ♪」
「わ、わ、わ…!?」
ポラリスとアトリアは楽しそうに笑い、スピカは驚いて目を丸くしながらシリウスにしがみついていた。
「あらあら、うふふ」
「はあ、疲れた…」
「私達が何やっても泣き止まなかったのに…」
「母親は特別なのよ。私達と同じにしちゃ駄目よ」
「あー…つかれた…」
「(プルプル)」
「ヒィン」
「カペラ、おいで。ウェズンも」
三人を羨ましそうに見ていたカペラとウェズンもシリウスに呼ばれたので傍に近寄った。カペラはシリウスの肩に乗って頬擦りをし、ウェズンは身体を摺り寄せてシリウスの服を甘噛みしている。
「それにしても…何かいるとは思ってたけど、まさか妖精と魔物とは思わなかったわ」
「何よ。羽でも毟ろうっていうの?相手になるわよ。シリウスが」
「私かよ…いや、相手するけどさ」
「しないわよ。妖精の羽は数年で生え変わる事は知ってるわ」
「え!?そうなんですか!?」
「知らなかった…」
「そうよ。私達で言えば爪とか髪の毛みたいなものね。根元さえ無事ならまた生えてくるわ。それを知らない人ばかりだから妖精は激減したの。嘆かわしい事だわ。それと魔物の方は一切害は無いわよ。モームっていって森を綺麗に掃除してくれる良い魔物よ」
エルフィナがシリウスの代わりにピーニとカペラに危険は無い事をコルル達に教えてくれた。
「危険が無いなら私達は構いませんわ。それよりサハル、コルル、仕事は?」
「あ!?」
「忘れてた!?」
「全く…ほらほら、早く行きなさい」
ポラリス達にすっかり手を取られて仕事を忘れていたコルルとサハルは慌てて仕事に戻っていった。
「では私もこれで」
「ええ、ありがとうございました」
エハルも仕事に戻りその場にはシリウスに甘える子供達とピーニと話しているエルフィナが残った。
「どうしてシリウスちゃんと旅をしてるの?」
「故郷に帰るためよ。シリウスが連れていってくれるから一緒にいるのよ」
「故郷…もしかしてフェアンダリア?」
「そうよ。よく分かったわね」
「あそこは妖精に関する逸話がそれなりにあるからね。私も何度か行った事があるわ。ここからだと…最短でも十日以上は掛かるわね」
「別に構わないわよ。のんびり帰るから」
ピーニとエルフィナが話している間、シリウスは子供達とイチャついていた。
「ま~♪」
「ポラリス~♪」
「ままー♪」
「アトリア~♪」
「ぁ、えっと…ま…うぅ…」
「スピカ~♪」
「(プルプル)♪」
「カペラ~♪」
「ヒィン」
「ウェズン~♪」
抱き着いてくるポラリスとアトリアとスピカを抱き締め返し、頬擦りをしてくるカペラと擦り寄ってきて甘噛みしてくるウェズンには頬を寄せている。
「あぁ~、幸せ♪」
「あー、あー。だらしない顔をして…」
「あらあら、ふふふ」
デレッデレに蕩けた顔をしているシリウスを見てピーニは呆れて、エルフィナは微笑ましくて笑っていた。
「シリウスちゃん、そろそろご飯にしない?」
「そうよ。私、もうお腹ペコペコよ…」
「そうだった。皆、ご飯食べよっか。ウェズン、また後で来るからね」
「ヒィン」
一度ウェズンと別れてエルフィナとピーニと共に宿屋の中に入り食堂に向かった。朝食には遅い時間なので食堂には客は誰もいなかった。
「あら、誰もいないわね。なら私が出ても問題無さそうね」
「そうだが、一応気をつけろよ」
「分かってるわよ」
「何を食べようかしらねー」
シリウスはいつも座っている席に座り、エルフィナはその向かいに座った。
「はい、おまたせしました」
「ずいぶん早いですね?」
「そろそろ来ると思って準備してましたから」
「そうでしたか。それとご迷惑をお掛けしまして申し訳ございませんでした」
「いえいえ。赤ちゃんは泣くのが仕事ですから。今は他のお客様もいないのでゆっくり食べてくださいね」
「ありがとうございます」
シリウス達の分を持ってきてくれたエハルに感謝しつつシリウス達は少し遅い朝食を食べ始めた。
「あむっ。あら美味しい」
「はぁ~…疲労と空腹でより一層美味しく感じられるわね~」
「いただきます。ポラリス~、あ~ん」
「あ~」
「アトリア~、あ~ん」
「あー」
「スピカ~、あ~ん」
「ぁ、あー…」
「カペラ~、あ~ん」
「(プルプル)」
「ふふふ」
シリウスが子供達に食べさせているのをエルフィナはニコニコしながら眺めていた。
「あら?シリウスちゃんは食べないの?」
「この子達優先ですので」
「駄目よ。ほら、食べさせてあげる。はい、あーん♪」
「いや、いいですって」
「あーん♪」
「…あー」
断っても匙を突き出し続けており譲る気配が全く無かったので渋々口を開けた。
「美味しい?」
「ええ」
「ふふふ♪あーん♪」
エルフィナは実に楽しそうにシリウスに食べさせており、シリウスは何とも言えない表情で差し出された匙を口に入れながらポラリス達に食べさせている。
「ごちそうさまでした。ポラリス、アトリア、スピカ、カペラ、美味しかった?」
「あ~♪」
「あーい♪」
「ぅ、うん…」
「(プルプル)♪」
「そっかそっか」
笑顔な子供達にシリウスもつられて笑顔になりながら子供達の口を拭いている。
「シリウスちゃんは今日はどうするの?」
「取りあえず昨日の素材を受け取って、それから…どうしましょうか?」
「今日はのんびりしたら?皆といーっぱい遊びなさいな」
「んー…そうですね。素材を貰ったら今日はゆっくりします」
朝食を取り終えてシリウスは準備をするためにエルフィナと一度別れて部屋に戻った。
「スピカ~、お着換えしよっか。はい、ばんざ~い」
「ぇぅ…?ば、ん、ざい…?」
「そうそう。じっとしててね」
寝間着のままだったスピカを着替えさせて、部屋に放置したままだった洗濯物を籠に入れて一階の洗い場に持っていって洗濯した。エルフィナが待っているのでササっと洗い部屋に干した後カバンを持って部屋を出た。ロビーで待っていたエルフィナと合流してから厩舎に行くとウェズンがシリウスを見つけてソワソワし出した。
「ウェズン~、よしよし」
「ブルルル…ヒィン」
シリウスが撫でるとウェズンは嬉しそうに嘶いてシリウスの服を甘噛みしている。少しの間ウェズンを撫でた後、厩舎から出して一緒にギルドへ向かった。
「向こうで荷車とか借りられるんですか?」
「ええ、借りれるわよ。でもウェズンちゃんは小さいから荷物を引っ張るのは大変かもしれないわよ」
「ああ、大丈夫ですよ。八、九割は私が持ちますので」
「…それ、シリウスちゃんが大丈夫?」
「どうにかします。というかしてみせます。義娘だけにそんな重い物を持たせられません」
「あらら…契約してるだけだと思ったらここにもシリウスちゃんの子供が…」
「ちなみに近々もう一人増えます」
「まだ増えるの…?今度はどんな子?」
「ジャイアントスネークです」
「…シリウスちゃんは、その、えっと…や、優しいのね…あはは…」
「誉め言葉だと思っておきますよ」
まさかまだ増えるとは思っておらず、さらにまた魔物と知るとエルフィナは苦笑いするしかなかった。
「シリウスちゃんは魔物使いにでもなる気?」
「なりませんよ。というか、魔物使いもいるんですね」
「いるわよ。魔物と契約して一緒に戦う人達の事よ。まあ、なる人はかなり少ないから私も一人しか知らないわ」
「へー」
魔物使いはエルフィナが話した通り、魔物と契約して使役する者の事だ。シリウスがカペラとウェズンとしている契約を使役したい魔物とする事で力を借りる事ができる。だがどんな魔物とでもできる事ではなく中には契約を拒否する魔物もいるため、魔物と戦って力を示した後捕縛して動けなくしてから契約する、という流れが一般的だ。契約の際には何かしらの対価を魔物に差し出さなくてはならず、対価は魔物によって異なる。大体は美味しいご飯や一定量の魔力を定期的に渡す事で契約できるが、中には大人十人や金銀財宝を捧げるなども合ったりする。シリウスのように対価が一切無いという事例は前例すら無い初めての事だ。卵や赤ちゃんの頃から育てて契約すれば対価の無い契約ができると言われているが、非常に時間と手間が掛かるので誰も実践した事は無い。
ウェズンを連れてエルフィナと話しながら歩きギルドに着いた。ウェズンを表で待たせてからギルドに入ると受付にいた女性職員が血相を変えて走ってきた。
「ええええエルフィナさんんんん!」
「どうしたの?そんなに慌てて?」
「ななな、何ですかあの魔物は!?」
「何って、フルメタルスパイダーだけど?」
エルフィナが何でもないように話すとギルド中がざわつき始めた。
「フルメタルスパイダー…!?」
「それって確か変異種だよな…?」
「ああ。全身が金属でできてるから剣じゃ歯が立たないって話だぜ」
「それを倒したのか…!?」
「すげえな…流石〈グローミナス〉…」
「でも一体どうやって倒したんだ?剣は効かないんだろ?」
「効かないっていっても関節は比較的通るぜ。後は目とか口の中とかだな」
「そんなとこ狙えるわけねえだろ」
「だが近接だとそこぐらいしか狙う場所が無いんだよな…」
「魔戦技で強引にやるって手も無くはないが…」
シリウスより強そうなハンター達ですらフルメタルスパイダー相手はかなり厳しそうだった。
「魔法、効かないんですね」
「ほとんど表面で弾かれちゃうからね。だから目と口の中とかに当てないとほとんど効果が無いの。後は甲殻を砕いてそこに魔法を当てるとかもあるけど…」
「あの甲殻を砕くのは現実的じゃないのでは?」
「そうね。だからもし戦う事になったら関節や目を狙うのがいいわ。もちろん戦わずに済むのならそれに越したことはないけど」
エルフィナからフルメタルスパイダーの攻略法を教えてもらいながら職員に裏にある倉庫の一つに案内された。そこにはジャイアントスパイダー五体とフルメタルスパイダー一体の死骸が置いてあった。
「んー…うん。シリウスちゃん、全部上げるわ」
「…は?…いやいやいや!?」
「まあまあ、いいからいいから」
「良くないですよ!?」
「でもねぇ…正直言えば私、別に素材はいらないのよねぇ…今持ってる装備で十分なのよ。売ってもいいんだけど、それじゃあもったいないからシリウスちゃんに上げるわ」
「え、えぇ…」
三級ぐらいのハンターがメインで使うような上位の素材をいらないから上げると軽く言われてシリウスは困惑している。
「シリウスちゃんは欲しくないの?」
「欲しいか欲しくないかと言われたら、そら欲しいですけど…」
「じゃあ決まりね。悪いけど剥ぎ取ってくれる?」
「はい、かしこまりました!」
シリウスが戸惑っている間にエルフィナはどんどん話を進めていき、職員に剥ぎ取りを依頼していた。
「剥ぎ取りぐらいしますのに…」
「まあまあ、今日ぐらいは楽しちゃいなさいって」
シリウスとエルフィナが話している間に剥ぎ取り専門の職員達は手際良くジャイアントスパイダーとフルメタルスパイダーを剥ぎ取っていった。
「ジャイアントスパイダーの素材は牙と爪と糸と糸を出す器官よ。牙と爪はソルジャーアントの牙と同じぐらいの強度だからそのまま売ってもいいと思うわ。糸はかなり頑丈だから色んな所で使えるから需要が高いの。だから素材屋さんとかに行けば交渉次第じゃ高く買い取ってくれるわ。フルメタルスパイダーの方は全身使えるわ。鋼鉄並みに硬いから防具に向いてるけどかなり重いからシリウスちゃんには少し向いてないかもね」
「そうなんですね。ならジャイアントスパイダーは糸と器官以外は全部売って、フルメタルスパイダーは…使い道が決まるまで取りあえず取っときますか」
剥ぎ終わったジャイアントスパイダーの素材をギルドに売却した後、残ったジャイアントスパイダーの素材とフルメタルスパイダーの素材を借りた荷車に載せた。
「ブルルル…」
「ウェズン、無理しなくていいよ。私が運ぶから」
「シリウスちゃんもよ。ほら、半分貸して」
荷車に載せたのは比較的軽そうな素材ばかりで全体の二割ほどだ。他はシリウスとエルフィナが半分ずつ手に持って運ぶ事になった。
「ウェズン、大丈夫?重くない?」
「ブルブル…」
「そう?キツかったら言ってね」
「ウェズンちゃん、頑張るわねー。シリウスちゃんもキツくない?大丈夫?」
「これぐらい大丈夫です。宿屋までなら余裕です」
「…腕はプルプル震えてるわよ」
「気の所為です。見間違いです。エルフィナさんの勘違いです」
「あらあら、ふふふ」
カバンに入りきらなかった分を右腕一本で持っているが想像以上に重く、エルフィナに指摘されなくても腕が震えているのは自覚していたが、子供達の前なので見栄を張りいつもと変わらない表情を保っている。涼し気な表情で内心ヒーヒー言いながら宿屋に戻ってきた。
「…あら?ここって…」
「エルフィナさん?」
「いえ、何でもないわ」
何かに気づいたエルフィナだったが、今日はシリウスをのんびりさせると決めていたので後回しにしてシリウスと宿屋に入っていった。