エセヒロインは余談を許さない〜“完璧美少女”を演じる悪友が可愛くて困る!だが“俺も”演り返す!~   作:隣ワニ

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3話 滲み出る男要素が強すぎない!?

 先に沈黙を破ったのは冬さん(暫定冬司)の方だった。

 

「はぁ〜〜〜 なあ……呉久?で合ってんだよな?なんでそんなび、び美少女に、なってんの!?」

 

目の前の美少女はゆるふわ〜な見た目の雰囲気に似合わない粗暴な振る舞いを見せる。喋らなければ美人とはまさにこのこと。

 

「その言葉、ほぼそのまま返す!!」

 

「……そんでなんで寄りにも寄ってオレの性癖クリティカルヒットな見た目になってやがんだ??」

 

「その言葉も、ほぼそのまんまお前に返す!!」

 

「編み込みハーフアップ清楚系美少女お嬢様だぜ?! 好きのど真ん中突き刺さって抜けねーよ!? どうしてくれんだよ!!」

 

 あ、これ。

 この子たぶん冬司だ。女の子らしさの欠片もない……

 

「いやいや言動、まるで冬司じゃん! まんま冬司じゃんっ!!」

 

「まるでもなにもオレは正真正銘、まんま本物の冠城冬司なんだぜ?」

 

 やっぱ冬司だ。あ〜〜紛うことなき冬司だわー。

 

「うわあああマジでやめてくんね? 理想のおさげリボンゆるふわ癒しアイドル系巨乳美少女にクソデカ不純物混じってんじゃん〜! 解釈違い!」

 

「お前の解釈はいつも浅ぇンだ」

 

「そうやってす〜ぐ煽る!」

 

 コイツ、あの冬司だ。

 聞いてもないのに実在し得ない属性の女の子とのイチャラブ妄想を語ってくるあの残念な冬司だ……

 

「冬司、お前の妄想に対する無駄な誇りはなんなの? あとお前、カマトトぶるのやめたんだな??」

 

「いや、呉久もすぐ猫かぶんのやめたじゃねーか……」

 

「様になってたな? 俺秒で騙されたんだけど!? え、やってた? 冬司おまえどっか別の次元でおさげゆるふわ癒し系JK冬ちゃんやってた経験あるだろ??」

 

「ねーーよ!!! 女の子歴TS病かかってからの1ヶ月だけだ!! JK経験1日目の新人だ!!」

 

「経験値は俺と一緒なんだな……」

 

 叫び疲れた。TS病になって以降ここまで叫んだのは初めてかもしれない。出したことの無い音域に、少し喉がムズムズする。

 

「あとな、オレも普通に騙されたぞ? おまえ可愛すぎる」

 

「ふえっ?!」

 

「……そのせいで今朝のオレは柄にもなく積極性を出してしちまった……あといまの声、シコい」

 

 そう言った後、冬司は俺をじぃ、と見て、ゆっくり俺のいるベッドに詰め寄ってきた。

 

「おい、どうした……? 急に黙って……」

 

「……く、呉久? オマエ声も最高に可愛いぞ……?」

 

「え……やめろ!? ほんとキショいから……」

 

「……あとそんな表情で見つめられたらオレ……ゾクゾクきちゃう」

 

「え」

 

 彼女の肌が触れる……俺は本能的に後退りしていた。

 

「なぁ?──いったんヤらねぇか?」

 

「……は?……はぁ!?」

 

 なんつー提案してんだこいつ! そして気づけば壁際まで来てんじゃねぇか!

 しまった〜!逃げ場がない!

 

「たのむよ〜! 先っちょ、先っちょだけでいいんだ!」

 

「ひぇっ」

 

「優しくするから……お前が天井のシミを数えている間に終わる……」

 

 えー……碧眼のお目目ぱっちりで……もう吸い込まれそう……

 

 って瞳孔開きまくってんな? 

 それにコイツ、目が据わってる……いや、顔近いな!

 

「や、ヤラんわアホ!! てかおまえっ、そもそも今、アレ、つ、ついてないだろっ!!」

 

「?……あ、そうか……オレ今、チ○コないんだな……?」

 

「その見た目でふしだらな言葉口に出すのやめよぉ……?」

 

 アホなことを言ってアホ面に戻った冬司。それを見て俺は胸をなでおろす。

 危なかった……一瞬、なにか新しい扉が開きかけた気がする……

 

こんなアホ面美少女、ろくに女の子の知り合いがいない俺にとって見覚えが無いはずなんだが。

……どういうわけか俺のイカれた脳は、この女の子を腐れ縁の男友達と判定しちまうらしい。

そしてその男友達は今、スカート越しに秘部を抑えこてんと座り込んでいる。

 

「ちくしょぉ……ここに生えてさえいればよぉ……!」

 

 ゆるふわ系女子に悪友(元男)の面影を見るなんてどうかしてる。

 

「ええ……」

 

「……お前、見た目は最っ高に好みなのによぉ! あー中身がお前じゃなかったらな〜! でも、オレがちゃんと生えてたら間違いなくあのまま手出してたな。ここ保健室だし」

 

 こいつは保健室をなんだと思っているのか。この銀髪美少女、発想の随所に変態野郎が垣間見得る。

 

「……冬司さんの脳は金玉についてますからね。あなたのような犯罪者予備軍、いえ犯罪の権化と言っていいでしょう。いずれ何かやらかして除籍になるのが目に見えてますから、その前に退学をオススメしますよ?」

 

「……今の見た目でその毒舌貶しされるとくるものがあるぜ」

 

 少しは頭を冷やせこの変態性欲魔人。

 

「まて、呉久。保健室に好みの女の子と2人きり。さて呉久、本音は?」

 

「……そらおまっ、最後までヤるに決まっとるがな! お前みたいな可愛い女目の前にしてほっとく男がどこにおんねんッ!!」

 

 紛うことなき本心だが? むしろ体裁だけでも理性的なぶん、褒めてもらいたいね?

 

「……なぁ呉久?お前も大概ヤバいってこと、いい加減気づこうぜ? あとな……お前いま、男ちゃうでー?」

 

 ……空しい。

 そして、どうしてこうも中の人(男)が妨害するのだろうか。

 

 見た目だけならゾッコンなのだ。それ故不純物たる悪友の面影を、なんとか妄想でこし取ろうとしているのだが、どう頑張っても変態野郎の灰汁が美少女を突き抜ける。

 溢れ出る変態風味を希釈出来ないばかりか、当の冬司には流出を抑える気概すら感じない!!

 

「……伝家の宝刀と温めていたオレのビッグマグナム……オレはアイツと一緒にいてやりたかったぜ……もっといろいろ……」

 

 そう言って銀髪を揺らす冬司は、まるで失恋した少女のようにしょんぼりしている。

 

 内容は彼女の可憐な見た目と180°かけ離れた猥談であり、相変わらず360°くらい訳の分からない状況だが、結果としてその話題は、忘れていた俺の虚無感と、眼前の変態美少女に対するおぞましいシンパシーを呼び起こした。

 

「……わかる。15年、俺とジョニーはいつも一緒で、それが当たり前だったからな」

 

「TS病ってままならねぇよなあ……」

 

「──ってまて冬司。お前虚栄を張って虚しくはないか? 夏休み前温泉行ったよな? もう互いのサイズ大体知ってんだよ! 所詮ポー○ビッツのお前が、よくそんな大ホラ吹けたな?」

 

「だれがポーク○ッツじゃ!いーや、オレの息子は立派だったぜ?なんなら伸びしろすらあった!!」

 

 恥じらいか、ムキになっているのか、はたまたその両方か。

 保健室で真っ赤なりながら侃侃諤諤(かんかんがくがく)の論争に興じる美少女(見た目のみ)……

 しかも議題は消えたムスコ。もう何が何だかわからない。

 

「なぁ冬司? そもそもいまの見た目でついててもどうしようもないだろ? 不毛なんだよ、もちつけ」

 

「いまのお前についていようがいまいが、オレはヤレる」

 

「はは……そりゃまた……ホモなのかレズなのか。まあ……いろんな横槍が飛んできそうだ。区分に困るなぁ……」

 

「お前、まだそんな“垣根”あんだな? まだそのレベル?」

 

「はあ?」

 

「カタチなんて関係ない、そう言えるくらいまでオレも成長したのさ」 

 

「そんなブレイクスルーがあったとは驚きだな……まぁ、さ。そういう大らかなとこ?……素直に尊敬してやらんでもない?……けど……」

 

「え?なんだって?」

 

「なんでもない! あほ! 変態!」

 

 いまさら感心などしてやるものか! 

 何処ぞの鈍感系主人公みたいで腹が立ったとか、そういうのじゃないんだからねッ!

 

「……? 訳分からん、これだから童貞は……」

 

「ど、どどうていちゃうわ!!」

 

「さっそく返しが童貞じゃねーか」

 

 そう言う冬司もまだ童貞である。たぶん。

  しかし何故かこの変態性欲魔人には彼女が出来たことがあり、俺だけが彼女いない歴=年齢という現状だ。

 

「冬司こそ童貞美少女(?)のクセにムキになって! 無くなった息子のサイズの話にこだわって! 見た目だけは可愛い阿呆か!」

 

「IQ3くらいの返ししかしない童貞美少女に何言われても何言われてもポンコツかわいいにしかなんねぇんだよ!」

 

 ──ぐぬぬ。国の心臓たる一条の男(過去形)が、なぜこんな不条理に甘んじなければならんのか。責任者に問いただしたい。責任者はどこか!

 

「ゆるふわおさげリボン癒しアイドル系巨乳のクセに。生意気な」

 

「編み込みハーフアップ清楚系お嬢様のクセに。生意気だな」

 

「……」

 

「……」

 

 気づけばすっかり陽が落ちていた。

 

「帰るか……」

 

「うん……」

 

 

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