なお次回もいつ投稿できるかわからん様子でs(殴
大混乱に陥った国会討論より二週間後。
ドイツ南西部 ラムシュタイン空軍基地
ヨーロッパ最大のアメリカ軍空軍基地周辺ではNATO軍所属のユーロファイターが四機編隊を組んで飛行する。
『…レーダーに反応』
『来たか…』
すでに周辺の空域は閉鎖され、他にも数機の編隊が警戒飛行を行っており、その機体の到着を待っていた。
『あれだな』
そして視界に映った小さな黒い影を見ると、パイロットのドイツ人は呟く。
「全く、大層なお出迎えだな」
『無駄口を叩くな。戦乙女の時と同じく丁重に扱え』
「へいへい」
そしてその機体に向かって無線を繋げる。
「こちら、コングウルフ01。特別機、聞こえているか?」
『こちらミコシ、コングウルフ01。聞こえている』
無線が繋がると、一度接近した戦闘機はその機体を確認する。
純白に塗られ、二重反転プロペラのエンジンが六つ付いた特徴的なテーパー翼の大型な飛行機。
「これよりラムシュタイン空軍基地に誘導する」
『了解』
それは嘗て、旧日本軍が米本土を爆撃するために計画した大型超重爆撃機『富嶽』だった。
『デカいな…』
『こりゃ、クレムリンまで一っ飛びできる』
機体を見た他のパイロット達が同様に溢す。
この特別機は現在、世界中を回りながら飛行を続けている。ただ他と違うのは、この世界一周飛行は人類の生存に直接的に関わってくる事だろう。
『こちら管制塔、我々はミコシの到着を心より歓迎する』
そして滑走路に大型機は着陸すると、そのまま誘導路に入り。各国軍首脳陣が待機している格納庫まで爆撃機は移動する。
現在、空軍基地全体や周辺は完全に封鎖されており、民間人の立ち入りすらも禁止されている。
「……」
爆撃機を出迎えるのはNATO軍総司令官。非常に緊張した雰囲気であったが、それもそのはずだ。
「初めまして。ミズ・アマテラス」
爆撃機から降りてきた一人の神秘的な美しさを放つ巫女服の女性、天照大神を出迎えるのだから。
富士プライマリー・ピラー撃破後に世界に現れた天照大神、一般的にはあのプライマリー・ピラー撃破直後に現れたと言うのが公式的な見解だが、一部では戦乙女に混ざって戦っていたと言う情報もある。
「では、国連との協定に従い。あなた方NATO欧州軍に対し、私より技術支援を行います」
格納庫では各NATO軍司令官等の署名を行いながら、天照大神もペンを手に取ってサインを記していく。
先の国会での事件より、この格納庫に報道機関は一切入れる事はなく。またカメラの類も持ち込み禁止だった。
「感謝します。ミズ・アマテラス」
「いえ、私からできるのはこれくらいですので」
そう答えてNATO軍総司令官と握手を交わすと、天照の後ろでは作業員が爆撃機の爆弾倉から数本のミサイルを下ろしていた。
彼女が顕現した理由は人類への技術支援。正確にはピラーを通常兵器で撃退せしめる為の技術供与だった。
「納入するのは欧州方面に四本、残る米国には二本ですか…」
「持っていけるミサイルの本数が少ないんだ。仕方あるまい」
納入される空対空ミサイル。サイドワインダーをモデルに設計されているので、ほとんど設計を変えずに自分たちの保有する戦闘機にも装備可能だ。
「しかし、こいつをバラして設計図を取れとはな…」
「神様も酷なもんだ」
格納庫の奥でそう溢すはフランス軍とドイツ軍の士官。顔を隠している巫女服の女性の何とも言えない雰囲気を感じ取りつつも、厳かに進むその様を見届ける。
欧州に荷物を届け、さっさと次の目的地のアンドルーズ空軍基地に移動したかったが。給油の間はNATO軍幹部を会談をしなければならなかった。
「ミズ・アマテラス」
「?」
長い長い会談を終えた最後、基地を後にしようとした時にある軍人から話しかけられた。その軍人を見て天照は薄く笑う。
「おや、シグルドリーヴァが何か御用で?」
「…」
彼女に話しかけたルサルカ・エヴァレスカはそんな対応に驚く様子も見せなかった。
他の将校等が彼女を制止させようとするが、目線でそれを辞めさせるとルサルカに聞いた。
「さて、何が
「…」
彼女の表情を見て問いかけると、一瞬それには驚きつつも彼女は天照に一つ聞いた。
「貴方が、オーディンのように我々に敵対する事は無いのか?」
その問いに誰もがギョッと顔を驚かせた。
それは誰しもが思っている事実であり、また神の力によって生かされているような現状では思っていても口には出せないような二律背反とした感情であった。
オーディンの敵対のニュースは軍上層部ではすでに知れ渡っており、少なくともここにいる様な軍人は全員が知っていた。
「…なるほど、」
そんな誰しもが口に出さなかったその疑問に天照は納得の意を示すと、ゆっくりと口を開いた。
「確かに、あの様な事があっては神に不審になるのも理解できなくはない」
そこで納得の意を示しつつも、彼女は言う。
「故に、下賜した神具をどの様に扱うかは自由だ。破壊しても構わぬし、複製しても構わぬ」
「本当に使えるものなのか?」
「少なくとも、以前より怪異に対して通常の噴進弾や砲弾よりかは効果があるであろうし、生娘に力を強いることも無かろう」
そう答えると、天照はルサルカに背を向けて飛行機に足を運ぶ。
そして出ていく直前、
「シーリーンには、元気でやっていると伝えておこう」
「っ…!?」
そう言い残し、彼女は爆撃機に乗り込んで基地を後にしていた。
「んひ〜」
その時、館山では宮古が蛙を潰した様な声を漏らしていた。
「なんだ、そのだらしない声は!!」
横で駒込が叱りつけると、園香が宥める。
「まぁまぁ、落ち着きなって」
「これが落ち着いていられるか!」
三人は館山の屋上でぼんやりを海を眺めていると、最後にクラウディアが屋上にやってきた。
「なんだ、皆もここにいたのか」
「うん、だって…」
そこで園香が答えようとした所を割り込む様に宮古が答えた。
「今日は陽奈が帰ってくる日だもん!」
そう答えると、遠くから機影が宮古の目に映った。
「っ!来たぁ!」
「え?どこだ?!」
「あそこあそこ!」
海に向けて指を差すも、まだ遠いのか見えなかった。
「んー…」
目を細めて遠くを眺める駒込だったが、徐々にそれを見た。
「「「わぁ〜!!」」」
そして遠くから見えた機影と、シールド隊の三機のF-15Jが高度を落としていた。
「「「おぉ〜!」」」
降下して来た大型の飛行機に四人は下を巻いていると、着陸した富嶽を見て館山の整備員たちがゾロゾロを顔をのぞかせ、その巨体に目を見開いて興奮していた。
「ふぅ〜、帰ってきた〜」
そして機体の扉が開いて中からコーンパイプに火を付けて降りてくる。
「ここは厚木じゃねえぞ」
「おや、アメリカ帰りに何てこと言う」
そこでぶっきらぼうに出迎える整備班長に陽奈はタラップを降りると、班長は着陸をした飛行機を見て一言。
「随分とデケェ飛行機で帰って来やがって…」
「あら、初見で舐められちゃ困るもの」
「だとしてもデカすぎだ、もっと抑えておけ」
そう言い、タラップを降りた後に格納庫に知っている四人が駆け込んできた。
「陽奈〜!」
「よぅ、宮古」
胸に飛び込んできた宮古に少し笑う陽奈。
「お帰り〜!」
そして飛び込んできた宮古に後から来た園香達が答える。
「お帰りなさい」
「お帰り」
そして最後に肩から息をして出てくる駒込。
「ゼェゼェ…」
「体力無いね〜、相変わらず」
「う、五月蝿い…!!」
そして帰って来た陽奈と抱きつく宮古に指を差しながら言う。
「宮古!そんな大胆に抱きつくな!」
「あらヤキモチ?」
「ちっ、違うし!」
慌てて顔を少し赤くして返す駒込に少し揶揄うように陽奈は一服吸う。
「今は…天照様かな?」
「いやぁ、陽菜でいいよ」
身長が大きい大人の女性の姿の彼女に園香は二つの顔を持っている友人に少し考えていると、陽奈はやや投げやりに返していた。
「まぁ、ちょっとは離れてくれ。これから司令の所に行かなきゃならんから」
「うん、分かった」
そうして宮古を剥がした陽奈はそのまま滑走路に駐機される富嶽を一瞥した後に基地の司令室に向かって歩いて行った。
「戻ったぞ〜」
「うん、よく帰ってきたよ」
司令室にノックなしで入る陽奈、よく司令室に入り浸っていたので里見も突撃してくる彼女には慣れっこだった。
「世界一周お疲れ様」
「全く酷い目にあったよ」
そう言いながら彼女は里見から投げられた金平糖を口に流し込んだ。
「でも、おかげで世界中でピラーに通常兵器で対抗できる様になった」
「…」
そこで陽奈は金平糖を口で溶かしてそれを飲み込んでいた。
国連軍に情報提供を行った彼女は、同時に通常兵器でもピラーに対抗しうる兵器を世界各国に供与していた。
今回の世界一周旅行は各国を巡ってそのミサイルを届けていたのだ。
「法儀済加工弾頭を装備した空対空ミサイル…いやはや、歴史が変わるだろうね」
「えぇ、少なくともピラーに通常兵器…それも量産された兵器が使えるとなればね」
そこで彼女はソファーに深く座り直すと、里見を見て聞く。
「ところで、何で富士ピラーの直前にあたしの事何か調べていたの?」
「ん?あぁ、あれかい?」
話題を振られた里見は徐に胸ポケットから一つの薬莢を取り出した。
「こいつが、お前達と入った神殿で駒込が足で踏んづけたそうだ」
「…なるほど」
駒込が盛大に転けた原因であるその薬莢に陽奈は納得した。
「んで、薬莢の形状を調べたら合致したのは九九式普通実包だけだった訳だ」
「しくったなぁ」
そこで少し天井を仰ぐ彼女に里見は聞く。
「ちなみに聞くが、何の銃を使った?」
その問いに陽奈は指を一回パチンと弾くと、司令室の卓上に一丁の機関銃が置かれた。
「これは?」
「試製三式軽機関銃。珍しいでしょう」
「へっ、神様が軽機関銃かよ…」
「雑魚はこいつで十分」
そう答えると、もう一回指を鳴らして機関銃が一瞬で目の前から消えると里見は薬莢を陽奈に投げた。
「じゃあ、こいつは返さないとな」
「あら、持っていかないのね」
「生憎と、落とし物は持ち主に返さなきゃならないのがこの国の法律なんでね」
薬莢を受け取った陽奈を見ながら里見は少し笑っていた。