富士ピラー内部の戦闘も佳境になってきた頃、司令所では……
「これは……」
データの変化に気づいた和浦が報告しようとした矢先。
「「「わぁぁっ!?」」」
先ほどのエース・パイロット達を召喚していた円環とは違い、本当の意味での強烈な光が司令所を包んだ。
「今の光は……」
里見が未だチカチカする目を瞬きしながら聞くと、和浦が席を立ってその変化に気づいた。
「あっ!!」
「…っ!わぁ!!」
本庄もその変化に気づき、すぐに解析を行なった。
その変化は、目の前にあった富士山頂に延々と聳え立っていた柱が、跡形もなく消え去っていたのだ。
「富士プライマリピラー、反応ありません!」
「セカンダリ以下のピラーも次々と消滅!これって!!」
感性に湧き立ちそうになる司令所を里見は落ち着かせる。
「ふぅ…現状の確認を。戦闘の被害確認と、負傷者の救援を急いでくれ。国内の各基地、各国の戦闘状態を確認。急ぐんだ」
「は、はいっ!!」
状況把握を行わせ、世界規模での情報収集に努める中。里見はまだ作戦は終わっていないとしていた。
「喜ぶのは後回しだ。全部片付いてから……ん?」
すると里見は司令所の、富士が見える方向に影を見た。
「あれは……」
よく目を細めて眺めると、そこにはいくつもの機体が空を飛んでいた。
「みんな、無事で……「よっしゃぁあああっ!」ふわぁっ!?」
御厨が喜びの声をあげようとした時、完全に場崩れとなるような雄叫びを後ろで里見があげ、驚きと唖然で一瞬司令部全体が静粛に包まれてしまった。
それを受けて少し赤面しつつも里見は聞いた。
「…んんっ、現状を」
「戦乙女を確認。国内外の戦闘、終了確認」
そして次々と報告が上がって来る。
「各国のプライマリーピラー鎮静化。戦闘、完全に終了。指令!」
落ち着きを取り戻しつつある戦場に、富士ピラーの消失。里見はここである判断を下す。
「第二次ラグナロク作戦。我々の…人類の勝利だ!!」
その瞬間、司令部や基地全体で大きな歓声が上がった。
「「「うおぉぉぉおおっ!!」」」」
この勝利に、おそらく世界が動く。今まで攻略は不可能とされてきたプライマリピラーに対し、人類は勝利した。
ピラーに対し、世界が結集すればその困難すら乗り越える事ができる。それを証明した出来事であった。
空で園香の機体の牽引をしていた鈴原と石動はそこで共にピラーから出て来たあの隼を見た。他の共に戦ってくれた英霊達は次々と高度を上げて離脱していた。
その隼のパイロットはハンドサインを送り、それをまたもあの老人パイロットが翻訳した。
「『日本を頼んだぞ。若いの』だとさ」
「『ありがとう』と伝えておいてもらえますか?」
石動がそう答えると次に鈴原が言う。
「それから『精一杯努力します』って言って欲しいです」
「おうよ!」
そしてパイロットはハンドサインを送ると、その隼に乗った英霊は短く答えるとそのまま機体を軽く振ってさらに高度を上げていた。
飛んで行った先は太陽で、その光から彼らの姿を最後まで見ることはできなかった。
「『君たちの行く末に幸あれ』……か」
「帰っちゃいましたね……」
「何、ああ言う人たちは永遠と飛んでいる方が幸せなのさ」
「そうですね……」
どこまでも広がる、宇宙よりも遠いかもしれない元いるその場所に彼らは帰って行った。その先にどんな景色が広がっているのか、それは分からない。
一体なんのために彼らは来たのか。それはいずれ知ることになるのだろう。
そんな喜びで溢れる基地に今回の作戦で活躍した英雄達が着陸する。
園香の機体に関してはフロートがないので軟着陸し、グラディエーターやHe100Dが着陸。そこにキ44と橘花の姿はなかった。
グラディエーターから降りてくるクラウディアに駒込の機体に乗って帰還した宮古が抱きつき、彼女の無事にオーディンから死んだと言われてそう思っていた駒込が涙を流したり。とにかく大騒ぎとなっていた中、宮古は辺りを見回して首を傾げた。
「あれ?ヒナは?」
「え?あぁ、陽奈はどうしたんだ?」
「おっかしいなぁ、無線は繋がったのに」
「え?あいつ居たのか?!」
「うん、トールを倒す前にね。色々と指示を送ってくれたんだ〜」
そう話していると、その場所に里見やオペレーター三人衆が現れて今回の戦いを讃えていた。
そんな中、里見だけは空を見てふとつぶやく。
「さて、後の仕事は……」
そこで空を見ていた里見はふと口角が上がった。
「来やがったな」
遠くに映るその機影を見て里見は軽く目を細める。
そして徐々に聞こえて来るその音に着陸した戦乙女やシールド隊達は一斉に見上げていた。
「何?あれ……」
「えぇ、見たことない」
そんなふうに戦乙女達がいる中、シールド隊のパイロット達や整備兵はやや驚きの声をあげた。
「おい、あれってまさか……」
「うわぁ、俺飛んでんの初めて見た」
接近してくるステルス性を意識したのっぺりとした曲線形を意識したそのデザインに誰もが驚きの表情を浮かべていた。
そして整備兵の一人がその機体の名を呟いた。
「すげぇ、YF-23だぜ」
かつて、F-22と競合して華々しく散っていった美しき敗者であるYF-23。それが単機で基地を一度横切るとそのまま大きく旋回していった。
「司令!」
「あぁ、どうも奴さんはここに降りたいらしい」
「まじっすか!?おい!滑走路を開けろ!あの機体を着陸させる!」
そうして突如現れたステルス機体に驚きと喜びで興奮する整備兵達は慌てて航空機を退かし始め、損傷した機体などを避け終えるとそのままYF-23はそのまま滑走路に着陸する。
「……」
警戒するように銃を持った隊員が集まった。
つい先ほど、人類を敵にした神を倒したばかりで全員の気が立っていたのだ。
そしてYF-23は着陸を終えると、そのままゆっくりと里美の元に向かって停止する。
そしてキャノピーが開き、中に一人座っていた。
フルフェイスのヘルメットを被り、耐Gスーツを着こなす一人のパイロットはそのままコックピットから降りてきた。
するとそのパイロットは銃を持って待機している隊員や、その後ろで待つ戦乙女や整備兵を見てこう言った。
『やれやれ、随分と豪勢なお出迎えですことで』
身長は一七〇センチほど、声は女性でかなり大柄であることが分かる。
『まぁ、そうなるのも仕方ありませんが……』
「すまないが、そのヘルメットを取って貰えるかい?あいにくとこっちも知らない人には敏感なんだ」
『そうですか』
里見の要求にその女性パイロットは応えるかのようにヘルメットを外す。その一つ一つの動作に誰もが警戒する中、パイロットはヘルメット両手で持ってを外す。
ヘルメットから纏められていたのだろう、黒曜石のような艶のある黒髪が溢れ、風に靡いて下に落ちる。
そしてヘルメットを脱いで軽く頭を振った後に見せた顔はまさに美しい日本人女性を体現したような姿で、向日葵色の特徴的な大きな瞳が大きな印象を抱かせた。
そして、彼女はピラー内部であのオーディンが話しかけていた女性であった。
「これで十分?」
「君、名前は?」
里見が問うと、その女性は答える。
「さぁ?ご自分の胸に聞かれては?」
「……」
答えを聞き、里見は軽く舌打ちをした後に背中を軽く掻いて言う。
「やれやれ、厄介ごとが増えるよ。ねぇ、
天照大御神さん」
その名を口にした時、ここにいる殆ど……正確には日本人は固まった。
日本人であれば誰もがその名を一度は聞いたことがあるはず。日本神話には必ず登場する、天皇家のご先祖さまだ。
「え?うそぉ……」
「まじかよ……」
里見の告白に誰もが衝撃て凝り固まっている中、天照は飛行服に身を包んだまま里見を見て軽く手を叩きながら言う。
「いやはや、流石は第二次ラグナロク作戦を成功に導いた人だ」
「けっ、上手く茶化しやがって……おまえさんを調べろって駒込に言われた時に、宮内庁から圧力がかかった時点でおかしな話だと思っだんだよ」
里見がそう答えると、駒込がそこで思わずツッコミをかける。
「ちょっと待て!私は陽奈の調査を依頼しただけだぞ?!……って、あれ?」
そこで駒込は違和感に気いた。
「え?いや、まさか、そんな……」
そして混乱した。そして、その話を聞いていたクラウディアと園香が違和感と共にそれがなんたるかを把握し、青ざめた。
「ん?それは…」
「つまり…」
するとその答えを里見が言った。
「そう、館山基地第九〇九戦術飛行姫隊に所属していた珍しいジェット機を駆る戦乙女。天照・陽奈の正体はなんとびっくり、日本の神様だったって事だ」
「やぁやぁ、どうも〜」
陽気に答える彼女にそこにいた全員が固まった。
「…え、」
しばしの沈黙の後に大きな声と共に驚愕の嵐が飛んだ。
「「「「「「ええぇぇえええええええっ?!?!?!」」」」」」
Nice Boat.
しばらく基地全体が大狂乱となった後の基地の応接間、そこで陽奈……もとい天照大御神は里見や尾山などの今回の作戦に関与した参謀達との面会をしていた。
「さて、どこまで話したものかね?」
二人の前に座る一人の女性……歴史上ではオーディンについで二番目となる神を名乗る存在…と言うか我々の知る神は里見に聞いてくる。彼女はいつの間にか巫女服を着ており、まさに伝承通りの格好をしていた。
「君が日本の神様だと言うのがここにいる全員が知っただけだよ」
「あぁ、そうか…」
どこかボケ老人のような様子で答える彼女は懐からキセルを取り出した。
「ちと吸っても?」
「ここは禁煙だよ。陽奈…じゃなくて、天照様」
「天照で良い。堅苦しいのは嫌いなのは君も知っておろう?」
「うんまぁ…そうなんだけどね?」
少なくとも里見と尾山は激しい頭痛で悩まされていた。オーディンの直後に現れた実在する神。その報告を上げたらそれ以降の連絡が一切消えた。恐らくはとんでもなく混乱しているのだろう。
第二次ラグナロク作戦が成功した矢先にこれだ。上の心労も理解できた。
「まぁ、少なくとも君たちは私に色々と聞きたいことがあるんじゃろう?」
「そうだな…じゃあまず、あの円環から飛び出してきたエース・パイロットを呼んだのは君かい?」
「そうじゃ」
「何の為に?」
その問いかけに天照は置いてあった菓子をひとつまみしながら最初の疑問に答える。
「この国を害する敵を排除するため」