向日葵のフレア   作:Aa_おにぎり

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#26

園香と天塚が再会し、少しして落ち着いた頃。

 

「それから司令」

「ん?」

 

天塚が里見に口頭である事を伝えた。

 

「向こうで、桜と神宮寺に会ってきた」

「っ!!そうか……」

 

一瞬、里見の表情がこわばった。すると、そんな彼の表情を見て天塚は

 

「そう怖ばなくても、二人からの伝言だ。二人とも同じ事を言っていたよ」

 

その表情はどこか悲しくも、少し愉快げな表情だった。

 

「『迷惑をかけてすまなかった。あとで目一杯怒られます』だってさ」

「……そうか」

 

二人の伝言を聞き、里見はふと天を仰いだ。

 

「迷惑をかけたのは、こっちの方だってのにな……」

 

そう呟き、彼は一瞬目を閉じてその時の景色を思い出してしまった。

 

「……いかんな」

「いいんじゃないの?苦楽を共にした仲間だ。思い出は消えることはない」

「ははっ、神様に世話されて成長したか?」

「どうだろうね」

 

彼女はそう答えると、里見は足早に屋上をさっていく。

 

「さて、君が生きていたことを上に報告しにいかないと」

 

そう言い残して彼は出て行った。これから彼には実に多くの仕事が待っていることだろう。

記者会見に天塚生存の報告、基地帰投のための手筈。とにかくやることはいっぱいだ。

作戦が終わり、オーディンに関する情報も公開され、すでに各報道機関は過労死しそうなほど忙しい。

 

「しかし、ここは常に忙しいさね」

「それは世の常よ」

 

そして、目下の問題として……

 

「「「姉御!私どもにキスをください!」」」

 

かつての部下三人が揃って天塚にあの時の約束をしてもらおうとしていた。

それを見て天塚は言う。

 

「そういえばそうだったさね」

「忘れてた?」

 

陽奈が聞くと、彼女は首を横に振った。

 

「いや、この先のことさ」

「あぁ……」

 

彼女は、あの救出作戦に参加した際に自身の英霊機を失っている。残骸も回収できていないため、これから戦少女として戦うことはできなかった。

 

「それならいい案がある」

「ん?」

 

しかし、そこで陽奈がある提案を持ちかけた。

 

「ウチの橘花を使うと良い」

「……良いのか?」

 

天塚は陽奈の計らいにそう聞き返すと、彼女は頷く。

 

「良いのよ、うちにはYF-23がある。 どうせ解体するだけだし、いらないもの」

「ははっ、なるほど。だから英霊機もいいやつに乗れるわけか」

「あら、今頃気づいたの?」

 

彼女はジェット戦闘機の英霊機を授かったトリックがわかったところで、ずっと天塚にくっついて離れない園香に陽奈が言う。

 

「園香、そろそろ離れんと。天塚が困るよ」

「うん、わかっているよ。でもね」

 

そして彼女は少し抱きつく力を強くして答える。

 

「あと少し、こうさせてほしいの」

 

そう言うと、陽奈も天塚も少し困った表情をした後に軽く微笑んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

目が覚めた時、自分は砂浜の上で寝そべっていた。

一体何が起こったのやら、私はあの戦闘で被弾し、最後にあの銅色の機体を最後に記憶は途切れていた。

 

「ーーっ!!」

 

漂着したのか、それにしては服が濡れた様子は無い。

体を起こし、天塚は近くに落ちていた帽子をとって砂を払うと帽子を被った。

 

「ここは……」

 

辺りを見回すとまず初めに映ったのが海だ。永遠と続く大海原が映り、空には絵に描いたような満天の星空が浮かんでいた。

海は海岸に波打ち、潮の音がよく聞こえていた。

反対側を見ると、そこには草の生い茂る平原が広がっていた。

 

「……」

 

海は底の方が淡く光っており、その異常な光景から天塚はここがどこなのかを薄々感じていた。

あんな地獄のような景色からこんな海岸になるなんてそれくらいしか思いつかなかった。

 

英霊機も無く、天塚はここは死者の世界なのだろうと認識して呆然と砂浜を眺めていると突如横に誰かが現れ話しかけてきた。

 

「お前は自分が死んだと思っているのか?」

「っ?!」

 

横を向くと、そこには一人の巫女服に身を包んだ女性が立っていた。

背は自分とほぼ同じで、女性としては大柄な部類であるとわかる。

 

「君は……」

「お主らもよく知っている人物じゃ」

 

するとその女性はくるりと辺りを回すと、天塚に言う。

 

「着いて来るが良い」

「……」

 

ここが何なのか、さっきの言葉の意味は何なのかを聞きたいのを押し留め、彼女の後を追いかけた。

すると、歩きながらその女性は天塚に話す。

 

「ここは生と死の境目、どこで目を覚ましたかで今のお主の状態が分かる」

「へぇ〜、じゃあ私は今どんな状況で?」

「生きているわけでも、死んでいるわけでもない。臨死に近い状態じゃ」

 

天塚の問いかけに女性はそう答えると、彼女はさらに聞いた。

 

「それで、いまだに私はあなたの名前を聞いていないのだが?」

 

その疑問に女性は思い出したのように軽く納得して答える。

 

「ああそうか。まだ名前をいっていなかったか」

 

すると彼女は歩く足を止め、天塚を見て名乗った。

 

「天照大御神……と言えば分かるか?」

「……これは驚いた。まさか神様がお出迎えとは」

 

しかも、オーディンと違って自分もよく知っている女神様だ。

すると天照はそのまま天塚を連れて砂浜を歩く。

 

「それで?臨死した私がここにいるって?どう言う事だい?」

「お主の体は預かっている。今は療養中だ」

「ほぅ……」

 

つまり、今の自分は魂だけと言うわけかと妙に落ち着いた表情で天塚は頷くと、天照はそんな彼女に聞く。

 

「妙に落ち着いておるな。ほとんどは混乱か錯乱を起こしてしまうと言うのに……」

「まぁ、私に心残りはないさね」

 

つい方言が溢れてしまった。初めて会う、それも神様だと言うのに……でも、この違和感は何だろうか?前にもこの女性に会ったことがある気がしてならないのだ。

 

「園香の事でもかい?」

「っ!!……どこでそれを?」

 

天塚は驚愕の表情で天照を見ると、彼女は少し笑った後に答えた。

 

「ふふっ、そりゃだって」

 

すると、天塚が瞬きをした一瞬で目の前にいた女性は紺色のセーラー服を着た少女へと変わり、天塚を見た。

 

「二人の様子を間近で見ていましたから。九〇一戦術姫隊の戦乙女さん?」

 

糸目のショートヘアが特徴の目の前に立つ少女は、天塚に最後まで着いてきたあの戦乙女だった。

 

「……そうか」

 

そう言うことだったのか。

天塚は全てがつながった。曲がりなりにも大学校を出た身だ、頭は回ると自負していた。

 

「何てこった、あのぐうたらと言われていた戦乙女が神様だったとは……」

「私はあのロリコンのお目付け役ですが……」

「おいおい、遂に隠す気もないか……まぁ、貴方なら必要ないですか……」

「敬意は不要です。今の私は天照・陽奈と言う一人の戦乙女です」

「そうかい……」

 

陽奈と天塚は延々と砂浜を歩いていると、ある所で陽奈は足を止めた。

素手に続いて天塚も足を止めようとした矢先、

 

「っ……!!」

 

天塚は目の前に立っていた二人を見て息が止まった。それは、天塚を待っていたかのように立っていた二人の女性。

 

「神宮寺…沖田……」

 

それはかつて、ピラーとの戦闘で命を落とした二人の戦友、神宮寺・晃と沖田・桜だった。

 

「君に話があると言っていた。君の治療が終わるまで話していると良い」

 

そう言い残すと陽奈は消えていった。

 

 

 

 

 

それから三人は暫く積もる話で盛り上がっていた。どのくらい時が経ったのかわからないくらいだった。

 

二人が亡くなってからの事、世界で何が起こっていたのか。

 

あの頃の仲間はどうなったのか、そして……彼女たちの妹(園香)の話も。

 

「お前たちはこれからどうなるんだ?」

 

天塚が聞くと、二人は背中にある広い草原を見た。

 

「私達はあの人にオーディンの手の中から本来の居場所に連れてきてもらっただけで、体はもう無事じゃないの」

「だから帰る事は駄目見たいッス」

「そうか……」

 

天塚は分かっていたが、それでも現実を改めて知ってその不甲斐なさに唇を噛んだ。

 

「その証拠に……」

 

すると徐に沖田は海の方を歩いて手を伸ばすと、彼女の手はある場所から実体がなくなったように消えてしまっていた。

 

「あの人から聞いたの。この壁を通れば私という個人が死ぬと。本当は、みんなを助けにいきたかったのだけれど……」

 

相変わらずなことを話す沖田に天塚は少し微笑んで彼女に言う。

 

「その位、うちが帰ったらしてやるさね」

「あら、貴方らしくないわね」

「あの女神様を見ていたらね……あれは私をこき使おうって目だったさね」

「あははっ、神様に目をつけられたッスカ」

「ご生憎とね」

 

絶対、あの変な住所の部分だ。出なければ私が目をつけられる理由が存在しない。

 

「全く、嫌な人に目をつけられたもんだ」

 

そう口にすると、天塚は砂浜に立って先ほど桜の手が消えた海の方に手を伸ばすと、彼女の手は消えることがなかった。

 

「なるほど……」

 

彼女が臨死したと言うのは、こう言うことなのだろう。海の下で光る淡い光は現世に続く場所とでも言うべきなのだろうか。

 

「反対側には……」

 

そして今度は砂浜を平原のほうに歩くと今度はそこで彼女は透明な壁のような物で行手が塞がれていた。

 

「私には帰るしか道はないってことか……」

 

するとそれを見ていた神宮寺と沖田が砂浜で待っていた訳を話す。

 

「私たちは、誰かが私たちの体を倒してくれないとこの砂浜から出られない」

「だから待っているんッス。私たちを本当の意味で倒してくれる人が出て来るのを……まぁ、私の場合は弥生に鎮魂してくたらしいっすけど」

「あぁ、あの時に落としたからな……」

 

スヴェルトワルキューレ、ピラーに堕ちた戦乙女の成れの果てだ。あの戦いで私は神宮寺の駆っていたF7Fを撃墜していた。

 

「だからあとは桜の機体だけッス」

「そうか……もしかしたら園香が倒してくれるかもな」

「それは嬉しいですね。ともに苦労した仲間に最後を看取って貰えるというのは……」

 

彼女はそう言うと、再び海岸を眺めた。

 

「早くいきたいものです」

 

そう呟くと三人の中に波の音だけが響いた。まるで永遠の時を過ごしているように彼女たちは大海原と星空を見ていると、ふと神宮寺が口をひらく。

 

「弥生、少し頼んでも?」

「何をだ?」

 

天塚が聞くと、桜も彼女に向かって話す。

 

「私も、言付けが」

 

彼女たちは大海原を見ながらそれぞれ口にした。

 

「里見司令に会ったら、『色々と迷惑を変えてごめん』って言ってもらっていいッス?」

「私も、司令には迷惑をおかけしましたと……伝えて欲しいです」

「そうか……」

 

二人の伝言を聞き、天塚は無言で頷くと天塚に声がかかった。

 

「準備が終わった。行ける?」

 

その問いかけに天塚は頷く。

 

「あぁ……」

 

すると砂浜で待つ二人に向けて話す。

 

「後から追いかける。だから…」

「うん、ここで待っていれば良い?」

「…あぁ」

 

天塚はそのまま海の方に向かって歩いて行った。

 

 

 

 

 

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