弾幕は、パワーだぜっ!? 作:霧雨、お前……やれるのか?
「しつこいね、あなたも」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ」
私が魔法を放ち、剣士が斬る。ただひたすらそれを繰り返している現状。
「そろそろ諦めてくれると助かるけどな」
「まさか、数の有利はこちらにある以上、諦める必要はない」
「私としては諦めても良いのだけれど」
「あなたは黙っててください」
横でマイペースなこと言ってる……メイドがアレ、メイド服が戦闘服ってなんだよ……。
「あんたはあんたでどう言う原理だ? いきなり死角に現れるってのは」
「ふふ、それを教えたら無賃乗車の件、無かったことにしても良いのかしら」
「……難しいところだな」
「あら残念、それじゃ教えるわけには行かないわ」
うーん打開策がない。空にいる以上気をつけるべきはあのメイドだ、最初以降背後は取られちゃいないが、次いつまた来るかわからない。それに……。
「このナイフもうざったいな! 【マジックバリア】!」
「……本当に斬るまでここで過ごすのかしら? これじゃあカスミの方が危ないだけだと思うのだけど」
「……ですが、戦い始めた以上、あの魔法使いが背後を狙わないとも限らない」
「戦いの火蓋を切ったの、あなたよね?」
「カスミなら耐えられるし、勝ち目もある」
「最初の子ならそうかもだけど、次の……お相手のメイプルって子が相手だと、カスミと私やあなたの三人でも勝てるか怪しいと思うんだけど」
「……」
お、良い感じだなこのまま停戦にでもなれば……うん?
「ん?」
「……? 気を逸らそうとしても無駄だけど」
「いやそうじゃなくて……メイプルたち、いなくなってないか」
「……は?」
「あら……? 確かに」
さっきまで戦ってたであろう場所に、二人とカスミがいない。どうなってんだこれ。
「……面倒だけど、一旦休戦にしないか、お互いパーティメンバーを探すのが一番だろ」
「ですが」
「良いわ、そうしましょう」
「サクヤ?」
「ここで戦っていたって決着はつかないでしょ、真面目なのはあなたの良いところだけど、ここはお互いに手を取り合うべきではないかしら、ヨウム」
「……わかりました」
「わかってくれて良かったよ……ひとまず、あの場所に行ってみようぜ」
▼少女移動中…
「相打ち……ではなさそうですね、メダルがない」
「空から見下ろしてみたが、周囲に他のプレイヤーは見当たらなかったぞ」
「下手人がもう逃げてしまった可能性もあるけど……一番可能性がありそうなのは、隠しダンジョンかしら」
「あー……」
落とし穴型ダンジョンがあるくらいだしありそうだ。しかしこう、何の変哲もないところに見える以上、ギミックがありそうだが。
「……それだとこの砂の中に仕掛けがあるってことになるが……探してみるか?」
「……得策ではなさそうね」
「例え見つけたとしても、私たちの仲間や、あなたの仲間たちが開始地点にいるとは考え難い」
うわぁ、また面倒な……どうするかなぁ。
「この場所で待つってのはありだが」
「この場所だといつダンジョンに巻き込まれるかわからないし、待つにしても少し離れた場所にした方が良いかもね」
「……」
「そうねぇ……何もしない、ってのもアレだし、三人で近くの探索でもして……っ!」
随分いきなり揺れるな……何かのギミックを起動でもしたのかね、誰かが。
『……』
「うっわぁ……」
「大きいわね」
「……流石にアレは斬る斬らない無問題ではなさそうですね」
砂の中から現れるのは……ゴーレム、で良いんだよな?
「……アレ、倒せると思うか?」
「HPはあるみたいだけど……削り切る前にこっちが押しつぶされそうね」
「私は、やると決まれば斬り続けるだけです」
怖いからこっちを睨まないでくれるか? 剣士さんよ。
「ってか、こっち見てないか?」
「……そうよね、目らしきものがこっちを見てる気がしてたのだけど、気の所為ではなかったと」
『……』
「「「あ……」」」
『……!!!』
さぁて仮称ゴーレム、腕を大きく振り上げました。その手に握るのは巨大な岩……岩?
「……は?」
「ちょ……」
「見た目通りのパワーなのね」
「そんなこと言ってる場合かよ!」
「っ……!」
「あんな岩に、あの腕の長さ、避ける方が難しいんだから落ち着いた方がいいんじゃないかしら?」
「確かに言う通りなのですが……それにしても落ち着き過ぎなんですよ、あなたは」
「褒め言葉として受け取っておくわね」
「……見ての通り、彼女はマイペースなところがあるので、そこは把握しておいてください、魔法使い」
「あいよ、把握した……それと私の名は 」
「……来るわよ!」
「「っ!」」
『!!!』
豪速球だ、良い肩してやがるぜ。でも……。
「避けられないなら、撃ち砕く! 【ファイアジャベリン】!」
ボスクラスならともかく、ただの岩なら私で勝てるっての! 極太の炎槍を喰らえ!
「良い威力してるわね……ヨウム、次はあなたの出番よ?」
「言われずとも……露払い程度、容易いです……!」
砕けて尚、飛んでくる破片に剣士が立ち向かってるが……あの数斬れるのか?
「【マジック」
「要らないわ」
「ん? だが」
「良いから見てなさい? アレくらいなら斬り伏せられる筈だから」
「……あいよ、お手並み拝見させてもらうぜ」
「……」
余程強いスキルでも持ってんのか、言葉通りにアレくらいなら斬り伏せられる実力の持ち主なのか……まぁ、見てたらわかる話か。
「……獄神剣」
「?」
ごくしんけん? スキル名……か?
「【業風神閃斬】!
「!」
スキル名らしきものを唱えたと思ったら……。
「……言ったでしょ? 問題ないって」
「……あれ、ただスキルがすごいってわけじゃなさそうだな?」
「正解、ヨウムは剣の天才なの」
「ふーん……通りで、他の奴より剣に慣れてるって感じがするのか」
「よく見てるのね」
「見てるも何も、少し前に目の前まで迫ってたからな」
「確かに……あの剣筋を体験してたし、そう思うのもあり得る話か」
ゲーム内とは言え、光のレーザーを見てから正確に斬るレベルの奴をただのゲーマー扱いしたくないってのもある。大抵は避けるんだよ。
「……初撃はどうにかなりましたが……次の手、考えてますか」
「んー……」
今この場には私を含む三人のプレイヤーがいる。だが言ってしまえばそれは三人しかいないってことだ、周囲の探索時に誰も見つけられなかったしな。
「……剣士は剣士として……そこのメイド? は何ができるんだ」
「私?」
「ああ、ちなみに私は火力重視の魔法使いだぜ」
「私は……そうね、ナイフで色々できるわ」
「具体的には?」
「一定の範囲内であれば、好きな場所にナイフを出せる……このくらいで良いかしら?」
「私の後ろ……箒に
「! ……ふふ、ノーコメントよ」
「沈黙は肯定だぜ……っと、剣士」
「む……なんですか」
「勝手に仕切らせてもらってはいるが、改めてあんたは何ができるんだ?」
「……見せた通り、あの程度のものを剣で斬ることであれば、如何様にでも斬ってみせますよ」
「あの剣技のスキルっぽいの、連発は可能か?」
「そうですね……今のところ、あの規模の連発は三回が限度です」
「そうか」
うーむ、三回か……延々と繰り返せるなら近付いて一気に削って終わりにしたかったが……三回じゃ心許ない。明らかにあの鳥よりHPか【VIT】が高そうだし。
「……正攻法で行くしかないか」
「あなたの魔法じゃ、無理なのかしら」
「私のは威力をかさ増ししてるだけの基本魔法だ、その威力上昇もさっきの炎槍レベルの補正が現状の限界だからな、正直心許ない」
「……全体的に火力不足、と言うわけですか」
「あのゴーレムが私の考える程度か、それ以上の耐久力なら、だがな」
「……見るからに丈夫そうだし、その考えは間違ってなさそうね」
「だろ? あんな大きさの奴と、正攻法とは言え長期戦はしたくない、削れる時に一気に削る戦法が良いからな」
「……妥当ですね」
何故か今はおとなしいが、遠くに離れればさっきみたいに岩を投げ、近くに寄れば……おそらくあの体に薙ぎ払われたりするんだろう。
「だからこそ、今この時だけでも協力する必要がある、お前らと私が」
「……」
「確かにね、いざって時に足並みが揃わなかったら事故を引き起こすし」
「だから……自己紹介から始めよう」
「え?」
「私はマリサ、見せたしさっきも言ったが、この格好からわかるように魔法使い、魔法職だ、火力に自信はあるがあのゴーレムを削りきるには少し足りないと思ってる」
「じゃあ次は私が……サクヤ、と言う名前でプレイしてるわ、一定の範囲内であればナイフや自分自身を瞬時に移動させることができるの」
「それが本当かは怪しいところだけどな」
「ふふ、でもできることは本当よ? 言われたことはそれ以上に仕上げてみせるわ」
「頼もしい限りだね……っと」
「ヨウム、してあげたら? どう見ても悪人ってわけじゃないでしょ?」
「……仕方がないですね」
「素直じゃないわね」
「……私はヨウム、見ての通りの剣士です。一応、あなたの作戦には従います」
「おう、よろしく頼むぜヨウム、サクヤ」
「認めたわけではありません」
「この子は素直じゃないから、今のは認めてるって解釈で良いわよ?」
「サクヤ?」
「ふふ、そんなに怒らないでよ、場を和ませるためのジョークだから……それと、私はあなたに従うわ、信頼しても良さそうだしね」
「……私やサクヤよりは適任だと判断したまでです」
「それで良いさ、共通の目的があるだけの敵同士だし」
敵の敵は味方……的なことが理由で一緒なだけだしなぁ、こんなものだろう。それよりも……。
「あのゴーレムを壊すんだ、気合い入れてくれよ?」
「無論です」
「頑張りましょうか」
▼少女決心中…
ーとある運営秘話ー
「なぁんで【巨兵】が砂漠エリアに出現してんだぁぁーっ!?」
「へあっ!?」
「【巨兵】? それって没案になったアレか?」
「そうだ、今回のイベントの目的に沿わない大規模レイドボスっぽい性能になったあいつだよ!」
「アレの没データ処理したのって……」
「あいつだよ、あそこで干からびながら作業してる奴」
「あー……って休ませろよ!?」
「ァ……アァ……シゴト……」
「アンデットみたいなってやがる……ッ!?」
「あれ? そいつ二層のバグ修正とか担当してなかったっけ?」
「バグ? なんだそりゃ」
「お前いなかったっけ、今後実装予定の四層の座標データがバグって二層に出てきたんだよ」
「え、それ大丈夫だったのか?」
「大丈夫……ではなかったな、結果的に」
「?」
「座標に入ってたダンジョンを、修正されるまでの一時間でソロクリアした化け物プレイヤーがいてな……そいつの対応やら、メンタルブレイクやらで……」
「へぇー……メンタルブレイク?」
「そのダンジョン、悪意が詰まった例のシリーズでな……発案者が寝込んでその対処だよ」
「あー……で人数が減ったところに修正やらイベントが重なってあのゾンビが生まれたのか」
「って今は【巨兵】だよ【巨兵】! 近くにプレイヤーはいるのか!?」
「例のダンジョンにはさっきメイプルたちがいるのは確認したが……」
「あのダンジョンにはどう頑張っても振動しか影響はない、他のも含め、【巨兵】にエンカウントしそうなら脱出用魔法陣を一時的に停止させるか、砂漠エリア以外に転移させるしかない」
「ダンジョン以外の砂漠エリアにあるプレイヤーは!?」
「……いました! プレイヤーネームは……マリサとヨウムとサクヤです! ……ホワッ!?」
「マリサはともかく、ヨウムとサクヤか……やばいな?」
「ヨウムは例の四層ダンジョンを剣技でクリアしたガチの化け物だし……サクヤに至っては……」
「例の激ヤバスキルか」
「ああ、あの制作者にすら使いこなせない問題スキルの取得者だ」
「【時渡り】……なんでこんなスキル作ったんだろうなぁ……」
「デメリットも大概重いが、それさえ守ればメリットも大きいスキルだよな、デメリット重いけど」
「まぁ問題スキルはさておき、俺たちがするべきなのは間違ってスポーンした【巨兵】をいち早く削除することだ」
「だが……なんかあの三人倒そうとしてない? 大丈夫?」
「下手したら倒そうとした敵が突然消えたなんて問題になりかねませんが……」
「いやあの【巨兵】だぞ? 簡単には倒されまいとし過ぎた所為で、もはや別ゲームの大型レイドボス的存在になってしまったあの【巨兵】だぞ? 悪意の塊とは言えただのダンジョンボスだった【銀翼】たちとは土俵から違う」
「でもあの化け物プレイヤー三人が相手なんだよね……」
「「「……」」」
「一旦、見守るとするか……」
「やられたら流石に削除な、死亡時のペナルティも無しにして、お詫びのメダル配布も視野に入れとく」
「勝ったら勝ったで……うん、報酬を気持ち増量しとこう」
「あんなのに挑む気になるとかどこの主人公だよ……?」
新キャラは魂魄妖夢と十六夜咲夜の二人がモチーフ(保険)のキャラクターでした。まぁ予想はできそうなお二人かなぁとは思う。
前回言った完全再現不可能なキャラ、一人目は十六夜咲夜さんですね。オンラインゲームでその能力完全再現は無理がある。なのでそれっぽい能力になります、すみません。