機動戦士ガンダムSEED FREEDOM~IF STORIES~短編集 作:フォレス・ノースウッド
種デス放送時からシンのことは嫌いではなかったですよ、ただ『主人公』としてのポテンシャルはある筈なのにもったいないな~~とは思っていました。
同時期にロボアクションゲーム『Z.O.E』シリーズの続編『ANUBIS』で前作主人公のレオを鈴村さん(前作の時点でレオ役のオーディションは受けてた)が演じてましたけど、シンもレオくらい心身ともに成長してくれたらな~~と思ってました。
デスティニーガンダムも後半主役機の筈なのにあの不遇さには歯がゆい思いをしていましたし、種自由ではストフリインジャと比べるとマイナーチェンジは控えめで武装は敢えて前作と据え置きにしたのはナイスと思ってます。
あれで八面六臂の大活躍をしてくれたから、一層のカタルシスを味わえたわけですしね。
両手が壊れたら戦えなくなる?それはMSに限らず全人型機動兵器(ロボット)に言えること、高山版コミックやTHE EDGEみたいに腕もげても戦えるインジャとアスランがおかし過ぎるの!
メイン武装の取り回しがよくない?シンもデスティニーも絶好調なコンディションな超高機動強襲戦闘してくる時に、攻撃を当てること自体がムズゲー!!
ただ実際に短編で書いてみたらせっかくのIFなので『種デス時代から言われてた短所をカバーして、単体で近接から長距離まであらゆる戦況に対応する汎用性を突き詰めつつ、シンがより人馬一体に相応しいくらい直感的にデスティニーを操縦できるように改修されてたら?』をコンセプトとしました。
パイルバンカーを入れたのは、完全にアーマードコア最新作で『とっつき』のロマンに触れたから。
あと、種自由後半はともかく、種デスだとミラージュコロイドによる『質量のある残像』って、見栄えに反してあんまり攪乱効果が見受けられなかったですよね(オイ
その効力込みで今度こそ『戦火に晒される人命を守る』ためにキラたちと奮闘するシンとデスティニーをどうぞ(^▽^)/
自分に画力があったらこのデスティニーイラスト化できたんだけどな~(涙
ちなみに最後のやり取りは、クウガオマージュです。クウガがいなかったらSEEDシリーズは生まれてなかっただろうですし。
追記:新たなインタビューで監督が『最初の段階で「シンを主役で最後まで物語を進めるには難しいな」と思ってしまったんですよね。なので両澤は、早々にアスランに物語の軸を切り替えていましたし、僕は僕でキラに軸を切り替えていた』と、約20年経った今で良かったな、当時だったらレクイエムを奏でる終末の光がぶち込まれてたぞ(#^ω^)
コズミック・イラ七四年、《第二次連合・プラント大戦》終結後にてプラントとオーブと大西洋連邦は、二度に渡る大戦を経ても尚、世界各地で勃発し続ける戦火(ひだね)に対処すべく《世界監視機構・コンパス》を共同で設立。
かの組織に所属し、今は大気圏間近で地球を周回する戦艦、スーパーミネルバ級強襲揚陸艦《ミレニアム》の艦内では――。
『コンディションレッド発令、コンディションレッド発令――』
エマージェンシーの警報がけたたましく鳴り響いている。
『パイロットは搭乗機へ、各隊員は速やかに所定の作業に移行せよ』
現在はコンパスのMS部隊のパイロットの一人、シン・アスカは、ヘルメットを被りながらザフト軍士官学校からの付き合いな同僚たちとともに回廊を抜けて格納庫に入った。
彼は自身の搭乗機を見据えるながら、コクピットへと急ぎ宙を泳ぐ。
《ZGMF-A/42T――デスティニーVⅡ(バージョンツヴァイ)》
前大戦終盤でシンが搭乗していたMSを改修した機体。
彼はコンパス設立時、自ら志願してザフトから出向したが、まさか愛機も同然の機体が再び乗機となるとは実際に再会するまで思ってもいなかった。
この機体は前大戦にて大破した上に、彼でも速過ぎると実感させられるくらいMS関連技術は日進月歩著しい。
ロールアウト当時は最新鋭のワンオフ機だったデスティニーも、ほんの一年経っただけで型落ちの旧式扱いだ。
そんな技術革新のインフレの勢いに遅れぬ様、大規模なレストアと同時に改良も加えられている。
動力面ではハイパーデュートリオンエンジンの要たる動力炉は核分裂原子炉からMS用に小型化に成功した核融合炉に取り換えられたことで出力は強化され、バッテリーの容量も増加と同時に消費電力も抑えられている。
外見も、頭部のV字型アンテナは一対から二対に増え、全体的な外装は流線啓形寄りとなり、右腕には腕部に接着された専用ビームライフル、左腕には新装備である特殊シールドを装備、両肩と両足にはサブスラスターが増設、両腰にはビームサーベルとビームブーメランが二つずつマウントされ、背部には二つの砲身を抱えていたりと様変わりする一方、改修前から本機を象徴する翼型の大型スラスターは健在だ。
これらのアップデートで生まれ変わった愛機の改修案を提案し、実際に作業も手伝ってくれたその筋では有名らしいジャンク屋の男曰く――『より直感的に動かしやすい様にカスタマイズしたぜ!』と言っていた。
愛機を蘇らせてくれた彼から受けたこの恩は、絶対に忘れないでいよう。
〝今回も頼むぞ、デスティニー――俺のガンダム〟
胸部の上部ハッチからコクピットに入って操縦席に腰掛けたシンは、ベルトを装着して機体を立ち上げながら操縦桿を撫で、内心愛機に向けて呟く。
《ガンダム》とは、前大戦ではシンと立場上対立しながらも、今は共に戦火に立ち向かう同士兼コンパス所属MS隊の隊長――キラ・ヤマトが、デスティニー含めた特定のMSに対して使う通称だった。
その由来は、起動時にてコンソールに表示されるOSの名称の長い文章の内、各単語の頭文字を組み合わせると《G.U.N.D.A.M》と読めたから、どうもキラが最初に乗った機体からずっと、この手のMSのOSのシステム名と規格が何度変わろうとも、いずれも頭文字を抜き出すと《ガンダム》となるらしい。
その話を聞いた時、シンはいっそ《ガンダム》を正式名称にすればいいのでは?と突っ込みたくなったが、今でも一部の人間が使う通称止まりである。
球体状のコクピット内壁のほぼ全てに、頭部カメラが撮影したのを元にCGで補正し描き直した映像が投影される。
初めてこの《全天周囲型モニター》を採用したコクピットに乗った時、シンは改修前のデスティニーと、その前に乗っていたインパルスのとは比較にならない解放感を前に、大層驚かされた。
特にインパルスは、分離合体機構と、コアとなるコクピットが小型戦闘機だった都合上、士官学校時代に乗った訓練用ジンよりも狭さを感じられた為、技術の進歩に舌を巻かれつつ。
〝戦争以外にも、もっと技術の進歩を生かせる場所、たくさんある筈なのにな……〟
――と、これまでの戦争によって被った自身の境遇と世界情勢込みで複雑な思いを抱えもしていた。
とは言え今は世情に憂いてばかりもいられない、こうしている間にも戦闘の火は燃え広がっていて、それをどうにか少しでも早く食い止めたくて自分はここにいるのだから。
『了解、フリーダム突入後、シンは政府施設の防衛を――』
「えっ?」
『ルナマリアとアグネスは避難民の誘導と、市民軍の援護を』
機体がカタパルトへ搬送される中、シンは通信越しに隊長(キラ)からの指示を聞いて呆気に取られ。
『また……』
同僚であり、今は恋人な間柄でもあるルナマリアの口からもそう呟かれた。
『隊長、前線の敵が私が叩きますので是非一緒に』
〝隊長!俺も行きます!〟
もう一人の同僚であるアグネスの進言に続いて咄嗟に言いかけたシンは、その言葉が口から出る前に引っ込めた。
『ダメだ、戦場を広げたくない……』
モニターに映るキラの暗く思い詰めて、涙が流れそうな顔、コンパスに入ってから出撃の度に目にする彼の辛そうな面持ち。
コンパスMS隊の戦法は毎度、キラの乗る機体(ガンダム)――《フリーダム》が単騎で前線に斬りこみ、シンたちは後方支援と民間人の避難誘導となる流れ。
確かにキラはそれを実行できるだけの高い技量を持ったパイロットだが、それ以前に彼だって、いくら強くても〝ただ一人の人間〟だ。
そんな戦場どころか、世界全体の闇に立ち向かうのは自分一人で十分とばかりに突っ走るキラを、自分とデスティニーで助けられないか、どうにか彼が背負う重荷を分けてあげられないかと、日頃から案じつつも、凡そ戦場には全く似つかわしくない温和で優しくも、一度決めたことは譲らぬ頑固さも併せ持つ性格を目にしていると、反骨心が旺盛な方のシンでさえ強く出られない。
〝あ~~でもここでウジウジとネガっててもしょうがない!〟
こうして共に戦場に飛び込むこと自体はできるのだと、前向きにとらえ直そう。
拠点防衛だって立派な仕事だ、もし政府関連施設まで落とされたら、崩壊した市民の日常(インフラ)を直すことさえままならなくなるくらい、自分にだって分かる。それに元より自分は問題児だ。昔より多少は丸くなったと自負してるけど、全く消え失せたわけではないので、隊長(キラ)一人で対処仕切れない程の事態が起きた時は、請け負った指示を突っぱねる覚悟で、彼の背中を守って助力すればいい。
少しずつでもいいから、貴方は独りじゃないと行動で示せばいいと、シンは自身の気持ちを切り替える中。
『――発進どうぞ』
『ルナマリア・ホーク――ゲルググ、行くわよ!』
『アグネス・ギーベンラート――ギャン、出ます』
先にカタパルトへ昇ったルナマリアの《ゲルググメナース》とアグネスの《ギャンシュトローム》が発進、続いてシンの《デスティニー》もカタパルトデッキに立ち、外装とフレームを通電させてヴァリアブルフェイズシフト装甲が起動、灰色の装甲色が胸部と両肩は深い青、四肢は少々灰色がかった白、背部ウイングはシンの瞳を彷彿とさせる赤に色づいた。
『デスティニー、発進どうぞ』
「シン・アスカ――《デスティニーガンダム》――行きますッ!」
シンの熱気(さけび)とともに、デスティニーはカタパルトを飛び出し飛翔。
『キラ・ヤマト――フリーダム、行きます!』
最後に《ライジングフリーダム》も発進。
ゲルググとギャンは脚部に備えていたバリュートを展開し、デスティニーは左手の手甲から菱形状に形成したビームシールドで、フリーダムは大気圏突入にも使えるMA形態に変形して、灼熱の大気圏の膜へと飛び込んでいく。
向かう先はアフリカ共和国オルドリン自治区、地球に点在するプラント特区の一つだ。
今回もこの戦火を招いたのは《ブルーコスモス》の残党。
やり口もこれまでと同様、一切の布告も前触れも無しに、プラント関連の軍事拠点や居住地へ一方的に攻撃を仕掛けてくる。
既に宇宙からでもくっきりと街が戦火の炎に浸食されている様が見えていたが、大気圏内に入ると、事態の深刻さと凄惨さがより一層明瞭となった。
〝デストロイ……ブルーコスモスの奴ら……また〟
シンの心中の炎の勢いも、急速に強まり出した。
彼とも浅からぬ因縁がある、あの漆黒で巨大かつ異形なる殺戮兵器……《デストロイ》。
『こちら世界平和監視機構コンパス、攻撃部隊に告ぐ、ただちに戦闘を停止せよ――』
キラは戦闘中止の勧告を呼びかけるも、デストロイは聞く耳を持たんとばかりに四方八方へビームをまき散らしながらMAからMSのへと形態を変形、禍々しい《ガンダム》の顔を曝け出した。
前大戦の頃のシンなら、この時点で我を忘れる程の怒りに飲み込まれ、敵とみなした対象へと突貫していたが、今の彼は胸中の怒りの火を強めぬ様、全身から余計な力を抜きつつ深呼吸して、平常心を維持させたまま。
「施設防衛に入ります!」
背面の推進器――《ヴォワチュール・リュミエール》を展開し、マゼンタ色の光の翼を放射して急加速し降下、自治区政府施設周辺に急ぐ、この四機の中で最も加速力があるのがデスティニーだ。
政府施設の近くにあるシェルターに避難中の市民を守ろうと、ザフトのMS隊が奮戦しているが、民間人を平気で巻き添えにしてビーム兵器主体で攻めてくる残党軍相手に、実弾の薬莢や流れ弾による被害を出さないよう防戦している自治区軍は明らかに押されていた。
残党軍の《ウインダム》のビームサーベルが市民の盾となっている《ジン》の右腕を切り落とし、さらにバルカンの掃射で頭部と胸部をハチの巣にする。これらの攻撃を受け機能不全に陥ったジンは仰向けに力無く倒れこんだ。今ので市民が一人も下敷きになってないだけでも幸いと言いたいが……無情にもウインダムの目(カメラ)は、次なる標的を眼下の無力なる市民たちに狙いを定めていた。
「やめろォォォォォーーーー!!!」
シンは加速の勢いを乗せ。
《MR-Q18S ラプトル ビームスパイク》
足先からビーム刃を発振させた右足でウインダムの頭部を、機体ごと蹴り飛ばした。
「今の内に逃げて下さいッ!」
避難を呼びかけながらシンは両腰にマウントされた《MA-F2D2 ヴィーセルナーゲル ビームブーメラン》を取り出し投擲、遠心力と量子通信で操作されたビームの刃で他の残党軍のMSの頭部を両断し、かつ右腕に装備する《MA-BAR75/T 腕部接続式高エネルギービームライフル 》で敵機らの足を撃ち抜き、政府施設の目と鼻の先に近づいていた部隊を片づけると、背面スラスターに備えられた《ミラージュコロイド》の効果で、MSのカメラとセンサーを混乱させる残像を発して施設上空を旋回しながら、ライフルとともに背部のビーム砲――《M2000GXS シュトゥルムアグニ延伸式高エネルギー長射程ビーム砲》を腰だめに構え、砲口からプラズマ収束ビームを光弾状に連射、向こうより進軍してくる残党軍の四肢と頭部へと一発も漏らさぬ様注意して当て、上空から迫ってきたミサイルの雨には、腰のビーム砲の出力を上げて照射し、薙ぎ払って撃ち落とした。
ルナマリアのゲルググも地上に降り立ち、残党軍を迎撃しながら避難誘導する。
「アグネスも援護してくれ!」
『何言ってるの!?私の機体は近接特化型、援護するのはアンタの方でしょ!』
ダメ元で言ってみたが、今日も自分の進言を隊長のキラに却下されて不満気味のアグネスが駆るギャンは、敵機の撃破を優先していた。民間人を巻き込まないだけ、残党軍よりずっとマシなのだが……。
「まずっ!」
デストロイの両手が分離する。奴の手はそれ自体がドラグーンシステムによる無線誘導が可能な空飛ぶ砲台、その五指から放たれるビームの驟雨を逃れる術は市民にはない。
『避難誘導はこっちで何とかするから、シンは行って!』
「分かった! キラさんッ!」
デストロイの両手をこちらに引き付けているキラのフリーダムに呼びかけると。
『シン……本体の方を!』
「了解です! こっちだ! 当てられるもんなら当ててみろ!」
キラからの助け舟を受け、シンは残像を幾重も描きながら稲妻の如く飛び回る。
デスティニーの攪乱で誘導砲台の動きが鈍った隙を突き、フリーダムのビームサーベルが切り裂き、口と胸部の砲門からビームを放とうとした本体に。
『当たれ!』
ルナマリアのゲルググのロングレンジビームライフルの狙撃と、フリーダムの一斉掃射が、発射寸前の砲門とカメラとセンサーに命中。
〝ごめんッ!〟
シンは心中にて、かつて心を通わせた強化人間(エクステンデット)の少女――ステラと、その仲間たちを思い返しながら、あのデストロイに乗せらている彼女らの同朋に詫び入れ。
《MMI-X340A パルマフィオキーナ》
《MMI-033PB ブリューナク電磁式パイルバンカーシールド》
左手の掌(ビームデバイス)から発する青いビーム刃と、電流を帯びた杭による二重の刺突がデストロイの胴体を貫き。
《MMI-FG7 アロンダイト改 ビームアックスソード》
ダメ押しで全長二〇メートルを超える対艦用兵器を両手で握り、上段に振り上げてからの一閃で一刀両断、デストロイに引導を渡し、シンたちの一連の攻撃を受けた異形の巨体は全身の各部から炎を噴き出して崩れ落ち、機能を停止した。
さすがに虎の子のデストロイが撃墜されたことで、あれほど攻勢に出ていたブルーコスモス残党軍は一転して、オルドリン自治区と隣接する都市――カナジの方へと撤退していく。
「二度と来るなよ……」
これで懲りる連中ではないと分かってはいても、シンは言わずにはいられない。
ブルーコスモスの日頃の蛮行に対し、義憤の衝動が絶えないシンだが、無用な追撃は行わないだけの自制心を今日までに育んでもおり、どうにか戦闘を止められて一息吐こうとしたが――。
『オルドリン防衛司令部より通達!この戦闘の裏にはミケールがいる!奴を引きずり出せ!』
今の通信で吐きかけた息を呑む。ブルーコスモス残党を率いる実質的指導者(トップ)であり、火種をまき散らしつつも姿をくらまし続けるあの男がカナジに?
もし本当ならまたとないチャンスだが……今のシンはこの情報をうのみにするほど短絡的ではない。
あれだけ雲隠れが得意で尻尾も掴ませたい奴が、みすみす戦火のすぐ近くにいるとは思えない。
もしこの情報が残党(やつら)に、再度襲撃の口実を与える罠――誤報だとしたら。
『警告します! ミケール大佐はここにはいません!進軍を中止して下さい』
キラもその可能性に感づき、自治区のザフト軍に呼びかけるも、彼らは進軍を止めようとしない……カナジに逃げた残党軍を復讐(ほうふく)する気だ。
「くそッ!」
毒づくシンはデスティニーのスラスターを吹かし、オルドリン自治区とカナジの境界線ギリギリの地点に降り立って自治軍を相対し。
「よせ!ここを抜けたら領土侵犯だッ!カナジの人たちも巻き込む気か!?」
『これ以上の戦闘継続は、市民への被害があります!』
引き続き警告を発し続けるキラの声が響く中、立ち塞がった。
『コンパスは引っ込んでろ!!』
「ブルーコスモスが許せないのは、俺だってそうさ!」
『ならなぜ邪魔をする!? 奴らは――』
「ここでやり返したら、アンタたちの故郷(ふるさと)がまた焼かれる! 友達も!家族だって……もっと死なせることになるんだぞ! 俺も前は、そんな大馬鹿をやりかけた大馬鹿野郎だった!」
シンにとって、彼らは過去の自分だ。
大切な人たちの命が奪われ、その理不尽に泣き叫び、無力な自分を呪い、その悲劇を生んだ戦争を憎悪しながら……無自覚に復讐心の炎を焚き付け、気がつけば自分もまた戦争と言う業火を生み落とし、多くの命を奪って悲劇を繰り返す悪鬼となってしまった……かつての自分自身。
「攻める元気が残ってるなら、まず辺りを見てみろ! あの火に巻き込まれた人たちだけで、こんなに壊れた街を直せるか!? 俺たちが今、何に乗ってるか思い出せッ!」
シンのデスティニーは辺りに散乱する瓦礫の一部を器用に拾い上げて、自治区軍に見せると。
「モビルスーツができるのは、戦争(ころしあい)だけじゃないだろ? 生き残った人たちの為にもさ……それでも撃ちたいなら撃てよ……ぶん殴ってまでも、アンタたちを止めてやるさ」
シンは有言実行とばかり、市内に散乱した瓦礫を撤去し易い様、一纏めに積み上げていでく。
彼の必死の叫びが届いたのか、自治軍のMSから剥き出しの殺意が和らいでいき、武器を下すと、デスティニーに続いて、市街地の復旧作業へと次々移っていった。
シンもそれを手伝おうとした矢先、キラのライジングフリーダムが、デスティニーの下へと降り立った。
『シン……ごめんね、苦労をかけて』
「キラさん、こういう時は謝るよりも、感謝ですよ」
デスティニーの手をサムズアップさせて、シンはそう応えると。
『そうだね、ありがとう』
フリーダムの手もサムズアップを返し、モニターに映るキラの表情に、少しではあるが確かに明るさが戻り、シンの顔も綻びた中。
〝シン、ルナマリア……生きろ、生きて……俺の……明日を……〟
今は亡き戦友の最後の言葉を思い返し。
〝レイ、お前が選んだ未来(あした)は、絶対に……終わらせないからな〟
夜空を見上げ、胸の奥から戦友に言葉を贈る。
一度は戦火の黒煙に覆われた空は、次第に晴れていき、星々の輝きが地上へと降り注ぐのであった。
終わり。
《デスティニーガンダムVⅡ(バージョンツヴァイ)》
型式番号:ZGMF/A-42T
全高:18.25m
メサイア攻防戦で大破したデスティニーを、ロウ・ギュールの改修案を下に、彼らジャンク屋組合とモルゲンレーテ社が共同してレストア、改修した機体
機体本体は新型動力炉に取り換えられたことでパーデュートリオンエンジンのジェネレーター出力とバッテリー容量の強化、エネルギー消費効率のさらなる改善、コクピットを全天周型モニター式に差し替え、デュートリオンビーム照射による友軍機のエネルギー供給、頭部アンテナを四本に(Ξガンダム風)、両肩と両足にサブスラスターの増設(両肩はガンダムヘリオス、脚の形状はシナンジュをイメージ)、PS装甲稼働時の機体カラー配色の一部変更(頭部と胴体はSPECⅡ風、肩と四肢はドレットノートガンダム風)、最大出力時は種自由映画本編同様フレームのPS装甲色が赤色に変化する。ちなみに内部フレームのほとんどは改修前と変われないが、これは人体の動きを再現した可動域の優秀さ含めたフレームの完成度が高かった賜物。
最も改修前と変化したのは使用武装群であり、『単体で近接から長距離まであらゆる戦況に対応する汎用性』を突き詰めつつ、以前の武装一覧に見られた『背部ウェポンの小回りが利かなさ』『武装の同時使用が困難』と言った弱点をカバーし、パイロットのシンがより直感的な機体操縦を可能とするのがコンセプト。
事実実際に搭乗したシン曰く『前からこの仕様だったと錯覚しちゃうくらい前のデスティニーよりもっとしっくりくる』とのこと。
『武装一覧』
・MMI-GAU26 17.5mmCIWS
改修前同様、本機体の数少ない固定装備な頭部バルカン、性能はほぼ変わらず。
・MX2351Aソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置
両手の甲に搭載するビームシールド発振器、こちらも基本的な機能は変わらないが、ジェネレータの出力向上で防御力はアップしている。
・MA-BAR75/T 腕部接続式高エネルギービームライフル
改修前の主武装だったBRを改良したもの、特徴は手持ち式から機体右手前腕のマウントクラッチに装着する機構に変更されたこと、未使用時は折り畳まれる(バルバトスルプスの)腕部200mm砲風)。これにより近接武器を保持したまま射撃できるようになった。
・MA-F2D2 ヴィーセルナーゲル ビームブーメラン
両腰に一つずつマウントしているビームブーメラン、量子通信による操作とビーム刃の出力が向上されており、投てき後は自動で腰に再マウントされるようにもなっている。
・ MA-FZ51 ヴェルシーナ ビームサーベル
本機体に新装備されたビームサーベル、ジェネレータの改良でビームブーメランと同時運用が可能になった。フリーダムやジャスティス系列のガンダム同様、柄を連結させたアンビデクストラスフォーム機能も備えており、対MS戦での近接戦闘の運用法が広まった。
・M2000GXS シュトゥルムアグニ延伸式高エネルギー長射程ビーム砲
背部に二門装備されたビームランチャー、見た目はDインパルスのビーム砲塔に近い、ケルベロスや通称『名無し砲』と違い、手でマウントせずともプラズマ収束ビームを発射可能であり、ジェネレータ改良で威力も連射性もさらに高まった。
名称はランチャーストライクの『アグニ』から。
・ MMI-FG7 アロンダイト改 ビームアックスソード
ザフト製ザクのスラッシュウィザード用装備ファルクスとアロンダイトの特性を掛け合わせた大型近接兵装、ファルクス同様未使用時は折り畳んで背面ラックにマウントする。
使用時はハルバードを彷彿とさせるデスティニーの全高を越えた全長を誇り、実体刃とビーム刃のハイブリッドでアロンダイトでも見せた驚異的な切断力は健在であり、さらにビームの出力を上げれば(サザビーやシナンジュのビームアックス風)大型ビームソードにもなる。
ビームコーティングが施された柄と、前述の射撃兵装と併用が可能となったことで、使い勝手はアロンダイト以上に向上され、(主にインジャとの戦闘で露わになった)短所も解消された。
・MMI-X340A パルマフィオキーナ 掌部ビーム砲
アロンダイトに並んで本機を象徴するビームジェネレーターデバイス、射撃兵装の改善で他武器との同時運用も可能となるなど、戦術バリエーションの応用の幅が広がった。さらに掌全体にビームフィールドを覆うことで短時間ながらビーム刃を掴むことも可能。
・MMI-033PB ブリューナク電磁式パイルバンカーシールド
本機の新規兵装、名前の通り、シールド機能(ただし用途は機体本体よりも本部装そのものを防護する)の付いたパイルバンカー(見た目はデスティニーの実体シールドを分厚くしたイメージ)であり、レールガンの要領で杭を射出する仕組み。
物理衝撃と電流の二重攻撃で敵機の装甲を貫通するだけでなく、内部の電装品にもダメージを与えられる。
パルマフィオキーナと持前の機動性と併用することで、あらゆる装甲を撃ち貫く破壊力を発揮する。
名称の由来は太陽神ルーが使用したと言う同名武器
・ヴォワチュールリュミエール
改修前と同様、背部ウイングに搭載された光子ロケット、こちらもジェネレータの改良で自慢の機動力にさらに磨きがかかり、種自由でのSPECⅡ同様、最大出力時はミラージュコロイドによる分身攻撃で敵部隊を翻弄する。
・MR-Q18S ラプトル ビームスパイク
本機に追加された固定兵装、足の指先部分に(片足二つずつ)備えられたビーム発振器から蹴りつける際にビーム刃が放射されて敵機を突き刺すと同時に蹴り飛ばす仕組み。
名称の由来は猛禽類から。