転生したと思ったらママになっていた件   作:大神降ろし

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第九十二話

 

 ターエルにいた頃の話をしていたシリウスだが、喋っていたら話したい事が山ほど出てきて話し続けていた。エルフィナもシリウスの話をずっと聞いており気がついたら日が暮れていて、ポラリス達は話の途中からシリウスの膝の上で寝ている。

 

「すいません…」

「いいのよ、気にしないで」

 

 まさかこんな時間になるまで話していたとは思いもよらなかったシリウスは、エルフィナに謝罪しエルフィナは笑いながら許している。起きたポラリス達を抱き上げて夕食を取るために食堂へやってきた。席に着いて夕食を食べながら先ほどの話を語っている。

 

「シリウスちゃんはターエルにいた頃から凄かったのねー」

「いやいや、別にそこまでじゃ…」

「そうかしら?七級でゴブリンを複数倒すなんて普通はあり得ない事よ。それと六級でソルジャーアントとフォレストエイプのボスを一騎打ちで倒すのもね」

「えぇ…どれも必死でやっただけなんですけど…」

「どれだけ必死でやっても敵わない魔物もたくさんいるのよ。この前のフルメタルスパイダーとか」

「ああ…あれは確かに」

「それと魔法を全属性使えるのもね。普通はどれか一つ、もしくは二つよ?」

「その時はとにかく一つでも引き出しを多くしようと思ってたんですよ。覚えるのは大変でしたけどね」

「普通はそれでも三つなんだけどね。そんなに大変だったの?」

「丸の位置が微妙に違うだけでしたからね」

「それは大変ね。私だったら一つで済ませちゃうかも」

 

 話しながら食べていたらあっという間に食べ終えたが、そのまま席に着いてポラリス達が構ってほしくて呼ぶまでエルフィナと話し続けていた。

 

「う~、ま~」

「んー!ままー!んー!」

「かあ、さま…」

「(プルプル)」

「シュー」

「おっと。皆、ごめんね~。よしよし」

「あらら…ちょっと話過ぎたわね。お客さんも疎らになってたし、続きは明日ね」

 

 すっかり拗ねてしまったポラリス達の頭を撫でてエルフィナは帰っていき、シリウスは部屋に戻ってポラリス達のご機嫌取りを始めた。

 

「ポラリス~、アトリア~、スピカ~、カペラ~、ハダル~、ごめんね~」

「う~、う~」

「んー!ままー!んー!」

「わ、わた、しは、べ、つつ、に…」

「(プルプル)」

「シュー」

 

 スピカとハダルはすぐに許してくれたが、ポラリスとアトリアとカペラはまだご機嫌斜めで頬を膨らませて断固として抗議している。愛らしい姿に笑みが出そうになるが、笑ったらさらにご機嫌を損ねかねないので申し訳なさそうにしながら誠心誠意謝り倒しながらあやし続けた。三人とも構ってくれなかったからご機嫌斜めだったのでシリウスがこれでもかと構ったら一時間後には機嫌も良くなっていた。

 

「ま~♪」

「ままー♪」

「かあさま…」

「(プルプル)♪」

「シャー」

「んふふ~♪むぎゅ~♪」

 

 満面の笑みを浮かべてシリウスに抱き着く子供たちをシリウスも満面の笑みで抱き締めている。

 

「あ~、幸せ…しまった。今日ウェズンの所にいってない。それにこの一週間、道場に通ってたから外にも連れていってない。流石にマズいな…明日は魔物相手に実戦練習でもさせてもらえるか聞いてみよう」

 

 魔戦技の習得ばかりしていたので子供達の事を少しおざなりにしてしまい、反省したシリウスはシーゼルに直談判してみようと思いながら寝る準備をしている。

 

「ポラリス、アトリア、スピカ、カペラ、ハダル、ピーニ、おやすみ」

 

 着替え終わってベッドに寝転ぶと皆すぐに寝付いたのでシリウスも目を瞑った。

 翌朝、目を覚まして準備を整えたシリウスはポラリス達を抱き上げて食堂に向かい朝食を取っている。

 

「ポラリス~、あ~ん」

「あ~」

「(可愛い…そういえば最近料理してないな…いかん、いかんぞ。このままじゃこの子達のお袋の味がこのスープになってしまう!ママが作った料理じゃなくなってしまう!断固として阻止せねば…!)」

 

 ポラリス達に食べさせながらシリウスは人知れず決意し、そのために必要な物を考えているとエルフィナが食堂に入ってきた。

 

「シリウスちゃーん、ポラリスちゃーん、アトリアちゃーん、スピカちゃーん、カペラちゃーん、ハダルちゃーん、ピーニ、おはようー」

「おはようございます」

「ば~」 

「ふぃーばぁば!」

「ぉ、おは、よ、ぅ…」

「(プルプル)」

「シュー」

「あら、今日は少し遅かったのね」

「ちょっとね。別に大した事じゃないから気にしないで」

 

 エルフィナはポラリス達の頭を優しく撫でてからシリウスの向かいに座った。

 

「ん?シリウスちゃん、何か考え事?」

「何で分かったんですか?」

「んー…何となく、かなー」

「まあ、別に大した事がないんですけどね。最近料理してないからしようかなって」

「そうなのねー。そういえば私もお菓子は作ったけど料理は随分作ってないわね…」

「ここの厨房借りれるかな…?いや、夕食時とか忙しいから無理か」

「そうねぇ…家を持ってないと中々料理ってできないわね」

「かといって家を買ったり借りるってのもなぁ…はぁ、諦めるしかないのか…」

「なら今度、依頼で一、二泊ぐらいしてみる?それぐらいなら食材も傷まないし。野営のご飯だけど料理は作れるわ」

「…それもそうですね。今度手頃な依頼でも受けてみます。で、当然付いてくるんですよね?」

「もちろん!」

「知ってた。まあ構いませんけどね」

 

 満面の笑みで言い切るエルフィナにだろうなと既に諦めているシリウスだった。エルフィナも朝食を食べ終えた後、シリウスはいつも通り隣の道場へ向かった。

 

「お、来たね」

「どうも。ところで少し相談が」

「相談?何だい?」

「ちょっと外で魔物相手に魔戦技を試してみたいんですけど」

「あー、まあ確かに…どの程度戦えるか気になるか。んー…少し早い気もするけど…まあ、大丈夫か。なら今日は外でやろう。三十分後にギルドの前で集合で」

「分かりました」

 

 シリウスは道場を一旦出てエルフィナと別れて部屋に戻って準備を始めた。

 

「装備、よし。荷物、よし。ポラリス、よし。アトリア、よし。スピカ、よし。カペラ、よし。ハダル、よし。ピーニ、よし。準備完了、行くぞ」

「あ~」

「あーい」

「う、うん…」

「(プルプル)」

「シュー?」

「久々に外に出られるわー」

 

 ポラリスを抱っこし、スピカを背負い、アトリアを抱き上げて、背負子を背負って立ち上がった。カペラとハダルとピーニは荷物の中に入り、シリウスは忘れ物が無いか確認してから部屋を出て厩舎へ向かった。シリウスが厩舎に来て目にしたのは、物凄い寂しいオーラを纏って項垂れているウェズンの姿だった。

 

「んぐっ…!ごめんね、ウェズン。ごめんね」

「ブルブル、ヒィン」

 

 シリウスの心に罪悪感と後悔が突き刺さり、シリウスに縋ってくるウェズンを思いっ切り抱き締めた。ウェズンも寂しかったと言いながらシリウスに顔や身体を擦り付けている。ポラリスとアトリアとスピカはウェズンの身体を撫でて、カペラはウェズンの頭の上に乗って慰めている。

 

「(これからはどんなに遅くなってもここに寄るぞ。もう絶対寂しい思いはさせない)」

 

 ウェズンを撫でながらシリウスはもう二度と寂しい思いはさせないと心の中で固く誓った。しばらく抱き締めて撫でていたらようやくウェズンも満足したらしく顔を離した。

 

「ウェズン、ごめんね」

「ブルルル」

「もう気にしてない?うん、ありがとう。もう絶対寂しい思いはさせないからね」

 

 ウェズンを厩舎から出して手綱を付けてギルドへ向かった。ギルド前では既にシーゼルとエルフィナが待っていた。

 

「お待たせしました」

「いや、構わな…え?その馬も連れてくの?」

「もう一週間も外で走ってないので」

「えぇ…これから魔物と戦うのに…ノーゼルさんからも何か…」

「ウェズンちゃーん、おはよう」

「ブルブル」

「…うん、何を言っても無駄そうだ。取りあえず入ろうか」

 

 二人の様子を見て説得を諦めたシーゼルは二人を連れてギルドに入り、掲示板の前で良さげな依頼を探している。

 

「うーん…何かあるかな…」

「なるべく手頃なのがいいけど…あ、これは?ゴブリンの討伐」

「ああ、それなら確かに良さそうだ」

 

 シリウスを放ってシーゼルとエルフィナであっという間に依頼を決めて受付で受注していた。

 

「どんな依頼ですか?」

「西の街道沿いでゴブリンを複数目撃したから討伐してくれだって。数は十匹以上はいるみたいよ」

「十匹…その倍はいそうだな。ちゃんと準備しないと」

「弓を撃ってこなかったり、囲まれたり、グラスウルフに乗ってなかったらどうとでもなりますね」

「どうとでもって…二十匹はいるかもしれないんだよ?」

「別に二十匹同時に襲ってくるわけでもないでしょ?精々四匹が限界ですから五連戦すれば終わりますよ」

「安心してちょうだい。私が半分削れば一回で済むわ」

「えぇ…何なのこの人達…」

 

 シリウスの肝の大きい発言や散歩でも行くような気軽さなエルフィナに慎重派なシーゼルが若干引いている。二人に押される形でそのまま西門へ向かい外に出た。目撃された場所まで一時間ほどなのでその間ウェズンを思いっ切り走らせる事にした。

 

「ウェズン、お義母さんが見えるとこにいてね」

「ブルルル…ヒヒーン!」

 

 嬉しそうに嘶きながらウェズンはなだらかな草原を一週間ぶりに駆け回っている。楽しそうに駆け回るウェズンを見てシリウスは笑みが零れている。

 

「ふふふ、楽しそうね」

「…何だか普通の関係じゃなさそうだね」

「ウェズンちゃんはシリウスちゃんの義娘なんですって」

「…は?」

「深く考えちゃ駄目よ。そういうものだって受け入れなさい」

「いや、でも…えぇ…」

 

 動物や魔物と家族同然の関係になるのは、他の国など一部地域によっては仲良くなる事はあるが、この国ではまだ受け入れられていない事だった。

 

「(やっぱ私の考えって異端なのか…いや、そんなの関係無い。カペラとウェズンとハダルは私の子供だ。それは絶対に譲らない…いや、ハダルはまだだけど)」

 

 自分の考えを貫く事を誓いながら楽しそうに駆け回っているウェズンを眺めている。しばらくしてウェズンはたっぷりと走り回って満足しシリウスに寄り添って街道を歩いている。目的地周辺に着いたので散開してゴブリンの痕跡を探す事になった。

 

「…あった。見て」

「これは…ゴブリンの足跡か。結構な数があるな」

「二十前後といったところね。あら?こっちの足跡は…グラスウルフもいるみたいね。こっちは数匹かしら」

「なんてこった…」

「面倒な」

 

 グラスウルフがいる事で難易度が跳ね上がったと思っているシーゼルと対処が面倒だと思っているシリウス。

 

「方角は…あっちへ向かってるわね。獲物を探してるみたい」

 

 ゴブリンの足跡は森から来ており、森の中に住処があって街道沿いで獲物を狩っているようだ。

 

「街道沿いなんだから獲物を探してウロチョロしないはず。街道が見える所で待ち伏せしてるはずよ」

「なら逆にそこを後ろから奇襲すればいいのでは?」

「あら、いい案ね。それで行きましょう。私が先頭に立つから静かに付いてきてね」

「え、ちょ、ま、待って…!」

 

 シリウスの案にエルフィナが賛同して街道沿いの草原へ向かい、あれよあれよという間に作戦が決まったのでシーゼルは慌てて二人を追い掛けた。

 

「何そんなに慌ててるんですか?」

「いやいやいや!?もうちょっと慎重に行こう!?ゴブリン二十匹だよ!?グラスウルフもいるんだよ!?」

「だからそれぐらいなら大丈夫ですって。初撃でグラスウルフを叩いて、奇襲されて混乱してるゴブリンを各個撃破すればそれで終わりますよ」

「そんな簡単には…!」

「二人とも静かに。いたわ」

 

 軽い言い争いになっていたシリウスとシーゼルだったが、エルフィナの言葉に口を閉じた。エルフィナの指差す方向には街道を監視しているゴブリン達の姿があった。

 

「う、うわぁ…あ、あんなにいる…」

「弓持ちもいますね。グラスウルフの後は弓持ちを叩かないと」

「グラスウルフは…五体ね。私が三体倒してそのまま弓持ちをやるわ。二人は残ったグラスウルフとゴブリンをお願い。弓持ちを倒したら私も合流するわ」

「分かりました」

「二人とも肝が据わりすぎぃ…!」

 

 あの数を相手した事が無いシーゼルは剣を握りしめてビビっているが、シリウスは平然と剣を抜いて自然体だった。

 

「じゃあ…行くわよ。【瞬動】」

 

 魔戦技を発動させたエルフィナが消えるとその直後、その場に伏せていたグラスウルフ三体が斬られて血を噴き出して倒れた。

 

「ギャギャ!?」

「グギャア!?」

「ギギギ!?」

 

 グラスウルフが倒された事で混乱しているゴブリン達の隙を付いてシリウスとシーゼルは残ったグラスウルフに駆け寄った。

 

「はあっ!」

「うわあああぁぁぁ!」

「キャイン!?」

「ギャン!?」

 

 二人とも一太刀で斬り伏せてグラスウルフを倒すが、ゴブリン達は二人の姿を見つけて怒りに満ちた表情で一斉に襲い掛かろうとしていた。

 

「ギャア!?」

「ギギ!?」

「ギャギャギャ!?」

 

 そこに瞬動が切れたエルフィナが後ろからゴブリンに斬りかかり、ゴブリン達は再びパニックに陥った。

 

「今!」

「ええい!やってやる!」

 

 前後を挟まれて混乱しているゴブリン達にシリウスとシーゼルも駆け寄った。

 

「せいっ!」

「グギャア!?」

「ふんぬっ!」

「ギャア!?」

「ギギィ!」

「どこに行くのかしら?」

「ギャギャ!?グギャア!?」

 

 次々とゴブリンを倒していくが、やがてゴブリン達も混乱が収まり怒りのままシリウス達に襲い掛かってきた。

 

「【幻体】」

「ギャギャギャ!ギ?」

「こっちだ」

「ギギ!?ギャア!?」

 

 棍棒を振り下ろしてきたゴブリンにシリウスは幻体を発動させてその隙にゴブリンの後ろに回った。幻を叩き手応えが無い事にゴブリンは首を傾げていたが、シリウスの声に後ろを振り向くと同時に斬られて倒れた。

 

「ギャア!」

「うわあ!?こんのぉ!【幻撃】!」

「ギギ!?」

 

 鎧を着たゴブリンのボスの猛攻でシーゼルは苦戦しており、魔戦技を使うものの中々攻めきれずにいた。

 

「【虚閃】」

「ギャア!?」

「もらったあああぁぁぁ!」

「グギャア!?」

 

 シリウスがボス目掛けて虚閃を放ちボスの肩を斬り裂いて隙を作ると、シーゼルはその隙を逃さずボスを斬り伏せた。

 

「ふぅ…助かったよ」

「お気になさらず」

「こっちも終わったわよー」

 

 その場にいたゴブリン達は全員倒し、宣言通りゴブリンの半分を倒したエルフィナも戻ってきた。ゴブリン達の死骸を一ヵ所に集めて耳を切り落として死骸を燃やした。

 

「ゴブリンの場合は耳なんですね」

「そうよ。倒した分だけ持っていかないといけないから数が多いと面倒なのよね」

「二人とも、終わった後なのに元気だね…」

「まあ、あのぐらいなら特には」

「まだまだ行けるわよー。ところでシリウスちゃん、どうだった?」

「幻撃は試せませんでしたが、幻体と虚閃は通じたのでこれなら行けそうですね。ただ幻体の魔力消費が多かった気が」

「あー…多分子供達や荷物だと思うよ。身に着けている物全部を幻で見せるからね」

「なるほど」

 

 ゴブリンの死骸を焼き終わったシリウス達は依頼を達成したので町に戻る事にした。

 

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