向日葵のフレア   作:Aa_おにぎり

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#30

世界に神から新たな戦う術が下賜された。

 

名前を法儀式済空対空誘導弾と呼ぶ。

長ったらしい名前だが、名付け親がそう言っていたので一般的にもそう呼ばれている。

 

その空対空ミサイルは対ピラーに特化したミサイルで、命中すればターシャリを始めセカンドと言ったピラーに対し対処が可能であった。

ただ、プライマリー・ピラーに関しては効果が薄い為、戦乙女の戦闘訓練は続行して行われる。

 

弾頭の製造には今まで戦乙女として戦ってきた者達の力が必要となる。

ただ戦乙女では無い者が使用するとその効果は落ちる為、一部ではその行為は洗礼と呼ばれていた。

 

例えるなら、通常二発は必要な所を戦乙女であれば一発で仕留められると言ったものである。

これにより、今後世界から戦乙女の名は消失することになるだろう。

 

元よりいたいけな生娘が、神のご加護と寵愛を受けた者のみピラーと対等に戦えると言う理由で戦場に送り出していた各国であった為、通常兵器の改装でピラーに対抗出来ると言うのであるならば、多少の非効率は目を瞑っていた。

 

来月から世界中で生産が開始されることになるピラーに対する新しい鉾。

それが配備されれば、今まで無理をしていた各国は戦乙女を前線ではなく、後方の兵器工場で働かせることになる。

 

既に育成中の戦乙女は工場でそれら作業を行う為に新たな神より加護を受けている。

未成年就労に抵触するが、特例という形で彼女達は戦場を知らないまま国のために奉仕することとなる。

 

負傷した戦少女を中心に後方転属が行われ、リバースエンジニアリングで設計図を得た各国は兵器レーンを少し改装するだけで手に入れられる新しい兵器に期待を寄せていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「っ!!」

 

場所は館山沖。そこで三機の戦闘機が飛び合う。

 

「くるみっ!」

「萌!」

 

二機のP-51Dが一機の灰色の九七式戦闘機を追いかけるように飛行しており、性能差でいえば圧倒的であった。

 

「…」

 

そんな二機の追撃をキャノピーから視認する九七式のパイロットは少しずつ速度を落としてその内一機が前方に回り込んで前後に挟まれた。

 

「危ないよ!?」

 

それを下の船の上から双眼鏡を使って見上げているのは宮古達だ。

 

「いや、ありゃ上手いぜ」

「あぁ、流石だぜ」

「相当自信アリだな」

 

そう言って彼女と同様に飛行機を見上げているのはロン毛、金髪、グラサンの三人である。

 

「どう言うことだ?」

 

宮古と同じ船に乗って釣りをしていた駒込が聞きながら空を見上げる。

 

「アレは意図的にやったってことさ」

 

そう言うと三機はそのまま射撃を行い、放たれたペイント弾は挟まれた九七式に一発も掠れもしなかった。

 

「え?」

「ペイント弾ってのは、通常弾頭より軽いから真っ直ぐ飛ばねえのさ」

 

真面目な顔で解説する金髪にロン毛が言う。

 

「姉御からの受け売りだろう?」

「おいっ!」

「抜け駆けは、ゆるさねぇぜ?」

 

彼の肩を掴みながらグラサンがそう言い、金髪は肩を落としていた。

その間も空ではエンジン音を轟かせながら三機はやり合っており、ペイント弾が海面を叩きつけて色をつける。

 

「くっ…!!」

「あたら…ないっ…!!」

 

不規則に動く戦闘機を前に後ろを取った萌が冷や汗をかきながら溢す。

すると挟まれた九七式戦闘機は引き金を弾くと、発射された7.7mm弾丸が飛んで行く。

 

「…」

 

そのコックピットで操縦する人物はニッと軽く笑うと、操縦桿を手前に引いた。

 

「っ!!」

 

それを追うように萌も操縦桿を引くが、

 

「旋回がっ!!」

 

圧倒的に短い旋回半径に負け、彼女は後ろを近距離で取られると、

 

ッッッッッッッ!!

 

発射された弾丸は機体の翼の付け根に赤いインクを塗り付けた。

 

『くるみっ!!』

「ごめんっ!」

 

そして撃墜判定を受けて彼女は空域を離脱すると、残った二機のドッグファイトが始まる。

 

「あちゃー」

「こりゃダメだな」

 

それを見てグラサンとロン毛は言うと、宮古が再び聞く。

 

「どうして分かるの?」

「今の旋回を見てわからないのか?」

 

そんな彼女に駒込が呆れ口調でため息を漏らす。

 

「全く…これだから宮古は…」

 

ブツブツと文句を言いながら彼女は竿が動いたのを見た。

 

「っ!釣れたっ…!!」

 

引っ張られる釣り竿を握って持ち上げようとするが、駒込のナメクジ的体力ではびくともしない。

 

「おいっ!!こりゃ大物だ!手伝え!!」

「おっ、まじかっ!?」

「手伝う手伝う!!」

 

宮古が乗り越えて駒込の背中から腕を伸ばして釣り竿を握ったのを見てグラサン達は、

 

「うおっ!?」

「ぐっ」

「かはっ…」

 

その光景に勝手に自滅していた。

この漁船は前に陽奈が史上最悪の船旅と評した時に使ったあの漁船である。

今日は模擬戦を見るために漁港から借りて釣りをしながら待っていた。

 

「行くぞ!せーのでな!?」

「うんっ、いいよ!」

 

百合百合している二人を見てグラサン達は多幸感から天に昇りかけているのをよそに二人は釣り竿を引っ張ると、

 

「あっ、あれ?」

 

釣り上がったのは小さなよくわからない魚だった。

 

「なっ、何故こんな小さい!?」

「相変わらずだねー、アズー」

「可笑しいぞ!?さっきすごい引っ張ってたぞ!?どうして…!!」

 

そう言って困惑する駒込に宮古は彼女の釣った魚を手に取ると、針を抜いた。

 

「これは海に返さないとね〜」

 

そう言ってその魚を海に返すと、一瞬でその魚は海の中に消えていった。

 

「くーっ…まぁそれはそうとだ。上はどうなった!?」

「あっ、もう終わったみたい!」

 

そう言い赤色に塗られまくったP-51Dを宮古が指差す。

 

「あぁ〜、もう終わっちまったのかよ!」

 

そう言って少し悔しげにしていると、九七式が旋回してこちらに近づいてくる。

 

「あっ、なんかこっち来そうだよ!」

「え?」

「おーいっ!!」

 

宮古はそこで大きく手を振ると、九七式は海面スレスレを飛んでそのコックピットから顔が見えるくらいまで彼女達のなる漁船に近づいて通過すると、

 

「よしっ!」

「そろそろ俺らも帰るか」

「そうだな」

 

グラサンが操船してエンジンをかけると、そのまま漁船は館山基地に直接接岸する。

 

「よっと」

「はーなーせー!!」

 

そしてそこで一人で飛び降りた宮古と、鼻血を出しかける金髪に抱えられて降りる駒込。

 

「そのまま落ちたら嫌でしょう?」

「…」

「我慢我慢〜、こっからは私が送ってあげるからさ」

 

そう言って彼女は金髪から駒込を受け取ると、彼女の背中に乗って二人は基地に帰っていく。

 

「…良い」

「あぁ…」

「俺、今度これで絵を描いてもらおう」

 

そんな二人を見ながら三人は幸せに包まれていた。

 

 

 

 

 

「よっと」

 

そして格納庫では九七式戦闘機からパイロットが降りる。

 

「お疲れ様です」

「ん、ご苦労」

 

片手にポカリを受け取りながら陽奈は一気飲みすると、そこに先ほどの訓練相手の鈴原・くるみと石動・萌の二人が駆け寄った。

 

「「今日はありがとうございました」」

「ん、ご苦労ご苦労。…おいっ!」

 

そう言い二人の頭を軽く撫でた後、近くにいた整備員に怒鳴る。

 

「二人の飲みもん持ってこい!」

「はい只今!!」

 

先週からこの館山に配属となった二人に手解きを行っていた彼女はそこで二人に言う。

 

「連携は良かった。ただくるみちゃんは後方確認、萌ちゃんは左旋回時に深めに確認をする癖があるから、明日から矯正するわよ」

「はい!」

「分かりました!」

 

二人に言うと、整備員が二本のペットボトルを持ってくる。

 

「姉御」

「うむ、ご苦労」

 

そして陽奈はそのまま二人に軽く講習をしていると、

 

「終わったんだな」

「えぇ、さっきね」

 

クラウディアが話しかけてきたので、彼女も頷くと

 

「ひーなーっ!!」

 

格納庫にでっかい声が響いた。

よく聞き慣れた張りのある声である。

 

「カッコよかったよ〜」

「そりゃどうも」

 

そう言って抱きついてくる宮古に頭の彼女はいつも通りの反応を示す。

 

「ではみなさん」

「私たちはこれで…」

 

そう言い二人は格納庫を先に後にすると、二人がいなくなった後にクラウディアが言う。

 

「しかし陽奈、二人に正体を言わなくてよかったのか?」

 

彼女は聞くと、陽奈は言った。

 

「いやぁ、二人は前から縁があったからねぇ〜。それで知らないってんなら無理に明かす必要もないでしょう」

「…下手に緊張してしまうか」

「そうそう、今の私はただ戦乙女でしかないしね〜」

 

彼女はそう言い、自分の新しい機体を見る。

 

「それに、いずれ戦乙女の名も消えることになるしね」

「…そうだな」

 

段階的に、国が全力を上げて大量生産を行なっている新しい兵器の登場で戦乙女の活躍の場所は後方の工場に変わっていく。

 

「だが戦闘訓練はするのだろう?」

「えぇ、流石にプライマリーにあのミサイルじゃあ無謀になるからね」

「前みたいに飛行機を出さないのか?」

 

クラウディアは聞くと、陽奈は首を横に降った。

 

「同じ数のプラスとマイナスが合わさったらゼロになるでしょう?だから二回目は無理ね」

 

彼女はそう答えると、その意味を理解したクラウディアは少し顔を頷かせると、

 

「どう言うこと?」

 

首を傾げた宮古に陽奈は少し笑った。

 

「宮古にはまだ早い話やで〜」

「むーっ、ズルい」

 

そう言って不満そうにしていた宮古にヤキモチを妬くように駒込が現れた。

 

「しかし、お前の加護の方法も大概だよな」

「あら、悪いわね彼女借りて」

「誰が彼女だ!!」

 

そう言いつつも宮古を駒込に送ると、やぶさかでもない様子。いやぁ眼福眼福。

 

「まぁね、アレが手っ取り早いのよ」

「だからってお前の作った煎餅食ったら加護付与ってお前…」

 

そう言い陽奈が他の戦乙女候補者達に与えた加護の方法を思い返す。

 

手伝えと拉致同然に体を掴まれて天照大神に連れ回され、いきなり世界中を不法出入国させられる羽目になった駒込は、そこでオーディンの時のような豪勢なものではなく適当に候補者に焼きたて煎餅を渡して食ったら熱が収まるまで安静でと言って速攻次の場所に飛んだ彼女の雑なやり方に顔を引き攣らせていた。

 

「あのねぇ、こう言うのはスマートにやるの。スマートに」

「雑の間違いだろ。あんなの…」

 

世界中を彼女の能力の瞬間移動を使ったことに恨み節を交えて彼女を見る駒込。

 

「でも楽しかったんでしょう?」

 

するとそこで園香が現れて聞いてくると、駒込も何とも言えない表情を浮かべた。

 

彼女の姉的存在の天塚は陽奈から譲られた橘花を乗り回して今度は世界中を飛んでいる。

一時的な天照大神の部下として認定された彼女は、法儀式済誘導弾の運送と技術的指導の為にかつての部下を引き連れてピラーの対抗策の伝道師として飛んでいた。

 

「それは…まぁ…」

「ねぇねぇ、どんな感じだったの?」

 

宮古が聞くと、クラウディアも興味深そうにしていた。

 

「どんな事があったんだ?」

 

すると陽奈が思い返す。

 

「え?そうねぇ…あっ、スペインで此奴がホームシックで泣きながら宮古の名前を呟いてたりとか…」

「おい馬鹿っ!」

 

暴露に駒込が慌て出すと、それを園香が羽交締めで止めて続きを合わせて彼女の顔は真っ赤になっていた。

 

 

 

 

 

ここにはいつも通り、少し雑で緩い日常があった。




えーっと、一応ここで区切りとさせていただこうかと思います。
読んでくださってありがとうございました。
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