向日葵のフレア   作:Aa_おにぎり

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#8

昨日、この館山基地にやって来た女性。天塚・弥生はこの基地に来た目的を話し、それを聞いた駒込は驚く。

その内容は富士プライマリ・ピラー攻略作戦が水面下で進んでいると言う情報であった。

 

「プライマリ・ピラーの攻略ね……」

 

基地の屋上でコーラシガレットを口に咥えて先ほど聞かされた内容を振り返る。

富士プライマリ・ピラーは世界各地にあるプライマリ・ピラーの中でも元が七大聖山と呼ばれていた地なだけあり、強固にピラーが守りを固めていた。

 

「あの若造がお偉いさんに助言したか……」

 

そう呟くと屋上に天塚がやって来た。

 

「おや、ここに居たのかい」

「あぁ、天塚さん……」

「いやぁ、ちょうど探していたんでさ。運がよかった」

 

そう言うと彼女は陽奈の横に立ち、柵に手を置く。

 

「性能の無駄遣い、サボり魔、ぐうたら……体外では随分とコテンパンだったらしいじゃ無いか?」

「ええ、実際そうですから」

 

そう答えると、天塚は滑走路を見ながら少し真面目に言う。

 

「嘘は言わなくていい。君の事は里見司令からよく聞いている」

「……そうですか」

 

あの人が言うのであれば、この人物は信用できると言うことか。意外に人を見る目はあるしな、見た目に反して。

 

「初期の館山を単機で守った腕の良い戦乙女だと聞いている」

「……そうでもしなければ、この基地は終わっていましたからね」

 

そう言い、二人して太平洋を眺める。遠くでは鴎が鳴き、港町には人々の生活が今日も息づいている。すると天塚が聞いてくる。

 

「あの司令はどうなんだい?」

「…いい人ですよ。少なくとも、私にピラーの研究をさせてくれる時点で……」

「そうか、君はピラーの生態の研究をしているんだったな……」

 

思い出すように天塚は答えると、今度は天塚に陽奈が聞く。

 

「天塚さんこそ、今日からここに配属になるんで?」

「ああ、宜しく頼むよ」

 

そう言うと天塚は右の中指と人差し指で軽い敬礼をする。聞いていた通りだが、相変わらず軽い人なんだな……

 

「なるほど……昔の私のように色々な基地を点々として来ただけはありますね」

「おやおや、知っているのかい?」

「まぁ、貴方が来てから色々と調べましたから」

「おやおや、これは手痛い。流石はピラーの生態研究を行っているだけはある」

 

そう言うと、二人は再び海を眺める。天塚がここに来た理由はいくつか考えられるが、陽奈はそこで思ったことが口に出た。

 

「いきなりですね。こんな無謀とも取れる作戦が決行されるとは……」

「そうかい?この作戦は数ヶ月前から準備が始まっていたぞ」

 

天塚はそう言うが、陽奈はそこで皮肉を込めて言う。

 

「だとしてもです。どうせ、政府首脳にあのオーディン(ロリコン自称神)が働きかけたのでしょう?」

「なんだか、酷い言い方が聞こえた気がするが……気のせいかい?」

「さぁ、どうでしょう。気のせいでは有りませんか?」

 

天塚は苦笑し、陽奈は鼻で笑う。しかし、陽奈は確実に言える事を横にいる天塚に言う。

 

「ただまぁ、私が言えるのは。あの自称神を名乗るあの男が信用ならないと言う事です」

「おや、その心は?」

 

その問いかけに陽奈は当選のように答える。

 

「私が信じているのは神道ですから」

「……なるほど」

 

そこで天塚は納得する。戦乙女の作り出す英霊機はその者が持つ純粋な心と信仰心で決まる。

 

 

そう、信仰心。

 

 

神の存在を信じ、敬う。その心が必要となってくるのだ。そこで天塚は少し面白そうに言う。

 

「と言う事は、ジェット戦闘機を作った君の神道に対する信仰心はたいそうなものなのだろう」

「それって褒めています?」

「ああ、褒めているさ。実に日本人らしいじゃないか」

 

そう言い、天塚は陽奈の意見に賛同する。

 

「そうだな、日本人なら神道を敬うべきなのかもしれんな……」

 

そう言うと、陽奈がそこで天塚の意見に捕捉する。

 

「別に神道を敬う事は常にしているじゃ有りませんか」

「ん?どう言う事だい?」

 

すると、陽奈はそんな疑問に答える。

 

「この日本には多くの神道の行事が浸透していますよ。有名なところで言えば初詣とか、節分とか、お盆とか」

「それが信仰とどんな風に関わるんだい?」

「簡単な話です。信仰というのは神の存在を信じたり、教えを拠り所とするもの。

だから、行事を行うという行動自体が信仰そのもの。キリスト教であればミサ、ユダヤ教であれば贖罪の日、イスラーム教ではラマダーンなどでしょう」

 

世界的に有名な宗教儀式を口にすると、陽奈は言う。

 

「宗教儀式というものはそれを行う時点でどれだけ表面的に神の存在を否定しても、心の底では神の存在を信じている証。つまり信仰と定義される。

 

 

『神を感じるのは心であって、理性ではない。信仰とはこのようなものなのである』

 

 

ーーパスカルの有名な言葉です。日常生活に組み込まれたこう言った年中行事は心の奥底に神の存在を持っている証拠です。出なければこう言った行事は廃れていってしまいますからね」

「なるほど……」

 

陽奈の解説に納得する天塚。そして、陽奈はそこでさらに口を動かす。

 

「その点、この国はそう言った行事を時代の変革はあれど行っています。なんなら結婚式も神道の儀式のひとつなんですよ?」

「へぇ、そいつは驚いた」

「八百万の神を信仰するのが神道です。どんなものにでも神がいると言うのが神道の考えですので」

「じゃあ、この帽子にも神様が?」

 

そう言い、天塚は被っている帽子を指差しながら聞く。

 

「ええ、そうですね」

 

その問いかけに陽奈は頷いていた。

 

「それに、この国には神様の子孫もいますしね」

「……ふっ、それもそうか」

 

天塚はこの国の象徴である一族を思い返すと納得した。

今でも根強い人気を持ち、毎年の一般参賀には大勢の国民が集まって日章旗を振る。世界最長の歴史を持つ日本の王族……一般的には皇室と呼ばれるその一族は天照大御神の子孫だ。

 

皇祖神とも言われ、数多くのゲームなんかでもよく登場する天照大御神。オーディンと言う神がいるこの世界で、他にも神はいるのではないかと思った事はあった。

 

「まぁ、日本人にとっちゃ馴染み深い神様ではあるな」

「そりゃ色々なところで目にしますからね。日本人であれば知らない人はいないでしょう」

 

そう言い、陽奈は階段に戻りながら呟く。

 

「八百万の神を信仰しているとは言え……だからこそ、その信仰を壊しかねないオーディンは信用ならないのですよ。彼の情報の振り回される各国政府首脳にもね」

 

そう口にするとさぞ怪訝な表情で彼女は屋上を後にして行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「で、なんで私がここに?」

 

基地内の木の下で日向ぼっこをしていたらいきなり呼び出されてこの有様だ。不満ですよ、そりゃ。大事な睡眠時間を奪われたんですから。ちなみに今はクラウディアと共に基地の廊下を歩いていた。

 

「お前が一番暇そうだったからだ」

「えぇ……」

 

駒込のとんでもない理由に驚きと呆れが混ざっていると、駒込は至って真面目な声で聞いてくる。

 

「陽奈……今度の作戦。どう思う?」

「……」

「言っておくが、真面目に答えろ」

 

おっと、先手を打たれましたね。ま、それだけ彼女も真剣というわけだ……。

 

糸目のまま声色を変えて駒込の問い掛けに答える。

 

「そうね、こんな無謀な作戦。できるなら中止させたい」

「…やはりお前もそう思うか……」

「ええ、できるならもう少し戦力を整えてから万全の態勢で迎えるべき。……ただそれは何年も準備期間がかかってしまう」

「そこが問題だなぁ……」

 

駒込はそう言うと腕を抱えて困った表情を浮かべる。相変わらずよく考える娘だこって……。

 

「まぁ、私としてはたった一人の人物の意見に左右されてしまう今の体制にいささか疑問が残るけど……」

「それは仕方ない。現に彼は戦乙女と英霊機を与えてピラーに対する対抗策を示した。それで各国首脳はオーディンの意向には従うようになった」

「でも今更なんで……」

 

すると駒込が、聞いた情報を陽奈に伝える。

 

「オーディンがピラーがまもなく休眠状態に入ると、予言したそうだ」

「はぁ、本当に当たっているのかね?」

「私に言われても……」

 

二人がそう話している一歩後ろでクラウディアは二人の会話についていけず、ただただ首を傾げていた。

 

「んで、この後はどうすんの?」

「取り敢えず風呂に入って色々と気持ちを落ち着かせた後に、オーディンに直談判に行く」

「オーディンに?」

 

駒込はつまり、神様に抗議をしに行くと言うわけだ。良くやるねぇ……。

 

「ああ、今度の富士プライマリー・ピラー攻略作戦の中止をさせるためにな」

「本当にできるのかね……?」

「何事もやって見なければ分からない」

 

そう言うと、研究肌の彼女は風呂に入る。彼女は試作した兵器を自分で試す為に自分の機体を色々と弄っている。なんでも訓練学校時代に宮古がキ44を初日でぶっ壊して、その修復の際に英霊機は人造された部品でも問題なく能力を発揮したことから人の手で改造ができると思ったそうだ。

 

彼女の機体に取り付けているゾンダーゲレートは既存兵器を搭載した陽奈の機体とは違い、完全オリジナルの兵器だ。小型ロケット弾を装備し、ピラーの集団をまとめて薙ぎ払う。使い切り型で有り、一発使ってしまうと一回基地に戻っ再装填しなければいけない勇者砲ににも似た特性を持っている。

 

ちなみに、自分の英霊機に改修の依頼をした際、バルカン砲への改装とエンジンの換装を行った際。それぞれの試験飛行にも彼女はコックピットに無理やり同乗して安全性の確認を直接見ていた。

 

滅多に現れないジェット戦闘機の英霊機だ。改造の記録はあまり役立てられないだろうが、残しておく必要はあった。

自分の機体もコックピットのガラスを強化アクリルに変更したりなど、一部パーツの交換やエンジンチューンを行ってパイロット……戦乙女の生存性を高める研究がなされていた。そしてそれらの研究は国連軍戦略データバンクに送られ、各国英霊機の改修作業にも用いられていた。

 

初めは神から与えられた物に手を加えるのかと訝しむ意見が多かったが、改修を受けた機体の生存率向上と戦乙女の数の少なさから今ではほぼ全ての英霊機で何らかの改修作業を受けていた。

 

かく言う自分もピラーの生態研究を行い、ピラーの発生予測ポイントシステムの構築に一役買った女だ。おかげで戦乙女の戦闘は前よりはマシになり、生存率向上に繋がった。

 

「(英霊機の駒込とピラー研究の自分。この二つを集めた理由はおそらくこの為だったんでしょうね……)」

 

陽奈は内心そんな事を考えながら風呂に入って体を洗っていた。

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