風呂から上がり、駒込とクラウディア、陽奈はいざ直談判しに行こうとした段階で陽奈が聞く。
「で、オーディンに会う方法は?」
「……あっ」
陽奈の問いに駒込はしまったと言う表情を浮かべる。
「おいおい、まさか無計画だったのかい?」
「しまった…どうすれば……」
全く、こいつも少し宮古に毒されているな。肝心な事をすっぽかすとは……。
「全く、揃いも揃って毒され始めたか……」
しかもあいつ、結構神出鬼没だぞ?
「どうすれば……」
駒込が頭を抱えたその瞬間、ブザー音が鳴り。その方を向くと、そこには劇場の入り口があった。ここは元々何もない壁のはずだが……。
「これは……」
「フリズスキャルヴね。オーディンの棲家よ」
「棲家……」
クラウディアの苦笑とは反対に駒込は覚悟を決めた表情でその扉を握る。恐らくは、彼に会いたいと言う駒込の意思が彼を動かしたのだろう。
「失礼するぞ」
「陽奈!?」
まるで友人の家に入るかの如く扉を通過した陽奈に駒込は驚いた声が出てしまう。
「やれやれ、神の前で友人のような態度をとるとはね……
「良いじゃないか。私はどうせ付き人だ。本命はこの子達さ。話を聞いて上げておくれ」
そう言うと陽奈はフリズスキャルブにある椅子の一つに座り込み、オーディンはそんな彼女を見ながら寛容な様子で言う。
「君にそう言われなくとも、この子達は
そう言い、オーディンは陽奈の眉一つ動かさない顔を見たあと。そのまま手を動かす。
「だが今、僕は暇でね。ゲームをするのを条件に話を聞こう」
そう言うと駒込にコントローラーを渡した。
そっからは駒込とオーディンの対戦が始まった。その中で駒込はオーディンと色々と話していた。そこでオーディンから休眠する予言の話や駒込の意見を話したりしていたが、それよりも気になったのは……。
「アズ、ゲーム下手?」
「うっさい!」
だって全敗してんじゃん。
「考えすぎも罪だな」
「まぁ、反射神経も悪いしね」
「何だと!?」
駒込の弱点を的確に突き、ボッコボコにしているオーディン。あーあー容赦無いねぇ……。
「手加減をしないのかね……」
「君がそれを言うかね?」
「……」
「おい!何か言え!」
駒込が突っ込み、クラウディアのやや苦笑していると陽奈が席を立った。
「何、仇は取ってやるさ」
そう言い、駒込のコントローラーを手に取ると、オーディンは陽奈を見て少し目を細めた。
「さっ、結果はどうだろうねぇ……」
そう言うと二人はガチのキャラクター選択をしていた。
「で、いつまで続くの?」
「私にも分からん」
「ゑ?」
フリズスキャルブで永遠とゲームを続けているオーディンと陽奈をみて駒込やクラウディアは苦笑する。二人の戦いは接戦であり、決着はつかなかった。
「永遠と試合ができるモードだからね。そりゃ終わらんさ」
コントローラーを触りながら陽奈は答える。その指の動きはとても早く、素人目だとプロゲーマーにもなれそうであった。
「オーディン、そろそろ別のゲームをしないか?」
「そうだな……どれにする?」
「ではこのゲーム」
そう言い、陽奈は某有名フライトシューティングゲームをしていた。
「良いだろう。望む所だ」
散々自分の良くやるゲームで対戦をした。ここで相手の得意な分野で戦わなければフェアでは無い。機体選択を行い、オーディンはXー02、陽奈はADFー11Fを選んでいた。
「鴉の機体で撃ち落としてやるよ」
「……やってみると良い」
そんな訳で二人の空中戦が幕を開ける。陽奈は一瞬駒込達を見ていたが、何事もなかったかの如く画面に視線を戻していた。
「なぁ、うちら帰って良いか?」
「良いんじゃない?暫く終わらないだろうし」
用事を終え、すっかりゲームに夢中になっている陽奈を見て、駒込は聞くと陽奈が答えた。
用事も済み、直談判も失敗に終わった今。駒込達はできる事をする為にフリズスキャルブを出て行く。
そうしてフリズスキャルブの中にはオーディンと陽奈だけとなり、そこでオーディンはやや怒気を含んで陽奈に聞く。
「どう言うつもりだ?」
その追求に陽奈は飄々とした様子で答える。
「どう言うって、あんたが消した過去がキチンと機能しているかどうかの確認よ。そうカッカするな」
「……」
明らかに不満と怒りの表情を浮かべるオーディン。しかし彼女はそんな彼に逆に問い返す様に聞く。
「では聞く。なぜピラーが休眠に入ると
「……我々の計画を大いに進める為だ」
「……」
陽奈は警戒を崩す事なくオーディンに聞く。
「では、その計画の為に多くの人を殺すか?」
「必要な犠牲。と言うべきだろう?」
「はっ、何が必要な犠牲だ。そもそも妾の領地で暴れると申すか?」
陽奈はそこで左の糸目を見開き、その奥から太陽の様な向日葵色の瞳を見せる。
「ああ、だからこそ僕は君と対決せねばならなくなる」
「何を言う、元より貴様は妾を殺す算段を立てていたのだろう?」
「そんな事はないさ。ただ、君が反対をするのは予想していた」
オーディンはそう言うと、陽奈は即座に答えた。
「当たり前だ。貴様が計画を動かしている時点で貴様の魂胆なぞ丸見えだ。若造」
「僕を若造呼ばわりですか……」
苦笑するオーディンは遂に陽奈のTLSによって撃墜された。選択画面に戻り、そこでオーディンは陽奈に聞く。
「ところで聞くが、いつまで君は人の真似事をしているんだい?」
「人の真似事か……随分と妾に口を聞く様になったの。オーディン」
陽奈は満足したのかコントローラーを置いて立ち上がって答える。
「妾が満足するまでじゃ」
「そうか……」
そう言い、オーディンは陽奈にゲームを返そうとした時、彼女は断った。
「妾からの冥土の土産とでも思っておけ」
「……そうかい」
一瞬、オーディンは間をおいて少し吐き捨てる用に答えると陽奈はフリズスキャルブを後にした。
翌日、直談判が失敗し。作戦が始まろうとしている中、宮古達は天塚を連れて決起集会の様な物を開き、街の食堂に繰り出していた。と言うか園香と天塚のあの気まずそうな関係は何とかならんものかね?
「班長」
基地の格納庫に行き、陽奈はそこで自分の機体の整備を手伝う。
「弾込めはやって良いかい?」
「あぁ、こっちは整備で忙しい。勝手にやっとけ」
そう言うと整備班長は部下を引き連れてキ44やグラディエーターの整備を始める。明日は富士ピラー攻略の為に館山基地から移動し、世界中の戦乙女達と合流する。何せ世界中の戦乙女を集めての一大作戦だ。静岡県内全ての空港は終日使用禁止、住民の一時避難も行われている。まぁ、元々ピラーが発生して以降、滅多に旅客機も飛ばなくなったが……。
住民の避難は一週間前から行われているようで、その範囲は富士山頂を中心とした富士山一帯。一部富士演習場も含まれていて少し苦笑してしまった。
装弾するための機械は機体のそばに放置され、弾薬もついでに箱詰めされたままだった。
弾薬をトレーに乗せて爆弾装内部のドラムに消費分の弾薬を搭載する。一度全ての弾薬を取り出し、新たに弾薬を詰めていく過程で陽奈は側に別の弾薬箱を取り出す。
そしてそれをトレーの上に乗せ、弾薬計測器で弾数を数えながら流し込んでいた。
そうして格納庫で作業をし終え、弾薬を大量に詰め込んだ陽奈は駒込にまた呼ばれた。
「おいおい、明日は作戦があるだろう?早めに寝なさいよ」
「分かっている。このあとすぐ寝るつもりだ」
そう言うと駒込は自室で多くの書類の山に埋もれた状態で陽奈を深夜に呼びつけていた。
「陽奈、明日の作戦の為に緊急でお前の機体に小改造を施したい」
「はぁ…どこを弄るんで?」
陽奈は内心フレームでも作り替えるのかと想像していると、駒込はある意味で予想外な答えを言う。
「いや、機体のハードポイントにガンポッドを追加する」
「……そのガンポッドはどこから調達を?」
日本にそんなものがあるのかと首を傾げると、駒込は入手先を教えた。
「在日米軍のお下がり品だ」
「あぁ、なるほど……」
それだったら納得だ。現在、在日米軍は攻撃の通らないピラーに対し暇を持て余す存在で有り、諸外国の侵攻も国内で起こっているピラー対策でそれどころではなく。アメリカも本国でのピラーとの戦闘で軍人の数が大きく減っている為、比較的ピラーの攻撃頻度の低い日本の在日米軍は戦前と比べると大幅に人員削減がされており、ついでに航空機も撤収が進んでいた。
そして使用期限のある弾薬や一部古い兵装などは激安で日本に叩きつけていた。おそらく今回のガンポッドもそうした弾薬から格安で手に入れたものなのだろう。とにかく人員を優先して撤収しているもんな。岩国はともかく、沖縄にはセカンダリ・ピラーしか居ないし。
欧州ではピラーとの戦闘が激化しており、この前のヴァイナハテン決戦でも大きく人員を減らしていた。だが、欧州などと同じくらい悲惨な目に合っているのがお隣の中国だ。
あそこは多くの民族の集合体であるせいか。でかいプライマリ・ピラーは無いものの、恐ろしい量のセカンダリ・ピラーが発生しており、その対応に追われているせいであそこの国の戦乙女はほぼ休みなしだと聞いている。
「それで、お前の機体の二箇所にガンポッドをつけてバックアップをしてくれ」
「なるほど、若い子達を生かす為?」
「そうだ」
理解が早くて助かると駒込は感じる。この目の前にいる糸目の人物は見た目とは裏腹に良く頭が回る。
「本当であればお前のM61もM134二門に換装したいが、時間が無い。だからあくまでも妥協案だ」
「了解了解。装備はそれでも十分だよ」
ガンポッドも含めればミニガン四門になるんですが、何その化け物?
ジェット戦闘機の速度から考えると本来であればあまり有効な手立てじゃなくね?
「もしできるならピラーに有効なミサイルでも研究をしたいね」
「その試作品がゾンダーゲレートだろう?」
陽奈はそう答えると、少し間を置いて駒込に聞く。
「……なぁ、アズ」
「あ?」
珍しく陽奈が聞いてくると思いながら答えると、彼女は少しゆっくりとした口調で聞いた。
「もし、この場にピラーに対抗できるミサイルがあれば。君はどう思う?」
「……」
その問いに一瞬駒込は固まる。まるで、その言い草は……ピラーに対抗できるミサイルがあると言っている様なものじゃ無いか。
「どう言うことだ?」
「そのままの意味さ。君が行っている対ピラー用のミサイルがもしここに現れたら。君はどう思う?」
駒込の試作品、ゾンダーゲレートだって開発が完了するまでに多くの戦乙女が死んでいる。それなのにいきなりポンとピラーに対抗できるミサイルが現れれば、もっと早ければと起こるだろうか……。そんなことを想像する陽奈。しかし、その疑問に駒込は端的に答える。
「そんながあるならウチとしては万々歳だ。他の研究にこの頭脳のリソースを捌ける」
そう答えると、陽奈は納得した様子で部屋を後にする。
「そうか……」
そう言い残したあと、彼女は部屋から後にし、駒込には疑問が残っていた。