向日葵のフレア   作:Aa_おにぎり

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#22

日の丸を拵えている戦闘機を出した円環は富士ピラー内部でも確認されており、ピラー内部では混戦状態となりつつあった。

 

「な、何が起こっているの?」

「分からないよ」

 

鈴原と石動が先ほど現れた円環に驚きと困惑が生まれていた。

 

「そう心配すんな」

「もしもの時は、俺たちが守ってやる」

 

そう言い、彼女らを守る老人パイロット達が言うと彼らに接近してくる航空機の影があった。

 

「あれは……」

「気をつけろよ。お嬢ちゃん」

 

接近してくる航空機の編隊はそのまま二人の横にピタリとくっ付く。機体は一式戦闘機「隼」深緑色に日の丸が描かれ、尾翼には矢印マークが塗装されていた。

 

「あの機体……まさか!!」

「間違いねえぜ!あれは……」

 

そのカラーリングと機体、塗装を見て老人パイロットは一瞬でどこの部隊なのかピンときた。

 

「「あれは加藤隼戦闘隊だ!!」」

 

その飛行編隊を見て老兵パイロットは驚いた。

 

「スッゲェ!」

「伝説の部隊だ!」

 

彼らを囲うように飛ぶ隼のパイロットの一人がハンドサインで鈴原達にサインを送る。顔は完全に覆われていて、その顔を判別することはできなかった。

 

「あれは……なんて言っているの?」

 

ハンドサインを学んでいない彼女らはその反応に応えられないでいると、老人パイロットが教える。

 

「『共闘を求める』だそうだ」

「え、えっと……」

 

困惑する鈴原に石動が呼びかける。

 

「くるみ、やろう」

「……うん」

 

頷くと二人は老人パイロットにいう。

 

「返答をお願いします。『共闘を受け入れます』と」

「よっしゃ!」

 

そしてハンドサインを送るとそのパイロットは頷き、ハンドサインを返すとそのまま上昇する。

 

「ついてこいってさ」

「いくよ」

「うん」

 

そして隼の後を彼らは追いかけ始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

円環から現れた無数の戦闘機にオーディンは状況の把握を努める。

 

「そうか…あくまでも自分は出ないつもりか……」

 

自分の思い通りに動かない彼女。どこまでも強気な女だ。ここまでの事をして姿を現さないとは……

 

「ならば!!」

 

この状況を作った宮古を堕とせば、確実に出てくる。そう確信してグングニルの矛先を彼女に向けた瞬間、

 

「チッ!」

 

上から機関銃の弾丸が飛んできた。

 

「あなたの敵は私だ!」

 

そしてグラディエーターが落下し、宮古への攻撃を遮る。

 

「大神オーディン!」

 

そう叫ぶ彼女はオーディンとの対決を始める。

 

「なぜ邪魔をする!なぜまだ抗う!」

「神々との戦いは決意してきた。それがどうした!今更それを恐れる翼はない!」

「神々の……己の血の宿業を否定するか!クラウディア!!」

 

オーディンは自ら否定されたことに憤慨し、クラウディアとの決闘に飛んでいった。

 

「オーディン達は任せろ!宮古達は作戦通りに!」

「おい!作戦通りつったって……クラウはS級一人抑えるのが前提だってのに。肝心な時にあのぐうたらは行方不明になるし……」

 

愚痴りながら駒込は作戦案を練っていると、横で園香が飛び出した。

 

「おソノ?!」

「ミコちゃん、アズちゃん。ここは私がなんとかする!」

「敵はネームド級だぞ……」

 

あまりにも無茶だと進言しようとした矢先、宮古が答える。

 

「ソノ、任せた!」

「あ…うん!アズちゃんも心配しないで」

 

そう言うと園香はスーパーチャージャーを利用して加速を続ける。

 

「私はこの空で、誰よりも一番早い!」

「堕ちたらウチ泣くからな!」

「凄い脅し文句……」

「アズらしよねぇ」

 

そんないつもの調子が戻りつつあると、知っている無線が聞こえる。

 

『ミコちゃんたち!』

「みんな!」

『やっと追いついた』

 

それは戦闘に遅れて到着した館山のシールド隊であった。それを確認して駒込は言う。

 

「よし、一人足りないが十分だ」

「それじゃあアズ、アタシたちは」

「ああ、あのデカブツとリベンジマッチだ!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

宮古たちがトールとの再戦に向かう中、クラウディアとオーディンはタイマンで戦闘を繰り広げていた。

 

「鉄の弾が当たるものか!お前に勝ち目などない!なんのために戦う?!」

 

そう呼びかけるオーディンにクラウディアは…

 

「ここで私があなたを抑えていれば。宮古が、アズズが、園香が、陽奈が。誰かがトールの喉元に届く。そのためならば!」

「誰かが……だと?そんな戯言をまだ信じられるのか?!お前もただ一人、焼け野原に取り残されるだけだとなぜ分からない?!」

 

そしてピラー中央の木の間を上り詰めていった先、その先でクラウディアはあの景色を見た。

戦闘前にオーディンと話した、あの一本の木が生える小さな丘が。

 

「っ…!」

 

その瞬間、一瞬の頭痛が走る。見えたのは一本の木の下に刺さる剣と燃え盛る平原だった。

 

「これがお前の行き着く先だ」

 

老人の声が聞こえる。オーディンの声だ。視線の先では燃え盛る大地の上で、あの木の下で孤独にその景色を見下ろすオーディンの姿があった。

 

「何もかもが炎に包まれ、家族も友も失い、たった一人。絶望の淵を覗くことになる」

 

 

 

 

 

その頃、園香と対峙するスヴァルトワルキューレは柱の立つピラーの底部で戦闘を続けていた。

 

「桜さん……」

 

思い浮かぶのは、かつて過ごした訓練生の頃の景色。

 

「お姉ちゃんにも、ずっと迷惑をかけてばかりだった……」

 

園香にとっては最も輝かしかった頃の景色。

 

「だから、その恩返しを……」

 

あの頃に戻ることはできないが、記憶は残っている。

 

「今日する!」

 

今の自分にできるのは、これくらいだ。

 

 

 

 

 

「ゾンダーゲレート!!」

 

駒込の機体からロケット弾が飛び出す。

 

「勇者砲!ファイヤァアア!!」

 

宮古の機体から無反動砲の砲弾が飛ぶ。

そしてそれぞれ発射された弾丸はそのまま全弾トールに直撃した。

 

「ウチらの最高火力だ。これでダメなら……」

 

その瞬間、二人の間に電撃が走った。

 

「マジかよ?!」

「ウッソだろ?!」

「効いてないのか!?」

 

三馬鹿が驚くと、駒込が言う。

 

「いや、効いてる。だから本気で反撃し始めたんだ」

 

駒込が即座に否定すると宮古が困った表情で問いかける。

 

「でも、もう残弾が……」

 

今ので都は無反動砲の残弾がないと叫んだ。このまま装填し直しにいけば時間がない。どうしたかと思った矢先、

 

『情けねえ声出すんじゃねえよ』

「っ!班長?!」

 

無線を繋いできたのは外で待機中の整備班長からだった。彼は無線で宮古に伝える。

 

『右足んとこにレバーがある。引いて見ろ』

「こんなのいつの間に?!」

 

都は驚きながらレバーを引くと、胴体下部にあったカバーが外れ、中から大きな無反動砲が出てきた。

 

「なんだそりゃ?!」

『今までよりバカでけえ、秘密兵器ってやつよ』

 

この兵器も陽奈のエンジン同様、倉庫で埃をかぶっていた60式106ミリ無反動砲を改修した物を取り付けていた。

 

「なんで偽装する必要があんだよ!」

『敵を騙すにはまず味方からってあるだろう?』

「ぐぬぬ……」

「班長!ありがとう!!」

 

目を輝かせながら宮古は言う。

 

『おうよ、外すんじゃねえぞ。キ44』

 

整備班長は宮古に激励を送るとそのまま無線を切っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「誰もいない。誰もいないんだ」

 

燃え盛る平原の中、オーディンは一人呟く。

 

「僕の大切な人は皆、消えていなくなる」

 

そして上を飛ぶグラディエーターを見ながら問いかける。

 

「お前もそうだろ?お前もこのままなら、消えて無くなる。そんな世界が、滅びが。お前の望みなのか?!」

 

その問いかけにクラウディアは顔を軽く伏せて答える。

 

「望むはずがない。私は、あなたと同じにはならない」

「いいや違わない!」

「っ!?」

 

しかしオーディンは強く反発した。まるで戒めるかのように、クラウディアに叫ぶ。

 

「気づいていないのか?!俺の娘よ!」

 

そこでオーディンは種明かしの如く、クラウディアに話しかける。

 

「なぜ、お前の家には歌が残っていた?!

なぜ、過酷な戦場で、お前だけが生き残ってきた?!

なぜ、私はお前にこんなにも執着する?!

なぜだ?!」

 

そこでクラウディアは木の下に立つ一人の少女を見た。その姿は目の色が違うだけの、自分の生き写しのようであった。

 

「それはお前だげが、本物の神の血を引き継ぐ。僕の血を継ぐ娘だからだ」

 

するとオーディンはクラウディアと二人だけの空間を作り出す。

 

「心当たりがあるはずだ。自分と他人では違うと。幾度も感じただろう?

その孤独は誰にも癒やせはなしない。この、血のつながった俺以外は……

 

 

 

クラウディアお前だけは……」

 

 

 

オーディンは望むようにクラウディアを口説く。するとクラウディアは口を開いた。

 

「やっとわかった」

「?」

「オーディン…あなたは……敗北を認められない狂える神ではなかった。あなたは孤独に抗おうとしている、一人きりの神……」

 

その瞬間、二人の空間は裂け、クラウディアとオーディンは互いに真反対に飛ぶ。

そして彼女はオーディンに告げる。

 

「私は人だ。人として生き、人として死ぬ。神話には、生きられない。

 

 

 

あなたとは、生きられない」

 

 

 

「っ……!!クラウディアアァァアア!!」

 

彼女の否定は、オーディンを絶望に立たせるには十分だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ヴァンドランデの位置は?まだ特定できていないのか?」

 

司令室で里見が問いかける。正体不明の戦闘機が乱入したりで一旦は混乱したものの、今はすっかり態勢を取り戻していた。

 

「ダメです。前回よりもさらに妨害波が強くて……」

「くっそぅ……トールの影響か?それともオーディンが?」

 

その瞬間、()()()()()()

 

「?」

「これって……」

 

それを知っている者からすると驚きと喜びの声が聞こえた。

 

「クーちゃんが歌ってる。優しい歌。胸がキュッとなって…大切な人と一緒にいたいと思わせてくれる……」

 

そしてその歌はこの場にいる全員に聞こえる。

隼の航空隊と共に三機のスヴァルトワルキューレを撃墜した鈴原と石動もそれを聞いていた。

 

「聞こえる」

「うん、クラウさんのだ」

 

クラウディアの歌う歌は無線を通して日本中にも聞こえる。まるで鎮魂歌の如く。

 

「妨害波、減衰していきます!富士プライマリー、ヴァンドランデの座標。特定できました!」

「よし……」

 

 

 

 

 

『駒込』

「聞こえている。せっかく位置が分かっても、まずはこいつを何とかしなきゃ……」

 

トールは近づけさせないように体の周囲を風で囲んでいた。

 

「アズ、行って。私がトールを倒すから!」

「お前、また思いつきで言って……」

「分かってる。無茶はわかっているよ」

 

宮古の断言に駒込は少し考え、ある結果に辿り着く。

 

「…はぁ、馬鹿の言う通りだ。他に作戦はない」

 

そう言い、駒込は目の前のトールを見る。

 

「うちがヴァンドランデ、宮古がトール。あとは、覚悟だけだ」

 

そう言うと、宮古は自分の胸に手を当てて自信に溢れる答えをする。

 

「覚悟なら、この胸にある!!」

「……ふっ」

 

その答えを聞き、駒込は不適に笑う。

 

「シールド隊!宮古を任せたぞ」

『『『任された!』』』

 

そして駒込が指示を出した。

 

「行くぞ!」

「『『『おう!』』』」

 

そうして宮古達はそのまま風の中に突入していった。

 

 

 

その様子を遠くから一機の航空機が眺めていたのを、ここにいる全員は気づかなかった。

 

 

 

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